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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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第39話 人を救うスキルの代償

ベネディクトがまだエッグだった頃から、彼の運命は決まっていたってか。やかましい。

 固唾をのんで待ち構えていると、森の奥に無数の光が浮かび上がってきた。

 腐敗し、執着し、現世にすがりつく死者たちの眼光だ。


カタカタ、カタカタ……。


 乾いた骨が擦れ合う音が、波のように押し寄せてくる。


 現れたのは、スケルトンの大群だ。

 十数体、いや、それ以上か。


「すごい数……久しぶりの生身の獲物に集まってきたのね」

 エリナが杖を構える。


「……さすがにこの数はまずい……手伝うぞ」


 俺は鞄から魔剣を取り出し、右手から襲い掛かってくるスケルトンを両断した。

 だが、スケルトンは何事もなかったかのように再生する。


 そんな俺たちの前にひょいと、法衣の男が躍り出る。


「言っただろ坊主。アンタらは見てな。……死人の相手は、死んでるような人生送ってる俺の方が慣れてるんでね」


 ベネディクトは物怖じせず、飄々とした態度で深呼吸をする。

 スケルトンたちが一斉に彼に襲い掛かるのを合図に、彼は両手を広げた。


「光あれ。闇を灼き、安寧を。――『ホーリー・グレア』」


 瞬間、周囲が眩い光に包まれた。

 キュイィィィーン──。


「ギ、ギェェェェェッ!!」


 亡霊たちの絶叫が森を震わせる。

 光に包まれたスケルトンたちは、その骨を砂のように崩し、蒸発させていく。


「……さすがですわね。まさか、これほどまでの威力とは……」


 クロニカが感心している。


「これが、聖属性魔法……」


 ベネディクトの所有スキルに『聖属性魔法』があることは、鑑定で見えていた。

 しかし、それにはレベルの表記がなく、どうやら固有スキルに近いもののようであり、威力はよくわかっていなかったのだ。

 これほどまでに、一掃できるとは。


「アンデッドは俺にとっては格好の獲物よ。どうだ?ちょっとは俺のことを見直したか?」


 ベネディクトがこちらに振り向き、ニヤリと口角を上げた。


────


 彼は、よく経験値稼ぎにこの森を利用しているようで、ルートも把握しているみたいだった。


 だが、それでも一行の進軍速度は芳しくない。


 道が悪く、水たまりを避けたり倒木を跨いだりしているせいだ。


 沈黙に耐えかね、俺は前を行く背中に問いかけた。


「なあ、聖属性魔法ってどうやったら覚えられるんだ?」


「覚えるっつーか、才能だな。俺の場合は生まれた時から持っていた。だから、俺の将来は生まれたときから決まっていたようなもんよ。聖職者として教会に飼われるか、王立魔導院に身を捧げるか、だな」


「他の道は選べなかったのか?」


 再び尋ねたところで、クロニカが横から割り込んでくる。


「甘いお考えですわね。聖属性魔法がどれだけ貴重な才であるか──そのような子どもが誕生したと知れ渡れば、各所から望まれ、放ってはおかれませんでしょう。

自由に生きる道など、まず望めないとお思いになったほうがよろしいですわ」


「呪いを解く力があるせいで、生き方を縛られる。呪われてんのは、俺の人生の方さ。……まあ、良かったこともたくさんあるけどな」


 鼻をフンと鳴らしたベネディクトは、後半にぼそりと付け加えた。


 じゃあ、なんで──。

 なんで今、ベネディクトは自由にしているんだ。


 尋ねようと思ったが、質問攻めにしても悪いと思い、控えることにした。


 それに、彼の風貌からして何となく察しはついた。


(……逃げ回っているんだな、ずっと)


 ベネディクトは巨大な倒木を跨いで、空を仰いだ。


「もう少し、距離を稼いでおきたいところだが……」


 重なり合う木々の隙間から見える空からわずかに差し込んでいた陽光も、今や消え入りそうなほどに細い。


 日没が、すぐそこまで迫っていた。

 死者の森に、本当の夜がやってくる。

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