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エルフ王は唯一むに! ~隠居して趣味で刀作りにハマったら、僕、いつのまにか創剣神と呼ばれてた?~  作者: 茉森 晶


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022話『命の火』



「こちらも出るぞ! 気を抜くな!」



 北門への部隊も動き出し、馬車に乗り込んだザクト達はそのあとをついて行く。



北門(こっち)は上級魔族じゃないってことだし、シャノン抜きでも大丈夫でしょ。あとは数が何体いるかだけど……」


「あっ、忘れてました! 今朝見た夢で、少し明確な視覚情報を得ていたんでした。騎士団には伝えてあるんですが……」



 『うっかり花に水をやり忘れていた』くらいのテンションで、ルーラはペコッと頭を下げる。



「北門に現れるのは、スケルトンやゾンビなどのアンデッド系と思われます。100体くらい……でしょうか」


「うええ……相手したくない系ですわ」



 ハレッタは露骨にイヤな顔をし、大きな溜息をついた。


 ルーラもさすがに神妙な表情で返す。



「そうですね……視覚的な嫌悪感も馬鹿にできないです。1体ずつはそれほど力も高くないですが、集団で結界魔法を破ろうとしてくるのではないかと予想されてます」


「違った攻め方で表と裏から同時に、ってことか。アンデッド100体……ま、僕らが加勢しなくても大丈夫か」



 ザクトはそう言って、同行の騎士たちを見回す。


 なんとなく気づくことがあった。



(割と……平均年齢が高めかな?)



 それは気のせいではなく、第2・第3騎士団は40歳~60歳のオッサン&ジジイズ。


 ルーラもその面々をしげしげと見つめ、不思議そうな顔で切り出した。



「皆さん、いかにも熟練という方ばかりで強そうですよね。この人たちが北門(こちら)側でいいんでしょうか?」



 自分とは違う見方に、ザクトはしばし思案してから口を開く。



「そだね、それなりにしっかり強い人たちだと思うけど……」



 鍛錬は欠かしておらず技術は確かな者たちだが、スタミナ面では疑問符が出る。


 特にアンデッド系は、根気よくダメージを積み上げる必要がある。



「約束だから、すぐに手は出さないけど……あまり北門(こっち)に時間かけたくないんだよなぁ」




 10分ほどの短い移動。


 北門前の広場を出た辺りに陣を張った第2・第3騎士団。


 余裕ぶった私語などもなく、程よい緊張感の中、魔法班の下準備が迅速に進められていた。



 ザクトとハレッタはその後方、広場の脇に立つ大樹にて待機する。



「騎士たちの中、ルーラも右へ左へ……大変そうだなぁ」



 大樹の枝に腰かけ、何度目かわからない刀の点検をするザクト。



ルーラ(あのこ)はお人よしすぎて、いいように使われてるんですよ」



 その枝の下、ハレッタは幹に寄りかかるようにして口を尖らせる。



「ハレちゃん、ルーラのことほっとけなくなってきたんじゃない? いい子だもんねぇ」


「『いい子』じゃなくて『お人よし』なんですってば」



 ケイト軍はルーラの能力を見抜けておらず、全体防御魔法の(いち)パーツとして使われていた。


 他の者なら自分を売り込もうとしそうなものだが、ルーラ自身、就任して間もないこともあり、何の疑問もなく命じられたことを遂行している。



(もし騎士団がピンチになったとしても、彼女(ルーラ)が上手くやれば立て直せるんじゃないかな。まぁ、まだどれくらいの脅威かわからないけど……)



「来ました! 転送魔法陣、多数!」



 50mほど先、よどんだ赤紫色の魔法陣がいくつも現れ、そこからゾンビやスケルトン剣士がボタボタガシャガシャと雑に転送されてくる。


 騎士たちはみな、アンデッド用に清めた武器を構えた。



「予定通り、二人で1体を攻撃し、確実に無力化していく! 魔法班は漏れた個体を門に近づけないよう、防壁(バリア)展開!」



 老練な第2騎士団団長が号令をかけると、全員が統率のとれた陣形で魔物(モンスター)の進軍をせき止める。


 魔法防壁によりゾンビどもの進行方向を限定し、10人前後で5・6体ずつ確実に対処。


 前列の者は疲れが出るであろうタイミングで横へ避け、2列目の部隊が入れ替わる。



「後列に回った第1陣には、ルーラたち僧侶系が回復と防御魔法をかけ直す……と。三段撃ちの拡大版みたいなもんか」



 ザクトは戦闘を見つつも、いつでも出られるよう刀に手をかけ、枝の上で立ち上がる。


 ハレッタも(ロッド)にいくつか魔法を予約詠唱(セット)し、いざという時に連続発動できる状態で人間たちを見守る。



「人間は……命の火が激しいような気がしますね」



 ハレッタはポツリと呟いた。



「命の火が激しい……うん、そうかもね」


「悔しいので絶対に直接言ったりしませんが……羨ましいのでしょうね、わたくしは」


「それは……種族として?」


「個人としても、ですわ。でも、どんなに()い人だとしても、エルフと人間が真の意味で友達になることなんて……」



 ハレッタの視線の先では、今もルーラが目まぐるしく走り回っていた。


 『友達になれるよ』『もう友達なんじゃないの?』


 色々と言いたくはなったが、ザクトはあえて何も言わなかった。


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