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048話『神、来ちゃった』



     *          *



「はぁ~……さすがに上級魔族は大変だったねぇ」



 王城へ戻ったザクト達は朝よりも少し広い部屋で患者着を着せられ、医師と治癒魔法専門の僧侶に治療されていた。



「本当なら、私がザクト様を治療しなくてはいけないのですが……すみませんです」


「なに言ってんの。ルーラは今回一番ヤバかったんだから、黙って検査されなって」



 深い傷、それに加えて、死を扱う魔族(パンデル)の魔法。


 ルーラは文字通り致命傷を受けた。


 しかし、『ギリギリ《死》ではない瞬間』に急速回復させたことで、魔法後遺症もなく復活した。



「一生に一度きりの特別な魔法薬といっても、ルーラの命力を完全に戻したわけではないのですからね。しばらく無理は禁物ですよ、ええ」



 【命力】とは、誰もが持っている生命エネルギーの目安である。


 その【命力】を、自然界の元素(エレメント)に干渉させるため【魔力】として外側へ発現するのは、誰もができることではない。


 ふたりは並んで寝かされ、それぞれ特殊な指輪をはめられていた。


 指輪(そこ)に込められた命力を少しずつ補給するそのビジュアルは、さながら輸血のようだった。



「ハレッタ様……本当にすみません。この命、今後はエルフ族(あなたたち)のために……!」


「ああ、もう、何回言うんですか! 重いですわ! そんな大層な決意より……わたくしに言うことがあるんじゃないですか?」


「えっ? あ……ありがとうございます!」


「それも何度となく聞きましたわ! あなた、一度死んだ時、心残りがあったのではないですか?」



 すでに『言わせようとしている』のは明白で、ハレッタは真っ赤になった顔を背ける。



「ん…………あっ!」



 ようやくルーラが気付きの声を上げ、ハレッタはビクッと体を震わせる。



「ハレッタ様……そんな風に言わせてしまって、すみませんです」



 柔和な笑顔を見せるルーラは、そっとハレッタの手を握る。



「お友達に……なってくれますか?」


「……特別ですよ、ええ」



 どうしても目を合わせられないハレッタは、ルーラのまっすぐな目を一度だけチラッと見て、また顔を背けた。



「人間は変わらず信用してませんが、ルーラ(あなた)は命を分け合った……もうエルフみたいなものですから」


「ふふっ、ありがとうございます。これから長くお世話になる予定ですから……同胞みたいに認めてもらえたみたいで嬉しいです」



 微笑ましいふたりを見ながら、ザクトはひとつ頷き、シャノンは『何も聞かなかった』というように(まぶた)を閉じた。



(うんうん、ハレッタには歳の近い友達が必要だよね。ルーラを連れてく気はないけど……友達として、いつでも会えればいいわけだし)



「それでは……我々は失礼いたします。魔道具は、(ここ)を出られる時まで使っていただいて構いません」



 医師団が深々と頭を下げるのを見て、ザクトは体を起こす。



「ありがとうございます。もうちょっと回復したら、おいとましますんで」


「いえいえ、お待ちください。救国の英雄をそのまま帰すわけには……必要なだけ休んでいただいたあと、我が王よりあらためてお話がございます」



(最初の話では『報酬も保証できない』ってことだったけど、王様もジードと同じく考えを変えてくれた感じかな。(エルフ)のために、良好な関係を築いておかないと……)



 そんな考えも知らず、いや、知った上でか、医師団が部屋を出て行くと、シャノンがようやく口を開く。



「部屋の格も数段上がったようですし……ケイト王は内心、気まずくて赤面ものでしょうね」


「本当それよ! 自分が何と言ったか、思い出させてあげたいですわ。『この神剣さえあれば、やれるのだ!』って」


「あはは……今後、国として交流することになるなら、相手の体面も考えないとね。マウントはとらずとも、対等ではありたいところ……」



 エルフ3人がぶっちゃけ始めるので、一応まだケイト王国民であるルーラは困った顔で笑う。



「とにかく、よかったです。これで私は心置きなく【絶対服従メイド】として、ザクト様の元へ……」


「えーと……ルーラ、それなんだけど」



 ザクトが大事な話をしようと決心したその時――



「う…………ん……」



 突然、ルーラは寝台の上で立ち上がった。



「ちょ、ちょっとルーラ、危ないよ? なんでベッドに立っ……」



 言いかけた言葉がふさわしくないことで、ザクトは声を引っ込める。


 立ち上がったように思われたルーラは全身から淡い白光(オーラ)を発しながら、ベッドの上に浮き上がっていた。



「ル、ルーラ? これって……魔法薬による後遺症とか?」


「いえ……そんな話は聞いたことないですね」



 シャノンは一応ハレッタ達より前に立ち、(ふところ)の飛び道具に手をかける。



「まさか……パンデルって魔族(やつ)の魔法が残ってる?」


「エルフの命雫(めいだ)が成功していれば、その心配はないはずですが……」



 ザクト達の会話に、ハレッタの血の気が引いていく。



「ウソ……まさか失敗? ルーラ! なんとか言いなさい!」



 名を呼ばれ、俯いていたルーラの顔が持ち上がる。


 (まぶた)が開き、見るからに本人の意思が消え去ったような黄金色に輝く瞳が現れた。



「エルフの王よ……魔族を倒し、人々を救ったな。まずは……それでいい」


「……誰?」


「……アメーテル。人間が神と呼ぶもの……かな」



 神、アメーテルはルーラの顔と声でそう告げ、真顔だが微笑みともとれるような表情を作った。



(僕、いつのまにか【創剣神(ソードブレッサー)】って呼ばれてるらしいけど……ほんとの神、来ちゃった――――!)


のんびりしたやりとりが続いておりますが、キャラ達を楽しんでもらえていたら嬉しいです。

ブックマーク&★評価、感想もお待ちしております!


今週末、コミックマーケット108にサークル参加します。

準備や移動の負担もあり、スケジュール通り更新できるかわかりませんが、ご了承いただければ幸いです。

できるだけ頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いします!

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