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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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54. ピクシー仲間になるってよ

「……で、俺に頼みたいってわけか」


 俺たちは仮のアジト──テリオットの地下室に戻ってきた。

 早速、ベネディクトに事の経緯を話す。


「その肝心のピクシーはどこにいるんだ?」


 あたりをキョロキョロと見回すベネディクトの目の前で、ピクシーが隠ぺいを解いてみせた。

 ベネディクトからすれば、何もない空間に突然小さな少女が現れたように見えただろう。


「ここよ」

「うぉっ!?い、いつからそこにいたんだ!?」


 ベネディクトは目を丸くし、しげしげと眺めた後に続けた。


「ほう……しかし、ピクシーとは俺も初めて見るなあ。俺はベネディクト、よろしくな」


「フェイよ。あんた、聖属性魔法を使えるんですってね?」


 ぶんぶんと小刻みに翅を動かす様は、まるで空中に静止しているようにも見える。


「まあ、な」


 ベネディクトは得意げに顎を上げて見せた。


「お前さんがどれほどの環境をお望みかは知らねぇが、汚れた空気を浄化する程度はお手の物だ」


 ベネディクトが指先を軽く振ると、淀んでいた地下室の空気がふわりと動き、涼やかで澄んだ風がフェイの周りを包み込んだ。


「……ふぁ、あ……」


 フェイはうっとりと目を細め、その風を全身で浴びるようにくるくると空中で踊った。

 ベネディクトの顔の前まで戻ってくると、全身で深呼吸をする。


「いいじゃない!あんた、見た目はむさ苦しいけど、風の扱いだけは合格だわ。よし、あたしの専属魔法使いとして採用してあげる!」


「気高きピクシー様のお眼鏡にかなって何よりだよ。専属は勘弁願うけどな」


 ベネディクトが呆れたように鼻を鳴らすが、フェイはどこ吹く風だ。

 そのまま彼女は、近くの棚に鎮座していた白い毛玉――モノラビットのルナに目を留めた。


「ちょっと、依人。なにあれ、すっごく不気味なのがいるんだけど」


「ルナだ。このアジトの番犬みたいなもんだな。魔法を食べるらしいから、変な魔法をぶつけるなよ」


「モノラビットね、知ってるわ。……魔物の分際で人間と共存しようだなんて生意気ね。おい、そこのデカブツ!挨拶くらいしなさいよ!」


 フェイが威勢よくルナの巨大な単眼の前でホバリングすると、ルナは面倒くさそうに「ギュ……」と喉を鳴らし、大きな瞳を一度だけパチリと瞬かせた。

 その瞬間、ルナが吸い込んだ空気に引っ張られ、フェイの体がルナのフワフワな毛の中にズボッ、と埋まってしまう。


「ちょっ!なによこれ、離しなさいよ!毛が!毛が口に入るー!!」


 ジタバタと暴れるフェイを、エリナが慌てて救い出した。


「もう、フェイちゃん。ルナはとってもお利口さんなんだから、仲良くしてあげて」


「む、無理よ!挨拶もろくに出来ないヤツと仲良くするなんて!出会って早々あたしを一口で飲み込もうとしたわ!……でも、この毛並み……悪くないわね。少しだけ、ここで休ませてもらうわ」


 脱出したフェイは、結局ルナの長い耳の間に潜り込み、そこを自分の特等席と決めたらしい。


「賑やかになったもんだな……」


 俺が苦笑いしていると、部屋の奥で静かに本を読んでいたクロニカが、視線だけをこちらに向けた。


「……依人さん。遊んでいる場合ではございませんわよ。その子が話していた、消えた仲間の件――あれは、魔導院の () の術式に、酷似しておりますわ」


 クロニカの冷徹な一言が、はしゃいでいた俺たちの温度を一気に引き下げた。


 フェイが震える声で語った空間が消えたという現象。


 どうやらそれは、魔導院の仕業である可能性が高いようだ。

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