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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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111 死のデッドロックを打ち破れ!

 下手に他の糸を切ろうものなら、[糸C]が「攻撃された」と誤認して破裂する。

 かといって[糸C]を切ろうとすれば、上書き中の[糸α]が不整合を起こして魂を破砕する。


 だから、どれも解けなかった。

 どれかを切れば死ぬ、完璧な死のデッドロックだ。


 だが――鑑定結果を読み切った俺の脳内では、パズルのピースが完璧に組み合わさっていた。


(切るべきは……深銀の注入線[糸α]でも、自爆トリガー[糸C]でもない!)


 俺の右眼が、狙うべき一本の線を捉えた。


(厄介なのは深銀のほうだ。こいつが監視プログラムを組んでいるせいで、下手に手を出せば自爆装置が起動するようになっている。だが……)


「――この順番なら、自爆は起きない」


 頭の中で、正しい解除の手順が組み上がっていく。

 俺は息を整え、右眼の焦点を研ぎ澄ませた。


「まずは第一ステップ。深銀による魂上書き線の[糸γ]を、『因果の解縫』で一時的にハングアップさせる!まずはこれで二重の洗脳を解く!」


 チョキン、と不可視のハサミを[糸γ]のストリングの根元に軽く走らせる。

 こちらは自爆トリガーの[糸C]には繋がっていない。


 スキルの発動により、右目に想像以上の痛みが走るが、今は無視する。


「今だ……第二ステップ!続けて『因果の縫合』で、[糸β]を切断する!」


 何か予想外の事が起きてはいけない。

 この手順ならば解決できるという自信はあるものの、できるだけ早く済ませる。


「そして――第三ステップ![糸α]を、スキルで完全に断ち切る!頼むぞッ……!」


 俺の目には、[糸α]は自爆トリガーである[糸C]と連結して見えていた。

 だから、問題が起こるとすればこの線を断ち切る時だ。


 幸い、ターゲットしても先ほどのような警告がでる様子はない。


「どうやら深銀の消滅が先のようだな。いくぞ!『因果の解縫』!!」


 ザシュッと、綺麗に整えられた手順に従って、すべての隷属の腕輪に繋がっていた厄介な自爆回路の因果の根元が次々とチョキンと切り落とされる。


ギュィィィン……!


 明滅していた鎖が不意に大人しくなった。

 深銀の注入が止まり、機能を停止したようだった。

 この一度の解除によって、五人の隷属の腕輪から深銀の上書きは完全に消え去り、それぞれの腕輪は綺麗に孤立した状態となった。


「やったか?」

「やったの──?」


 ベネディクトとクロニカが同時に声を出す。

 俺は『観測者』の全力展開に加え、スキルの連続使用で激痛に耐えながら答えた。


「深銀のほうはもう問題ない。あとは、隷属の腕輪を外すだけだ。仮説が上手く通るといいが──」


 そもそも、俺が勇者たちを救えると確信できたのはこのスキルの存在だ。

 『因果の解縫』さえあれば、隷属の腕輪に潜む呪いを綺麗に除去できる──そう思っていた。


 しかし、問題があるとすれば俺の体力だ。脳のメモリも魔力も、すでに限界を迎えていた。

 すべての隷属の腕輪を同時に一網打尽にすることはできない。


「まずは一人……やってみるか」


 俺は最も近くで震えていた禍津陽向に歩み寄り、隷属の腕輪に手を伸ばした。


 先ほどまでは深銀の呪いと干渉しあい、邪魔されていた。

 しかし今では、九条たちの体を縛っていた深銀の鎖は嘘のように消え失せ、残るは隷属の腕輪のみとシンプルになっている。


『隷属の腕輪』

[糸A:生命維持直結線]

[糸B:絶対命令受動線]

[糸C:防呪・自爆トリガー線]


 これが、現在の鑑定結果だ。

 果たして、あとはこれをどう解こうか・・・。

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