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あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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54/60

54話 迷いもとまどいも愛しくて

□  □


ほとんど青さの消えた空間で、何も映らないスクリーンで映画を見ているかのように、何かが流れ込んでくる。


□  □


‐side 環‐


「青」


そう、透き通った綺麗な、大好きな青がそこにある。

大好きなオルビスの姿は思い起こさないように。

人間がイメージで縛り付けるものの多さ、それを自分の記憶に見た。

だからオルビスは今だけ、この青。それでいい。


「どうして?」愛しい声が私に尋ねる。


「オルビスを哀しみに縛り付けたくないから」

「いつだって君が望む姿になる」

「そうだね。だから私の好みの姿で現れてくれたんだね。すごくかっこよかったよ」

「じゃあ」

「ダメ」

「どうして」


「どんな姿だろうと私があなたを愛しているから」


「君が大好きだから、君が望む姿になりたい」


「ありがとう」この子はこうやって、私にたくさんの愛をくれていた。


「だけどね、私はオルビスの哀しみを消したい。・・違う、消したいじゃなくて切りたい」


「君を奪われたのに?」


「うん。ううん」


「なにそれ」ほんの少し、ほんの少しだけど笑いが含まれてる気がした。


「私はね、あなたが楽しく幸せでいてくれることが願いだった」


「・・」


「だから、あなたを縛り付けないようにしていたのだと思う」


「・・」


「だけど、違ったんだね」


「・・」


「あなたは私といたかった?」


「うん」


「これから、私と一緒にいよう」


「本当に?」


「そのためには、あなたはオルビスであることも悲しみと一緒に切っちゃおう」


「この悲しみを無くすのが怖いんだ」


「・・じゃあ、まずは一緒にいよう」


「?」


「私と一緒に私の世界においで」


「そんなことできるかな」


「できる。オルビスならできる」


「・・・」


「私、ちゃんと待ってる」


「いなくなるよね」


「人間だからね。永遠というわけにはいかないかな」


「・・・」


「私に入ってみる?」


そっと手のひらを上に向けて、手をとるように差し出した。

純度の高い青が透明に変わっていく。


「一緒・・無理みたい」


「そっか。もともと別々だもんね」


「悲しみが消えちゃう」


「消えていいんだよ」


「僕が消えちゃう」


「消えないよ」


「色がなければ僕だって気づいてもらえない」


「色がないなら香りでわかるし、透明でもいることはわかるよ」


「匂いなんかない」


「なくてもわかるよ」


「前に・・踏み出すのが怖い」


「そうだね、怖いね」


「このまま消えるのも怖い」


「どっちも怖いんだね」


「・・・」


「私、あなたのこと大好き」


「・・・」


「未来がどうとか、過去がどうとか、私はわからない。今の私はあなたを思い出して、今でも大好きで、あなたが望むなら一緒にいる」


「怖い」


「そうだね、怖いんだね」


「怖い、怖い、怖い、何もかもが怖くてたまらない」


「そうだね」


「このままでいて」


「それはできないなあ」


「一緒にいるって言った!」


「ここは現実じゃないから」


「僕にとっては唯一の現実だよ」


「私にとっては現実じゃないもの。今の私は優しい両親がいて、生意気な弟がいて、お互いを分かり合える友達がいて、大学に通って、美味しいご飯を食べて、テレビを見て笑ったり、転んで痛くて泣いたり、その全てが愛しいの」


「そこに僕はいない」


「だからおいで」


「君の世界に僕だけじゃない」


「それは・・無理かなぁ」


「どうして」


「愛ってね無限なんだよ」


「嘘だ」


「だって、私は両親には感謝の愛、弟には親愛、友達には共愛、自分の環境への愛、大学という勉強をできる愛と社会人になるための準備期間という愛、日本という安全な国への愛、美味しい野菜を作ってくれる太陽への愛と農家への愛、ありとあらゆる愛をたくさん持ってる」


「そんなの」


「そこに、大切なあなたへの愛が加わるだけ」


「・・・」


「どれが1番っていう優劣じゃないの。どれも大切で、その時々で大きく育ったり、ってだけ。これからもし私が結婚でもしたら、旦那様への愛と子供への愛が加わるでしょう?」


「知らない」


「私の愛は注ぐ相手が増えたら、どこかが減るような愛じゃない」


「嘘だ」


「1人の人に濃く注ぐ愛もあると思うけれど、私はきっと違う」


「そんなの」


「そういうのじゃ嫌?」


「・・・わからない」



□  □


‐side 橘‐


「想念はなくならないのでしょうか」

「どうじゃろうの」


「さきほど消した想念はどこに行くのでしょうか」

「この国の歴史に沿えば、出したものは自分へと還るとされてきたが」

「では、欠片の私にもいずれ還ってくると?」

「いいや。時代は変わった。愛が全てを包む時代がくる」

「そんな夢みたいなことが?」


「過去をみてみるとよい。国を統一するためにひたすら戦った時代から、全てを自分で選んでいけるこの現代を見たとき、夢のようなことだと思われる気がしないかの?」


「・・します」

「じゃろう」


「でも」

「例え本体であるものがどろどろしたものを出してきたとして、お前は出しておらん。それが答えじゃよ」

「そう・・ですか」

「そうじゃ。よし、橘!わしも外国人に人気のコンビニのサンドイッチが食べたいのう」

「御意」

「随分と時代錯誤な返事じゃの」

「・・オッケーです」

「良き良き」


ふぉっふぉっと笑い、楽しい空気がそこで舞う。

わざわざ苦しむようなことを探さなくていい、そう言われている気がした。


□  □


‐side 亜空間‐


「自分がどうするかを決めるのは、自分しかいない。きっと」


「何も決めたくない」


「あなたに何かを無理強いすることもできない」


「・・・」


「決められないなら、私と一緒に外に出てみない?」


「・・・」


「嫌ならまたここに戻ればいい。ここが無理ならまた違う場所もあるかもしれない」


「そんなの」


「あなたに見せたいと景色やものがたくさんあるの。どれもすっごいんだよ。高いビルがずらっと並んだ街や、美味しい食べ物。あ!アニメっていう文化があって、それだと異世界が流行ってるんだよ」


「イセカイ?」


「そう。昔からある創作の世界も異世界だったはずなんだけど、ここ最近の流行りでね『異世界』っていう言葉が使われてるの。悪役令嬢が公衆の面前で婚約破棄されるけど、自分らしく楽しく生きていく物語か多いんだよ」


「・・・」


「私もどこかの人生で捨てられたり放置されたりしたけど、異世界物語みたいな強さがあれば楽しかったのにって」


「君が捨てられ・・た?」


「うん!殺されたり利用されたり、捨てられたり裏切られたり」


「知らない・・」


「でも今の私の世界はそんなことを選ばないという強さを持てるの!すごいでしょう?」


「君が・・何度もそんな目に」


「おかしいでしょう?何度生まれ変わっても特別な能力があったものだから、巻き込まれる確率は高かったかも。・・ねえ、そんな私を汚れている、汚らわしいって思う?」


「思うわけないっ」


「うん。私もあなたをそんな風に思ったりしない」


「ただ、君の側にいたかったんだ・・」


「だから、一緒に行こう。可能な限り、一緒にいよう」


「本当に?」


「うん」


「・・・」


「あなたを閉じ込めたり、私を閉じ込めたりするような人はいない世界へ」


「行きたい」


やっと。やっとだね。


「うん!行こう」


そっと手をつなぐように、大事なものを壊さないように抱きしめた。


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