063話『ちょびっと怒ってますからね?』
「とにかく……その能力を解禁させたのはルーラで、私はそれを解説するため出てきただけ。どう使うかは、エルフ王……お前次第……だ」
「あ、ちょっ……神!」
解説が終わると、アメーテルはサッサと帰ってしまい、ルーラは再び脱力し俯く。
どんな能力なのかハッキリと言葉になったわけではないが、他の者もなんとなくどういう能力なのか察している空気。
「マジでそんな能力あるのかしらねーが……こっち見んなよ痴女」
「ち、痴っ…………ま、待ってよ! 今、勝手に能力を押しつけられた僕は被害者っていうか……」
「兄様、見たんですね!? そんなにルーラのむっちりむにむにな肉体がいいんですか!? わたくしはダメですか!?」
「ダ、ダメとか言ってな……って、ハレちゃん何言ってんの!?」
「ザクト様、本当に我々の予想通りなのか確かめるためにも、ハレッタ様の下着の色、当ててもらっていいですか?」
「シャノン! 他人の下着を犠牲にしないで! いや、それで『自分のを見ろ』って言われても困るけど!」
てんやわんやしていると、騒ぎに釣られ、ルーラがフラつく頭を押さえながら瞼を開く。
「はれ……わ、わらひ……? あややや、目が回るぅ~!」
「ルーラ? あ、あの……その……だ、大丈夫?」
がっつり公衆の面前でキスしてしまい、ルーラはもちろん、周りのどの顔も見ていられないザクト。
少し酔いが覚め、ルーラは元のルーラに戻っていた。
が、頭をグラグラさせながら水の入ったコップを手に取り、ダバダバこぼしながら一気飲みする。
「ルーラ、あなた……どこからどこまで記憶あるんですの?」
「はへ? えと……喉が詰まって、お水を飲んらと思ったら……頭がチカチカ~ッ! と。気を失ったんれすね、わらひ……」
「……ハァ~。この子ほんと……わからないですわ!」
その場の全員がグラングラン首の据わらないルーラに呆れ、『何も言うまい』と言葉を引っ込める。
周りの客のヒソヒソ含め、その空気をなんとなく感じ、ルーラはザクトにコソッと耳打ちした。
「あ、あの……わらひ、もしかして何かやっちゃいまひたか?」
「……いや、何もなかったよ。さ、深呼吸して……」
(ルーラに『やられちゃった』なぁ。そのあと、こっちも『やっちゃった』わけだけど……神が悪いんだからね?)
神が『服だけを見ないように』と言った時点で拒否することはできたはずだ。
が、あの場面でそんな風に思考できる男、そうはいないだろう。
「おい……マジでてめーら、何しに来たんだよ? マジメに話しねーならオレは帰るぞ」
「ま、待って待って! マジメに話すから!」
立ち上がるリーデンに、ザクトは慌てて『待った』をかける。
問題解決しに来たはずが、派手にやらかしてしまい、何をしに来たかわからなくなる。
「とにかく一度、父上に会わせて欲しいな。話に応じてくれるかはわからないけど……そういう対応も含めて、様子を見たいし」
「ハァ……わかったよ。言っとくが、絶対ふざけんじゃねーぞ? さっきみたいなのはマジでやめろよ?」
「あはは……わかってますってば」
* *
「ここだ。ちょっと待ってろ」
都心から40分ほども歩き、ようやく王都の外れ、目的地であるガンドルの鍛冶屋に到着。
リーデンはザクト達に念を押し、小屋の中へ入っていった。
「ハレちゃん……いーかげん機嫌直してくれないかな?」
「別に……わたくし機嫌悪くなんてないですわ、ええ」
道中、ほとんど会話もなく、全員が気まずい時間を耐えながら歩いてきた。
ルーラはまだ少しフラつきながらも、この最悪な空気を打開すべく思案する。
(やっぱりハレッタ様、私が酔っ払ってしまったから怒ってるのよね。でも、どう謝ればいいのかな……?)
いくら考えても答えは出ず、ルーラは自分らしく正直ドストレートを選択する。
「ハレッタ様! みっともない姿を見せてしまい、すみませんでした!」
「何ですか。あなたがわたくしに何をしたと言うのです?」
「ですから……みっともない姿を見せたので?」
ムスッとした顔を崩さないハレッタにビクビクしてしまうルーラ。
そんなルーラの目の前までハレッタはツカツカと近寄り、顔を近づけ見合わせる。
「みっともない姿を見せたら、わたくしはあなたを嫌いになるんですか?」
「こんなマナーの悪い醜態を見て怒っただろうな……と思いまして」
「ほ~ん……それで、わたくしに許して欲しい、ということなんですね?」
「は、はい! どうしたら許してくれますか? できることなら何でもします!」
相変わらず、素直でまっすぐなルーラに、ハレッタは少しイラッとしてしまう。
と同時に、悪意のないルーラにいつまでも嫉妬している自分にもイラッとしてしまう。
「わたくしから罰を受けても納得するんですか?」
「それで許してもらえるなら……。私、ハレッタ様と友達でいたいんです」
「…………じゃあルーラ、目を瞑って歯を食いしばりなさい!」
ルーラはハッとして、すぐにキツく瞼と唇を閉じる。
そんな疑いのない顔を見て、ハレッタはクスッと小さく笑った。
(本当は……今、ちょびっと怒ってますからね? そんなことで、わたくしが友達やめると思ってたなんて……もうっ)
「んむっ!?」
ハレッタは罰として、ルーラのその唇にキスをした。
ルーラをビックリさせた喜びと、ひとまず間接キスで満足するハレッタ。
だが、そんなことをまったく理解できていないザクトは大混乱に陥った。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!
勢いに任せて、キャラクターにどんどん動いてもらっていると、
なんだかとんでもないことをし始めています……笑。
こんな人たちですが、応援よろしくお願いします!




