↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第4章 死者を愛する者の罠

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/146

第77話 フィスファーナ

 その夜、アリアは疲れてしまったのか、いつもより早く床に着いた。


 蛍光蝶の羽化の季節が終わったので、広い居室には数カ所に小さな魔力供給電気を使った電球の入った、ガラス製の常夜灯だけが灯っていた。


 心地良い眠りの前の意識が遠ざかる時、誰かの声が聞こえた。


【……ここは……何処……?】


 ――ここは……ナザガラン国の魔王城よ……


 アリアが心の中で思う。

 声が驚いた様子で返して来た。


【ナザガラン? どうして? タイカーシアではないの……? いえ、あなたは……誰?】


 ――私? 私は……アリア=エルナディア……


【アリア……教えて。今は何年?】


 ――何年って……アルファラン歴の……2472年。


【2472年? 違う……私がいたのは、2152年のはずよ……いったいどうなってるの?】


 声の主が慌てる。


 ――どうなってるのって……どう言う事? それにあなたは誰?


【私は……フィスファーナ=アガン。さっきまで燃え盛る自分の城にいたのよ。2152年の、タイカーシアのレサイア城に。それに……ああ……どうしよう……】


 ――フィスファーナ……落ち着いて。どういう意味なの、それ。


【私……今、どうやらあなたの中にいるみたいなの。アリア、あなたが私なのよ……】


 アリアは驚いて目を覚ました。

 明かりを付け、部屋の中の鏡を見る。


【……これが、あなたの姿なのね】

「えっ?」


 頭の中で声がした。

「嘘。夢じゃなかったの?」


 驚いて鏡に近付く。

 鏡の中の自分はいつもと何も変わらない。

 しかし声がするのだ。


【ごめんなさい。私が……私が術を使ったせいで】

「術?」


【私達のレサイア城が襲撃に遭って全焼したの。反逆者と民衆に襲われて……私は妹を逃がそうと思って、時空を超えさせる力を使ったの】


「時空を……超える? 妹さんはどうなったの?」

【分からない……それに、その襲撃があったのは2152年で……】


「2152年。今から320年前ね。あなたは320年の時を超えたって事?」

【私は妹に術を掛けた筈なの。でも、気が付いたら心だけ……いえ、魂なのかしら。ここにいて……】

 

 フィスファーナの声が遠ざかる。

「……フィスファーナ?」


【お願い……探し……て……妹を……私の……パトラクトラを……】

「パトラクトラ? えっ? ……ねえ、フィスファーナ?」

 

 アリアが問い掛けても、返事はもうなくなってしまった。


「妹の……私のパトラクトラ? それってあのパトラクトラ様? まさか……そんなはずないわ」


 もう一度鏡を見る。

 そこには先程と同じ様に自分しか写っていない。


「やっぱり夢だったのかな? 不思議な夢……でも……」


 そう思いながらも気になって、彼女はシルクの就寝用のドレスを着たまま、暫く鏡の前で立ち尽くしていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 何処までも続いているのではないかと思われる程広い夜の海を、パトラクトラとタイカーシアの研究者達がそれぞれの竜に乗って飛んでいた。


「闇竜《アンライト》達、すんなり移住に応じてくれて良かったですね」

 自分達の間でだけ繋がる短距離通信用の魔石同士で通信する。


「そうだな。これで17年にも及ぶ心配事にけりが付いた。今夜はゆっくり眠れそうだ」

 パトラクトラも返事をする。


「この海を超えたらタイカーシアです。王太后様は一旦そちらにお泊りください」

「ああ、そうさせてもらうよ」


 彼女らは先日ヴェイルに告げた様に、闇竜《アンライト》達を総出で移住させに行っていた。

 17年前のウーヴル戦争時から続く闇竜《アンライト》の研究がやっと実を結んで、人間達と棲み分ける事が出来たのだ。

 

 後は帰ってヴェイルに話してやるだけだ……パトラクトラは疲れも吹き飛ぶかの様に晴々とした気持ちで黒竜《マギシラハ》ラタウスに乗っていた。


 竜達は快調に飛ばす。

 後少ししたら、陸地が見えて来るだろう。皆の気持ちが少し緩んだ時だった。



 ――突然彼らの真上の空に、空間の切れ目が現れた――





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。