041話『信じてください』
ザクトが構えたのを確認し、フォルキルはクレーターとなった元・石舞台の中に一歩を足を踏み出す。
斜面になった地を足で掴み、緊縮させていた脚の筋肉を起爆。
ザクトのいる対岸に向け、一直線に跳躍した。
「オオオオオッ!!」
全体重を爆発的な推力で運び、その勢いのまま大剣を振るう。
ザクトは大剣が到達するまでの0.x秒、思案する。
(基本、小細工ナシの剣……だけど、さっきは剣を手放す判断もあった。また虚を突く何かが?)
決めきれず、一旦『見』で受ける判断。
後ろへ飛び、大剣の一撃に刀を合わせる。
(この攻撃も利用させてもらって一旦距離をとる。あわよくば、氷結効果を与えて足止めを……)
ガキンッ!
「!?」
交わる瞬間、フォルキルの大剣が刀に噛みつき、飲み込んだ。
ように見えたが、実際には刀が大剣の刃こぼれにちょうどいい角度で当たり、そのままサックリと切り込んだような状態だった。
もちろんそれは敵が狙って作り出した状況で、剣を我が子のように愛するザクトからは出ない発想だった。
(クッ……距離をとらせてくれない! 2手目が来る……その前に!)
噛みつかれたまま、刀の魔法をフルパワーで発動。
大剣が一気に凍り付き、フォルキルの腕を侵食する。
が、フォルキルは構わずその腕を強引に捻り、バキバキと破壊音をさせながら振り上げた。
「ッ……雪音ッ!!」
無理な力のかかり方で刀身へのダメージを気にした次の瞬間、フォルキルの第3眼がギラリと光る。
同時に、左拳をザクトの胸目がけ突き出す。
それはただのパンチではなく、暗角によって生えた凶剣がプラスされている。
ザクトは咄嗟に体を捻るが、それは右肩口に突き立った。
「ぐッ……!」
「とった!!」
フォルキルは乱暴に剣を引き抜くと、右手の大剣を手放し、まるで祈るように両手の指を組む。
組んだ手から剣まで全部が青い炎で包まれ、1本の大剣のように変貌。
それを最速の所作で引き絞り、負傷したザクトの右サイドから体を両断する勢いでぶん回す。
「せぃあああああああッ!!」
「くッ……そ!!」
ザクトは咄嗟に両手の刀(+フォルキルの大剣が付いたまま)でガード。
防壁を展開しようとするが、間に合わない。
フォルキルの紺炎がさらに勢いを増し、有無を言わせない純粋物理パワーと相まって、ガードごと圧し斬った。
ズギャガッ!!
魔法と物理の激突する最大級の不快音が鳴り響き、魔法反応による元素爆発。
轟音・爆煙とともにザクトの体は一瞬で吹っ飛んだ。
バガンッ!!
正門から少し離れて設置されていたレンガ造りの見張り台に激突し、ザクトはガレキの中に消えた。
ここまでの現象が一瞬すぎて、見守るハレッタ達は呆気にとられていたが――ようやく時が動き出す。
「ザクト様ッ!? 今度こそ大変……ッ!」
ルーラはショックで気を失いそうになるが、今こそサポートに動くべきだと意識を持ち直す。
「シャノン! もう加勢するわよ!?」
ハレッタは兄の無事を信じながらも、すぐさま飛び出そうと杖を構える。
「いえ……ダメです」
シャノンは、そんなふたりを制するように立った。
「状況わかってるの!? エルフ王にもしものことがあったら……いえ、そんなことじゃないわ! 兄様を失ったら!!」
「あなたのお兄様を……信じてください」
「そ、そうは言っても……!」
ハレッタが食い下がるその時、粉塵の舞う見張り台跡から物音が聞こえてくる。
ガラガラと瓦礫を押しのける音。
ゲホゲホと煙を嫌がる咳き込みも。
「いや……正直、すぐに出てくるのが、ちょっと恥ずかしくてさ……」
ポニーテールもさすがにほどけ、長い金髪が美しく広がる。
陽光の加減なのか、その髪は自ら発光しているようで、風に揺れる炎そのものに見えた。
「真打ちを両手に『こっちも本気モード!』みたいに言ったのに……完全に食らっちゃったもんな。ほんと、素直にスゴい剣だったよ」
本当に恥ずかしかったようで、ザクトは大きく頷きながらフォルキルを賞賛する。
その体には痛々しい傷がいくつもあるが、それすらもキラキラとオレンジ色の光で彩られていた。
「ザクト様! よかった! あれ……なんだか光ってますか?」
「う、嘘でしょう? 今度ばかりは『わたくしはわかってました!』なんて言えませんよ!?」
観客席は驚きつつもひと安心。
だが、当の対戦者はまったく納得いっていないようだった。
月曜日、休んでしまいました。
待ってくれていた方がもしいたら、すみません!
風邪が治っても咳がずっと続くのは、本当につらいです……。
皆さんは、体調崩さないようにご自愛ください。




