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雨の日の処刑人と名無しの観客  作者: ゆうすけ


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13/17

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アルレッキーノが高笑いしながらさらに踏み込んだその時——


「……勘違いしないで」


明滅する光の中で、亜留々の透き通るような声が静かに響いた。


「守っているわけじゃないわ。……あなたの動きを『採点』していたのよ」


「なに……!?」


亜留々は開いていた傘を、一瞬で収束させるように「パンッ」と固く閉じた。

その動作と同時に、傘の先端から解き放たれたのは、細利なワイヤーではなく——雨水を一気に吸収し、高圧で圧縮して放つ『水流の刃(ウォーター・カッター)』だった!


ドッ……!!!


「ぬっ……!?」

アルレッキーノは驚愕し、間一髪でステッキを盾にして後方へ躍り出た。だが、高圧水流の衝撃波でアーガイル柄のジャケットが派手に切り裂かれて血が飛ぶ。


「な……高圧水流の射出機構だと……!? 傘のフレームの中に、そんなものを……!」


「私の傘は、雨の日にしか真価を発揮しないの」

亜留々は濡れた黒髪を優雅に背中へ流し、冷たい瞳でたたんだ傘を突きつけた。


「雨粒を集め、研ぎ澄まし、敵を穿つ。……これが、あなたを越えた『雨の日の処刑人』の姿よ」


「……クク……フハハハハ!」

アルレッキーノは切られた肩を抱えながら、狂気的な歓喜の声を上げた。

「素晴らしい! 完璧だ! 僕を超えた殺しの芸術……! やはり君こそが、僕のすべてを継ぐ者にふさわしい!」


「黙りなさい」

亜留々は冷たく言い放つ。


「それでは僕も本気を出そう」

突然表情を変えアルレッキーノは言った。


彼の攻撃の速さと強さが、明らかに今までと違うレベルに上がった。


亜留々は防戦一方となった。


アルレッキーノが放つ目にも留まらぬステッキの連打。

激しい金属音が雨音を打ち消し、暗闇の中で散る火花が二人の影を不気味に浮かび上がらせる。


「どうした亜留々! 防戦一方じゃないか! 僕が教えた暗殺術の神髄を見せてみろ!」


アルレッキーノが高笑いしながら、さらに踏み込んだ。

仕込みステッキの突進が亜留々の肩口をかすめ、黒い衣類を切り裂いて鮮血が舞う。


「亜留々……っ!?」

矢吹が思わず叫んだ。


「くっ……!」


亜留々の眉がわずかに歪む。

アルレッキーノのアサルト精度とスピードは、彼女の予想を遥かに超えていた。防弾仕様の黒いシルク傘一本では、目くらましと斬撃の多角攻撃を捌ききれない。追い詰められた亜留々の背中が、街頭ビジョンの支柱へと追い込まれていく。絶体絶命のピンチだった。


アルレッキーノとの激しい攻防の中、甲高い金属音が雨の渋谷に響き渡った。


バキンッ!


「……ッ!?」


アルレッキーノの鋭いステッキの一撃が、亜留々の黒い長傘の骨組みを正確に捉え、真ん中から真っ二つにへし折ったのだ。


「亜留々‼」

矢吹が叫ぶ。


「ハハハハ! どうした、僕の最高傑作! 自慢の『傘』を失って、羽を捥がれた鳥の気分はどうだい⁉」


アルレッキーノが狂気的な高笑いとともに追い打ちをかける。折れた傘は使い物にならず、路面を転がった。手ぶらとなった亜留々は攻撃を防ぎきれず、激しい打撃を受けて濡れたアスファルトの上へと吹き飛ばされた。 


「……くっ……!」


絶体絶命。冷たい雨が容赦なく亜留々の全身を打ちつける。

アルレッキーノがステッキの仕込み刃を掲げ、止めを刺そうとゆっくりと歩み寄ってきた。


「終わりだ、亜留々。君の『雨の日の処刑』も、ここで廃業だ」


大城がマグナムを構えようとするが、アルレッキーノの動きはあまりに速く、間に合わない。

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