031話『唯一のエルフ男子を○ってしまった……』
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通用口の扉をくぐると、門のすぐ近くでは後衛陣の騎士や魔法班の者たちが集まっていた。
国全体を守る結界とは別の、門を守るために防壁を維持しながら、遠巻きに戦闘を見守っていた。
ギャンッ! ギィンッ! ギャリリッ――
ゴォウ! キュインッ! ピキピキガシャンッ!
距離はあるものの――剣や槍の削り合う音が、それに合わせるような魔法由来の炎や氷の音が、少し曇り始めた空の下、鳴り響く。
門扉から続く誘導路の先は円形の広場のようになっており、そのスペースはさながら武闘大会の舞台のようだった。
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「おおおおおおおおおおッ!!」
王命を賜ったジード・ロックスは紅炎まとう神剣(刀)を振り上げ、連撃を【敵】にたたき込む。
【敵】はガードしながらも、連続技の繋がりが悪い部分(0.5秒ほどの遅れ)に自分の大剣を差し入れ、ジードの腕を跳ね上げた。
「くッ……!」
体勢を崩したジードに、【敵】は片手で大剣を振り上げる。
「はあッ!」
その瞬間、ガラ空きになった脇腹をユーティカの刺突が狙う。
その剣を、【敵】は空いていた左手で咄嗟に握り止めた。
「ウソッ!?」
赤紫色の血しぶきが一瞬飛ぶが、そんなことはお構いなしに最短距離で右肘をユーティカへ落とす。
握った剣を手放し、攻撃を受け流そうと腕を上げた瞬間――
ビシッ!
【敵】の腕に横からの衝撃が加わり、ユーティカへの攻撃が微妙に逸れる。
「はぐッ!」
かと思えば、ユーティカは見えない衝撃に横っ腹を突き飛ばされた。
そのままスッ飛び、ゴロゴロ床を転がると、どういう攻撃を受けたのか疑問符だらけになりながらも、なんとか【敵】から距離をとる。
「ふん……なかなか尻尾を掴ませんな」
自分の腕に刺さった棒手裏剣とも言えそうな小型の短剣を引き抜く。
上級魔族と思われる【敵】――
そいつはジードと変わらない背丈で、遠目にはただちょっと顔色の悪い人間にしか見えない。
が、その手には身長を超えるほどのバカデカい大剣があり、その頭にはイヌのような耳。
そして、2本の鉤状のツノが彼の攻撃性を示すように前方を向いていた。
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「あれが上級魔族……確かに、威圧感みたいなものがあるか」
ザクトは100m近く離れた場所から、【敵】の見えていないチカラを含め、その実力を推し測る。
青と黒を基調とした軍制服のような出で立ちは『将』のようにも見え、ザクトは眉根を寄せた。
「2カ所からの同時テロってことを考えても、魔族の侵攻がどこまで組織だったものなのか……大魔王軍の尖兵だったりしたら、ちょっと大変だぞ」
ザクトは短く溜息をつき気配を消すと、戦いの舞台――その砂かぶり席へ跳んだ。
* *
「ジード! アタシら団員との連携を考えてってば! アタマ冷やして!」
ユーティカは他の騎士団員との陣形を維持し、【敵】との位置関係を測る。
「状況を見ろ! 作戦通りでは対応できねえからこその動きだ! アタマ冷やすのはお前だバカ!!」
「なんだと、この戦闘バカ! ジード、ひたすら鍛錬するのが手本だと思ってるだろうけど、無茶すぎる課題あったり、部下からの評判悪いからね!?」
「テメエ! あとでケツビンタだコラ!!」
「うわ、女子団員のケツ触る気ですよ、この人! これは問題だー!」
ユーティカのせいで一気に緊迫感が崩壊する。
が、実際、集中しすぎて余裕がなくなっていたジードにとっては、仕切り直す良いタイミングだった。
そんな人間たちのすぐ近く――
姿なき守護者の役割を遂行し続けるシャノンは、舞台の回りに並んだ樹を背にし、あらためて思案する。
(さて……【敵】がいつまで遊んでくれているか、ですが)
すでに多くの兵士が傷つき倒れているが、致命傷は負っていない。
彼女が、敵にも味方にも気付かれぬよう暗躍し、騎士たちの命を幾度となく救っていたのだった(敵にはバレてきているが)。
(ザクト様が来たら、何と言うだろうか? 『神のご指名だから』と自分から参加しそうだが……身バレの危険を考えれば、私がメインで戦い、ザクト様には補助を……)
その時、シャノンは肩をポンと叩かれ――あまりの驚きに、目にもとまらぬ早業でその手の主に短剣を突き立てた。
「んわ! シャノン、僕! 僕!」
仰け反って刺突を避けたザクトは、少しおどけたように両手を上げる。
「ザクト様……おどかさないでください。『唯一のエルフ男子を○ってしまった……』 そんな者の精神的苦痛とか考えたことあります?」
「ええ……○られた僕より、○ったシャノンさんが被害者っぽいですか?」
仏頂面でふざけた物言い。
だが、その実、シャノンの胸は早鐘のように鳴っていた。
(こんなに動揺したのはいつぶりか……。やはり、この王……底が知れない)
短い溜息をつき、シャノンは自分にかかった透明化の魔法を解く。
ザクト謂うところの『卑猥なカッコ』が現れ、戦場に多少の花を添えた。




