お米のこと
ユリアとちゃんと向き合うことができた私は、いままで悩んでいたのは何だったんだって思う。
自分でもすごく現金だなって思うけれど、悩んでいたときは本当に大袈裟だけど世界の終わりくらいに感じていた。でもそれは、自分一人で悩んで、どうしよう、どうしようって、悪い方へと考えてしまっていたから。自分だけで考えたって答えなんてないんだっていまはわかる。でも、ベリアルさんに話を聞いてもらって、自分の気持ちが外に出せたから、ユリアに向き合おうと思うことができた。
そして、あの後、調理場に行って皆さんにいきなり飛び出して心配をかけてしまったことを謝った。皆さんすごく優しく気にしてないし元気になってよかったって言ってもらえて、私はたくさんの人に大切にされているし、優しくされていることに気付かされた、すごく感謝の気持ちで胸が熱くなった。
今回のことはそのことに気が付けて、嫌がらせされて辛かったけれど、いまではユリアにも感謝しれいる。
美味しくなくなって癒しの効果のなくなったパンも、私の気持ちが原因だった。マリーとパンを作ったときにそんな話していたのに、目の前のことに囚われて大切なことを忘れてしまっていた。いまでは前よりも美味しくなって、癒しの効果も復活した。
しかも最近、あの出来事の後に私が焼いたパンを食べた人達の間でカップルが増えたって噂を耳にした。その噂のせいで、別件でパンを焼いてほしいって頼まれることが増えたりもした。
ベリアルさんのことを好きだって気付いたのと関係あるのかしら...だったらちょっと恥ずかしい。
そんなこんなでオリュゾン国民にパンを普及するのもそろそろ無事に終わりに近づいてきた。
「と、言うことでベリアルさん、ありがとうございました。パンもまた美味しく作れるようになりましたし、ちゃんと向き合うことができました、あのときベリアルさんに励ましてもらったおかげです。本当にありがとうございます」
そう言って頭を下げる。
「みこちゃんが元気になって本当によかったわ、ユリア王女様とも仲良くなれたみたいね」
「はい!」
「それは、すごく嬉しいのだけれど、これは何なのかしら?」
そうベリアルさんが言うこれとは、いままでベリアルさんにべったりくっついていたユリアが今度は私にべったりでずっと手を繋いでいる。
「あら、私の美琴に悪い虫が付かないように一緒にいますのよ」
「ふふふっ、虫って私のことかしら?」
「まぁ、自覚があるのね、それなら話が早いわ、あなたみたいな胡散臭い王子に美琴は渡せませんのよ」
「胡散臭いってどういうことかしら」
「ほら、その言葉使いに、その笑顔を張り付けた顔、隠す気もないのが、またたちが悪い。美琴、この男にいやらしいこととか、何かされたりしてませんの?大丈夫?」
「えっ?」
私はキスのことを思い出して顔を赤くしてしまった。
「何その可愛い顔は、何かありましたのね、ほらこんな男信用できませんわ」
「な、ないない、なにもないよ」
「怪しいですわ...」
「本当に何もないよ、ね、大丈夫だから」
「美琴、ちゃんとしない不誠実な男なんて私が許しませんからね、美琴は純粋なんですから悪い男にひっかかりそうで、本当に心配ですわ」
「ユリア、私のこと心配してくれてるんだね。ありがとう」
「あぁ美琴が可愛すぎですわ」
ユリアに抱き着かれる、私も抱きしめ返す。
「私ね、二人とも私にとって大事な人だから、二人には仲良くしてほしいの。だからね、きっと二人もお互いに誤解しているところもあると思うの」
ユリアはベリアルさんの近くに行って二人でこそこそ話し始めた、どうしたのかな?
「美琴がああ言っているから今回は見逃しますけれど、美琴にいい加減なことしたら許しませんからね」
「わかっているわよ」
「ふんっほんと信用ならない男」
「二人とも大丈夫?」
二人はこっちを見て
「「大丈夫よ私達仲良しだから」」
えっと、大丈夫かな...
「そんなことより、美琴、これから女の子同士で遊びましょ、ジルも一緒にね、男のあなた遠慮してね」
「えっと、ベリアルさんじゃあ、また後で」
「ほら美琴、ジル早く」
「まあ、あんなに辛そうなみこちゃんを見るくらいならこれくらい仕方ないかしらね」
ベリアルさんとは、またしばらく一緒にいることはできなそうだけど、いまは顔を見られただけですごく嬉しいし、近くにいるとドキドキしてしまうからこの距離感は有難かったかもしれない。
恋をしてから全てが色鮮やかで私の世界が変わった。本当は何も変わっていないのに自分の気持ち一つでこんなにも変わってしまうなんて、恋の力ってすごいんだなって、ジルの姿が変わってしまったのだって納得しちゃう。
人の感情次第で、良くも悪くもこんなにも自分が見る世界が人生が変わってしまうんだ。これから先だっていいことばかりじゃないと思うけど、悪いことにばかり気を取られて、どんどん気持ちが落ち込んでしまわないように、自分の気持ちとはちゃんと向き合って、目を逸らさないでいられるようにできたらいいと思った。
ようやくオリュゾンの人達にパンを配ばり終えることができた。私達はついに、オリュゾン国に来た最大の目的、お米を堪能できるのだ!!
そして、お米をゲットするべく、4人とジルとで街に来ている。
ジルは、流石にライオンの姿で街に連れて行く訳にもいかないから、お留守番をって言ったら猫の姿に戻った。びっくりしたけれどにゃーんと素知らぬ顔で私の肩に乗ってきた。
「みこちゃんごめんなさいね、お米食べさせてあげるのこんなに遅くなっちゃって」
「いいえ大丈夫ですよ。オリュゾン国の人達を癒すことの方を優先するのは当然ですよ、それに我慢していた分、今日食べるのが楽しみで楽しみで!」
「それならよかったわ、今日はたくさん食べましょうね」
「はいはーい、美琴こっちにある食堂が美味しいお米料理出しているらしいから行きましょ」
「え、そうなの?行く行く」
「美琴さん、はしゃぐのもいいですけど、はぐれないでくださいね」
「わかりました、ゼファイルさんも早く行きましょ」
「ほら美琴こっち」
一軒のこじんまりした可愛い食堂に着いた。すでにお客さんで席が埋まっていて人気があるのがわかる。四人席が一つ空いていたので、そこに案内された。メニューは生姜焼き定食、焼き魚定食、ドリア、オムライス、親子丼、かつ丼、など馴染みのあるものばかりだった。久しぶりだから何を食べようか悩む
「みこちゃんは何にするのかしら?」
「えーすごく悩みます、生姜焼き定食かオムライスもいいな」
「じゃあ私と半――
「美琴、私と半分コして食べませんこと?」
「ユリアいいの?二つだと食べ切れないから嬉しい」
「じゃあ決まりね」
「...」
ベリアルさんとユリア、笑顔で睨み合っている。
早速注文した料理がきた。
ジルの分を小皿に移して渡した。
「にゃーん」
「いただきます。あ、ご飯美味しい...」
定食のご飯を一口食べる、美味しい...あ、泣けてくる...
と、その横でユリアも、えっ、泣いてる?
「ど、どうしたの?大丈夫?」
「...これ、ご飯、お母さんと一緒に食べたことある...何で忘れてたのかな」
「お城ではご飯でないんだったよね?」
「そう、なのにどうして...」
そういえば、マリーがお米食べたときあまり美味しくなかったって言っていたのを思い出した。でもいま食べているご飯はすごく美味しいけど...
「あら、あなた達泣くほど美味しかったのかい?そりゃ嬉しいね、いまのご飯ができるまで、ほんと大変だったんだよ」
「街の人達の主食なんですよね?大変ってどういうことですか?」
「王妃様が生きていたころは当たり前にお米が作られていたんだけどね、王妃様が亡くなってから何故かお米が上手く育たなくなってしまってね。しばらくの間、お米が収穫できなくなってしまったんだよ。ジャガイモを主食にしのいでいたけど、やっぱりこの街の人達はお米が大好きだから苦労して苦労してやっとお米がまた育つようになったんだよ」
「そうだったんですね、だからなんですね、このご飯、とても美味しいです」
「ありがとうよ、ゆっくり食べて行っておくれ」
「思い出した、お母様が亡くなってから、お城ではお米料理が出なくなったんだ、だから...」
お米が育たなくなったことと、お城でお米が出なくなったこと、王妃様が亡くなったことと何か関係があるのかもしれない。
「にゃーお」
「うん、そうだね!ユリア、お城でお米料理を作って王様にも食べてもらおうよ」
「えっ?」
「そうした方がいいって」
「へ?」
「よし食べたら早速お米仕入れにいくわよ!あ、オムライスもちょうだい」
「美琴わかるように説明してよ」
「ふふっそれは後のお楽しみってことで」
読んでいただきありがとうございます。




