011話『普通にキレそう』
「エルフは……キライだ。見た目や能力が優れているのを鼻にかけ、他種族すべてを見下している」
赤オークはそう言って、ザクトを睨みつけた。
「そんなつもりないけどね。ぶっちゃけ、君らみたいな見た目で友好的にした方が得なんじゃない?」
「現実……そんなことはない。見た目だけで恐れられ、戦うことになると決まってる」
「ふーん。こっちも人間じゃないし、なにか共感する部分もあるかと思ったんだけど……」
精いっぱい『人間側ではない』という顔でザクトは続ける。
「結局、君は人間を襲うんでしょ?」
「それがオレ達の普通。人間たちもそういうものと思っているし、オークの役割なのだ」
人間からすれば身勝手な言い分だが、他種族に人間の法は通用しない。
「エルフとは戦いたくない。が、避けられないなら……勝てないまでも、ひとりは道連れにしてやる。人間なんかのために、そんな危険を負いたくはないだろう?」
その交換条件、彼としてはすんなり通ると思っていた。
エルフが人間のために命を懸けるわけがない、と――
「『そんな危険』があればね。コソコソ弱い人間を狩ってたくせに……なかなかの自信家だなぁ」
「……なに?」
オークの言葉が終わるか終わらないかの瞬間、その足下にオレンジ色の魔法陣が輝く。
と同時に、地の精霊ディアムが魔法陣から現れ、オークの脚にそれぞれ人差し指をチョンと触れる。
たちまち、オークの赤い肌全体に魔力の鎖がブワッと浮き上がった。
「ディアム! 今はわたくしが兄様の代わりですわ。仕方なくですからね!」
「はいはい……お前の魔力に合わせてやるよ」
ハレッタは、いつのまにか手にしていたザクトのペンダントを地面に置き、魔力をディアムへと送っていた。
赤オークは眼球だけを動かし、力の入らない手元を見る。
が、力が入らないどころか、手首から先は消失していた。
「ぐああああッ!?」
すでにザクトは抜刀しており、ルーラを掴んでいたオークの両手首を斬ったあとだった。
「シャノン!」
「わかってますよ」
切り口から血が噴き出すより早く、解放されたルーラをシャノンが抱き留める。
そして、ルーラにくっついてきた両手首をぞんざいに叩き落とした。
「今まで、バレずに上手くやってきたかもしれないけど……所詮、コソ泥みたいなスキルだね」
正眼に構え、ザクトは刀身へ水属性の魔力を注入する。
魔法ナシでも斬れるのだが、『一瞬でも切り口に刃を触れさせたくない』ための魔法コーティングだった。
「ま、待て! エルフにも人間を憎む者が多くいるだろう? おまえらは、こっち側のはず……ッ!」
白刃が、赤オークの正中線を一瞬で通過した。
「一緒にしないで欲しいなぁ。気分悪くて……普通にキレそう」
残心の構えをとったあと、刀をもう一度素早く振り、氷の結晶を地面に吹き付けてから鞘へ収める。
真っ二つになったはずのオークの体は、なぜか倒れることなく彫像のように立ち尽くしていた。
「切断面を瞬時に氷結させ、接着剤代わりに……。こんなヤツ、派手にグッチャグチャな死に様を晒してやればよいのでは?」
「シャノンってば……。僕、グロいのとか、わざわざ見たくないよ」
シャノンの手からルーラを受け取り、ザクトは苦笑いする。
緊張の糸が切れたルーラは、堪えきれず涙をポロポロと溢れさせた。
「あ、ありがとうございます……ひぃ~ん! 怖かったです~!」
「顔を見られたから、諦めたフリして待ち伏せてたんだね。慎重な臆病者のくせに、僕らが一緒にいる時を狙うなんて……バレたくないあまり、判断力が鈍ってたのかな」
「バレないことが目的になっていたのでしょう、本末転倒ですね。人間の女しか襲わないので情報収集のみに留めていましたが……まぁ、ちょうどよかったです」
シャノンの言葉から、あらためて『種族間の意識ギャップ』を感じるルーラ。
(人種、国が違うだけでも価値観は違う。『すべての生き物が仲良く』なんて思わないけど、無意識に人間の価値観で測ってしまわないよう気をつけないと……)
「本当にありがとうございました。あらためて、ザクト様の強さがわかりました」
「ま、ディアムが動き止めてくれたお陰だけどね」
「ディアム……ひゃあっ!?」
ルーラのスカートを派手にまくり上げてから、土の精霊ディアムはザクトの肩に飛び乗った。
「人間なんかに関わって……ザクトはそんなに死にたいのか?」
「スカートめくりとかする奴に意見されたくないなぁ」
ザクトよりもさらに小柄な悪戯小僧のイヌミミ妖精に、ルーラは目を白黒させる。
「僕の契約精霊は戦闘向きじゃないから、見られたのは幸運かもね。基本、鍛冶のパートナーなんだ」
「師匠と呼べ。俺がいなけりゃ、ザクトはカタナなんて作れないんだからな」
「色々起こってる中、ずっと寝てたくせに……」
遠慮のない、兄弟のような会話。
『ザクト様が信頼する精霊なんだろう』と思うルーラ。
だが、いきなりスカートをめくられ、どんな顔をしていいかわからず固まっていた。
『エルフ王は唯一むに!』
読んでくださってる皆様、ありがとうございます!
今回11話を投稿しまして、それなりに文字数も増えてきた
というところで、次回から基本【1日おき】投稿にしようと思います。
『キャラいいな』と思ってもらえてたら、
是非ブックマーク&★評価をよろしくお願いします!
で、明日(2026/5/10)は、
『バズり女王なのに俺の○○にだけフニャるひよの先輩』
の方を更新できたらと思ってます。
こちらは週一と言ってたんですが、
だいぶ応援してもらえてるようで、ランキング上位にしてもらいました。
ので、なんとか【3日おき】くらいで更新できたら……と。
『エルフ王』も頑張っていきたいですが、
『フニャひよ』の方も、何卒よろしくお願いします!




