表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/195

第58話――戦争の終わり――


高台の上に女王と六魔将が姿を見せると、

大広場に集まっていた民衆が一斉にざわめいた。

城下町中から人が集まっている。

商人、職人、兵士、冒険者。

子供を肩車した父親。

戦争で腕を失った老兵。

静かに祈りを捧げる神官。

皆が同じ方向――高台を見上げていた。


六魔将の授与式。

それはこの国において、

王の即位式にも並ぶほど神聖な儀式だった。

「女王陛下だ……」

「エレノア様よ……」

誰かが小さく呟く。

ざわめきは次第に静まり、

やがて広場には、数千人がいるとは思えないほどの静寂が落ちた。

その中心で、女王が一歩前へ進み出る。

王冠を戴いたその姿は凛としており、

だがその表情にはどこか柔らかな温もりがあった。

女王はゆっくりと民衆を見渡す。

そして静かに口を開いた。

「民よ」

その声は決して大きくはない。

だが、不思議と広場の隅々までよく通った。

「まずは皆に伝えねばならぬことがある」

女王は一度、空を見上げる。

「――長きに渡る戦は、終わりを迎えました」

その言葉が広場に落ちた瞬間、

民衆の間にどよめきが走る。

喜びの声。

安堵の吐息。

目を潤ませる者もいた。

女王は静かに続ける。


「この戦はあまりにも長く、多くの命を奪いました」

「家族を失った者。友を失った者。帰る場所を失った者もいるでしょう」

女王の声は、少しだけ柔らかくなる。

「それでもなお、この国は立ち続けました」

「それは、この国を守ろうと戦った兵たち」

「そして――」

女王は広場の民衆を見渡した。

「日々を懸命に生き、この国を支え続けた、あなた達がいたからです」

広場は静まり返っている。

誰もが女王の言葉を聞き逃すまいとしていた。

女王はゆっくりと頭を下げた。

「王として、民に礼を言います」

「よく耐え、よく生きてくれました」

その姿に、

広場のあちこちから嗚咽が漏れる。

女王は再び顔を上げた。

「だが――」

その声は再び、王の威厳を取り戻す。

「戦は終わったとはいえ、命を落とした者達が戻ることはありません」

女王は静かに目を閉じた。

「ここに、戦で散ったすべての魂へ祈りを捧げます」

「民よ、共に黙祷を」

広場にいた全員が頭を垂れる。

兵士も、商人も、子供も。

風の音だけが広場を通り抜けた。


しばらくして女王が静かに言う。

「――頭を上げなさい」

民衆がゆっくり顔を上げる。

女王は続けた。

「そして、もう一つ」

「この戦争の終結において、最後の一手となった戦いがありました」

広場の空気が少し張り詰める。

「獣王国の将――魔獣将アルク」

その名を聞き、ざわめきが広がる。

「六魔将を3人討ち取った獣王国最強の戦士」

「その者を、一騎討ちにて討ち取った戦士がいます」

女王は高台の上に立つ一人へ視線を向けた。

「その功績を讃え」

「本日、新たな六魔将として迎えます」

女王の声が広場に響く。

「――新たなる闇魔将」

女王ははっきりと言った。

「ホークス」

その名が呼ばれた瞬間、

広場の視線が一斉に集まった。

「前へ」

闇の指輪の授与の儀式が、今まさに始まろうとしていた。


第58話―終


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ