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第一話 双星の鼓動、最速のその先へ

【登場人物・機体設定】


【主人公:双子】

桜庭 カエデ 15歳。天才レーサーにして「ルピナス・ツヴァイ」のエースパイロット。

情熱的で直感的な行動派。


桜庭 アオイ 15歳。IQ280以上の頭脳を持つメカニック兼戦略家。

双子の絆の要。


【チーム:シュヴァルツ・アインツ】

エルシェラ・フォン・エルシュタイン ハーフエルフ連合の王女。

純血エルフ国からは疎まれる立場にあり、だからこそ種族の垣根を超えた獣人や鳥人たちと共にチームを築いた。

穏やかながら芯の強い、双子の導き手。


ガオ・タイガー 虎の獣人。豪快な姉御肌で、機体の整備・改造を支える凄腕メカニック。


ピピ・コカトリス 鳥人の情報収集担当。クールで論理的。アオイとの絆を深めていく。


【機体設定:ルピナス・ツヴァイ】

種別 機動魔装機マギアス/4輪ニーラー改造モデル

特徴 異世界の魔導技術と元の世界のメカニズムが融合した特殊兵器。

楓の操縦による圧倒的な機動力と、葵の演算による超精密射撃を両立する。

役割 桜庭ツインズの魂の半身であり、二人の絆が同期シンクロした時、真の性能を発揮する。

「最強の双星」


【ライバル】

シエル・ヴァンクール エルフの青年。

ライバルチームの天才パイロット。

プライドが高いが、正義感を持つ。

二千百XX年、富士モーターサイクルランド。


「ファイナルラップだ! 桜庭ツインズ。シリーズチャンピオン獲得まで、宿命のライバルとの差は、もはやコンマ数秒という極限(きょくげん)領域(りょういき)だぁぁっ!!」


 実況アナウンサーの興奮(こうふん)しきった叫びが、サーキットに響き渡る。


 自分たちのマシンが()き出す、飢えた獣が喉を鳴らすような重低音が、熱狂(ねっきょう)の渦に包まれたスタンドの隅々にまでとどろ()いていた。


 観客席から沸き上がる地鳴りのような歓声は、まさに最高潮。


 耳をつんざくほどの熱いエネルギーが、コース上を走るレーサーたちの背中を激しく押し上げていく。


 桜庭楓、十五歳。


 先行するライバルマシンのテールを射貫(いぬ)くような視線で見据え、全身の神経を()()ませていた。


 時速四百キロを超える、常識を遥かに置き去りにした超高速の世界。


 路面の(かす)かな砂粒の感触やマシンの震えが、厚いグローブ越しに伝わり、楓の集中力を限界まで高めていく。


「葵、最終コーナー! データ通りに、誰にも付け入る隙を与えない最短コースを締めるわよ!」


 楓の、勝利に飢えた強い意志が、激しい風切り音に混じって無線機から鋭く放たれた。


 先行するライバルマシンは、インコースを強引に塞ぎ、楓たちの進路を徹底的に封じ込めている。


「了解。ただし気をつけて、相手はここでこちらの動揺を誘う仕掛けをしてきます。もし計算通りに走れば、確実に接触は避けられません」


 弟の桜庭葵、十五歳。


 荒れ狂う戦場のようなコースにあって、葵の声だけは氷のように冷たく落ち着いたまま、楓のヘルメットの内側へ、確かな重みを持って響く。


 葵はパッセンジャーとして、むき出しの身体を車体から大きく外へと投げ出し、左右どちらへも瞬時に移動可能なこの四輪ニーラーの特性を最大限に活かし、凄まじい遠心力に引きちぎられそうな激しい重力に戦いながら、緻密(ちみつ)なバランス調整を担っている。


 まさに楓という最強の剣を使いこなす最高の鞘であり、熱くなりすぎる姉を支える、いつもの定位置にいた。


「データなんて、今のあたしには関係ない! あたしの勘が、一度だって外れたことがあった!?」


 先行するライバルの挙動(きょどう)が一瞬、外側にふくらんだ。


 脳裏に(ひらめ)いた電光のような直感を信じ、インコースの針の穴を通すような隙間にフロントをねじ込む。


 楓は精密な計算を上回る反応でフロントブレーキを握り込み、同時に右足でリアを絞る。


 車体を深く、深く傾け、右側のサイドタイヤが路面に食らい付く。


「キィィィィッ!」


 サイドタイヤが悲鳴と白煙を上げる。


 外側へと弾き飛ばそうとする強烈な重力を、楓は不屈(ふくつ)の腕力でねじ伏せていく。


 だがそこへ、抜き去られまいとするライバルが強引に体当たりを仕掛けてきた。


「ドォォン!」


 衝撃が車体を揺さぶり、一分の隙もないはずのバランスが崩れかける。


 だが、葵が即座に絶妙なタイミングで持ち手を掴み、左右に体重を移動させ、マシンの挙動を物理法則の限界ギリギリで繋ぎ止めた。


 楓の選んだラインは、ライバルの予測を半歩だけ上回る内側の、勝利の道を完璧に捉えていた。


 楓は、確かな勝利を確信した。


 全身を襲う激しい重力をねじ伏せ、タイヤを滑らせながらライバルを置き去りにして最終コーナーを立ち上がる。


 後ろで葵のヘルメットが楓の腰に当たる、いつもの信頼の感触を確認し、楓はスロットルを限界までねじり込んだ。


 メインの二輪が再び大地を蹴り、エンジンの震えがサーキットを激しく揺さぶる。


 栄光のゴールラインは、もう目の前だ。


「っしゃあぁぁ! 最速でぶっ飛ばすわよ、葵!」


 本来は聞こえるはずのない観客たちの歓声。


 だが今の楓には、それが最高の勝利の歌となって心に届いていた。


 ――だが、チェッカーフラッグが振られ、白熱のゴールラインを通過した、まさにその時。


 耳鳴りが脳を突き刺し、目の前の景色が、まるで熱で溶け出したチーズのように、ドロッと歪んだ。


「えっ……?」


 視界が、光に塗りつぶされるように真っ白に染まっていく。


 それは事故などの衝撃ではない、もっと不気味で異質(いしつ)な感覚。


 体がフワリと浮いているような感覚に包まれ、重力さえもがどこかへ消え去っていく。


 バイクの制御を失うよりも早く、楓と葵、その愛機であるレーシングニーラーは、天から降り注ぐ謎の光の渦に完全に飲み込まれていった。


 たった今掴み取った勝利の興奮も、腹の底を揺さぶるエンジンの爆音も、すべてが泡のように遠ざかり、深い静寂へと消えていく。


 光は、強い絆で結ばれた双子と、その鋼鉄の相棒を優しく、しかし容赦(ようしゃ)なく包み込み、現実の世界からその姿を消し去った。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

双子の絆と成長、これからも全力で描いていきます。


続きが気になる方は、ぜひ「ブックマーク」や「評価」での応援をいただけると嬉しいです!

次回もお楽しみに!

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