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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第4章 死者を愛する者の罠

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第85話 一夜明けて

 夜のテラスに押し出されたヴェイルとリュークは、ガーデンチェアに座って一息付いていた。


 ハーブティーを持って来てくれた執事のアレイガスが、静かにティーセットを整え、砂時計を卓上に置きながら、穏やかに声を掛けた。

「大変ですけど、楽しんでいらっしゃるようですね」


「まあ、今まで誰かが部屋に遊びに来る事はなかったからな……」

 ヴェイルがガラスのティーポットの中で花弁やフルーツがゆっくりと踊る様子を目にしつつ答えた。


「姉上は奔放すぎるんだよ……ヴェイルの部屋なのになんで本人が追い出されてるんだ」

 リュークが、砂時計が落ち切って執事が注ぐ琥珀色のお茶を眺めながらため息混じりに言う。


「それにしても……俺の部屋の風呂に女性が一度に二人も……」

 執事が去ったのを見計らったヴェイルが、俯いて頬を染めて呟いた。


「お前さ、アリアと婚約してるのにまだ……?」

 ティーカップを持ち上げたリュークが、控えめに聞いた。


 ヴェイルはパッと顔を上げたが、拗ねたように視線を逸らせて言う。


「婚約はしていても、彼女は成人していないじゃないか。それに今はあの子の中に……」

「……フィスファーナか?」

 彼がその姿勢のまま無言で頷いた。


「だよなぁ……どうなってるんだよ、一体。アリアもだけど、お前が可哀想だよ」


 フィスファーナの事は王族内では既に情報共有済みだった。


「パトラクトラ様の件と言い、アリアの事といい……事件続きだな」

「もしかしたら母上の失踪とフィスファーナの出現は関係があるのかも知れない」


「……え。どう言うことだ?」

「母上ほどの術者がそこらの人間に負けるわけはないだろう? 事故だってそうだ。異次元転移エリーネヴィンフェルシが使える母上が物理的な事故に巻き込まれる可能性は低い」


「だから?」

「例えば、フィスファーナに気付いて……彼女の力を利用したがる何か、人智を超えるものに襲われたとか、攫われた、とか……母上は妹だから」


「そんな……オレ達以上、いやパトラクトラ様以上の存在となると、一体何になるんだ?

 それにフィスファーナって言っても、身体はアリアなんだから『時空の魔女』の力が使えるかどうかは分からないじゃないか」


「そうなんだよなぁ……」

 ヴェイルがもどかしそうに言う。


 二人はそれきり黙って、どちらからともなくルーフテラスの上に広がる満天の星空を見上げた。



 暫くしてようやくアウドラから戻って来ていいよと声が掛かった。


 四人はそれからお茶とスイーツや軽食を楽しんだり、ゲームをしたりして過ごした。


「ヴェイルがこんなにチェスが強いなんて反則だわ!」

 アウドラがヴェイルに連敗して悔しがる。


「チェスは少し得意なんだ」

 彼が勝ち誇った顔をして言う。


 四人で出来るカードゲームもする。


「嘘だ……オレが5連敗するなんて」

 リュークが信じられない顔をして手からカードを滑り落とした。

 それを見てアリアが笑う。


 和やかな時間が、明日への緊張を解きほぐす様に過ぎて行った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 明け方、アウドラとアリアはヴェイルのベッドに二人揃って潜り込み、寝息を立てていた。

 リュークはソファーで腕を組んで眠っている。


 眠れなかったヴェイルはいつもの腰窓に座り、白々と明けて行く空をぼんやりと眺めていた。



 ——その目に、朝陽の中から溶け出すかの様に、二頭の大型の鳥がこちらに向かって羽ばたいて来るのが見えた。


 ハッとした彼が窓を開けた。

 入って来た冷たい朝の風に、他の三人も目を覚ます。


 ヴェイルは暫くそちらの方角を見ていたが、突然叫んだ。

「ストライア! ユシュラン!」


 鳥に見えたのは、彼らの王機竜だった。


「え?」

「「何?」」

 リュークとアウドラ、アリアが同時に言う。


 ヴェイルは身を乗り出し、そのまま窓から外へと飛び降りた。


「ヴェイル?! ここ3階だぞ!」

「「ヴェイル!」」

 しかしアウドラとアリアも同じ様に窓から飛び出す。


「おい! ……そうか、全員超人か」

 リュークも呟くと、同じく飛び降りてちょうど中庭に降り立った竜の元へと走った。


「ストライア!」

 ヴェイルが自分の竜に駆け寄って話し掛ける。

 ストライアが応えるように鳴き返す。


「ヴェイル、この子達『一緒に着いて来て』って言ってるわ」

 竜の言葉が判るアウドラが言った。


「横の子はリュークの王機竜よね? 私も翠玉竜バトギオークを呼ぶから。ヴェイルはアリアも連れて行ってあげて」


 ヴェイルとリュークは頷き、鞍を取りに行った。



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