018話『どうして見ないんですか?』
* *
「えーと……こちらが浴場になります」
ルーラに連れられ、浴場の入口までやって来たエルフ様御一行。
「温泉かけ流しになってまして、騎士の皆さんも訓練のあとに筋肉を回復させるんですね。女性用も分かれてまして、だいぶ小さめですが、こっちの入口から……」
「ちょいと! あんた達ッ!!」
「ひゃいっ!?」
「今から清掃時間だ! 風呂は使えないよッ!!」
背後から、まるでモンスターのようなデカいおばちゃんが4人に大声をかけた。
その大声は麻痺の効果もあるようで、油断していた3人(シャノン以外)は金縛り状態で立ち尽くす。
「ん? 何だい、女の子ばっかりかい。女湯はまだ行けるから、サッサと入っちまいな!」
「え…………?」
シュババババッ!
ビッグBBAはまるで魔法のように一瞬で3人の服を脱がせた。
そして、裸の彼女らを女湯エリアへ放り込み、乱暴に扉を閉めた。
「ひゃあああッ!? 何!? 何が起こったの!?」
「は、裸……ッ! ハレッタ様、とにかくお湯の中へ!」
ルーラとハレッタがお湯の中へ飛び込むと、脱衣所の方からまたガサツな大声が聞こえてくる。
「服と持ち物は箱に入れて鍵かけとくからね! ちゃんとあったまって出てくるんだよ!!」
扉越しにそう叫び、ドスドスと男湯の方へ消えていく掃除のおばちゃん。
あまりにも突飛な出来事すぎて、ザクトはそこでやっと我に返る。
「ちょっ……僕、男子男子! 開け……むぐ!」
背後からザクトを抱きかかえ、口を押さえたのは――
「ザクト様、エルフ男子バレの可能性ある言動はお控えを」
いつのまにか自主的に入り込んでいた素っ裸のシャノンだった。
「シャ、シャノッ……わかったわかった! ちょっと! 離れて離れて!」
シャノンの手から逃れ、ザクトは浴槽のすみっこに飛び込んだ。
とはいえ、こちらの浴場の浴槽は、4人で入るとあと2・3人分スペースがあるかという程度の広さ。
(落ち着け……僕はハイエルフ的にまだ9歳10歳かそこらの成長具合。昔の銭湯じゃ、女湯に男児がいることもあった……!)
女性陣をすぐ近くに感じながら、とにかく壁を見つめて精神統一。
そんなザクトに背を向け、ハレッタとルーラは身を寄せ合う。
「ほんと何なんですか? アレ……人間?」
「そのはず……ですね。『元戦士のすごい女性用務員さんがいる』って噂には聞いてましたが……」
「兄様のことも女子だと思ったようですが……耳は見られてないかしら? こんな冗談みたいな場面から国際問題なんてイヤですよ?」
落ち着かないハレッタ達と違い、シャノンはすでに湯を楽しみくつろいでいた。
ザクトもまだドキドキはしていたが、温泉の効果か、リラックスして全身を湯に預けだす。
(里でも温泉は作ったけど……王都にも入浴文化あるんだな。なんとなく【日本らしさ】だと思ってしまうけど、まぁ古代ヨーロッパでも……)
「兄様」
「は、はいっ!」
ホカホカな湯気の中、急に冷ややかなトーンでハレッタが呼びかけた。
「わたくしの裸……見ました?」
「み、見てないよ!」
(本当は……見てしまった。一瞬だけど。ハレちゃん、つつましくもちゃんと胸が育って。病気が治って、立派に育ってくれて感慨深い……)
「あ、あの……私の方は……?」
「ルーラのも見てないよ!」
(本当は……見てしまった。一瞬だけど。ルーラの体、すごくノスタルジーを感じた。転生前、AVやグラビアを見ていた健全な成人男性としての感覚。エルフはみんな細いからなぁ……)
「ザクト様、私からも『裸、見ましたね?』と訊いておきますか?」
「シャノンは姿消してただろっ!」
それぞれに、なんとか取りつくろうザクト。
だが、ハレッタの質問の意図は、ザクトの思惑とは違っていた。
「どうして見ないんですか?」
「え…………」
ハレッタは立ち上がり、ザクトの目の前に回り込む。
今度こそ、ザクトの網膜に妖精のようなスマートボディがバッチリ映し出された。
お色気っぽい描写とか、あまり好ましく思わない方が多かったら……
と最近すごく気になってます。
「どこまでならヨシ!」とか、何でもご意見ください!
もちろん、イイご意見の方もお待ちしております!




