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第二十二話 飛翔する双星

 新生ルピナス・ツヴァイがついに完成し、チーム・シュヴァルツ・アインツは、公式リーグ戦の舞台へ戻ることに決めた。


 帝国からの不透明な依頼を待つより、リーグ戦で正当にエネルギーや資金を稼ぐほうが、双子が元の世界へ帰還する一番大切な目的に、適っていたからだ。


 もちろん、帝国の監視は相変わらず厳しかったが、シエルの協力のおかげで、戦いに集中できるだけの平穏な時間を手に入れることができた。


 ピピが情報端末の画面を見せながら、いつものクールな声で説明を始める。


「次の相手はチーム・ハーピー。飛行能力に特化したハーピー族のチームよ。機体はラファール・ウィング。弱点である(かく)コアは背中に配置されているけれど、防御に優れた特殊な構造をしているわ」


 ピピの眼鏡の奥で、膨大な分析データが滝のように流れ落ちていく。


 楓が新しい遊び場を見つけた子供のように、無邪気で力強い笑顔を見せた。


「ハーピー族かぁ。あたしたちと同じで、空を飛ぶ相手なんだね! 葵、準備はバッチリだよ!」


 彼女の辞書に、弱気なんて言葉は一文字も入っていない。


 葵は、端末の数値をチェックしながら、落ち着いた声で返す。


「ええ、姉さん。今度のバトルから、僕たちも空を飛べますからね。空中戦のデータを取りますので、お願いします」


 ガオが横で太い腕を組みながら、ニヤリと不敵に笑って鼻を鳴らした。


「へッ! あたいがオーバー・チューニングを施した最高の翼だ。ルピナス・ツヴァイが負けるわけねーだろ! 任せておきなよ!」


◆ ◆ ◆


 バトル当日。


 アリーナは、地鳴りのような大歓声が沸き上がっている。


 シュヴァルツ・アインツの人気は、今やリーグでもトップクラスで、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。


 巨大なドーム型のバトルアリーナの中は、観客たちが発する熱気でムンムンと蒸せ返る。


「さあ、注目のリーグ戦! 新生ルピナス・ツヴァイを擁するシュヴァルツ・アインツ! 対するは、空の王者、チーム・ハーピーだあー!」


 実況アナウンサーの叫び声が、アリーナの隅々にまで響き渡る中、ルピナス・ツヴァイが重厚な足音を立てて、ゲートから入場した。


 その背中にはまだ、翼の姿はどこにもない。


 反対側のゲートからは、純白の鳥を思わせる優雅な機体、ラファール・ウィングが現れた。


『バトル、スタート!』


 合図が鳴り、まばたきをする間に、ファルラのラファール・ウィングが大きな翼を広げ、天井へ向かって鮮やかに舞い上がる。


 風の魔術を操るその姿は、優雅だったが、楓の研ぎ澄まされた直感は、その動きの先を既に捉えていた。


「遅いよっ! ガオさん、空中換装、オペレーション・ウィングコネクトよ! 射出の準備をッ!」


 楓は、ルピナス・ツヴァイをニーラー形態に変形させ、アリーナの床をフル加速で疾走を開始する。


 ピットエリアで待機していたガオが、大型輸送車の魔導エンジンをうならせてアリーナサイドに急展開し、ハッチを勢いよく開く。


「いつでもいけるぜぇ、カエデっ! ぶっ放せっ!」


「今です、姉さん。最大出力でジャンプ!」


 葵の合図に合わせ、楓は機体をマギアス形態へと変形させ、地面を力いっぱい蹴って跳躍した。


 同時に、ガオの車から飛行ユニットが矢のように射出され、空中でルピナス・ツヴァイの背中に吸い込まれるように連結された。


 ガシャリ、と骨身に響くような重厚な合体音が響き渡る。


「キィタアァアーーッ!! 葵! あたしたちの新しい相棒だよ!!」


 ユニットの中央に据え付けられた風の小型特級魔導炉が、新たな主を歓迎するように、透き通るようなエメラルドグリーンの輝きを放つ。


 その神秘的な光は、楓の昂る戦意をプラナから変換された魔力として吸い込み、一気に翼の隅々まで駆け巡る。


 白銀に輝いていた装甲は、内側から焼きつくすような熱量に浮かされ、瞬く間に燃え盛るような紅蓮へ、その色を塗り替えた。


 楓の爆発的な感情が、エネルギーへと変換され、エメラルドグリーンと紅蓮、二色の光を曳いた翼から膨大な推進力が、大気を震わせて噴出する。


 その加速は、空を飛んでいた相手を追い越すほどに圧倒的だった。


「きゃあ!? なんてスピード……! 空中で換装して飛ぶだなんて!」


 驚愕するファルラに対し、楓は、エメラルドグリーンの核と紅蓮の翼を翻し、猛烈な勢いのまま距離を詰め、メタリックレッドの右腕(やいば)を振り下ろした。


「ラファール・ウィング、もらったぁ!」


 だが、ファルラも空中で火花を散らし攻撃を弾き飛ばす。


 二台の鉄の巨人が激しく交差する、縦横無尽のドッグファイトが始まった。


「このままじゃ一方的に狩られるぞ! 魔導炉をオーバーロードさせろ! 螺旋の風槍(らせんのかぜやり)、テンペスト・ランスを叩き込め」


 ファルラは、チームの指示を受け、風の魔導炉のリミッターを外し、魔力を全力で注ぎ込む。


 ラファール・ウィングから放たれた想定外の広域攻撃に、楓の短い悲鳴が上がり、機体がバランスを崩しかける。


「姉さん、落ち着いて! 僕たちの機体は風属性の小型特級魔導炉を使用しています! 風の影響を受けにくいんです!」


 葵の冷静な指示が、楓の耳に飛び込んでくる。


 その声に我を取り戻した楓は、すぐに体勢を立て直し、逆巻く風の中を正面から突き進んだ。


 ラファール・ウィングの背後へと回り込み、最後の一撃を叩き込もうと刃を振り上げた。


 激突の直前、ファルラは絶望の中で、絶対の防盾(ぜっくうのらんじゅん)、エアロ・イージスを展開し、楓の刃を弾き返した。


「チッ! なんて硬いのよ!?」


 楓が悔しげに舌打ちをするが、葵の表情は揺らがない。


「想定内の反応です。姉さん、次は僕の指示に従ってください。勝つためのロジックは、既に組み上がっています」


 葵の静かな確信に満ちた声が響く。


 空中での死闘は、止まることなく続き、激戦はさらに熱く進んでいく。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


空中換装「オペレーション・ウィングコネクト」の成功シーン、いかがでしたでしょうか。

紅蓮の翼で空を制し、チーム・ハーピーと繰り広げるドッグファイトは、まさに新生ルピナス・ツヴァイの真骨頂です!


楓の直感的な操縦と、葵の冷静なロジック。

対極にある二人の力が完全に噛み合ったとき、どんな強敵もそのスピードには追いつけません。

……とはいえ、相手の「エアロ・イージス」も一筋縄ではいかない強固な壁。

葵が導き出した「勝つためのロジック」とは一体何なのか!


続きが気になる方は、ぜひ「ブックマーク」や「評価」での応援をお願いします。皆さんの応援が何よりの励みです!


次回もお楽しみに!

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