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第二十話 突然の訪問者

【主人公:双子】


桜庭 カエデ15歳。天才レーサーにして「ルピナス・ツヴァイ」のエースパイロット。

情熱的で直感的な行動派。


桜庭 アオイ15歳。IQ280以上の頭脳を持つサブパイロット兼、メカニック兼、戦術オペレーター。

双子の絆の要。


【チーム:シュヴァルツ・アインツ】


エルシェラ・フォン・エルシュタイン ハーフエルフのチームオーナー兼司令塔。

穏やかで思慮深い、双子の導き手。


ガオ・タイガー 虎の獣人。

豪快な姉御肌で、機体の整備・改造を支える凄腕メカニック。


ピピ・コカトリス 鳥人の情報収集担当。

クールで論理的。アオイとの絆を深めていく。


【ライバルから同盟関係の仲間へ】


シエル・ヴァンクール エルフの青年。

ライバルチームの天才パイロット。プライドが高いが、正義感を持つ。


 アリーナの激戦から数日後、チーム・シュヴァルツ・アインツのガレージに、予期せぬ客人が訪れた。


 エルフ国の貴公子(きこうし)、シエル・ヴァンクールだった。


 彼は、いつもの優雅な燕尾服(えんびふく)ではなく、高性能な魔導衣を織り込んだカジュアルな格好で現れたが、その瞳には真剣な緊張感が漂っている。


 彼の背後には、護衛と思われる数名のエルフ国の隠密(おんみつ)兵が、気配を消して静かに控える。


「やあ、桜庭ツインズ。突然の訪問……許しておくれ」


 楓は作業の手を止め、驚きの声と疑いの視線をシエルへ向けた。


 アリーナで、愛機を破壊されかけた恨みは、まだ楓の心の中に鮮明に残っている。


「シエル!? 何の用なのかしら? まさか、また()りずに自分の美学を押し付けに、バトルでも挑みに来たんじゃないでしょうね?」


「まさか。君たちと戦って、僕の愛機、エアリアル・ストライカーは完璧に破壊されてしまったからね。今日は、君たちに重大な警告と、頼みがあって来たんだ」


 シエルは、エルフ国の誇り高い貴族としてのプライドを脇に置き、静かにふかぶかと頭を下げた。


 その動作の重さと、漂う切実な空気感に、楓たちはただ事ではない事態を察する。


 シエルは、エルフ国の上層部が帝国と裏で深く繋がっている可能性が高いことを双子に話し始めた。


 帝国は、(いにしえ)の兵器の技術を提供し、見返りとしてエルフ国の秘匿(ひとく)である魔導技術を掌握しようとしている。


 シエル自身も、事実上、国を追われる身に近い立場となっているのだという。


「我が家も、その巨大な陰謀(いんぼう)に飲み込まれかけている。だから、君たちの力を借りたいんだ。君たちが操る底知れない魔力こそが、この混沌を止められる唯一の鍵だと僕は考えているのだよ」


 楓はまだ不審げに、隣に立つ葵に視線を送る。


「あたしらに力を貸せって、簡単に言われてもね。葵、どう思う? こんな胡散臭(うさんくさ)いエリートを信用して大丈夫なの?」


 葵は冷静にシエルの表情を観察し、その瞳に宿る光が、真実を求めて揺らいでいるのをじっと見つめている。


「敵の敵は味方、と言いますからね、姉さん。シエル様、僕たちも帝国には目を付けられています。ここで情報を共有し、協力関係を結ぶことは、双方にとって大きなメリットになるはずです」


「葵は、それでいいの? こいつ、前はあんなに高圧的だったんだよ?」


「ええ。でも今は共通の敵がいます。それに、シエル様がもたらす情報は、僕たちがまだ知らない帝国の裏側に辿り着くための、確かな材料になるはずですから」


 シエルは、葵の合理的(ごうりてき)かつ慎重な判断に驚きつつも、すぐに晴れやかな笑顔を見せた。


「君は本当に頭がいいようだな、アオイ。分かった、協力しよう。まずは、手始めにこのガレージのセキュリティを強化させてもらいたい」


 こうして、シュヴァルツ・アインツとシエル・ヴァンクールの間に、かつての敵対関係を超え、新たな同盟が結ばれた。


◆ ◆ ◆


 数時間が経過し、ガレージにはシエルが持ち込んだ膨大(ぼうだい)魔導結晶(まどうけっしょう)や技術資料が次々と運び込まれた。


 ガオとピピ、葵は目を輝かせながらそれらを解析し始める。


 ピピが手にした資料は、その高度な理論体系に、彼女を興奮で震えさせた。


「これは凄いわ! これがエルフ国の最新鋭魔導技術。この高度な通信システムがあれば、帝国の動きが手に取るようにわかるかも!」


 ガオも職人としての血が騒いでいるようで、巨大なレンチを握りしめた。


「おう、腕が鳴るわねぇー! こりゃあ、ルピナス・ツヴァイのフレームを根本から見直せるチャンスだよ!」


「これを応用すれば、ルピナス・ツヴァイに、本格的な飛行能力を持たせることができるかもしれませんよ。姉さん、これで空を自由に動ければ、戦い方の幅が一気に広がりますよ」


 葵の言葉に、楓もようやく未来の機体像を想像して、少しだけ笑みを浮かべた。


 ガオの作業する音と、ピピのキーボードを叩く音が重なり、ガレージは、かつてない活気で満ちている。


 深夜までシエルも混ざり、四人の熱い議論が止まることはなく、大型モニターには、見たこともない、複雑な魔法幾何学(きかがく)の回路図が映し出され続けている。


 楓と葵は、エルフ国と帝国という二つの巨大なうねりの中心へ、運命に導かれるように足を踏み入れていく。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


ライバルだったシエルとのまさかの同盟。

対立していた彼らが、同じ目的のためにガレージで熱く議論を交わす姿は、チームとしての大きな変化を感じさせられます。


帝国の陰謀が加速する中、強化されるルピナス・ツヴァイは一体どんな力を手に入れるのか。

組織として本格始動したシュヴァルツ・アインツの進撃に、これからもご期待ください!


続きが気になる方は、ぜひ「ブックマーク」や「評価」での応援をお願いします。皆さんの応援が何よりの励みです!


次回もお楽しみに!

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