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三角関係?

 ポタルの街を出て、私達一行はオリュゾンに向けて旅を再開した、のだけれど


「初めて会ったときから思っていたんですが美琴様のその漆黒の髪、綺麗ですよね。艶が輝いていてまるで夜空に輝く星のようです」

「あはは、ありがとうございます」


 正直困っている、いままで無視されることはあってもこんなにも構われることはなかったから、しかも褒め殺し?何故かひたすら褒められている、悪い気はしないけれど困る、とにかく困るのだ。


「マルクス、女性に容姿のことを気安くあれこれ言うのは失礼だと思うわよ」

「いえ、美琴様の美しさは事実ですから」

「はぁ、娘もいる大の男が...」


 ベリアルさんそれです。娘さんがいるお父さんがそんな私なんかを褒めまくるのはよくないよ、そうだよ話に乗っかって奥さんのことを盾にこの話し方、せめて褒めるのをやめてもらおう。

「あ、そういえばマルクスさんの奥さんに会えなかったですが、どちらにいらっしゃったんですか?マルクスさんの奥さんはきっと素敵な方なんでしょうね~」


「話していなかったですね。私、結婚していないんですよ」

「はい?えっと未婚の父ってことですか?」

「いいえ、ミルラは私の子供ではなく兄夫婦の子なんです。二年前、当時ミルラが四歳の時に三人が乗っていた馬車が横転してしまい夫婦共に亡くなってミルラだけが助かったんです。だから私の養女にして私と母で育てることになったんです」


 ミルラちゃんとマルクスさん、とても仲の良い親子だったからそうとも知らずに...

「それは大変だったんですね」

「そうですね、ミルラが身体が弱くなってしまったのも事故の影響のせいで身体と言うより心ですかね、兄夫婦が亡くなるときに一緒にいたせいで強い衝撃があったんでしょう、そのせいで熱が出たりしやすくて。だからミルラが元気になって本当によかったです」


「そうだったんですね、ミルラちゃんの心も癒せたなら本当によかったですね」

「それもこれも美琴様とジル様のおかげです。ですから私には妻などいないので、美琴様にお仕えすることに問題ありません。それに...美琴様が私のことを気にかけてくださってとても嬉しいです」

「にゃー」


「もう本当に何度もお礼を言ってもらっているのでそんなに気にしないで大丈夫ですよ。私も私がしたいことをしているだけなので、そんなに恩に感じなくても...」

「いえ、美琴様にしてもらったことを考えると足りないくらいです。もっと感謝を表現できたらいいのですが...私に出来ることはあまりないので、だから美琴様が必要なことは何でも致しますので、いつでも私を呼んでください」

 マルクスさんにそう言われて、手を握られた。

 えっどうしたらいいのこれ?


「マルクス、その手を離しなさい」

 ベリアルさんがそう言って、マルクスさんの手を離してくれた。

「あ、美琴様申し訳ありません。感情が高ぶってつい」


「あ、いいえ、大丈夫です」

「みこちゃん大丈夫?」

「ベリアルさんありがとうございます、いきなりでびっくりしてしまって」

「美琴様いきなりすみませんでした」

「大丈夫ですよ」



 マルクスさんにもっとはっきりやめてほしいと言うべきなのかもしれない。でもどう言えばいいの?

 いままで他人から嫌われるのが怖くて、誰が相手でも話しかけられると何か言わなくちゃって、答えないと嫌われるんじゃないかって、でも何を言ったら嫌われないんだろうって、とりあえず笑って誤魔化して、頭の中でグルグル考えちゃっていたのを思い出した、だからよく八方美人って言われたりもした。


 ミルラちゃんが助かってすぐだから感情が高ぶっているだけだと思うから、しばらくしてもこの態度が落ち着かないようならちゃんと自分の気持ちを言葉にしないと...正直言葉にできるか不安だけど。


 それに男の人から手を握られたのはベリアルさんが初めてだったけれど、その時は全く嫌じゃなくて、とても安心したのを覚えている。それからも何度となくベリアルさんに触れられているけど、いつもすごく安心する。

 でもいまマルクスさんに握られた手は何だろう、ベリアルさんのときと全然違う。マルクスさんから伝わってくる感謝の気持ちは本当だと思う、でもその手は私を安心させてくれる手とは違う。


 いま何故か、無性にベリアルさんに手を握って頭を撫でてほしいって思う。あの家に居る時はベリアルさんを近くに感じていた、ことあるごとに触れられていたのに。いま旅をしている間はたまにしかしてもらえないのが寂しく思う。ベリアルさんに触れられると、とにかく恥ずかしい。でも嬉しくて、いつも安心できた。

 だからなのかな、ベリアルさんから触れられることが減って寂しく感じている自分がいる。ジルはそんな私の気持ちを感じたのか小さな手を頬に充ててくれた。



 このあと当たり障りのない会話をしつつ、先へと進んでいった。

 途中の街でパンを配っていたときに、ポタルの街でプレジールが復活したことも既に話題になっていた。女神様からの言葉もしっかりと伝わっているみたいで、取り合うことなくみんなで分けていると聞いて安心した。

 ポタルの街以外の人が欲しいとプレジールをもらいに行っても快くもらえているみたい。レピアス国にも街の人達にプレジールを食べてもらいたいから、街中に植えてもいいかもしれないな。


 こうしてまたパンを配りつつ進む旅を繰り返した。

 そして今日はサバナ国、最後の街に泊まって、明日はついにオリュゾンとの国境に着く。


 明日に備えて、夕食を食べたあとはいつものように、それぞれの部屋へと分かれて行った。私は変わらず調理場をお借りしてパンを焼いていた。

「ジル明日はついにオリュゾン国に到着するんだよ、ついにお米が食べられるね」

「にゃー」

「色々あったけど楽しい旅だったな、ジルの毛色も輝いてパワーアップもしたしね」

「にゃっにゃ」

「でもジル私ね、ベリアルさんとあの家に一緒にいたときと違って何だか寂しいの、自分でもよくわからないんだけど、馬車に一緒に乗ってるし離れているわけじゃないのにね」

「にゃーう」

「ありがとうジル。もちろんジルといる時間もすごく私にとっては大切だよ。でもね、ベリアルさんとは何かが違うの」


「みこちゃん、まだパン焼いているの?」

 ジルと会話をしていると突然ベリアルさんが現れた。

「あ、ベリアルさん!!えっと、どうしたんですか?」

 (いまのジルとの会話聞かれてないよね?びっくりした~)


「みこちゃんのことが気になってね」

「ベリアルさん...ありがとうございます。明日オリュゾンに行けると思ったら嬉しいのとちょっと緊張もしちゃって、まだあまり眠くないんです」


「あらそうなのね。みこちゃん、私ね、この旅に出て色々と感じるものがあったの、最初みこちゃんがオリュゾンに行きたいって言ったのを否定してしまったけれど、いまはこの旅にこられてよかったって思っているのよ。広い世界を見て知って、私は小さな世界しか見ていなかったんだって思ったわ」

「あ、それは私も思いました。広い世界に出て色々な人達に出会ってたくさんのことを経験して、色々と考えさせられました」

「本当にそうよね。私、父にお父様に対して逃げていた自分がいまとなっては恥ずかしいわ、もっとぶつかってみてもよかったのかもしれないって思えたの、この広い世界からしたら私の悩みなんてほんのささいで、ちっぽけなものよねって、でもこうして色々な経験をしたからこそ気付けたのよね」

「ベリアルさん...」


「だからね、みこちゃんには感謝しているわ、みこちゃんが私を広い世界へ連れ出してくれたのよ」

「そんな、私の方こそベリアルさんがいつも私のこと見ていてくれるから、私自分で決めて行動することができるようになったんです。だからこの世界に来られてよかったって思うし、ベリアルさんに出会えて本当によかったって思います。ベリアルさんがいてくれたから私は変わっていくことができたんです、本当にありがとうございます」


「みこちゃん...そんな風に言ってもらえて私すごく嬉しいわ、ありがとう」

 そう言ってベリアルさんは頭を撫でてくれて、額におやすみってキスをくれた。

「ベリアルさんっ」

「ふふっ、私もみこちゃんと一緒にいるのにどことなく寂しく感じているわよ。明日も早いから早く寝るのよ、おやすみなさい」

「はっ...ベリアルさん、ジルとの話聞いてっ...!!」

「ふふっ」

 ベリアルさんは楽しそうに部屋へと戻っていった。私は額に手を当てながらこれじゃあ更に眠れなくなっちゃったじゃないっと幸せな愚痴をいいながら、すごく幸せな気持ちに浸っていた。



いつも読んでいただいてありがとうございます。

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