↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/77

061話『一番重要かもしれないスキル』



「悪かったな、下品で。エルフのお姫様なのかしらねーが、こっちはクソ庶民のクソガキなもんでね」


「クッ……失礼しますわ!」



 プンスコと音がしそうなハレッタがテーブルを移動すると、シャノンがそれに続く。


 苦笑いが引きつり笑いに変わっていくザクトの横に、大量の料理が乗ったトレイを持つルーラが帰ってきた。



「ハレッタ様……どうしたんですか?」


「あはは……まぁ、僕たちエルフは女しかいないからね。男の人に慣れてないのはしょうがないよ」


「ああ、なるほど。そういえば私たちって、男性に慣れてない人しかいないパーティなんですね」



 ルーラはまずハレッタ組のテーブルへ近づき、料理の乗った皿と飲み物を配膳する。


 そのまま、いそいそとザクトの隣に腰を下ろし、瞼(まぶた)を閉じた。


 その瞬間、腹部から『ゴゴゴゴゴ』と、地の底から魔王でも出てきそうな音が鳴り響く。



「あはは……遠慮せずドンドン食べてね」


「ううっ……すみませぇん」



 ペコッと頭を下げ、テリッテリに焼き目のついた鶏肉やチーズをパンで挟んだホットサンドのような料理を頬張る。



「んん~~~っ❤」



 見ている方までとろけそうになる幸せいっぱいの満足顔。


 まるで治癒魔法を受けたかのように、ザクトの心はほんわり癒されていた。



「そうか……エルフってことは、てめーも女なんだよな。男の子みてーな口振りして」


「あ、まぁ、僕はそういう風に育てられたんだ……あはは」



 リーデンにあらためて言われ、ザクトはヒヤッとする。



(ちゃんと女子っぽくした方がいいのかなぁ。人間……ってか、男子との会話が新鮮で、楽しくなっちゃってる)



 庶民の味を楽しみながら、ザクトは王都へ来た経緯をざっくりと話し出す。


 ルーラの神託により、ケイト王国の危機を救うために王都へ来たこと――


 王様や騎士団は『自力防衛を優先する』ということで、最初エルフは信用されなかったこと――


 色々あって最後は協力し合い、死霊使いパンデルと上級魔族フォルキルを討伐したこと――



「ふーん、そんなヤベー事件だったのか。ま、知らなかったのはマジなんでな」


「それって……騎士団を信用してることでもあるのかな?」


「それもある。騎士は市民を守る仕事を精いっぱいやってるだろうし、それでダメなら仕方ねーってことだ」


「あはは、肝が据わってるね。でも……死んじゃったら、仕事もできなくなっちゃうんだよ?」


「そりゃ、そうならねーようにしっかりやって欲しいがな。それでも滅ぼされるんなら……最期の時まで鉄を打つだけだ」



 リーデンは腰の金槌に手を添え、しみじみと呟く。


 カッコつけるわけでなく本心の言葉だったので、リーデンは急に恥ずかしくなっていた。



「なんでオレ、こんなこと言ってんだ? てめー、何か精神魔法とか使って言わせたんじゃ……」


「かっ…………かぁっこいい!!」


「は?」



 人間だからこそなのか、若いくせに『鍛冶しかない』と言いきるその潔さ。


 年下の頑固職人の言葉に、ザクトは本気で感動していた。



「実は、僕も趣味で鍛冶をやってるんだ。でも、独学なもんで……」


「鍛冶が趣味だぁ? 遊び半分でやってんのと一緒にすんな!」


「そうだよね……僕は鍛冶が好きで真剣にやってるつもりだけど、リーデンみたいに鍛冶ひと筋の人には、そう言われても仕方ないもん。すごいなぁ……かっこいいなぁ!」



 ザクトのキラキラ輝く瞳が、リーデンを尊敬の念MAXで見つめる。


 リーデンは引っ込みがつかなくなり、誤魔化すように大きな音を立てながらジョッキを置いた。



「な、何なんだよてめーは……やりにきーな!」


「リーデンさん、ザクト様は本気でふよ。あなはわ認めないかもしれまへんが……ふぉの方は本当に鍛冶が好きなんでふ」



 ルーラが、マッシュポテトをモリモリ頬張りながら言う。


 清楚そうな美少女が台無しなのだが、ザクトはリーデンにうっとりしており、ツッコミ不在の状況だった。



「鍛冶が好きな女なんて怪しすぎるし……簡単には信じられねー。けど、姉ちゃんが認めてんなら……しょーがねー、話はしてやるよ」


「ありがとう! じゃ早速! どこの鉱石を使っ……」


「兄様! 違うでしょっ!!」



 たまらず、隣のテーブルからハレッタのツッコミが入る。



「話が進まないのですから、鍛冶の話で盛り上がらないでください!」


「ハッ……そ、そうだったね。じゃ、リーデン、本題だけど……」



 あらためて、リーデン本人から父・鍛冶職人ガンドルの異変について聞く。


 尾行し、旧・鍛冶小屋へ入っていく父親を確認したが、青い霧で何も見えず、外で待っていたものの、いつの間にか眠っていた、ということだった。



「なるほど……ただ見えなくするためだけでなく、眠りを誘う効果があるのかもね。なんらかの魔法である可能性は高いか」


「目覚めたら、小屋の中は誰もいなくて……。でも家に帰ると、親父はオレの後に帰ってくるんだ。ただ、眠らされたオレが無事ってことは……親父は完全に操られてるとかじゃねーと思ってる」


「確かに、ガンドルさんに付いてる何者かは、嗅ぎつけてきた人間を口封じするか。ガンドルさん自身が借り物の魔法を使ってるか、見逃してくれるように頼み込んだか……」



 真剣に考え込むザクトの顔を見て、リーデンは呆れたように溜息をつき、考えをまとめる。



(親身になる仕草は芝居に見えねーが……エルフの裏の顔なんてわかんねーし。だが、怪しいところがないのに疑い続けるわけにもいかねーな)



 どんな意地っ張りでもなんとなーく心を開かせてしまう、少年らしい人なつっこさ。


 特別なスキルがいくつもあるザクトだが、一番目立たないのに一番重要かもしれないスキルがこれだ。


 そうして、今回も話がまとまりそうなその時、神妙にしていたルーラが嬉しそうに言う。



「おふたりって……そのうち種族を越えて信頼し合う相棒同士になって、色んな事件を解決していきそうですね! 女性に人気が出そう!」


「は? なに言ってんだてめー……んなわけねーだろ? 気持ちわりーこと言ってんじゃねーよ」



 速攻でイラついた顔になるリーデンに、ルーラはビクッと背筋を伸ばす。



「す、すみません! なんだか、突然そんな物語を妄想してしまって……んぐッ!」



 口に入っていた食べ物を一気に飲み込んでしまい、ルーラの顔色がサアッと青くなる。



「ちょっ……何か飲んで飲んで!」


「ぅう……ッ!」



 ルーラは目を白黒させながら、慌てて近くにあったジョッキを掴み、琥珀色の液体を喉の奥へと流し込んだ。



「あ、てめー! それオレの……」


「…………ひっく!」



 リーデンの水割りを完全に飲み干し、ルーラはガクンと糸が切れた人形のように崩れ落ちる。



「え……いきなり寝た? ルーラ? おーい……」


「う…………ぅう~……」



 ルーラは俯いたまま、ビクンビクンと肩を震わせていた。


 かと思えば――その豊満な胸から突然、赤みを帯びた光が噴き出し、ルーラの全身を包む。



「な、何事!? 酔っ払って……何か覚醒した!?」



 そんな能力があったら、ヒロインとしてあるまじきイメージダウンかもしれない。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!

無駄は省いていきたいと常に意識してるつもりなんですが……

会話だけのシーンがなかなか終わらないですね汗。

自分で面白い・必要だと思うものと、読者様が見たいものを

合致させるということは、どれだけやっても難しいものです……。

もっと楽しくなるようにがんばりたいところ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
しっかり食いしん坊キャラしてますネ!偉そうなことは言えませんが書きたいものを楽しく描かれれば読み手にも通じるのでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。