054話『ウソはいかんな』
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「国王陛下、ご入室!」
昨日の謁見時と同じようにエルフ3+人間1で並び、一応、みんなで頭を下げる。
昨日と違うのは、ザクトがバンダナを巻いておらず、エルフであることを隠さず、そこにいることだ。
(色々ウソはついてるけど……国を救ったんだし、王様も大目に見てくれてるよね? 立場上、そうもいかないかな……)
ケイト王は玉座に着き、持っていた資料を手元の書見台へ置く。
そして、相変わらずの険しい顔で、エルフたちをまじまじと見据えた。
「まず……人間の少年『ザック』という存在は偽りであった、と。そなたは『ザクト』という名で、エルフの王。間違いないのか?」
いきなり核心を突かれ、ザクトは息を呑む。
が、もちろんそれは想定のうち。
「そう……なります。すみません、ウソついて」
「うむ、ウソはいかんな。弁明あらば、どういった理由だったか言ってみよ」
すべてを言えるわけではないので、ウソをつき直す部分もある。
が、真実を極力混ぜ、誠意を伝えようと頭をひねる。
「僕たちエルフって、女しかいないじゃないですか。でも、奇跡的に処女受胎で子供が生まれる例がある。それが……僕ザクトと、隣のハレッタです」
「確かに、昨日『18』だと言っていて疑問はあった。が、我々人間には計り知れん何かがあるのだろうと思ったよ」
「ふたり増えたところで、女性だけじゃ絶滅の危機は変わりません。でも、僕が生まれた時、全エルフが期待したんですね。僕は男子のように育てられ……『王となるべき存在』になっていったんです」
実際、一番肝心な『男子として生まれた』がないだけで、流れはほぼ間違っていないのが面白いところだった。
「だから、この通り……どうしても男の子っぽく振る舞っちゃう。となると『え? エルフって女しかいないはずじゃ?』って、そのたびに言われるじゃないですか」
「それは……そうだろうな」
ケイト王はあごひげを触りながら、深く頷いた。
顔は怖いが、おそらく怒ってはいないと判断し、ザクトはその眼差しをしっかり見つめ返す。
「決して『ケイト王国を騙そう』というようなウソじゃないんです。いくら言っても他種族の言葉なので……信じがたいかもしれませんが」
「いや、信じよう。少なくとも、そなたら3人のエルフに……人間への悪意はない」
あっさりいい返事が返ってきて、少し拍子抜けする。
ザクトの活躍を考えれば当然な気もするが、エルフと人間の関係性というのはそれだけデリケートなものだった。
「むしろ、我ら人間の態度が、そなたらエルフにウソをつかせたところもあるかもしれん。私も……そなたらに礼を欠いていた。すまなかった」
「い、いえ、とんでもないです。あはは……」
なかなか理想的な話の流れ。
ザクトは心の中で何度も頷いた。
「次に……『エルフ班は正門に手出し無用』と言っていたが、見事に手を出してくれたな」
「うっ…………」
また違う『しかられ案件』がやって来て、ザクトは頭脳をフル回転させる。
が、ケイト王はすぐに次の言葉を続けた。
「そなたらは私の配下ではない。よく命に背いてくれた」
「あ、あはは……命令に背いて褒められるのもヘンな感じですが。僕はとにかく、騎士団の人たちに死んで欲しくなかったので……」
「うむ、騎士たちがひとりも欠けることなく終えたのも、そなたらのお陰だ。私の判断通りであれば……壊滅状態だったのだろうな」
「いえ、『国民自身が国を守る』っていう王様の考えは間違ってないです。ただ【神剣】と呼ばれる武器を使いこなすのが割と難しかっただけで……」
自分から『神剣』の話題を出してしまい、言ってからハッとする。
「エルフ王よ。そなたが七神剣を打った……創剣神というのは真実か?」
「……その通りです」
ザクトの返答に、謁見室内の高官たちがどよめく。
それほどまでに【七神剣】の存在は人間界で大きくなっているのだった。
「やっとのことで入手した神剣【神の紅炎】を【創剣神】自らが使い、この国を守ってくれたというわけだ。その縁を考えれば、必要なことだったのかもしれんな」
苦笑いのようなケイト王の表情を見て、ザクトは覚悟を決める。
(ここは……正直に言うべきだろうな)
「おそれながら、ケイト王にお願いがあります。褒美として……神剣【神の紅炎】を僕に譲っていただけないでしょうか?」
「…………フフッ……」
ケイト王は思わず笑みを漏らした。
「褒美をこちらから言いだすのは不躾であると承知の上ですが……!」
「エルフ王よ、遠慮する必要などない。そなたは創剣神で、このケイトの救世主。自分の持ち物を回収するようなことで褒美となるのか?」
「どんな理由があろうと、僕が人間界に売り渡したのは事実。結構な国家予算がかかっているそうですし……むしろ、それを認めてもらえるなら、ありがたいところです」
ぶっちゃけるザクトの正直さに、ケイト王は少し考えたあと答えた。
「使いこなせない武器を我らが持っていても持ち腐れだ。神剣は持って行くがいい。そもそも褒美の約束もしていなかったこちらに非があるのだしな」
「あ……ありがとうございます!」
我が刀が自分の元へ帰ってくる喜びと、ひとつ心配ごとが片付き、ザクトは満面の笑みで応えた。
その笑顔は、種族を超えた誰もが『かわいい!』と感じるもので、その場にいるほぼ全員が次に『強さとは何か?』と見つめ直していた。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!
今回、ほぼザクトとオジサマ王、ふたりだけの会話ですみません……!
よろしくお願いします!




