015話『絶対服従メイドとしての誇り』
「七神剣の1本、初めて見ましたが……ザクト様の『カタナ』に形状が似ていますね?」
その言葉に、ザクトはにっこり微笑んで答える。
「そう? 鞘に入った状態だし、抜いてみたら全然違うんじゃないかな」
「兄様の打つ剣……あの不思議な形、実用的ではないでしょう? あんなの使いこなす兄様が変態なのですし、似た物なんて現れるかしら」
「変態て……。世界は広い、ああいう形に行き着く武器職人もいるでしょ」
ハレッタ達から目を逸らし、ザクトは少し声を張る。
「まぁとにかく! あのジードって人が神剣を使いこなせればいいんだけど……」
「戦うわけでもないガキが……剣をとやかく語るな」
廊下の行く先、そのジード・ロックスが壁にもたれかかり立っていた。
(うわぁ……かなりエルフを嫌ってそうな人に目をつけられちゃったな)
「フン……不老の化け物が、短命の可哀想な種族を哀れんで『助けてやろう』とでもいうのか? 無駄に長生きだと暇なんだな」
「失礼な人ですね。ケンカなら買いますよ、ええ?」
「ま、まあまあまあまあ……」
小さい体で大男にかかっていくハレッタを慌てて制するザクト。
「そもそも、他の誰も予見していない国の危機を新米巫女ひとりだけが言っている。その上、他種族が救世主などと……信用できんな」
「す、すみません……」
ジードの噛みつきはエルフ以外にも及び、ルーラは肩をすくめ小さくなる。
ザクトはそんなルーラの前に立ち、あくまで子供らしくジードに頭を下げた。
「とやかく言ってすみません。でも、エルフのみんなは敵じゃないですから……協力してくれたら嬉しいんだけどな」
「それを信じるのが危険なんだよ。友好的なフリをして、混乱に乗じて内側から攻めるつもりじゃないのか?」
どこまでも敵意むき出しのジードに、ハレッタは今にも杖を振り上げんばかりの勢い。
そうして、言いたいだけ言ったジードは踵を返す。
が、置き土産のひと言を叩きつけた。
「この国を守るのは……俺たち、人間だ!」
* *
城内の客室に案内されたザクト一行。
引き続き、ハレッタは怒り心頭に発していた。
「なんですか、あの男は! わざわざ自軍の和を乱すようなことを……あんなのがいた方が国の危機は増しますわ!」
「すみませんすみません、人間側がすみません……!」
「ルーラに謝られてもしょうがないのです。ほんと……ますます人間を助けるのが馬鹿馬鹿しいと思ってしまいますよ」
ぷりぷりと文句を並べながら、メイドの出した紅茶をひと口含む。
「どうして美味しいのですかっ! 怒らせるのか、喜ばせるのか、どっちかにしてくださいよっ! ええっ!」
「あはは……ハレちゃんは感情表現豊かで大変だよね」
ザクトは他人事のように笑いながら、自分の刀を鞘から出し、様々な角度から光を当て眺める。
「兄様がのんびりし過ぎではないですか? まだ若いのに、エルフらしく枯れすぎですわ」
「いやー、僕は僕なりにキレそうだったよ? ハレちゃんが代わりに怒ってくれたから、鞘に収められたんじゃないかな」
「代わりに怒ったつもり、ないんですけど!」
頬をふくらませ、刀にばかりご執心な兄に抗議するハレッタ。
そんな兄妹っぽいワンシーンを、ルーラは微笑ましく見ていた。
「私も……記憶が戻ったら……」
思わず呟いて、ハッとする。
『しまった』という顔のルーラに、ザクトはあえて言葉をかける。
「そっか、ルーラは記憶が無いんだったね」
「す、すみません。なかよしなお二人を見ていたら、つい……」
「あまり訊くのも何だけど……家族のこともわからないの?」
「はい……そんな状態のまま、ケイトの修道院でお世話になってます。でも宮廷巫女になれたので、お金が貯まったら旅に出ようと思っていたんですよね。私を知っている人に会うため……」
しんみりな空気になり、ハレッタも気まずそうにうつむく。
それに気づき、ルーラは慌てて笑顔を作った。
「あっ、それは少し前に考えていたことで……今は違います! 今後は、ザクト様の絶対服従メイドとしての誇りを持ってやっていきますので!」
「いや、僕は『絶対服従メイドになれ』とは言ってないからね?」
苦笑いで、誤魔化すように紅茶を口にするザクト。
それを睨むように見つめていたハレッタがズバッと問いかけた。




