第十六話 英雄ヤーン
翌日の朝。
酷かった豪雨は上がり、朝靄が辺りを包んでいた。
リシリスの家がある大樹の枝から他の枝に板が掛けられていて橋の様になっていた。
その先の枝の上に小さな小屋があり、そこがトイレになっていた。
真下には川が流れている。
その小屋から家の方にヤーンが戻って来た。
家の中に入ると、家の隅のヤーンの定位置に寝転がり、もう一寝入りする。
しかし、異変に気づいてヤーンは起き上がる。
ヤーン「あれ?」
二人が居なかった。
慌てて家の外に顔を出して周りを見る。
すると、リルシリスとリシリスはそれぞれ違う場所で大樹の枝に座り、大樹の葉から雨露を採取していた。
ヤーンは二人を確認したら安心して、あくびをしながら家の中の定位置に戻ってもう一度寝る。
そんな時、叫び声が聞こえた。
ヤーン「なんだ!?」
慌てて起き上がると外に顔を出した。
リルシリス「リシリス!」
リシリスは大樹の枝にかろうじてぶら下がっていた。
リルシリスが急いで助けに行こうとするが、大樹の表面が滑って上手く移動が出来ない。
咄嗟にヤーンは飛び出していた。
一目散にリシリスの元へ駆け寄った。
そしてリシリスの手首を握り締め、力一杯引き上げる。
そしてリシリスは何とか枝の上に戻る事が出来た。
ヤーン「はぁ、良かった、気をつけるんだよ」
リシリス「は、はい。あ、ありがとうございます」
ヤーン「怪我はない?」
リシリス「大丈夫です、どこも痛くないです。ヤーンさんは大丈夫ですか?」
ヤーン「俺は大丈夫だよ、不死身だから」
リシリスは嬉しくて喜んでいた。
そんな二人の様子を遠目に見ていたリルシリスは思った。
リルシリス『よくやった!これで私も自由だ!』
次第に朝靄も薄らいで、晴れ間が広がってきた。
今日は日差しが強くなりそうな気がした。




