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033話『神剣……こんなものか』



「とにかく! 神託ではエルフが救世主ということになってるかもしれねえが……神の予言を俺が変えてやる! 見てろ!」



 ジードはボロボロフラフラの足取りで、神剣を手に立ち上がる。


 ザクトは再び止めようと口を開くが、何を言っていいかわからず横目でシャノンを見た。



「いやー……人間は意志が強いよね。まいった、どうしようか」


「いや、やるって言ってんですから、気の済むまでやらせればいいんですよ」



 そんな騎士と少年たちの会話を退屈そうに眺めていたフォルキルは、大きく溜息をつく。



「我は……今、はらわたが煮えくり返る気分だ。腹立たしい……!」



 ジードは一瞬、ポカンと口を開けたまま固まってしまう。



「な……なぜ貴様が!? 腹が立っているのは我々人間の方だ! この侵略者が!」


「侵略……領土や資源を奪う目的で、お前ら人間同士もよく行っている行為だ。なぜ備えていないのだ?」


「日々、鍛錬は欠かしてねえ! それに……侵略など考える奴らが悪いんだろうが!? ケイト王国は平和を重んじる方針だ!」


「『侵略』とは、バカ正直に力で攻めてくる者ばかりではない。『平和が当たり前』という国こそ、内部に入り込んだ侵略者が、その国を弱めるため、気付かぬように空気を変えている証拠かもな」



 フォルキルはそう言って、少し遠い目をした。


 記憶と重ねているのか、怒りと悲しみが混ざり合うような、しかし、冷たい眼差し。



「入り込んでる敵なんて居ねえ! 『平和』の空気が悪いわけない! 極端に言えば、俺らのような防衛力も不要な世界なら、それが一番いいんだ!」


「そうか……では、そんな国は丸ごと消した方がいい」



 あらためて、ゴォウと大剣の青い炎を強める。



「平和を謳い、防衛を怠る国は滅びよ。こんな弱い国があることが……本当に腹立たしい」


「勝手なことばかり言うな! 少なくとも、我ら騎士団はみな、国を守るためここにいる!」


神剣(それ)があれば抑止力になるとでも考えていたのだろうが、使う者が弱すぎる。気分が悪い……消えてくれ」


「言わせておけば……!」



 ジードは神剣を構え、気合と魔力を注入する。



「ぐッ…………オラアッ!!」



 目眩がしてよろけるが、根性で踏ん張る。


 そんな気合の男を見て、()の騎士たちも剣を構え直す。


 が、ユーティカの心にはほんのりと迷いが生じていた。



(ジードの言ってることはアタシらの共通認識……間違ってないはず。だけど……)



「せいッ!! やッ!! ダアッ!!」



 ジードは再び、炎の剣で斬りかかる。


 その連撃を受け続けながら、フォルキルはまた溜息をついた。



「やはり、物足りん。周りの騎士どものおかげで何とか戦い続けられていることをわかっているのか?」


「うるせえ! わかってる!!」



 その間にも、ユーティカたち他の団員はジードの補助に立ち回る。



「ジード! 会話しちゃダメ! 集中して!」


「うるせえ! わかってる!!」


「わかってない! 勝てないと思わされてんじゃないわよ!? アンタが頼りなんだから!!」


「か、勝てねえとか……思ってねえええええッ!!」



 騎士たちの猛攻を、フォルキルはいくつか『避けるまでもない傷』を受けながらも、すべていなし続ける。


 シャノンの援護射撃も継続されていたが、すでに認識済みだからか、先程までより防がれる確率は上がっていた。



「人間……その神剣へ全力を注ぎ込み、一撃に懸けてみよ。我に傷を負わせるとすれば、それしかあるまい」


「う、うるせえ! テメエが指示すんじゃねえ!」


「このままでは……次戦うエルフ(あやつら)にも我のいいところを見せられんしな。一度だけ避けずに受けてやる」


「ッ…………どこまでもナメやがって!!」



 ジードは一旦下がり、両手で力いっぱい掴んだ神剣を空へと突き立てた。



「紅炎よ! 神よ! 俺の残る力をすべて使え! それを拡大し……さらなる力を生み出すのが、お前の役目だろうが!!」



 ゴォオオオッ!!



 神が答えたのかどうか、今日一番の豪炎が渦を巻くように神剣から噴き上がる。


 まさしく最後の一撃という気迫で、ジードは神剣(それ)を振り上げた。



「ウラア――――――――――ッ!!」



 フォルキルは宣言通り、真っ正面から待ち受ける。


 無粋なシャノンの短剣も飛んできたが、避けることなく手のひらで受け止める。



 ズバシュッ!!



 本命のひと太刀――


 ジードの全身全霊を、フォルキルは片手1本で掴んでみせた。



「おおおおおおぉおぉおおおッ!!」



 受けた手から血が噴き出し、それがすぐに炎で焼かれていく。


 フォルキルは雄叫びを上げ、赤く燃え上がる左腕を青い炎で押し返す。



「神剣……こんなものか」



 紺炎が紅炎を食い尽くし、やがて、その青も収まっていく。


 焼け焦げていたが、その左腕はガッチリと神剣の()を掴んだまま。



「バ、バカな……ッ」



 ジードの握力が限界を超え、神剣から手が離れる。


 そのまま、ガックリと膝をつくと、ジードはキツく(まぶた)を閉じた。


な、なんとか更新……ちょっと風邪気味でした。

金曜日もなんとかしたいところ……!

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― 新着の感想 ―
防衛力も不要な平和な世界など幻想ですね だって、それって 「魔族すら自分らに一切の手出しが不可能な状態」 を作り上げないと実現しませんからね 相手を洗脳でもして絶対服従にするか もしくは全て滅ぼし…
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