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062話『くちづけ』



「おいおい、こんな店先で魔法でもぶっ放す気か? やめさせろ!」


「この子は防御魔法専門だから大丈夫だと思うけど……」



 元々、神様が命を繋いでいたという事実。


 エルフの魔法薬で一命を取り留めたこと。


 神剣を胸に入れ、ザクトの魔力が与えられたこと。


 ルーラに特別な現象が起きる原因は、そろそろ枚挙にいとまがない。



「ルーラ? お~い!」



 俯く顔を覗き込もうとしたその時――



「ラクトしゃま!」



 ルーラは突然立ち上がり、グルーンと頭を一回転。



「は、はい?」


「……ラクトしゃま! わらし……ちゃあんと役に立ちましゅから……!」


「わ、わかってるよ。『役に立たない』なんて言ってないでしょ?」


「い~え! 大飯食らいで無駄に重量級なメイロらと……『ダンジョンでスイッチ式の仕掛けがあったら重りに使えるかな』くらいに考えてるれしょー!」


「考えてないよ! 僕、ルーラのこと評価してたつもりだけど……ウソ言ってるって思われてたの?」


「ウソらとは思ってませんけど……ラクトしゃまのすごさを見てると、不安になるんれすぅ!」



 体を捻りブンブン腕を振る仕草で胸の方もユッサユッサ揺れ、注目する気がなくても、つい見てしまう。


 普段の振る舞いからすると、その言動は少し幼い頃に戻ったのかと感じられた。



(酔うと子供っぽくなる……のか? だとしたら、記憶を失う前のルーラってこんな感じだったりして?)



「おい、よくわかんねーが……てめーら、主従の関係・女同士・種族違いでイケナイ関係なのか? 他人(ひと)の趣味に口出す気はねーが……険しい道行ってんな」


「ち、違うから! そんなイケナイ関係なんて……」



 慌てて手を振り否定するザクト。


 その手を、ルーラの手がギュッと握った。



「ラクトしゃまが望むにゃら……わらしのすべては、自由にしていいんれすよ?」


「バッ…………酔っ払いすぎ! ほら、お水飲んで……」



 視線をテーブルに落とした瞬間、ルーラの手がザクトのむにっとした頬をホールド。


 そのまま顔を近付け、しっかりと唇同士のキスをした。



「ニャ――――――――――ッ!?!?!? ルルルルルーラ、あなた何を……!」



 ハレッタが叫ぶが、ルーラは唇を離さない。


 ザクトは頭がフリーズし、されるがまま口づけを受け入れていた。



(な、何が起こってる? やわらか……僕、ルーラとキスしてる? 何だろ……胸の中が熱…………あっつい!?)



 ルーラの発する赤い気(オーラ)がザクトにも移り、その胸へと集束していく。


 ザクトは『熱い』と感じたが、そ(・)れ(・)は自然と身体に馴染むものだった。



「う……はぅ……」



 唇を解放したルーラはしばらくポーッとしていたが、フッと糸が切れたように脱力して椅子に座り直す。


 そして、全員が絶句する中、スースーと可愛らしい寝息を立て始めた。



「な、何なんですか!? 酔った時の言動は、その者の潜在的な欲望が表に出ているのでは? この子……こんなふしだらな女なの!?」


「いや、色んな影響があるから、まだルーラのせいかどうかは……」



 言いかけたその時、ルーラの瞳が開き、ザクトの目を見据えて話し始める。



「エルフ王よ……アメーテルだ。前回は任せきりになってしまい、すまなかったな」


「あ、神様? いや、そんなことより……ルーラ、これ大丈夫なの?」


「先程の口づけは……必要な手順だ。神剣から抽出した魔力をルーラの中で変換し、一部、お前に返しておいた」



 アメーテルは相変わらず、ルーラの顔を無表情にして告げる。


 しかし、その体が入れ替わったわけではなく、頬は赤らんだままで、アルコールの影響はそのままのようだった。



「ふむ……ルーラは極端に酒が弱いようだな。だが、意識を制御するにはちょうどいいかもしれん」


「僕に魔力を返す……って、どういうこと? ルーラの命を繋ぐために入れたんでしょ?」


「生かすための魔力はもちろん確保してある。それとは別に、この娘には他人の魔法を変換・拡大する能力があるのだ」



 その言葉にハレッタがハッとする。



「そういえば……この子の防壁(バリア)を通した魔法、変質していましたね。あの性質を効果的に使えれば、色々な魔法の研究に役立ちそうだと思いましたし……」


「うむ。その能力(チカラ)により神剣に含まれた魔力を分析し、エルフ王が本来使える能力(チカラ)を起動する鍵(キー)を精製したのだ」


「僕が本来使える能力(チカラ)……?」



 ザクトは手のひらをジッと見つめ、自分の魔力の流れを感じてみる。



(さっきまでと何かが違う気はする……けど、何だろ? ちょっと視力がぼんやりするような……)



「左目を閉じ、右目だけでルーラを見てみなさい」


「右目だけ? うん……で?」


「で……服だけを見ないようにするのです」


「え、それって…………え!?」



 目の前でルーラの服だけがスウッと消え去り、テラス席の中ひとりだけ全裸で座っている少女がいた。


 その豊満な肢体だけでなく、胸の中心にある黒い稲妻のアザもハッキリ確認でき、ただなんとなく女性の裸体を脳内に映し出しているわけでないと感じられる。



(透視能力!? 戦闘で役立つような能力(チカラ)を想像してたのに……これ、むしろ気が散る要因にならない!?)


いつも読んでくださって、ありがとうございます!


今日、だいぶ遅い時間の更新になりましたが……

中身の品質を保ちつつ続けるには、今のペースが

自分の能力での限界かも……笑。


ここまで書いてきた分は、自分で楽しく書けたと思ってますが、

ちょっと設定やプロットをみっちり考える時間も必要かなぁ、などと考えてます。

連載を続ける作家さんは、ほんとすごいですよね!

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