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077話『共鳴』




「ふぅ……ふたりとも、グゥだよ! 次がラスト……ちょっとだけ待ってね」



 ここまで30分も打ち続けただろうか。


 リーデンはもちろん、ルーラも項垂れてハァハァと荒い息を吐く。



(さすがにふたりとも限界……まぁ、僕もだけどね)



 魔力も集中力も使いっぱなしで、ザクトも珍しく玉のような汗をかいていた。



(最後の1カ所……これで、仮死の魔法を解除する『鍵』の機能を残したまま、奴(ヴィルゲン)の支配を断ち切れる)



 そう考えた瞬間、ザクトはあらためて責任を感じヒヤッとする。



(リーデンのお母さんが帰ってくるかどうか……これで決まるんだ。僕が指示を間違えなければ……)



 妹(ハレッタ)を救った時以来の『命の重さ』が、肩にのしかかるような気がしていた。



(ビビるな、ザクト! 僕は……エルフ王。人間の家族だって、救ってやるんだ!)



 最後の魔法陣を起動し、蒼い刀身の根元あたり、銘の入った箇所へ浮かべ、慎重に位置を調整する。



「よし……オッケ。決めよう! 僕たち3人なら、絶対大丈夫!」


「は、はい! リーデンさん、いきますねっ!」


「おう! お前らの全部、俺に貸してくれ!!」



 残量を全部まとめて渡す勢いで、キツく瞼(まぶた)を閉じたルーラがリーデンの腕に魔力を送り込む。


 白光を帯びた両腕でハンマーを握り、リーデンは大きく振りかぶる。


 最後の一打という緊張感はもちろんこちらも同じで、魔法陣の中心を見つめながら集中力を振り絞る。



「クッ……!」



 一瞬バランスを崩し、ガクッと腕が下がる。


 なんとか持ちこたえるが、自分の不甲斐なさにリーデンは苦笑いした。



「親父…………最後の一打、一緒にやらねーか?」


「何だリーデン、あと一打だというのに、音を上げるのか?」


「ちげーだろ! 最後だから親子の力を合わせたらどーか、って……言わせんなよクソ親父!」



 リーデンの照れ隠しに、その場の全員がほんわかした気持ちになる。


 とはいえ、ザクト以外の者に『父との記憶』はないのだが。



(エルフとしては母さんしかいない僕も、転生前はちゃんと父さんがいたもんな。口うるさくて、あんまり仲良くなかったけど……もっと話しとけばよかった)



 リーデンとガンドルの気心しれたやりとりに古い記憶が甦り、ついしんみりしてしまうザクト。



「リーデン、君がうらやましいよ。父上と……そして、もちろん母上と、これからもずっと仲良くしてね?」


「あ? どこが……」



 悪たれ口を叩きそうになるのを途中で堪え、リーデンは『しかたねーな』とばかりに溜息をつく。



「いや……ま、それなりに、いー感じでやっていくよ」



 どこまでも照れ隠ししつつ、ザクトの優しい微笑みから顔を背け、素直に応えた。



(エルフは……男がいねーんだもんな。クソ……そんな顔されたら、親父と仲良くするしかねーだろ!)



 照れを捨て、自分の腕を支える父(ガンドル)と目を合わせ、頷き合う。


 次にザクトへ視線を送り、同じく頷き合う。



「ザクト! 神剣【神の蒼流】……人間代表として、お前に返すぜ!!」


「うん、受け取るね!」



 ハンマーが振り下ろされ、キィンと一番澄んだ音が辺りに鳴り響いた。


 ガラスの割れるような音とともに魔法陣が砕け散り、刀身が本来の力を取り戻す。


 さらに強くなった輝きは小屋中を幻想的なサファイアブルーに染め、その刃文(はもん)は荒波がうねるように力強く揺らめく。



「こ、これが神剣の……真の姿なのか。なんて美しい……」



 鍛冶屋として素直に感動するリーデンが感想を言いかけたその時――



「はうっ…………あぁああああああああッ!!」



 リーデンの後ろで見守っていたルーラが突然、悲痛な声を上げた。



「ル、ルーラ!? これって……共鳴?」



 輝きが増していく蒼の刀に呼応するように、ルーラの胸から緋(あか)い光がほとばしる。


 その光は天使の輪っかのような魔法陣を描き出し、中心の穴からはあろうことか炎そのものが噴き出した。



「はッ…………ふあぁ……」


「ルーラ!!」



 ザクトは鍛冶場から飛び出し、仰向けに倒れていくルーラを抱き留める。


 その間にも炎は噴き出し続けていたが、ザクトは気にも留めず、ルーラに顔を近づけ呼びかけた。



「ルーラ、しっかりして! 共鳴の影響で、旭緋(あさひ)に拒絶反応が出たのか? どうしよう……!」



(ルーラの命を繋ぎ止める力が……保てなくなる?)



 ザクトは焦り、とにかくその炎を止めようと、無我夢中でルーラの胸に手を伸ばした。



「あうッ!!」


「!?」



 ザクトの手は吸い込まれるように、ルーラの胸の中へ沈む。


 それを合図とするように、まぶしい光が小屋の中に充満し、ザクトはたまらず瞼(まぶた)を閉じた。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!


金曜日の更新がなくなり、ちょっと日が開きましたが……

読み続けてもらえているかドキドキです。

前回、まとまったポイントをいただけて喜んでいたんですが、

日が開いた今は、怖くて推移を見れてません(笑)


リーデン&ガンドル最後の一打が決まり、ふた振り目の神剣が解放されました。

兄妹関連のお話もいいですが、親子のお話もやっぱりいいものですよね。

感想などなど、ひとことでもいいのでよろしくお願いします!

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