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エルフ王は唯一むに! ~隠居して趣味で刀作りにハマったら、僕、いつのまにか創剣神と呼ばれてた?~  作者: 茉森 晶


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030話『並の子供じゃないからね?』

挿絵(By みてみん)画:亜方逸樹



     *          *



「見えた! やっぱ、それなりに距離あったな……」



 魔法での跳躍を繰り返しながら、北門から正門まで王都を横断してきたザクト。


 大きな門扉の手前に着地し、数人の騎士が話し合っている輪に声をかけた。



「おーい、お兄さん達! すみませーん!」


「君は……ザックだったか。どうして正門(ここ)に?」



(あ……入国管理官のおっちゃんか。そういや、この国(ケイト)に来て最初に会った人だな)



「えと……北門の方、騎士団の活躍でかなり早く終わりそう、みたいな感じです!」



 『ハレッタとルーラの能力なら』と信じるザクトは、予約済みの結果を伝えた。



「そうなのか? まだそんな連絡は来ていないが……本当なら朗報だ」



 ざわざわと騎士たちが指示を交わしだす。


 ひとりの少年の言葉を信じるわけではないが、『どんな可能性でも』という切羽詰まった空気感。



「あの……正門(こっち)の戦況、厳しいんですか?」


「……ジードたち第1騎士団は踏ん張っている。と言いたいところだが、そうも言っていられない状況だな」



 入国管理官は声のトーンを落とし、ザクトにだけ聞こえるよう囁いた。



「こういうことを言ってはいけないんだが、私はすぐにでもエルフの者に加勢してもらうべきだと思っているよ」


「国の方針もあるけど……ジードさんたち現場の判断次第ですかね」


「まぁ、そうだな。今のところ、奇跡的に犠牲者は出ていないが時間の問題だ。エルフの者たちに頭を下げてでも……」



 それを聞き、ザクトは少しだけホッとする。



(こういう人もいてくれるって思えないと、やっぱ凸しにくいもんな。まぁ……(ケイト)の人に嫌われたとしても、ルーラとの約束だからやるけどね)



 少しだけ『思い出し微笑み』してしまい、顔を腕で隠す。


 緊張感は高まっていたが、ルーラの顔を思い出すと、なんとなくほっこりしてしまう。



「えと……シャノンって(エルフ)、いたじゃないですか。あの卑猥なカッコの」


「卑猥って……彼女、君の保護者みたいなものじゃないのか?」


「まぁまぁ、そうなんですけど。でね、どうも彼女がすでに正門(こっち)の戦場へ来てるみたいなんです」



(ま、僕が行かせたんですけどねー)



「彼女が加勢してくれるということか? もちろんジードの戦いはまだ終わりではないが……」


「本当に人間側が危なくなるまでは参戦しない予定です。で、あの(エルフ)、めちゃめちゃ強いんですけど……」


「けど……? 強くて困ることはないだろう」


「技が強力すぎて、周りも危ないんです。ので……現地にいる人はできるだけ門の中へ避難して欲しくて」



 エルフ男子(じぶん)のことがバレないよう、シャノンをダシに使うザクト。


 だが、男は真剣に考える仕草をしたあと、大きく頷いた。



「確かに、あの格好ができるのは只者でないと思っていた。味方を巻き込むほどの戦闘力も不思議ではないな」


「あはは……そうなんですよ。だから、ほかの人たちも近づかないようにしてくれませんか?」


「それに……エルフの【技】も企業秘密のようなもの。見られたくない、ということだろう?」



 男は皮肉でなく、そう言った。


 その口ぶりは、ザクトとしても『対等に見てくれている』と感じられた。



「そう、ですね。とにかく僕は、エルフと人間が国同士としてもイイ関係になればって思ってます」


「……わかった。では、その時が来ればシャノン殿にお任せしよう。騎士団や上の者にも、私が責任を持って説明する」



 理解のある人間と話せて、ザクトは明るい未来を感じていた。


 が、このあとのジードとの会話を思うと、ほんのり苦笑いが浮かぶ。



「じゃあ……僕も現地に行きたいんで、通してもらっていいですか?」


「いやいや、危険だ! どうして君が行く必要がある?」


「シャノンへの連絡係として来たので……。今は一刻を争うでしょ?」


「そ、それはそうだが……」



 若い命を心配するその気持ちに、だんだん申し訳なくなってくる。


 あらためてザクトは子供らしい笑顔を作り、細腕で力こぶを作ってみせた。



「大丈夫、危ないことはしません! 僕もエルフに日々鍛えられてるし、並の子供じゃないからね?」


「……わ、わかった」



 今のところ、()の騎士たちは右往左往しており、こちらへ注意は向いていない。


 彼はザクトを通用口へ誘導し、さりげなく門の外へ出るよう促した。



「いいか、決して無理はするんじゃないぞ。この国を守ってもらいたいが、エルフの関係者(ものたち)にも死んで欲しくないからな」


「ありがとう、おじさん。行ってきます!」



 ガチャン――



 扉の向こう側へザクトを見送り、男はあらためて眉間を押さえた。



「あんな可愛らしい、孫くらいの少年を戦場へ通してしまうとは……自分の仕事を見つめ直してしまうな。そもそも『連絡係』って何なんだ……」



 様々な人間を行き来させてきた彼にとって、得も言われぬ後悔の念があった。


 が、『あの少年は通さなければいけない』という長年の経験から来る無意識の直感もあった。



「ザック、無事でいるんだぞ。天国の両親は……こんなの望んではいないんだからな」



 真剣に呟く彼には申し訳ないが――


 ザックの(母)親は、がっつりのほほんと健在である。


今回は、そんなに大きなアクションはなかったんですが……

また時間が遅れてしまいました。


ザクト君、がんばってまいります。

応援よろしくお願いします!

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