057話『かわいいよ』
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エリスの部屋(メイドが3人でシェアする相部屋)へ連れてこられたザクト一行。
他のメイドがいるわけではないが、女子しか入れないであろう部屋で、ザクトはキョドっていた。
「ぼ、僕やっぱり外で待っ……」
ドアノブへ伸ばしたその手をシャノンが掴み、バックハグするように拘束する。
「ザクト様、男の子のように育てられたと言っても、同じ女子同士。お着替えをキャッキャウフフと盛り上がりましょう、女子同士」
「ちょ! シャノン、やめっ……」
シャノンはあらためて強調するように『女子同士』を連呼する。
昨日の風呂イベントといい、男としては最高にうらやましい状況。
だが、ザクトはエルフ女子ばかりの中で生きてきて、いつのまにか人間女子にコンプレックスのようなものを感じていた。
(いや、めちゃめちゃ嬉しいシチュだけど……ルーラにはヘンな風に思われたくないなぁ)
計51年も生きているはずだが、その心は見た目通りの少年らしいものになっていた。
「さ、ルーラさん、お着替えしましょうね」
「じ、自分でできますよぅ」
「丈感など調整しますから、遠慮しないでください。さ、脱いで脱いで」
「ちょ、ま……ひゃあっ!」
ドジっ子のようなエピソードをバラされていたが、さすがは現役メイドのエリス。
テキパキ手際よくルーラの服を脱がせ、自分と同じメイド制服を着せていく。
「ルーラさん、胸大きいのに綺麗な形ですねぇ! お尻もどっしり安産型で、いいお母さんになれますよ」
「ひぃ、言わないで……! だらしない身体ですみませ……んふッ!」
コルセットのような下着で締め上げられ、真っ赤な顔のルーラから空気が漏れる。
紳士的に目を閉じていたザクトも、気になる会話に思わず薄目を開けてしまう。
(初めて会った時も、お風呂でも、意識しなくても普段から感じるけど……やっぱ、そういう系のグラビアアイドルみたいだよね。あんなエチい体でお姫様とか……同人誌かな?)
エルフの民は基本痩せ型で線が細く、平均バストサイズも低めの数字になる。
なので、人間女子ルーラに出会ってから、ザクトはつい転生前の記憶を引き出すことが多くなっていた。
(生まれ直して、身体の成長も遅くて……転生前の記憶はあるが、明らかに僕の心は若返ってる。おっさんのマインドと少年の気恥ずかしさが共存するこの感覚……胸の中がムズがゆいなぁ!)
誰も経験していなそうな『思春期・亜種』を抱えながら、ザクトはまた瞼をキツく閉じる。
「ふぅ……なんとかできましたね。どうでしょうか?」
程なくして、エリスの合図に、恐る恐るまつ毛を上げる。
クラシカルなエンジ色のワンピースドレスに純白のエプロンとヘッドドレス。
元々、深く美しい黒髪に黒基調の僧侶服なので、地味なはずのメイド服がまるでオシャレ選択肢のひとつかのように見えた。
「ルーラにこう言うのが適切かどうかわからないけど……うん、似合ってると思うよ」
「あ、ありがとう……ございます……」
ザクトに褒められ、照れながらも喜ぶルーラ。
しかし、その姿勢は猫背で前かがみ。
一歩どころか、指の一本も動かさない。
「何ですか、みっともない立ち姿で。シャンとしなさい、ええ!」
ハレッタがルーラの背後からその両腕をとり、強制的に姿勢を正す。
「はわ!」
バツンッ!
背筋を伸ばし、胸を張った瞬間、エプロンの下でドレスのボタンが弾け飛ぶ。
大きく開いた胸元から胸の谷間が見えるが、エプロンのお陰でなんとか大事には至らなかった。
「ふえーん! す、すみません……せっかくのメイド服がダメになってしまいました」
「ボタンが取れただけですよ。私のサイズは無理でしたね……身長は近いし、行けるかと思ったんですが」
エリスは飛んだボタンを回収しながら、残念そうに首を傾げる。
引き金を引いたハレッタは眉間にしわ寄せ、しばらく固まっていたが、ようやくボソッと呟いた。
「……うらやましくなんかないですわ、ええ」
破壊されたメイド服をたたみ直し、エリスは申し訳なさそうに苦笑い。
さすがに仕立て直すまではいかず、ルーラは元の僧侶服に戻っていた。
「残念ですが……メイド服は諦めます。さすがに私の趣味みたいなものですし、これ以上ワガママは……」
「まあまあ、元々エプロンが欲しかったんでしょ? あらためて今の服の上に合わせてみたら?」
「あ、そうですよね!」
僧侶服にエプロンとヘッドドレスだけ合わせてみると、それはもう、そのためにあつらえたアイテムのようだった。
ハレッタは新生ルーラの周りをグルグルと回り、興奮を抑えられない早口で語り出す。
「元々、内のドレスが自然なベージュですから、純白のエプロンが対比でよく映えますね! 胸のリボンと、スカートの赤い模様がチラリと見えるのもアクセントになって……髪の黄色いリボンもワンポイントで効いていて。これしかないバランスになってますわ、ええ」
「あ、ありがとうございます。私も……元々こうだったんじゃないかというくらい、自然に感じてます」
新機軸のメイド服のようでもあり、オシャレ装備の冒険者のようでもあり。
確かに、そういうセット装備のようなコーディネイト。
その美しい黄金比に、ザクトもうっかり見とれていた。
「ザクト様、こんな感じでついて行こうと思うのですが……いかがですか?」
「あ、ああ……とっても似合ってる。かわいいよ」
「ありがとうございます! えへへ……なんだか『生まれ変わった新しい私』って感じです」
実際、何度か死にかけて生き返ったルーラが言うと、しっくり来る。
(あれ……僕、今『かわいいよ』って言った? 今までハレッタに言ってたのと少し違うような……な、なんか恥ずかしいような……)
自然と口から出た自分の言葉。
その『言い方』に、ザクトは今まで感じたことのないような甘酸っぱさを感じていた。
少し開いてしまいましたが、今回も読んでくださってありがとうございます!
案の定というか、ブックマークがポツポツと減ったみたいで……
ポイントも下がる一方。さみしいー(´・ω・`)
次の展開ではザクトに、フォルキルとは違うタイプのイケメン君と
絡んでもらおうかな~、と思ってます。
どうなっていくか、自分でもハラハラですが、よろしくお願いします!




