第九章 名前の先の道 ⑪ 残った札の行き先
リセ・ハーンは。
赤い封筒を。
見る前に。
言った。
***
「私が。要約しました」
***
旧紙倉。
朝。
***
南区画から。
歩いてきた女。
***
五十代。
***
白髪。
黒い髪へ。
多く混じる。
***
左目。
少し。
細い。
***
服。
濃い緑。
***
中央塔の印。
ない。
***
「名前」
ネラ・ヴォス。
「リセ・ハーン」
***
「現在の役目」
「古文書店の帳面整理」
***
「以前」
「保護審査官」
***
「退職理由」
「今回の確認に必要ですか」
***
ネラ。
止まる。
***
「今は。必要と決めていません」
***
「では」
「記録しません」
***
リセ。
自分で。
椅子を選ぶ。
***
ダル・ケイン。
正面。
***
オウ・レク。
少し。
離れる。
***
セラ・ノーン。
いない。
***
本人が。
この聞き取りへの。
不参加を選んだ。
***
代わり。
公開可能とした。
帰着報告の写し。
***
名前。
ない。
***
北二・灰札
***
「本人は」
リセ。
「生存していた」
***
「はい」
ダル。
***
「あなたは」
ガル・メナ。
「知ってた?」
***
「当時」
リセ。
「帰着報告を読みました」
***
「じゃあ」
「北二・灰札が。帰ったことは」
「はい」
***
「倉の裏で待ってたこと」
「読みました」
***
「鐘が鳴らなかったこと」
「読みました」
***
「白い衣を見たこと」
「読みました」
***
「再確認が必要って」
「読みました」
***
「それで」
ガル。
赤い紙。
指ささない。
***
見る。
***
受領対象なし。灰札帰着。
***
「これにした?」
「はい」
***
「何で」
***
リセ。
すぐには。
答えない。
***
「保護審査の要約欄は」
彼女。
「秘匿対象本人の安全状態と。保護対象の受領成否を。外務へ返す欄でした」
***
「設備」
「別の欄です」
***
「白い衣」
「本人情報に関係するため。外務共有から外しました」
***
「再確認」
「設備側へ回しました」
***
「どこ」
「旧経路保全」
***
「届いた?」
「発送しました」
***
「届いたか」
朔。
「確認していません」
***
「なぜ」
「私の役目は。審査内容を分けて送るところまででした」
***
「また」
ガル。
「分けた」
***
「はい」
リセ。
***
「分けた後」
「別々の担当が。処理すると考えました」
***
「誰かが」
「全体を繋ぐとは。決められていませんでした」
***
「知ってた?」
「当時は。問題だと考えていませんでした」
***
「今は」
「問題だったと考えています」
***
リセ。
赤い封筒。
開く。
***
自分が。
書いた。
一行。
***
「この要約は」
ネラ。
「誤りですか」
***
「受領対象を確認しなかったことと。灰札本人が帰着したことは」
リセ。
「記載内容としては。誤りではありません」
***
「では」
「不足しています」
***
「何が」
「二つが。同じ手順の失敗から生じたことです」
***
受領対象。
なし。
***
灰札。
帰着。
***
一行に。
並ぶ。
***
だが。
鐘。
切れていた。
***
正面。
オウ。
***
裏。
セラ。
***
互い。
知らない。
***
倉裏へ。
誰か。
近づいた。
***
「私は」
リセ。
「人の安全に関する情報と。設備の不具合を。分けました」
***
「はい」
朔。
***
「その時」
「はい」
***
「設備の不具合が。人を受け取れなかった理由かもしれないことも。分けました」
***
「はい」
***
「だから」
リセ。
「外務へ戻った一行には。再確認の理由が残りませんでした」
***
「設備側には」
ルカ・フェン。
「何を送りましたか」
***
リセ。
鞄。
***
紙。
一枚。
***
当時の。
個人控え。
***
北返二番倉 呼鐘不通・正裏連絡不成立確認依頼
***
その下。
***
灰札帰着報告に、呼鐘確認なし、白衣連絡員側面視認、受領対象未確認、正面手順不成立または設備不通の可能性との記載あり。
***
次。
***
受領対象の個人情報を開示せず、設備・経路・指示接続のみ確認を求める。
***
「これ」
ガル。
「短くない」
***
「はい」
***
「送った」
「はい」
***
「どこへ行った」
「分かりません」
***
「控えだけ」
「はい」
***
「受取」
「確認していません」
***
「返事」
「ありませんでした」
***
「追った?」
「一度。問い合わせました」
***
「いつ」
「十日後」
***
「答え」
「旧経路保全へ移管済み」
***
「誰」
「担当名はありませんでした」
***
「それで」
「終了しました」
***
「また」
ガル。
「終わった」
***
「はい」
リセ。
***
「なぜ」
「設備側の処理へ。私が介入する権限はないと考えました」
***
「今は」
「権限がなくても。処理結果を確認する必要がありました」
***
「誰のため」
「灰札本人」
***
「メル」
「受領対象候補」
***
「オウ」
「正面連絡員」
***
「それと」
リセ。
「次に。同じ場所を使う者のためです」
***
机。
***
旧経路保全。
***
ルカ。
持ってきた。
箱。
***
古い。
分類札。
***
北返
***
設備
***
停止済
***
「中央の倉庫から」
ルカ。
「今朝。出してもらいました」
***
「誰が」
「グラドさんの開示申請と。ダルさんの承認」
***
「開ける範囲」
「北返二番倉の設備保全記録」
***
「個人情報」
「含まれないと分類されています」
***
「本当に」
ユイ。
「開けるまで分からない?」
***
「目録上は」
ルカ。
「はい」
***
「もし入ってたら」
「その場で止めます」
***
箱。
開く。
***
紙。
束。
***
縄。
錆びた金具。
***
木札。
***
一枚。
***
三角。
三線。
***
裏。
傷。
なし。
***
「受領札」
ガル。
***
「はい」
ルカ。
***
「残ってた一枚」
***
十二。
***
倉。
十。
***
セラ。
一。
***
残り。
一。
***
「これで」
ガル。
「十二?」
***
「数は」
ネラ。
「十、一、一で十二です」
***
「同じ札?」
「倉の受領札と。形・材・印が近い」
***
「同一の備品群?」
「可能性が高い」
***
「なぜ」
ガル。
「保全箱に」
***
リセ。
札を見る。
***
「私が」
彼女。
「添付しました」
***
「お前が」
「はい」
***
「倉から取った?」
「受領札の形を。保全側へ示すために」
***
「勝手に」
「備品貸出票を書きました」
***
「どこ」
***
箱。
底。
***
小さな紙。
***
北返二番倉受領札 一枚
***
設備印照合用として一時添付
***
持出:リセ・ハーン
***
日付。
***
失踪の。
四日後。
***
「返さなかった」
ユイ。
***
「返却を。保全処理後としました」
リセ。
***
「処理」
「終わっていませんでした」
***
「だから」
「札も。箱に残りました」
***
ガル。
札。
見る。
***
残っていた。
一枚。
***
倉裏へ。
近づいた誰かが。
持ったかもしれない。
一枚。
***
では。
なかった。
***
「じゃあ」
ガル。
「欠けた二枚は」
***
「セラさんが使用した一枚」
朔。
「リセさんが設備印照合のために持ち出した一枚」
***
「数は」
「対応します」
***
「誰かが」
「倉裏で持った札は。確認されていません」
***
「メルが」
ガル。
止まる。
***
「札を持った可能性」
***
「札の不足数を根拠には」
朔。
「できなくなりました」
***
「可能性そのもの」
「ほかの根拠があれば残ります」
***
「今は」
「札を持っていた記録や目撃はありません」
***
ガル。
頷く。
***
「減った」
「はい」
***
「消えた?」
「受領札を持っていた可能性を示す根拠が。一つ減りました」
***
「倉裏へ来た人」
「残ります」
***
「紙」
「残ります」
***
「白い衣」
「残ります」
***
「札」
「今は。結びません」
***
「はい」
ガル。
***
自分で。
答える。
***
「一枚が」
ユイ。
「人じゃなかった?」
***
「札です」
朔。
***
「数えた一が」
「人の一人ではありませんでした」
***
「前の光」
***
円形様小室。
***
九人。
八つ。
一つ。
***
小石。
***
「似てる?」
ユイ。
「はい」
***
「でも」
「同じ仕組みとは決めません」
***
「一が」
「人を示すと。先に決めない理由にはなります」
***
札。
人ではない。
***
だが。
誰かの手で。
動いた。
***
「リセさん」
ガル。
「お前が持った」
「はい」
***
「誰かが盗ったんじゃなく」
「はい」
***
「記録」
「ありました」
***
「でも」
「別の箱へ分けられていました」
***
「誰も」
「受領札の数と。保全箱の添付物を。照合していませんでした」
***
「また」
「はい」
***
別の記録。
別の箱。
別の役目。
***
一枚。
移った。
***
数だけを見れば。
消えた。
***
道を見れば。
保全箱へ。
移っていた。
***
「保全処理」
ルカ。
束。
***
最初。
リセの確認依頼。
***
次。
受理。
***
旧経路設備照合
***
次。
短い。
***
北返二番倉 呼鐘縄交換
***
「また」
ガル。
「短い」
***
「正裏連絡」
ネラ。
「消えています」
***
「白衣連絡員」
「消えています」
***
「受領対象未確認」
「消えています」
***
「残った」
ユイ。
「鐘の縄」
***
「はい」
***
次。
***
担当割当。
***
設備補修班三
***
名前。
なし。
***
「誰」
ルカ。
「班員表」
***
別紙。
***
三人。
***
カド・レム
***
ソナ・ピル
***
テオル・ナーダ
***
「行った?」
ガル。
***
作業欄。
***
現地確認延期
***
「なぜ」
***
横。
***
対象移送なし。使用停止予定。緊急度低。
***
「対象移送なし」
オウ。
低く。
***
「私が」
ダル。
「受領対象なしを。運用終了として受け取りました」
***
「それが」
リセ。
「保全側で。緊急度低へ」
***
「人が」
ガル。
「来なかったから」
***
「設備を」
朔。
「直す必要が低いと判断されました」
***
「でも」
「設備が動かなかったから。人を受け取れなかった可能性があります」
***
「順番」
ユイ。
「逆?」
***
「どちらが先か」
朔。
「確認せずに。人が来なかったから設備は急がない、とされました」
***
「鐘が切れてたから」
「人が来ても。繋がらなかった可能性」
***
「でも」
「人が来なかった記録を理由に。鐘を直さなかった」
***
円。
***
受領対象なし。
***
設備。
緊急度低。
***
設備。
不通。
***
受領。
不成立。
***
「現地確認」
イサラ。
「一度も」
***
作業欄。
***
延期。
***
次月。
***
旧経路統廃合。
***
北返二番倉。
使用停止。
***
「停止したから」
ガル。
「直さなかった」
***
「直さなかった設備で」
オウ。
「最後の引き渡しを。行おうとしました」
***
「停止前」
「はい」
***
「停止する場所やから」
「確認を弱くしました」
ダル。
***
「最後の人」
「はい」
***
「最後やから」
ガル。
「雑にした?」
***
「そう考えてはいませんでした」
ダル。
「でも」
「結果として。次に使う予定が少ない場所へ。確認の手間をかけませんでした」
***
「メルは」
「その少ない一人だった可能性があります」
***
誰も。
声を。
大きくしない。
***
札。
一枚。
***
保全箱。
***
設備補修。
延期。
***
使用停止。
***
「札に」
ルカ。
「粉」
***
表。
三角。
三線。
***
縁。
青。
***
「返路の木片」
ガル。
「青」
***
「同じ?」
ミエル・サド。
呼ばれている。
***
皿。
***
細い棒。
***
粉。
少し。
***
水。
***
青灰。
***
「似とる」
***
「どこで付いた」
ネラ。
「倉。リセさんの手。保全箱。染め場。複数あります」
***
「リセさん」
「札を取った時」
***
「倉の棚から」
リセ。
「素手で」
***
「手」
「当時。書類用の黒墨のみ」
***
「箱」
「旧経路保全の資材箱」
***
「青い粉」
ルカ。
「別の北返記録にも付着があります」
***
「では」
ミエル。
「保全箱の粉かもしれん」
***
「木片」
ガル。
「同じ箱を通った?」
***
「試験木片は」
朔。
「通っていません」
***
「返路が」
「保全箱と物理的に繋がっている証拠はありません」
***
「青」
「同系統の粉が。複数の場所にあります」
***
「また」
ガル。
「メルがおらんでも」
***
「青は移ります」
***
「はい」
***
ガル。
札を見る。
***
「これ」
「はい」
***
「メルの札じゃない」
「少なくとも。リセさんが持ち出した札である記録があります」
***
「セラの札でも」
「別です」
***
「誰かを受け取った札でも」
「確認されていません」
***
「設備を」
「照合するための物として使われました」
***
「役目」
ユイ。
「変わった?」
***
「受領札から」
リセ。
「設備印の見本へ。私が変えました」
***
「札に聞いた?」
***
リセ。
少し。
止まる。
***
「聞けません」
***
「でも」
「備品管理者への記録と。持出理由は書きました」
***
「戻さなかった」
「はい」
***
「今」
「共同記録へ返します」
***
「倉へ」
「戻しません」
***
「なぜ」
「当日の数量へ戻すと。使用されたことが見えなくなります」
***
「では」
「保全確認へ持ち出された札として。別に保管します」
***
記録。
***
受領札十二枚のうち一枚は、北二・灰札本人が当日使用し、本人保管後、共同記録へ移管。
***
もう一枚は、リセ・ハーンが失踪四日後、呼鐘設備印照合用として持ち出し、旧経路保全記録へ添付。
***
二枚の所在を確認。
***
次。
***
当日、受領対象候補または倉裏へ近づいた人物が、受領札を使用・所持したことは確認されていない。
***
「ゼロ?」
ガル。
***
「確認された数は」
ネラ。
「ゼロです」
***
「持ってなかった?」
「それは確認していません」
***
「札の不足から」
「推測する根拠はなくなりました」
***
「はい」
***
ガル。
紙。
***
前。
***
残る受領札一枚。
***
線。
***
消さない。
***
横。
***
失踪四日後、リセ・ハーンが設備印照合のため持ち出した札と確認。
***
次。
***
倉裏へ近づいた人物が持っていた札とは確認されていない。
***
署名。
ガル・メナ
***
「期待」
朔。
「していましたか」
***
「メルが」
ガル。
「札を持って。倉まで来たって?」
***
「はい」
***
「少し」
***
「今は」
「その根拠が減った」
***
「はい」
***
「嫌ですか」
「はい」
***
「でも」
ガル。
「リセが持ったことを。消したらあかん」
***
「はい」
***
「メルだけを。札へ置くために」
「はい」
***
リセ。
ガルを見る。
***
「私が」
彼女。
「持ち出しました」
***
「分かった」
***
責めない。
とは。
言わない。
***
許す。
とも。
言わない。
***
行為へ。
名前を。
置く。
***
「保全票」
イサラ。
「終わっていません」
***
現地確認延期。
***
使用停止。
***
札。
箱。
***
「今から」
ガル。
「鐘を直す?」
***
「使用再開が目的ではありません」
朔。
***
「では」
「当時。どこで切れたか。正面から裏へ音が届く構造だったか。別の故障があったかを確認します」
***
「もう見た」
「縄の断面と。修理記録だけです」
***
「鐘」
「実際に。正面から裏へ届くかは確認していません」
***
「人を」
イサラ。
「正面と裏へ置く?」
***
部屋。
止まる。
***
「過去の再現」
オウ。
「になります」
***
「誰かを」
朔。
「連絡員と受領者へ見立てません」
***
「では」
ガド。
「音源と。記録具」
***
正面。
鐘。
***
裏。
薄い膜。
***
人。
待たせない。
***
音。
大きさ。
距離。
***
縄。
修理しない。
***
別の紐で。
鐘を。
一度だけ。
鳴らす。
***
「誰が聞く」
ガル。
***
「人が必要です」
マレア。
***
「では」
イサラ。
「聞く者を。受領者とは呼びません」
***
「役目」
「音の有無を報告する者」
***
「複数」
「はい」
***
「場所」
「裏口。倉内。側面。水路」
***
「名前」
「自分で答える」
***
「意味」
「呼鐘の音か。ほかの音かを報告する」
***
「人を」
ガル。
「荷にせん?」
***
「音を聞く身体として参加します」
朔。
「受け取る人へはしません」
***
「俺も」
「理由」
「メルが鐘を聞けなかったか知りたい」
***
「その理由を」
ガル。
「隠さん」
***
「はい」
***
リセ。
保全票。
***
呼鐘縄交換
***
線。
***
横。
***
人員配置・正裏指示接続・設備音達範囲を含む手順不成立確認。
***
「直すだけでは」
彼女。
「足りませんでした」
***
「直しても」
ルカ。
「正面の者と裏の者が。互いの手順を知らなければ」
***
「また」
ダル。
「会いません」
***
「名前を」
ユイ。
「知らなくても会える?」
***
「はい」
朔。
「どうやって」
***
「名前ではなく。合図の意味を。両方が同じように確認します」
***
「鐘一回」
「正面側が。人を連れて到着した、ではなく」
***
「何」
「正面側に。呼鐘を鳴らした者がいること」
***
「人を連れてる?」
「別に確認します」
***
「受ける人」
「裏側に。合図を聞いた者がいること」
***
「受け取れる?」
「本人の状態と。意思を確認してから」
***
「一回で」
「全部へしません」
***
鐘。
一つ。
***
意味。
一つ。
***
その後。
次。
***
短くしすぎない。
***
長くても。
混ぜない。
***
夕方。
リセ。
自分の紙。
***
私は、北二・灰札の帰着報告から、設備・連絡不成立の情報を別紙へ分離した。
***
次。
***
外務向け要約を「受領対象なし。灰札帰着」とし、二つが同じ手順不成立に関係することを残さなかった。
***
次。
***
設備確認依頼は旧経路保全へ届いたが、「呼鐘縄交換」へ短縮され、対象移送なし・使用停止予定を理由に現地確認が延期された。
***
次。
***
私は処理結果を確認せず、権限外として終了した。
***
次。
***
受領札一枚を設備印照合用に持ち出し、返却しないまま保全箱へ残した。持出記録はあったが、受領札在庫と照合されなかった。
***
最後。
***
一枚の札が見つからなかった理由を、行方不明者の行為へ広げる前に、私の行為として記録する。
***
署名。
リセ・ハーン
***
朔。
自分の紙。
***
受領札十二枚の所在が、十枚、一枚、一枚として確認された。
***
数の不足を、受領対象候補一名の使用へ結び付ける根拠はなくなった。
***
次。
***
一枚が見つかったことで、倉裏へ近づいた人物、未署名紙片の書き手、青い外套の人物の身元は確認されていない。
***
次。
***
設備確認依頼は、個人情報を外して送られた。個人情報を守ることには役立った。
***
同時に、設備不通が人の受領不成立へ関係する可能性が、運用側の要約から失われた。
***
次。
***
分けることが誤りだったのではない。分けた情報を、必要な時に同じ出来事として照合する手順がなかった。
***
最後。
***
残った札の行き先は分かった。
***
受け取られなかった人の行き先は、まだ分からない。
***
筆。
止まる。
***
一枚。
足りない。
***
その数は。
誰か一人の。
形に見えた。
***
倉裏へ。
近づいた者。
***
受領札を。
取った者。
***
白い衣を。
恐れた者。
***
メル。
***
一本へ。
繋げられた。
***
だが。
札は。
別の日に。
リセの手で。
倉から出ていた。
***
設備の印を。
照らすため。
***
保全箱へ。
入っていた。
***
札が。
人ではなかった。
のではない。
***
最初から。
札は。
札だった。
***
人の行為を。
示すことはある。
***
人の名前を。
代わりに持つことはある。
***
だが。
数が一つ足りないから。
人が一人。
そこを通ったことには。
ならない。
***
ガルは。
残った一枚へ。
姉の名を。
書かなかった。
***
代わりに。
リセ・ハーン。
と。
書いた。
***
札を。
使った者の名としてではない。
***
失踪四日後。
設備印照合のために。
持ち出した者として。
***
その名前が。
入ったことで。
メルの名前は。
札から。
外れた。
***
消えた。
のではない。
***
青い外套。
***
一時保護相談。
***
北東門。
***
旧染料水路。
***
倉裏へ近づいた人影。
***
未署名の紙。
***
まだ。
別の場所へ。
残っている。
***
夜。
リオが。
旧紙倉へ。
封筒を。
持ってきた。
***
小さい。
***
角。
何度も。
折り直されている。
***
表。
***
朔の名。
***
裏。
***
ツヅリ村。
***
トウマ。
***
「返事」
ユイ。
***
「はい」
朔。
***
「持っていく?」
***
朔。
封。
見る。
***
まだ。
開いていない。
***
「読んでから」
***
「誰が持つか」
「書かれていることを。先に確認します」
***
「ハルへ」
「届かせたい手紙?」
***
「はい」
***
残った札の。
行き先は。
分かった。
***
次。
***
まだ。
届いていない手紙を。
誰が。
どこまで。
持つか。
***
名前より先に。
決めなければならなかった。




