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第二十話 ロッキード子爵

いつも応援ありがとうございます。

 ブーゲリア帝国、地方査察局、副長官。


 それが、法衣貴族ランケル・ロッキード子爵の役職名である。


 中央と地方の関係の最も重要な部分である、領主貴族からの徴税や、謀反を企む貴族の調査等は別の部署が行っている。


 彼が働く部署での職務内容を簡単に言うと、領主が変わった際の正式な証人や、その領地で慶事があった場合などに、皇帝の代理として、その地方に赴き、祝いの席で皇帝の代わりに適当に一言述べるのが主な職務内容だ。


 それ故、彼の職務は、徴税や謀反の調査などの帝国の基盤を左右するような重要な部署ではない。また、ロッキード子爵以外にも、同様の職を与えられている貴族も数人はいる。


 しかし、他にも同じ職に就く貴族もいて、地方に行っている間だけではあるが、それでも、大帝国の皇帝の代理として地方に赴くのだ。行く先々で過剰なほどの接待を受けるのは当然の事である。


 ましてや、彼は現在帝国中枢を牛耳り、皇帝からの信頼も厚いあのフランシスコ宰相の一族でもある。


 そんな重要な人物を、領地に多大な負担を掛けるほどの覚悟を持って、満足におもてなしできない領主など、中央の情報が全く入ってこない辺境の田舎貴族か、よほどの大馬鹿者のどちらかだろう。


 それだけに仕事で足を運ぶ地で最高級の、それこそ皇帝が来た時並みの待遇を常に受けているロッキード子爵の自尊心が高くなるのは仕方がない事である。また、彼は帝都では、小貴族の扱いで、肩身の狭い扱いを受けているが、地方に赴けば皇帝のような扱いを受けていることも増長する原因の一つであろう。




「ふ~、今回も中々、楽しめしたね。子爵?」


 いつものように、地方での仕事を終え、護衛に守られて、帝都への帰路の馬車の中で、ロッキード子爵の側近の一人で、彼の頭脳面の補佐役でもあるシャルルは、楽しい旅行だったと昨晩の思い出を振り返った。


 今回の仕事は、とある地方を治める伯爵家の次期当主の結婚式。ロッキード子爵は皇帝の代理人として、その式に参加して新たな夫婦の門出を祝うが、ロッキード子爵は、この国の頂点に立つ皇帝の代理として式に参加しているため、その待遇は、式のメインである新郎新婦にも匹敵していた。


 ロッキード子爵と二人の側近の席は、新郎新婦やその親族達よりも一段高い場所を宛がわれ、出された食事は、新郎の父親がわざわざ帝都の最高級レストランから呼び寄せた一流の料理人が手掛けたものであったので、ロッキード子爵達に不満は一切なかった。


 強いて上げるのであれば、式の後に、ロッキード子爵が美しい花嫁の容姿を気に入り、初夜を寄越せと要求した時に、花婿が拒んだことくらいだ。


 しかし、それもお家の立場を悪くすると判断した新郎新婦の父親達が、すぐに謝罪して、「どうぞもらってやって下さい」と懇願までしてきたので、ロッキード子爵は、「仕方がないからもらってやる」という態度で頂戴した。


 ロッキード子爵は、側近二人を呼んで、新郎新婦が初夜を迎えるために用意された部屋で、花嫁を交えて、四人仲良く一時を楽しみ、半ば無理やりという形で三人の男を相手し力尽きた花嫁を、使い捨ての中古品のような扱いで花婿に返すと、今度は、新郎新婦の両親が用意していた別の女達と一晩を共にした。


 このように接待する側が、夜の相手を用意してくるのは珍しいことではない。むしろ、ない方が珍しい。アズバーン領で、ロッキード子爵が夜の相手を要求しなかったのは、単にロッキード子爵の気分が早く寝たかっただけであり、あの日に子爵の餌食となる者がいなかったのは、奇跡に近かった。


 そして翌日「昨晩はありがとうございました。皇帝陛下によろしくお伝え下さい」と、花嫁から、実家の家宝の一つでもあった名のある画家の絵を頂き、彼らは帰路についた。



「まあな、シャルルの言うように、あの花嫁が悔しそうな顔をしながら、大切な家宝を渡してきたのは中々良かった。昨晩は、お許しくださいとひぃひぃ泣いていたのにな」


 共に花嫁を楽しんだロッキード子爵もシャルルの言葉に同意し、今回のような接待ぶりを他の地方貴族にも見習ってもらいたいものだと付け加える。


 しかしながら、ロッキード子爵とシャルルの二人が満足していたと言うのに、もう一人の側近であるバルツは、少々不満げであった。


「確かに、文句はなかった。だが、血と絶叫が足りなかった」


 頭脳面の補佐をするシャルルとは対象的に、このバルツという長身で筋肉隆々のロッキード子爵の護衛も兼ねるもう一人の側近は、今回の接待をギリギリ合格点と評した。


「前回赴いた男爵家の催し。あれはよかった」


 バルツは恍惚した表情で、前回赴いた任地での出来事を思い出す。


 先代当主の就任式のために、ロッキード子爵一行が赴いた男爵家は、元々武勇の優れた貴族でもあった。そのせいか、催しの中に、剣に腕のある家臣達の模擬戦闘が組み込まれていた。


 ロッキード子爵達は、その模擬戦闘を観客席から観戦したのだが、命の取り合いをしない温い戦いを見て、「つまらん!」とバルツが言い、ロッキード子爵もそれに同意したため、急遽、どちらかが、死ぬまで行う決闘となった。


 その結果、男爵家の双璧と讃えられることになったであろう若い剣士が、その短い生涯に幕を下ろすことになる。多くの領民が彼の死を惜しみ、涙を流す中、バルツとロッキード子爵は「面白い物が見れた。皇帝陛下もこの戦いをご覧になっていればさぞ満足されたでしょう」と一言だけ感想を述べ、嬉しそうにその場を後した。


 当然、見世物のために大切な部下であり仲間の命を奪われた男爵家の当主や家臣達は、ロッキード子爵達の横暴に憤怒した。


 でも、それは心の中で留めることしかできなかった。


 皇帝の代理人であるロッキード子爵に危害を加えれば、自分達がどれだけ酷い目に合うか、彼らは知っていたからである。


 ロッキード子爵も、それが分かっているから、牽制を兼ねて、敢えて、ことある事に「皇帝陛下が~」と口にしているが、その効果は抜群だ。


 皇帝から領地を委任されているに過ぎない領主貴族である以上、皇帝を軽んずる事は絶対にできないのだ。例え、それが、皇帝との血縁関係でもなく、外見も年齢も一致しない赤の他人だとしても、帝国政府がロッキード子爵を皇帝の代理人と認めている以上、領主貴族にとっては、ロッキード子爵は皇帝なのだ。


 現に、ロッキード子爵達が、どれだけ理不尽な要求をしても領主貴族達は、表では喜んでそれに従う。


 これだけ語れば、ロッキード子爵と彼の幼馴染でもある二人の側近シャルルとバルツが、如何に大きな顔をして、理不尽な要求を重ね、その自尊心を肥大化させていく理由が分かるだろう。


 そう、地方に出ている時に限り、彼らは自分達のことを、ブーゲリア帝国の皇帝と宰相位の身分の臣下と認識してしまっているのである。


 順風満帆、向かう所敵なし、あらゆる者達が自分達にひれ伏す。


 彼の主である叔父のフランシスコ宰相派の一員としてやっていく限り、それはこれからも未来永劫続くと三人は考えていた。だが、その無限に続く幸福の時間に、ついに終わりの時がやってきた。









 任務を終え、帝都に帰還するとロッキード子爵は、すぐさま帝城へ出頭するようにとの命令を受けた。自分が働く官庁舎であれば、不思議に思うことはないが、帝城に来いというのは明らかにおかしい。しかしながら、帝都の外では皇帝扱いの自分も、本物の皇帝が住まう帝都の中では、その威光は発揮しない。


 そのためロッキード子爵は渋々命令に従い、二人の側近を屋敷に置いて帝城に赴いた。


 ついさきほどまで、まさしく皇帝の気分だっただけに、どこか不満げだったロッキード子爵だが、案内された帝城内の会議室着き、中にいる者達の自分を睨みつけるような顔付きを見て、皇帝気取りだった呑気な心の内を少しだけ改めた。


「こ、これは、これは皆様、一体どうなされたので?」


 先んじて会議室にいたのは、帝国政府の中枢の牛耳る大臣達、それは即ち、帝国の権力を支配するフランシスコ宰相の忠実なしもべでもあるのだが、階級は低いが自分もそのしもべの一人であるはずだ。


 なのに、この部屋にいる大臣達が自分に向ける視線は、他所者に向けるそれだった。



「ロッキード子爵!」



 会議室内の上座に座るフランシスコ宰相と学校時代の同期でもあり、国務大臣でもあるメックス大臣は、厳しい目でロッキード子爵を睨む。


 同じ派閥に属するものの、ロッキード子爵とメックス大臣の関係は極めて薄い。はっきり言って、国政のナンバー2であるフランツ大臣からしていれば、ロッキード子爵などいくらでも代えの効く人間の一人にすぎない。


 そもそもフランシスコ宰相が、まだ権力を掌握する以前に、皇帝の代理人として地方を査察できる部署の高官職を他の派閥に取られないように、フランシスコ宰相が自身と血縁関係であるロッキード子爵を今の地位につけたのだ。


 その当時のフランシスコ宰相からしてみれば、数多くいる血縁関係のある貴族の中から、適当にロッキード子爵に今の地位を与えたに過ぎない。


 何か、問題を起こせば、すぐに代えよう。


 フランシスコ宰相に選ばれたと今まで勘違いをしていたロッキード子爵は知らなかったが、フランシスコ宰相とメックス大臣から見れば、ロッキード子爵とはその程度の人間なのだ。


 未だにそれが分かっておらず、自分は派閥の重要人物であると誤った認識していたロッキード子爵は、仲間であるメックス大臣が自分を敵視している理由が分からなかった。



「ロッキード子爵、貴殿はつい先程、帝都に戻ってきたと聞いた。故に、数日前に起きた出来後を知らないかもしれない。なので、我々全員の認識を統一されることも含め、今の状況を話してくれ」



 メックス大臣がそう言うと、臨席していたロッキード子爵よりも若いシクラ男爵が全員に分かるように掻い摘んで説明をする。


「四日ほど前の事です。帝都の貴族区を守護する親衛隊の詰め所に、とある貴族の屋敷で働くメイドが慌てた様子でやって来ました。その内容は、屋敷内で人が殺されたと言うことだったため、下手人を捕らえるためにも、親衛隊はすぐさま現場に急行。残念な事に下手人は捕らえれませんでしたが、明らかに他殺と思われる屋敷で働くメイドの死体と」



 強く印象つけたいのか、ここでシクラ男爵は一度息を吸った。



「死体のそばにあった隠し扉の先にあった地下室から大量の麻薬が発見されました。そして、どういうわけかは今の所不明ですが、貴族区のみで抑えていたはずの、その情報は現在、貴族区を出て、平民区にまで広がっています」



 元々、知ってはいたが、麻薬と言う一言で場は騒然となった。一切知らなかったロッキード子爵もそれは一大事だと、心の中で思う。


 麻薬は現在、帝国政府が撲滅するために大々的に取り締まっている最重要の物である。とは言え、この活動は、国民が持つ帝国政府への不満を、麻薬とそれを扱う組織に向けるためもの。


 この場にいる貴族を含め、もはや麻薬は、貴族の嗜好品となっているのだ。麻薬を独占する毒蛇の牙を追い詰めれば、自分達にも火花と飛び散るし、毒蛇の牙も反乱軍に匹敵する一大組織であるため、おいそれと手出しできない。


 そのため、全貴族が、撲滅できるとは思っていない上、本気でやるつもりもなかった。


 だがしかし、麻薬が貴族の家から見つかって、それが既に平民にまで知られているのであれば、麻薬を撲滅すると謡っている以上、帝国政府も庇うことができない。見逃せば、帝国政府への不信感を更に募らせてしまう。



「ならば、その貴族を取り潰せばいいのではないのですか?」



 話を聞いてロッキード子爵は呑気に対応策を述べる。彼のこの発言は至極真っ当な提案であるが。


 何故、派閥内での地位が低い自分が呼ばれたのか、それすら理解できていない愚かな貴族の発言にこの場にいる者のほとんどが愛想を尽かした。もうこいつはもうダメだなと見放すような口調で、ため息混じりに、メックス大臣は言葉を発した。


「では、ロッキード子爵家は取り潰すことにする」


 メックス大臣の意見に異論を上げる者はいない。


 ロッキード子爵の消滅が、満場一致で決定した。


 いや、一人だけ、反対する者がいた。その者は、ここにきてようやく己の置かれた状況を理解できた貴族だ。


「ま、待ってください。ロッキード子爵家の地下から麻薬が見つかったのですか?! そんな馬鹿な?! 何かの罠だ!!」


 確かに、ロッキード子爵の書斎には彼が愛用する麻薬がある。だが、それはあくまで個人用のものであり、そもそも、この程度の量なら他の貴族も所持している。


 しかし、地下室に大量に保管してあったとなると話は違う。


 帝国政府が麻薬の撲滅を宣言している以上、いくらロッキード子爵家でも、それが帝都中に既に知られている今、もはや詰みに近い。


 それを遅れながらも、ようやく理解したロッキード子爵は慌てふためきながら、全力で身の潔白を証明する。


「私は無実だ!! だって、私の留守中に起きた事だぞ!! きっと、使用人の誰かが勝手にやったことだ! いや、違う。私を貶めるために、誰かが冤罪を着せたんだ!! お、お前だな、シクラ男爵!!」



 ロッキード子爵に指を差されたシクラ男爵は、「心外な」と侮蔑の眼差しをして否定したが、実はこのシクラ男爵こそが今回の事件の犯人であった。


 帝国中枢はフランシスコ宰相派一色となった。こうなると、次なる政敵は自派閥の人間であると予期したシクラ男爵は、政敵を倒すのに協力するという毒蛇の牙からの申し出に乗り、ロッキード子爵を嵌める計画に参加した。


 難を逃れようと適当に言ったロッキード子爵の発言は、的を得ていたが、自分は無実だと喚き散らす、ロッキード子爵を見て、もはや誰一人として彼を庇おうと思わなかった。


 さらば、ロッキード子爵。


 誰もがそう思ったその時、予想外の救い手が現れた。



「話は聞かせてもらった」



 そう言いながら扉を開け、入室してきたのは、皇帝が病に倒れ実質的に、この国を支配しているオド・フランシスコ宰相その人だった。


「さ、宰相様」


 ロッキード子爵は、神を見るかのような目をしてフランシスコ宰相を見ると、フランシスコ宰相は、まさしく、神の如き発言をする。


「諸君、話は大体聞いた。これはあくまで私の個人的な見解、いや、勘であるが、恐らくロッキード子爵は、何者かの策略に嵌められたのだろう」


 自分の方を見て言っていないのにも関わらず、シクラ男爵は小さく冷や汗をかいた。


 だが、次のフランシスコ宰相の発言を聞き、シクラ男爵を含め、この場にいる全員が度肝を抜かれた。


「しかし、これはチャンスでもある! もし、これほど大きくなった今回の事件をなかったことにできれば、我々が帝国の支配者になったことを、誰もが認めるであろう」


 つまり、自分達が定めた法を他の者には強いるが、その法に自分達は従う必要はない。


 帝国の頂点に立つ者は皇帝。その次に立つものは、皇帝が作った帝国法。その次には、帝国法の下という形で、貴族や平民が続く。


 建国から千年続いた既存の社会の仕組みを、フランシスコ宰相は破壊しようと宣言したのだ。



「勿論、反発する者はいるだろう。しかし、それらを乗り越え、我々が皇帝と同じく、法の下にいる存在ではなく、法の上に立つ者だと全国民に理解させることができれば我々は、いや、共にここまで歩んできた友よ! 後一歩だ。ほんの後一歩で、皆と共に頂点に君臨できる」



 始めは、フランシスコ宰相の発言を聞き、誰もが馬鹿な事をと思った。皇族でもないのに、何と怖れ多い事かと。


 だが、冷静になって頭の中で熟考すると、フランシスコ宰相の発言があながち荒唐無稽な発言とは思えなくなっていた。


 だって、そうだろう。もう敵と呼べる存在がいないのだから。


 厄介な政敵は、後々邪魔にならないように追放ではなく全て処刑もしくは暗殺した。まだ派閥に属していない中立の立場の貴族も多少はいるが、それも時間の問題。


 地方の領主貴族達は、ロッキード子爵の振舞いを見ていれば分かるが、皆、従順な飼い犬のごとく尻尾を振っている。


 帝国軍、憲兵隊、親衛隊、帝国騎士団インペリアルナイツ。各軍事組織の上層部にも、フランシスコ宰相派の人間はいる。万が一反乱が起きても対処できる。



 そう、敵対勢力を次々と始末している内に、気が付いたら帝国内において、自分達の敵と呼べる者は、もはや存在しなくなっていた。



「ああ、そうだ! 宰相様の言う通りだ!」


「我らに、敵はもはやいない」


「圧倒的ではないか、我々は!!」


「反乱軍とかいう野盗まがいの集団も一向に動きをみせない。きっと我々には勝てないと諦めたんだ!!」



 フランシスコ宰相の発言に、次々と賛同する声が上がった。勿論、そう上手くいくかと懐疑的な目をする者もいるが、支配者であるフランシスコ宰相が提案し、大多数が賛同した今、この場で反対意見など上げたら、粛清対象にされかねない。


 そのせいで、彼らの暴走を止める者はどこにもいなかった。


 自身の提案が受け入れられた事に満足したのか、フランシスコ宰相は満面の笑みでロッキード子爵の方を向く。


「では、ロッキード子爵。パーティーの準備をしたまえ、誰もが君の疑惑を忘れてしまう程の盛大にパーティーを!!」


 世間から犯罪者扱いのロッキード子爵が、盛大に宴を開き、帝国中枢のメンバーがそれに参加する。そうなれば、ロッキード子爵からしてみれば名誉挽回の機会となり、フランシスコ宰相からみれば、自分達が法の上に立つ存在だと帝国中に知らしめることができる。



 この後すぐに、ロッキード子爵は、私財の大半を投じて、後世に残るほどの規模のパーティの準備に取り掛かった事は、もはや言うまでもないことだった。




 この時点で、フランシスコ宰相の読み通り、皇帝さえ凌ぐ権力を欲するフランシスコ宰相一派に抗う意思を持つ者は、帝国には存在しなかった。


 反乱軍を含めた誰もが、今後の帝国は、強大な存在となったフランシスコ宰相一派による独裁政治の時代が始まると諦めていた。


 しかし、フランシスコ宰相一派に牙を向こうと企む者達は、確かに存在した。


 だが、彼らは、腐敗した国を憂う者ではなく、お伽話に出てくる悪を倒す勇者でなければ、圧政を敷く暴君を倒そうとする英雄でもないし、日々の生活に苦しむ人々の願いに応えた訳ではない。


 彼らは、ただ己の欲望を満たすため、フランシスコ宰相一派のものになろうとした帝国を、恐怖と混沌の渦の中に突き落とすのであった。





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