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051話『死ぬ死ぬ詐欺』



「……まぁ、いいだろう。お前たちエルフは不老の命……せいぜい人間に感謝されるようなことを続けるのだな」



 (アメーテル)はそう言うと、ルーラの体をようやくベッドの上へ戻す。


 ちょこんとベッドに腰掛ける彼女(ルーラ)に、ザクトは『やれやれ』という微笑みで応える。



「まぁ……責任は感じてるし、元々、いい(にんげん)とは仲良くしたいし。やれることはやるよ」


「では……次は、このルーラを救ってやるのだな。この娘の命は……あとわずかだ」


「…………はい!?」



 ルーラの顔で、とんでもないことを言う。


 素っ頓狂な声を上げたザクト以上に、ハレッタが怒りの表情で顔を上げた。



「どういうことですか!? ルーラは先ほど死にかけて、乗り越えたばかりですよ!」


「その事例は予定外だったが……そもそもルーラは、2年前にも一度死ぬはずだったのだ」


「なッ……一体どれだけ死にかけてるんですか、ルーラ(あのこ)は!」


「そういう宿命なのだろうな。その2年前では……私が命を繋いだ」



(2年前……ルーラの記憶がそこからなんだっけ)



 神に訊きたいことはいくつもあったが、とにかくザクトは最優先の質問を投げる。



「ルーラの命……どうやって救えばいいのかな?」


「エルフ王、お前の命力と同期(リンク)させてやるといい。お前の打った剣を……ルーラの胸に突き入れるのだ」


「え……そ、そんなことして大丈夫なの?」


「エルフ王の命力が込められた武器……それも人間と関わりを持った個体。そして、それを受けるべき器であれば……可能だ」



 アメーテルはルーラの胸に手を当て、相変わらず無感情の顔で続ける。



「この者の名は【ルーラ・ララント】。『神に近い国』と言われるミューシェ王国の王女だ」


「お姫様……? あー、なるほど……」



(そう言われたら、ちょっと抜けた感じも『っぽい』気がする。そっか……お姫様か)



「私の言葉を受けられるのも『神に近い国』の血筋によるもの。この身体は……特別なのだよ」



 意味深に告げられ、ザクトは息を呑んだ。



「とにかく……エルフ王、お前への連絡役として今日まで生かしていたが、ルーラの命を繋ぐ力は切れかけている。今すぐにでも剣を……ここへ」



 アメーテルはそう言って、ルーラ(じぶん)の胸元をガバッと開いた。



「ちょおッ!?」



 豊満かつ型崩れもない完璧な胸を惜しげもなく見せつけられ、ザクトは咄嗟に顔を背ける。



「ず、ずるいですよルーラ! 自慢の胸だからって、兄様に見せつけて!」


「いやいや、ハレッタ様の方が風呂でバッチリバチバチ見せに行ってましたよね?」


「君たち! 反応がそれぞれズレすぎてないかなぁ!?」



 ハレッタとシャノンにまとめてツッコみつつ、ザクトはあらためて思う。



(やっぱり、ツッコミ要員足りない問題が深刻だな!?)



 さらに、ザクトの頭上のディアムがコメントする。



「まったく……低俗なやつらだ。美しい女体を芸術として解する心がない。そもそも人間の体は神を模したものであり……でへへ」


「ディアムは言葉と顔が合ってないから! てか……いつもながら、精霊のくせに人間の女子好きすぎだろ!」



(ダ、ダメだ……僕だけじゃ(さば)ききれない! なんで僕の周り、こんなボケ寄りの人材が集まるの?)



「あー……エルフ王よ。楽しそうなところ悪いのだが、時間がない」


「楽しそうに見えてます!? って……大丈夫!? ルーラ!」



 ルーラ(アメーテル)はフラフラと揺れながら、なんとか姿勢を保つ。



「すまんが、私が出ていられるのはここまでだ。ルーラの中に剣を……頼んだ……ぞ」



 カクンと糸が切れたように脱力し、瞬間、ルーラの意識が戻る。



「うっ……ん? きゃあッ!!」



 突然、時間跳躍したような光景にルーラは戸惑うが、胸を露出していることに無条件で恥じらう。


 が、すぐにその手を下ろし、パッタリとベッドに仰向けで倒れた。



「ル、ルーラ!?」



 驚くハレッタより先に、シャノンが察してルーラに駆け寄る。



「……鼓動が弱まってますね。神が言ったことは本当で、この娘(ルーラ)の命はあとわずか……」


「神様が……そう言った……んですね? ザクト様への伝言係をまっとうして……私は……役目を終えた……」



 ルーラの力ない言葉に、ザクトとハレッタも駆け寄る。



「ちょっとルーラ! 何回死にかけたら気が済むんですか! そんなの、何度もやっていたら信じてもらえなくなりますよ!?」


「そ、そう言われましても……。すみません……としか……」



 困ったような微笑みを浮かべ、ルーラはザクトの目を見つめる。



「でも……その通りですよね。こんな『死ぬ死ぬ詐欺』……誰も心配してくれなくなります。ふふっ……」


「いや、何度だって心配はするよ。でも、そのたび生き残ってくれないと……もうそこから先は心配もできないんだからね」



 ザクトはそう告げて、ルーラのそばから一旦離れる。


 そして、神剣【旭緋(あさひ)】を(さや)から抜くと、その(あか)い刀身を見つめた。



「ハレッタ様に命を救われて……『私が生きていることを、こんなにも大事に想ってもらえるんだ』って感じられて……」



 涙をいっぱい溜めた瞳で、戻ってきたザクトにルーラは微笑んだ。



「その大事な命……失いたくないです!」


「……当たり前だよ。こんなにエルフと深く関わって、簡単に死ねると思わないで?」


1週間のお休みいただきました。

ブックマークがポコポコ外されてたらどうしよう……と思い、

ポイントもPV数も見れずにいましたが、

ここまで読んでくれている方がいて嬉しいです。

あらためて、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
数年ぶりの方もいらっしゃるので、あまりきにしないほうが良いと思います。あと、月一度とか週一回、四日に一回と作家さんの体調や都合でいいと思います。
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