お菓子作りとお米のこと
「ここでお店か、すごくいいね」
ベリアルさんがすぐに連絡してくれて、マリーは今日の午後には家に来てくれた。
いまはクッキーの生地を作って冷蔵庫で寝かせている間に、洗ったフルーツに砂糖とレモン汁を入れて煮詰めて、ジャムを作っている。
「そう、それでね。マリーにもメニューのこととか色々と相談に乗ってもらえたらいいなって」
「もちろんいいよ!美琴の為なら何だって協力するよ!それにお店開くときにも手伝いに来るからね。美琴が作る料理だもん、お店混んで大変になると思うよ」
「ありがとう!マリーが手伝ってくれたらすごく助かるよ!しばらくは慣れるまで大変だと思うけど、そんなに混むかな...それにジルと私の二人だけでやっていく予定なんだけど、考え甘すぎるかな...」
「ジルも数に入ってるんだね...お店やるのはいいと思うよ。国王様のご褒美なんだし、始めから上手くいく人なんていないんだから、まずは美琴がやりたいようにやれば。それより癒しのパンもそうだけど、ゼファイル様がみことの料理の美味しさを王宮で語ってるんだよ。ゼファイル様の圧がすごくて、その話を聞いた人達は美琴の料理が気になって仕方ないみたい、お店開いたら絶対にみんな食べにくるよ」
「えっそんなに?それに...」
ゼファイルさん...ピザだ、絶対にピザのことを思い出して語ったんだ。
「マリー、それってピザの話じゃ...」
「...そう、まさかのピザだよ」
「...まあ、とにかくジルは招き猫的な客寄せにゃんこ様なのよ。こんなにも可愛い金色の猫ちゃんはよそにはいないから絶対に会いたくなっちゃうよ~」
「にゃうにゃう」
「ねージル~お店楽しみだね」
ジルもやる気満々みたい。
「招き猫?よくわからないけど、ジルは確かに珍しいし可愛いけど、客寄せって言うならベリアル様にはお店手伝ってもらわないの?ベリアル様目当てで絶対に人が来そうだけど」
ベリアルさんのことを目当てに...エプロン姿のベリアルさん、うん、かっこ可愛い。キラキラ王子様(しかも本物)がいたら、うん女の子のお客さん絶対に増えるね、で、笑顔でお給仕されて、手を取って案内もして、このあと暇ですかとかお誘いも来たり、ちやほやされて...あ、何か嫌だ、それはダメ。絶対に嫌だ。
「おーい、みこと聞いてる?」
「そんなのダメ!!ベリアルさんは王子様なんだから、手伝ってもらうなんてことしないよ」
「何焦ってるの?みこと、前は王子様ってこと忘れてたのに」
マリーは私がうっかり毒見させたのを思い出して笑っている。
「それはもう忘れてよ~」
昨日、王宮に行ったからベリアルさんが本当に王子様なんだって実感した。正装姿がすごくかっこよくて、纏うオーラが何かすごくて、キラキラしてて、ドキドキしちゃって直視できなかった。
それに王宮に佇むベリアルさんは男の人で王子様で全然お母さんじゃなかった。
「美琴、大丈夫?何か顔赤いし今日はぼーっとしてること多いけど」
「へっ?あ、うん何でもない大丈夫だよ。あ、でももう一人くらい誰か一緒にお仕事してくれる人いてもいいかも」
「そうだね、考えた方がいいと思うよ」
さてジャムもいい感じになってきたところで今日食べないものは保存しておく。
煮詰めたジャムを煮沸消毒しておいた瓶に詰めて蓋をして、水を張った鍋に瓶ごと入れて沸騰させる、中火してしばらくしたら、瓶を取り出し逆さまにして置いておく。冷めてから戻して蓋の真ん中が凹んでいたら完成。保存期間は大体一年間、あとは癒しの効果はどうなるかだね。
今回のジャムは、ストロベリー、ブルーベリー、レモンの三種類、どれもプレジールを混ぜてある。
ちなみに、この世界は一年中気候が安定しているみたいで季節の野菜、果物、関係なしに収穫できる。それを知った時はだからいつでも食材が何でも揃っていたことに納得した。
次はジャムクッキー作り、寝かせておいたクッキー生地を2ミリくらいの厚さに伸ばして形で抜いていく。ジャムクッキー用の型があればジャムを乗せる部分は凹んでいるからそこにジャムを乗せればいいんだけど、今回は型抜きした生地の上にジャムを乗せて、その上に、同じ型抜きをした生地の真ん中に一回り小さい型で抜いて穴をあけた生地を乗せる。二枚の生地で出来たジャムクッキーになる。
クッキングシートを敷いた天板に乗せてオーブンで焼いていく。
「そう言えば、美琴は何かこれは絶対に出したいメニューとか決めてるの?」
「それがまだ全然。あ、でも料理とスイーツは両方出したいと思っているの。男女問わず家族連れの人とかたくさんの人に来てもらいたいから。そうだ、できればおにぎり作りたいんだけど、そしたらお弁当も作れるし」
「おにぎり?」
「あ、元は茶色で、皮を取ると白くてこのくらいの小さい粒々しているんだけど、この家にお米だけなくて、マリーどこかの国にお米ってないのかな?知らない?」
私は指でお米の大きさを作ってみせた。
「あ、お米。それなら食べたことあるかも、うちお父さんが行商人をやっていて、色々な国を回っているから私も一緒に回ったときに一度食べたことあるけど、そんなに美味しくはなかったような」
「美味しくなかったの?でもでも、お米あるのね。それどこの国?私行きたい!」
「にゃーにゃー」
「確か、この国から東にあるオリュゾンって国だったと思うけど、治安は悪くないけど、この国とは特に交流がなかったと思うよ、本当に行くの?」
「行きたい!オリュゾンね、後でベリアルさんとゼファイルさんにお願いしてみる!それに、この国とはまた違う国が見られるなんて楽しそうじゃない」
「にゃー!にゃー!!」
ジルが凄い反応している。ジルもオリュゾンに行きたいみたい。
いい香りがしてきてジャムクッキーが焼き上がった。
三種類のジャムと色々な形のジャムクッキーをテーブルに並べて、紅茶も用意した。
「できたのね、クッキー色々な形で可愛いし、いい香りね」
「生地にアーモンドの粉も入れてあるので、より香ばしくなっているから甘いジャムとも合うと思いますよ、食べてみてください」
「久しぶりの美琴さんのお菓子...いただきます」
「そういえばゼファイルさん忙しくて最近はケーキ食べられてなかったですね」
「そうなんですよ。美琴さんの料理食べたくて仕方なかったです。お店の方も全面的に協力しますので、ぜひメニューにピザを入れてくださいね」
「あ、前向きに検討しますね」
「はいはい、ゼファイルもういいから、クッキー食べなさいよ。みこちゃん、すごく美味しい。クッキーは甘さ控えめで、ほんのり塩っ気があって、ジャムと合わさって丁度いいわ」
「うん美味しいよ、みこと、クッキーサクサクでいい歯ざわり」
「うん、今回も大成功ね。癒しの効果もちゃんと出ているわ」
「これまた美味しいです」
みんなが美味しそうに食べているのを横目に、私はジャムを紅茶に入れて飲んでみる。ロシアンティー、ジャムを食べながら紅茶を飲むのが本当みたいだけど、私は入れて飲むのが好きだったりする。自分が好きな形で好きなものをいただくのが一番だと思うからこだわらない。ジルにもカップに入れてあげる。うん紅茶とよく合って美味しい。
生のミックスジュースは無理だけどこれなら、意識が虚ろな人でも王様のときみたいに飲んでもらえるかもしれないしいいね。
「早速こちら、国王様にもこちらお持ちして試食してもらいますね。後は癒しの効果がなくならないかですけど...」
すぐさまゼファイルさんが行こうとしているところを引き止める。
「あ、あのゼファイルさん、ベリアルさんもお願いがあるんですけど、私をオリュゾン国に行かせてください」
「にゃっ!!」
ついにお米が食べられるかもしれない。そう思うとオリュゾンに行くことに迷いはなかった。
そして、この国に行くことは私にとって必要なことだったと、運命だったということに後々気が付くことになる。
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