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第86話「叩き込め!!魔法戦士の在り方!!」


――その頃。

 何かを“折ろう”として叩き込む者がいる一方で。

 ホークスは、

“組み上げる側”の場所にいた。

 魔法戦士の授業が行われる教室にて。

 扉が勢いよく開く。

「よし!!始めるぞ!!」

 入ってきたのは、いかにも暑苦しい男だった。

「俺はこの授業を受け持つグラディウス・フレイガルドという者だ!!」

 氷魔将の王族派閥に属する貴族。

 筋骨隆々。声は無駄に大きい、正直うるさい。

「魔法戦士とは何か!?」

 拳を握り、教室を見渡す。

「その“戦い方”を知らずして、強くなれると思うな!!」

 教師は黒板に三つ、線を引く。

「魔法戦士には大きく分けて三種類ある!!」

「一つ!!」

「武器への付与魔法や強化魔法を駆使し――」

「近接戦闘を極限まで高めるタイプ!!」

「二つ!!」

「攻撃魔法を使い、距離を制御しながら――」

「武器で戦うタイプ!!」

「そして三つ!!」

「その両方を複合して戦うタイプだ!!」

「当然!!」

「ここに闘技を混ぜる者もいる!!」

「魔法と武、どちらを主軸にするかで――」

「戦い方は無数に分岐する!!」

「つまりだ!!」

「魔法戦士とは――」

「“型がない戦士”だ!!」


(……なるほどな)

 無意識に自分の戦い方と照合する。

(俺は……近接戦闘に魔法を補助で混ぜるタイプだな。)

「そして!!」

 教師が胸を叩く。

「俺が教えるのは!!」

「武器への付与魔法!!」

「そして――魔闘技だ!!」

「立て!!外に出るぞ!!」

 そのまま中庭へ移動。

 生徒達には特殊な木剣が配られる。

「この授業では!!」

「属性付与を叩き込みつつ――」

「できる奴は魔闘技にも挑戦してもらう!!」

 やはり熱い、うるさい。

 教師が木剣に魔力を流す。

 そのまま詠唱。

「燃えろ!!ファイアウェポン!!」

 炎が宿る。

「通常は詠唱してから付与!!」

「だが!!」

「先に魔力を流しておけば発動が速い!!」

 一歩踏み込む。

「ただし!!」

「付与前に受け太刀をすれば解除される!!」

(……説明が雑だな。)

 説明としては間違っていない。

 だが粗い。

 ホークスも木剣に魔力を流す。

 詠唱し炎を宿す。

 ――しかし。

 すぐに消える。

(火力は悪くないが…短いな)

 明らかに維持ができていない。

 思考を巡らせる。

 だが、答えが出ない。

(維持がうまくいかないな?)


 教師がそれとなく声をかける。

「魔力を流し続けてみろ!!」

(……流し続けるか……)

 魔力を流し続けてみるが安定せずやはりうまく行かない。

「付与魔法はな!使い切り型と継続型がある!!」

「お前は継続型が苦手なんじゃないか?」

(……確かに)

 思い当たる節がある。

 これまでの戦い方。

 瞬間火力。

 高速展開。

(魔法陣の維持もあまり得意じゃなかったしな)

「なら――」

「使い切りの付与魔法を教えてくれ」

 一瞬驚き。

 すぐに笑う。

「いいだろう!!」

「原理はな――」

「使い切りの強化魔法と同じだ!!」

「応用してみろ!!」

 ホークスは思考を切り替える。

 瞬間的に。

 集中して。

 叩き込む。

 炎が宿る。

 先ほどより強く、だが。

(……重いな)

 魔力消費が大きく効率が悪い。

(……これは)

 少し考え。

(多分……俺には合わないな)

 炎が消える。

 だがホークスの中では。

 すでに“次の手段”が思考されていた。


「いいか!!」

 熱血教師が木剣を掲げる。

「付与魔法ってのはな!!」

「ただ属性を乗せるだけじゃない!!」

 その声と同時に、教師の魔力がわずかに変質する。

 先ほどとは違う。

 ただ流すのではない。

 “仕込む”。

(……詠唱の前に、溜めている?)

 ホークスの目が細くなる。

 教師がマジックパペットへ踏み込む。

 一歩。

 二歩。

 無駄のない動き。

 そして――振り下ろし。

 その瞬間。

 爆ぜた。

 木剣の先端から、ファイアランスが発動する。

 至近距離で放たれた炎の槍は、

マジックパペットの内部を貫き――

 バラバラに吹き飛ばした。

「今のが――」

 教師が振り返る。

「攻撃時発動型の付与魔法だ!!」

「ファイアランスを木剣の先端に仕込んでおいた!!」

(トリガー型……)

 ホークスは即座に整理する。

 接触を条件に発動。

 近接特化の瞬間火力。

「それは飛び道具にも応用できるのか?」

「できなくはない!!」

「だがな!!」

「飛んでる最中に誤作動しやすい!!」

「安定しない!!」

「だから実用性は低い!!」


(……なるほど)

 ホークスは視線を落とす。

 戦場を思い浮かべる。

 突撃。

 接敵。

 斬撃。

(前線兵の一撃……)

(瞬間火力の底上げには使える)

 すでに“技術”ではなく、

“戦術”として処理していた。

「次は魔闘技だ!!」

「魔闘技には二種類ある!!」

「一つは!!」

「魔法と闘技を同時に発動するタイプ!!」

「もう一つは!!」

「闘気に魔力を練り込んで、新しい闘技として放つタイプだ!!」

(……チャクラの原理に似ているな)

 ふと浮かぶ感覚。

 忍術。

 チャクラを練る時の、あの感覚。

(性質の違う力を混ぜる……)

 ホークスは木剣を構える。

 闘気を練る。

 そこへ魔力を重ねる。

 だが。

 維持ができずに混ざらず分散してしまう。

「お前――」

 教師が言う。

「外で維持するのが苦手なんじゃないか!?」

「ならこうしろ!!」

「純粋に放つ闘技に魔力を込めて一緒に放ってみろ!!」


 ホークスは構える。

 闘技斬撃。

 そこへ魔力を重ねる。

 そして――放つ。

 だが。

 闘気と魔力がぶつかり相殺。

 技が、途中で霧散する。

(……噛み合わないな)

「ならば武器に魔力を“使い切り型”で込めろ!!」

「消える前に、闘技を叩き込め!!」

 ホークスは思考を切り替える。

 木剣に魔力を叩き込む。

 ランク2相当の魔法の魔力、保持はしない。

 ただ“乗せる”。

 そして――

 闘技。

 斬撃。

 空間を裂く一撃。

 斬撃と同時に、魔力が弾ける。

 マジックパペットは吹き飛んだ。

(……できるが)

 確かに成立はする、だが。

(闘気と魔力の消費に対して効率が悪い)

(時間もかかる)

(……俺には合わないな)

 即座に判断を下す。

 だが同時に。

 思考は次へ移る。

(なら――)

 自分ではなく。

 “部隊”で使う。

(近接での切り札にも、遠距離から近接戦闘を仕掛けられた時の自衛用にも悪くはないかもな?)


 授業が終わり。

 ホークスは静かに思考をまとめる。

 武器の先端に攻撃魔法を仕込む付与。

 接触時発動の瞬間火力。

 そして。

 魔法によって射程を制御する戦闘。

(この二つを軸にするか、志願者の適性次第だが遠距離攻撃を魔法で行うのは基本として運用しよう)

 それは個人ではなく。

 部隊としての戦い方。

 ホークスの中で。

 “戦術”が形を取り始めていた。


――ホークスの中で、戦いは形になり始めていた。

 武器に宿る魔法。

 距離を制する術。

 そして、それらを組み合わせた戦術。

 それはやがて、

 一つの“部隊”として完成へと近づいていく。

その頃――

 遠く離れた場所では、

 志願者達の“土台”が築かれ始めていた。

 血に濡れた手で木剣を振るう者。

 潰れた掌を押さえながら、それでも打ち込む者。

 倒れかけながら、なお立たされる者。

「止まるな」

 無機質な声。

 逃げ場のない圧。

 理不尽とも言える訓練の中で、

何かが削られ、

何かが残されていく。

 それを見下ろす影は、ただ静かに立っていた。

――それは、鍛錬か。

 それとも、選別か。

 誰にも分からないまま。

 再び、世界は静かに動き出す。

――形を与える者と。

 削ぎ落とす者。

 その二つが、やがて交わる時。

 完成が先か。

 崩壊が先か。

 その行く末を知る者は――

 ただ一つ。

 神のみである。


第86話―終


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