インタビュー2
『陽斗君が今野球で活躍しているのは、お兄さんとご両親のおかげなんだね』とインタビュアーの人は、当然のごとく言ってきた。
「いや、兄のおかげです。僕に親は居ません」僕はそう宣言した。なのに、
「陽斗君は今反抗期なのかな」そう言いながらインタビュアーの人は笑った。
僕はかなりイラっとしたが、耐えることにした。
「陽斗…」
『あのね、世の中には親を失ったり、親に棄てられた子だっているんだよ。だからそう簡単に居ないなんて言っちゃだめだよ。陽斗君のご両親に感謝しないと…』なに言ってるんだ、こいつ…
僕は今まで我慢していた怒りが頂点に達した。
「だから僕に親は居ないんです。もう帰ってください」
『えっ』
「だから、もう話すことは無いから帰ってください。帰ってください」
『陽斗君…?』
「だからもうお前ら帰れって言ってるんだよ。帰れって!!」僕はそう言って体育館裏に走った。
「ごめんなさい、もう帰ってください…」圭はそう言って僕を追いかけた。
僕は泣いていた。
あーくんのおかげなのに、あんなお父さんたちのおかげだなんて、悔しかった。
「陽斗…」
「圭…」
「ごめんな、あんな事言われて辛かったよな…」
「うん…あーくんのためにこのインタビュー受けたけど、もう無理だよ…ごめんなさい…」
「ううん。陽斗は何にも悪くないよ。朝日さんも陽斗が苦しんでまでインタビュー受けて欲しくないと思うぜ」
「ありがとう…」
僕は呆然と立ち尽くしているインタビュアーの人たちに、
「すいません。もう帰ってください」と頭を下げてから、あーくんに迎えに来てもらった。
「じゃあな、圭…」
「大丈夫だからな、陽斗は何にも悪くないから…」圭はやっぱり優しかった。
「うん!ありがとう!」
「ひ~な君。帰ろっか」車の中であーくんに優しく声をかけられて、せっかく引いた涙がまた出てきた。
「あーくん…」
「どうした?インタビュー辛かった?」あーくんには何でもお見通しなのかな…
「悔しかった…あんなお父さんたちに感謝しろって…」
「そうだね…ごめんな、お兄ちゃんがしっかりしてないから…」
「ううん。あーくんありがとう」
「僕の天使を泣かせるなんて許せないな…」
「えっなんて?」
「ううん、帰ろ」
「はーい」
僕らは家路についた。




