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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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46 死闘の末に

 先ほど爆散した光を浴び、周囲にいた低級アンデッドも塵へと消えた。


 あれほど騒がしかった異形の咆哮も止み、森は死んだような静けさを取り戻していた。


 俺は膝をついたまま、荒い呼吸を整える。

 必死に思いで何とか切り抜けたが、脳はまだ現状についていけていなかった。


「あなた、一体何をしたの……?」


 クロニカが射抜くような視線を向けてくる。

 エリナも、信じられないものを見たという顔で俺を見つめていた。


「いや、俺は大したことはしていない。みんなの力をまとめ上げた……それだけだよ」


 事実を伝える。

 しばらく周囲を警戒し、新たな脅威がないことを確認した後、俺たちは重い腰を上げて再出発した。


────


「さて、今日の行軍はここまでだ。寝床を作らないとな」


 もうすぐ日が暮れる。

 亡霊の森での宿泊、第二夜だ。

 

 夕飯は、俺の魔法鞄にストックしてあった干し肉やパンに、道中で見つけた食用野草を合わせた質素なスープだ。

 焚き火の爆ぜる音だけが、不気味な静寂をかき消していた。


「ねえ、いつこの森を抜けられるの?」


 スープを口に運びながら、エリナが不安げに切り出した。


「順調にいけば、明日の夜には着くだろう。街道さえ出られれば、あとは王都まで一本道だ」


「良かった。もう、この森で夜を明かさなくて済むのね」


 エリナが深いため息とともに肩の力を抜く。

 隣で干し肉にかじりついていた俺も、その言葉に安心した。


「ああ、そう何日も悪夢にうなされながら寝るんじゃ、精神が参るからな」


「ベネディクト、あなたは、王都に着いたらもうお別れかしら?」


 クロニカの問いに、ベネディクトの手が止まった。

 彼は夜の森の闇を見つめ、それから俺たちへと視線を移す。


「それなんだけどよ。特に俺も、今すぐどこへ行かなきゃならねぇってやりたい事はねぇんだ。まあ、ない事もないんだが……今はあんたらを放り出す方が寝覚めが悪い」


 歯切れ悪く、彼は言葉を続ける。


「だから、当分は俺もあんたらに付き合うよ。……その、嫌じゃなければ、だがな」


「むしろ頼もしいよ。ベネディクトの聖属性魔法がなけりゃ、俺たちはさっき死んでた。……歓迎するよ」


 俺が手を差し出すと、ベネディクトは照れ隠しのような苦笑いを浮かべ、分厚い手で力強く握手を交わした。


「決まりだ。さて……問題は王都についてからなんだが。クロニカ、何か案はあるか? 俺たちは身を潜める必要があると思うんだが……」


 勇者パーティに追われる身。

 王都の正面玄関から堂々と入り、宿を借りるわけにはいかない。


 俺の問いに、クロニカはあからさまに呆れたような溜息をついた。


「ほんとに、あなた達は何の用意もないのね。そんなんでよく勇者に楯突いたものだわ。自覚があるのかしら?あなた達、今や指名手配犯の一歩手前なのよ」


「……面目ない。正直、俺たちもここまでの事態は想定外だったんだ」


 俺が肩をすくめると、クロニカは焚き火の火を弄りながら続けた。


「……王都の外周にあるスラムに、魔法付与の店を経営している、兄の古くからの友人がいるわ。まずはそこを拠点にするわよ。身分証の偽造くらいなら、そこでなんとかなるはず」


「助かる。……クロニカがいなかったら、今頃どうなってたことか」


「感謝するなら、王都に着いてからにしなさい。……それと」


 クロニカが少しだけ表情を和らげたように見えた。


「あなたの『目』。あまり過信しないことね。さっきのスキルも、あれはシステムを無理やり弄る力よ。……使いすぎれば、自分の存在まで書き換わってしまうかもしれないわ」


 焚き火の爆ぜる音が、一瞬、警告の鐘のように聞こえた。

 俺はそっと右目に触れる。


「……ああ、肝に銘じておくよ」


 夜が深まっていく。


 明日の夜には、ついに因縁の王都へ。


 悪夢のような森を抜け、俺たちはさらなる混沌の渦中へと足を踏み入れようとしていた。

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