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第60話――新たな時代――


演説が終わり、歓声とざわめきがまだ広場に残る中、ホークスは高台の奥へと下がった。

その時だった。

「ホークス」

穏やかな声が背後からかかる。

振り向くと、そこには女王と光魔将レインの姿があった。

ホークスはすぐに姿勢を正し、軽く頭を下げる。

「女王陛下」

女王は優しく微笑んでいた。

「先ほどの演説、見事でしたよ」

ホークスは少し困ったように笑う。

「ありがとうございます」

「ですが……少々演出が派手だったかもしれません。申し訳ありませんでした」

女王は小さく首を横に振った。

「いいえ」

「むしろ、あれ以上ないほど素晴らしい演説でしたよ」

そう言って広場を見渡す。

まだ民衆は興奮冷めやらぬ様子で、志願兵の紙を手に話し合っている。

「戦争は終わりました」

「ですが、本当の意味での終結はこれからです」

女王はホークスを見つめた。

「あなたが語った“戦争を終わらせる部隊”」

「とても期待しています」

ホークスは静かに頭を下げた。

「ご期待に添えるよう、全力を尽くします」

女王は満足そうに頷くと、そのまま歩き出した。

「楽しみにしていますよ、ホークス」

その背を、ホークスは見送った。

だが――


「……ホークス殿」

冷たい声が横から飛ぶ。

レインだった。

「先ほどの演出ですが」

「少々やりすぎではありませんか?」

ホークスは苦笑する。

レインは腕を組み、真っ直ぐに睨んでいた。

「この授与式は、あくまで女王陛下が主役なのです」

「あなたの派手な演出は、場合によっては陛下の顔を潰しかねません」

「反省してください」

ホークスは肩をすくめる。

「……善処します」

レインの目がさらに鋭くなる。

「“善処”では困ります」

そう言い残すと、女王の後を追って去っていった。

ホークスは小さく息を吐く。

「やっぱり……怖い女だな」

「当たり前だ」

低い声が横からした。

振り向くと、そこにはボンブが立っていた。

腕を組み、難しい顔をしている。

「ホークス、お前の演出はやりすぎだ」

ホークスは苦笑する。

「やっぱりそう思いますか?」

「神聖な授与式で爆発魔法を使うとはどういう了見だ!?」

ボンブは即答した。

「レインの言う通りだ。今日の主役はあくまで女王陛下だ、そこは覚えておけ」

「…はい、すみませんでした」

ホークスは素直に頷いた。

だがボンブは少し表情を緩める。

「……だが」

「終戦のための部隊、という考えは悪くない」

ホークスが少し驚く。

「本当ですか?」

「うむ」

「戦争を早く終わらせるための“刃”か。面白い発想だ」

その時だった。

「私もそう思いますよ」

穏やかな声が割り込んだ。

風魔将シェルクだった。

いつもの不敵な微笑みを浮かべている。

「戦争というものは、本来、非生産的で野蛮な行いです」

丁寧な口調で、さらりと言う。

「できる事なら、避けるに越したことはありません、始まってしまったのなら、一刻も早く終わらせるべきだと思います」

ボンブは少し心配した様子で尋ねる

「お主の領地はずいぶん忙しそうだと聞いたが……復興はどうなっている?」

シェルクは少し肩をすくめる。

「ご心配をおかけしてます、自治領の民の衣食住は今のところ問題ありません」

「ですが……」

一瞬、笑みが少し深くなる。

「獣王国から返還された領地の治安維持に、少々苦戦していましてね」

ホークスが口を開く。

「急ぎならギルドに依頼したらどうだ?」

二人がホークスを見る。

「治安維持くらいならギルドの得意分野だ、Cランク以上なら問題なくこなせるし数も結構いる」

「必要なら俺から話を通しておく、ギルドも今は資金の余裕もあるだろうし少し安く請け負うようにも言っとくが?」

シェルクは目を細めた。

「それは助かります」

軽く頭を下げる。

「では、ギルドの方によろしくお願い致します」

そう言うと、風のように立ち去っていった。


ボンブは腕を組む。

「……あの男、胡散臭い所はあるが、民のために動く点は評価している」

ホークスも頷く。

「そこは俺も同意見です」

その時だった。


「ホークス殿」

振り向くと、氷魔将ヴォルドが立っていた。

落ち着いた表情でこちらを見ている。

「闇魔将就任おめでとうございます」

「新しい部隊を編成するのでしたね?」

「もし手伝えることがあれば、お手伝いしますよ」

ホークスは少し驚く。

「本当か?助かる」

少し考えた後、言った。

「志願者が集まり次第訓練始める予定なんだ」

「だから訓練用の武具が結構必要になりそうなんだ、少し融通してもらえないか?」

ヴォルドとボンブは顔を見合わせる。

そしてヴォルドが頷いた。

「自治領内で集められる範囲になりますが」

「用意しましょう」

ボンブも続く。

「こちらでも集めて送ろう」

その時だった。

「それでしたら送り先はギルド本部の倉庫でお願いします」

後ろから女性の声がした。

三人が振り向く。

いつの間にか、リゼルが立っていた。

「武具の受け取りと管理はこちらで行います」

三人は少し驚く。

ホークスは振り返って笑った。

「さっきの演出、ありがとな」

リゼルは軽く会釈する。

「お礼は結構です」

「ですが、後ほど詳しい打ち合わせをしたいと思います」

そう言うと、静かに去っていった。

ヴォルドがホークスを見る。

「……今の女性は?」

ホークスは答える。

「ギルドから派遣された秘書だ」

ヴォルドは小さく笑った。

「なるほど」

「優秀そうな方ですね。それに…かなり強い」

そして頷く。

「では、訓練用の武具は送らせていただきます」

「悪いな、助かる」

そう言ってヴォルドは立ち去った。

ホークスもボンブへ向き直る。

「じゃ、俺も行きます。秘書との打ち合わせがあるんで」

ボンブは頷いた。

「うむ」

ホークスはそのまま歩き去る。

一人残ったボンブは、広場を見渡した。

民衆の熱気。

新しい闇魔将。

新しい部隊。

ボンブは小さく呟く。

「……これからの時代が、良くなるといいがな」

そう言い残し、彼もまた立ち去った。


第60話―終


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