気持ちの行き先
引き続き読みに来ていただいてありがとうございます。
「あそこです、あの角の家です!!」
襲撃に合ってから30分程して着いたポタルの街は王都から離れた小さな街だった。
家の前に馬車が止まろうとするが、馬車が止まるより早くマルクスさんは飛び降りてしまった。
近くに見張りの人は見当たらないみたいだけど...
「みこちゃんは、まだ馬車から降りないでね、安全かどうか確認してくるから」
「はい、わかりました」
マルクスさんの娘さんが無事なのか、聞くのが少し怖い...私はジルを強く抱きしめた。
しばらくしてベリアルさんが戻ってきた。
「見張りは襲撃が失敗したことで真っ先に逃げたみたいよ、みこちゃんも降りて大丈夫よ」
「あの娘さんは無事なんですか?」
「...あの人達に何かされてはいないけど、熱が高い状態が続いているみたい...このままはよくないわね」
ベリアルさんから聞かされた言葉に動揺する、すぐさま馬車を降りて様子を見に行く。
「マルクスさん!!」
マルクスさんは娘さんが眠るベッドの横で跪いて泣いていた。その横にはマルクスさんの母親らしき人が椅子に座っている。
「ミルラ、ごめんな。お父さんがこの街を離れたせいでミルラをこんな目に合わせてしまって。こんなにも苦しんでいたのに何もしてあげられなくて本当にごめん」
「お、お義父さん、よかった。はぁはぁ、帰って来てくれて...はぁ、ミルラからまた、大切な人がいなくなるのかと、思った、はぁ、帰って、来てくれて、ありが、とう...」
弱々しく、でも一生懸命にミルラちゃんが何とか言葉を紡ぐ。
「ミルラ...ごめんな、これからはずっとミルラの傍にいるから大丈夫だから」
ミルラちゃんはその言葉に安心して目を閉じた。でも熱が高くて呼吸も荒く辛そうにしている。
どうしらたいいの?とりあえずパンを食べさせてみる?いやそれよりジャムを食べてもらえばいいんじゃないかな、甘いし喉にもいい。それで良くなるかわからないけれど何もしないよりはいい。
私は急いで馬車に戻りジャムを取って来た。
「マルクスさん、このジャム少しづつミルラちゃんに舐めさせてあげてみてください。あとパンもお母様に...」
マルクスさんにジャムを渡してから、隣の女性にパンを差し出す。
「ミルラ、このジャム少しでいいから舐めてみてくれ、お願いだ...」
マルクスさんはスプーンを使ってミルラちゃんの口に少しジャムを入れる。甘いジャムが食べやすかったみたい、口を開いて少しずつ食べてくれた。
しばらくして黒いモヤが口から出てきた。そのあと熱が少し引いたのか呼吸が整ってきた。余程熱が高くて眠ることもできずに辛かったんだろう、落ち着いたみたいで眠りに着いた。
とりあえずは大丈夫そうで安心した。
「ミルラ、よかった~。美琴さんありがとうございます。本当にありがとうございます」
マルクスさんはミルラちゃんの容態が少しよくなって安心した様子で更に泣いてお礼を言ってくる。
「いえいえ、ミルラちゃんの熱が下がってきたみたいでよかったですね。私もこのジャムにこんな効果があるなんて知らなかったので、本当に良かった」
マルクスさん家族を部屋に残して私は馬車に戻ることにした。
プレジールを入れて作ったジャム、闇を解放するだけじゃなく熱も下げることができてよかった。でも、まだミルラちゃんの不調が全て治ったわけじゃあないから安心はできないよね、元気になってほしいのにどうしたら...
私が歩きながら考えているとジルが私の肩から掛けていたカバンに頭を突っ込んで何かを探し始めた。
「ジル急にどうしたの?」
目当ての物が見つかったみたいで、顔を引っ込めるとそこにはプレジールの種を入れていた布袋を咥えていた。
「ジル?プレジールの種植えるの?」
「にゃん!にゃん!」
「ジルが言うなら絶対にそうした方がいいのはわかる、私もできるなら植えたいって思う。そうだね!私、ベリアルさんに話してみる、何か決めたときは一番に相談するって約束したから」
「にゃっ」
「ジル、ありがとう」
私はジルの話を聞いて、外で待っていたベリアルさん達の元に急いで行く。
「ベリアルさん!」
急いだせいで、勢い余ってつまずいてしまって転びそうになったところをベリアルさんに抱き留められる。ベリアルさんの顔が近くてドキッとする。やだ、私こんなときに...恥ずかしくてすぐに下を向いてしまった。
「あ、ごめんなさい...」
「いいのよ、みこちゃん落ち着いて話して」
一呼吸してから、ミルラちゃんがとりあえず良くなった話をする。
「それであの、ベリアルさん、ジルがプレジールの種を植えてほしいって言っているんです」
「ジルが?」
「はい。それに私もできるなら植えたいと思っています。だから、ジルの言う通りにしたいです」
「正直、不安はあるけれど、このままミルラちゃんを放っておけないわよね。それにどうにかすることができるのにそれをしないのはダメよね」
「いいんですか!?」
「もちろんよ、さすがに人の命がかかっているのにダメなんて言わないわよ。それと、みこちゃんありがとうね。私が前に一番に相談してって言ったからちゃんと話してくれたのよね。私のわがままでごめんなさい。でも本当は植えるも植えないも私が決めることではないのよね、みこちゃんが植えたいと思ったのならその決断を誰も責めることはできないわ、自分で決めたことが結果間違えてしまうこともあるけれど、みこちゃんはジルに言われたからもあるけれど、ミルラちゃんを助けたい気持ちでプレジールの種を植えたいって思ったんでしょ?なら思った通りにしていいと思うわ」
やっぱりこの人は私の言ってほしい言葉を言ってくれる。私の弱い部分を分かった上で私が自分でちゃんと決めることができるように背中を押してくれる。
だからその気持ちに私もちゃんと答えたい、ちゃんとベリアルさんの目を見て自分の思いを伝える。
「ベリアルさんありがとうございます。私、今回のこともあって種を植えることに不安がないわけじゃないんです、それのせいでまた何か争いなどが起きてしまったらって思うと怖い。でもベリアルさんがそう言ってくれて完全に迷いが晴れました。私は私の意思でプレジールの種を植えます」
「うん、すごくいい顔してるわ」
ベリアルさんが笑顔でそう言ってくれた。
ベリアルさんのおかげで迷いがなくなった私は、マルクスさんの家の近くにある木を植えるには丁度良いい草原にプレジールの種を植えた。
「ジル、ちゃんと育つといいね」
「にゃっ」
プレジールが育てばきっとミルラちゃんは元気になれる。
自己満足でも何でも私はそれでいいと思う。先の起きるかどうかわからない問題よりも、いま助けられる命があるのなら助けないと、それこそ後悔してしまう。
プレジールが原因でもし争いが起きたら、またその時考えればいい。
しばらくしてゼファイルさんが戻ってきて、あの人達は全員収容されたみたい、逃げた見張りの人もすぐに捕まるって。ただ元々彼らは真面目に仕事もしていた人達だったらしく闇の影響もあることなので処罰に対しては決めかねているとのこと。
今回のことは王都から離れた街にはパンがまだ配られる前で、間違った情報だけが独り歩きしてしまって、行き違いや誤解が原因で起きてしまった。特に被害もなかったし、綺麗ごとかもしれないけれどあの人達が悪いとは私は思えなくて、すごく後味が悪い出来事になってしまった。
そして、その思いを払拭するかのように私はポタルの街の人達にパンを配った。パンを食べてくれる人達を見て、喜びを感じつつ、やるせなさも感じてしまう。仕方のないことかもしれないけれど、もっと早くにこうしてサバナ国の人達にもパンを配れたらよかったのかなって思わずにはいられなかった。
今回も続きを読んでいただきありがとうございました。
決めること、どうにもならない想い辛いです。




