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第59話――終戦の刃――


高台の上。

女王の前に、一人の男が歩み出る。

民衆のざわめきが、ゆっくりと静まっていく。

ホークスは、女王の前まで進むと静かに膝をつき、頭を垂れた。

広場を埋め尽くす民衆の視線が、一斉にその背中へ注がれる。

女王は静かに口を開いた。

「ホークス」

その声は優しく、それでいて王としての威厳に満ちていた。

「あなたは長き戦いの末、獣王国の将――魔獣将アルクと一騎討ちを行い、これを討ち取りました」

広場にどよめきが起こる。

アルクの名は、戦争を経験した者なら誰もが知っている。

獣王国の猛将。

多くの兵を葬った強敵。

それを討ち取った男が、今ここにいる。


女王は続けた。

「その功績は、この国を守り抜いた大きな一手となりました」

「王国はその功績を称え、あなたを新たな六魔将――闇魔将に任命します」

ホークスは静かに答える。

「恐れながらこのホークス。闇魔将の任、拝命させていただきます」

女王の隣に控えていた侍従が、一つの箱を差し出した。

中に収められているのは――

黒い指輪。

深い闇を閉じ込めたような宝石が、静かに光を宿している。

「これが六魔将の証となる、闇の指輪です」

女王はそれを手に取り、ホークスへ差し出した。

「受け取りなさい」

ホークスは両手でそれを受け取る。

そして、静かに立ち上がった。

「この身に余る栄誉、感謝いたします」

指輪を指にはめる。

闇の宝石が、わずかに光を放った。

「俺――いや、私はこの指輪に恥じぬよう。闇魔将としてこの国を守る事を誓います」

広場から拍手が起こる。

歓声も混じり始めた。

女王は満足そうに頷き、閉会の言葉を述べようとする。

その時だった。


「陛下」

ホークスが声をかけた。

広場が再び静まる。

女王は少し驚いた表情で彼を見る。

「どうしましたか?」

ホークスは頭を軽く下げた。

「もしよろしければ。新たな闇魔将として、民の前で一言話す機会をいただけませんか?」

一瞬の沈黙。

そして女王は――

ふっと微笑んだ。

「構いません」

一歩後ろへ下がる。

「どうぞ」

ホークスは軽く頭を下げると、高台の前へ歩み出た。

広場を見渡す。

数千人の民衆。

兵士。

冒険者。

商人。

子供。

様々な人々が、今この瞬間を見つめている。


ホークスは腕を組み、少しだけ口元を歪めた。

「……俺は戦うのが好きだ」

突然の言葉に、民衆がざわめく。

「だが…戦争は嫌いだ」

ざわめきが少し収まる。

ホークスは続けた。

「戦争というのは」

「どちらかが戦いを始めたら、もう止まらない」

「嫌でも戦わなきゃならない」

広場は静まり返っていた。

「そして…その時、弱い兵士しかいなかったらどうなる?」

ホークスは広場を見渡す。

「全てを奪われる」

「土地も」

「国も」

「家族も」

重い沈黙。

「だから――」

ホークスは拳を握った。

「俺は強い兵士を作る」

その声は、広場の隅まで響いた。

「闇魔将になった俺は」

「自分で兵士を鍛え上げる!」

ざわめきが広がる。

「作るのは――」

「この国最強の部隊だ」

空気が震える。

「戦争を終わらせる為の、この国最大の刃」

ホークスは空を指さした。

「どんな敵が来ようが」

「全部――」

「貫き!斬り伏せ!叩き潰す!」

「そんな最強の部隊を作る!」

民衆の中で、誰かが思わず声を上げる。

「おお……」

ホークスはさらに声を強めた。

「そして俺が…その部隊の先頭に立つ!」

広場がざわめく。

「俺が先陣を切って戦う」

「そして」

「戦争を終わらせる一撃を叩き込む!」

拳を握りしめる。

「それが――」

「新たな闇魔将だ」

一瞬の静寂。

そしてホークスは言った。

「だから」

「明日から」

「その部隊の志願者を募る!」


その瞬間――

ドォォォォン!!!

空に爆音が響いた。

民衆が一斉に空を見上げる。

上空で魔法が炸裂し、光が弾けた。

そして――

無数の紙が空から舞い落ちてくる。

「な、なんだ!?」

「紙だ!」

「志願兵募集だって!?」

人々が紙を拾う。

そこには大きく書かれていた。

闇魔将直属部隊

志願兵募集

ホークスも紙を手に取り確認する。

(リゼルの仕業か?確かに有能な秘書だな)

ざわめきが一気に広がる。

「俺も行くか……」

「闇魔将直属だぞ!?」

「本気かよ……」

「でも面白そうじゃねぇか!」

「戦争を終わらせる刃なんて……いいじゃねぇか!」

若い兵士たちの目が輝く。

ホークスは最後に言った。

「俺は」

「闇魔将ホークス」

そして少し笑った。

「ギルド、ランクXのホークスだ!」

一瞬の沈黙。

そして。

「ランクX!?」

「噂の!?」

「本当にいたのか!?」

広場が大騒ぎになる。

ホークスは肩をすくめた。

「来たい奴は来い」

「共に敵を打ち砕こう」

そう言って背を向けた。

演説は終わった。

高台の上。

女王はくすりと笑った。

「ふふ……」

隣にいたレインへ顔を向ける。

「これからどうなるか、楽しみね?」

レインは少し眉をひそめる。

「……闇魔将になったばかりで、あの振る舞い……」

「遠慮が無さすぎます」

風魔将シェルクは腕を組み、静かに微笑んでいた。

(なるほど……)

(使える部隊になるかもしれませんね)

氷魔将ヴォルドは小さく笑う。

「はは……」

「豪快な男ですね」

炎魔将グレンは悔しそうに歯を食いしばる。

(くそ……)

(悔しいが……)

(あの演出……)

(かっこいいじゃねぇか)

そして――

ボンブ。

「……あの馬鹿者」

腕を組みながら低く唸る。

「演出が派手すぎる!」

しかしその目は、どこか嬉しそうでもあった。

こうして――

新たな闇魔将が誕生した。

そして同時に。

王国に、新たな風が吹き始めていた。


第59話―終


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