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第九章 名前の先の道 ⑫ 届ける条件



 封筒の表。


***


 黒川朔さんへ


***


 裏。


***


 ツヅリ村 トウマ


***


 角。


 丸い。


***


 何度も。


 開きかけて。


 閉じた跡。


***


「開ける人」


 ユイ。


***


「俺です」


 朔。


***


「一人で?」


***


 朔は。


 封筒を見る。


***


 前に。


 自分が。


 トウマへ送った問い。


***


 誰が。


 ハルへの手紙を。


 持ってよいか。


***


 どの場所で。


 誰へ。


 渡してよいか。


***


 何を。


 本人確認に。


 使ってよいか。


***


 返事を。


 求めてよいか。


***


 届けられなかった時。


 どうするか。


***


「宛名は」


 リオ。


「お前や」


***


「はい」


***


「中に。誰と読めって書いてあるかもしれん」


***


「最初は」


 朔。


「俺が読みます」


***


「分かった」


 ユイ。


***


 朔。


 封。


 切る。


***


 中。


 三枚。


***


 一枚目。


 表。


***


 大きな字。


***


 この紙は、サクさんと、手紙を持っていく人と、一緒に行く人が読んでいいです。


***


「一緒に」


 ユイ。


「読める」


***


「はい」


***


 朔。


 一枚目を。


 机へ置く。


***


 二枚目。


***


 表。


***


 サクさんだけ先に読んでください。あとで、見せていいところを決めてください。


***


 三枚目。


***


 小さい。


***


 ダンさんとリーネさんに、字が読めるか見てもらいました。書くことは俺が決めました。


***


「トウマが」


 ユイ。


「決めた」


「はい」


***


 朔。


 二枚目を。


 持つ。


***


「少し」


 彼。


「離れます」


***


 旧紙倉。


 隅。


***


 窓。


***


 外。


 雨上がり。


***


 朔。


 読む。


***


 最初。


***


 サクさんへ。


***


 次。


***


 文字。


 少し。


 斜め。


***


 ハルに届けてほしいです。


***


 その下。


 濃い。


***


 でも、ハルじゃないものを、ハルにしないでください。


***


 朔。


 止まる。


***


 続き。


***


 黒い人がハルだと言っても、すぐにハルにしないでください。


***


 ハルだと言わなくても、すぐにハルじゃないと決めないでください。


***


 ヴァルハと言った人を、ハルと呼ばないでください。


***


 でも、その人がハルにあてた手紙を受け取りたいと言ったら、どうするかは、サクさんたちで決めてください。


***


 渡した時は、ハルに渡したと書かないでください。


***


 その人が名乗った名前と、ハルにあてた手紙を受け取ったことを書いてください。


***


 次。


***


 手紙の中にあることを、ハルかどうかの問題にしないでください。


***


 ハルしか知らないことを聞いて、答えが合ったらハルにするのも、やめてください。


***


 俺の名前を呼んで、反応するか試さないでください。


***


 青い布も、見せて反応を出させないでください。


***


 朔。


 窓の外。


 見る。


***


 トウマが。


 朔へ。


 渡した。


 青い布。


***


 ハルの。


 物だった。


 可能性。


***


 今。


 ネラが。


 預かっている。


***


 続き。


***


 手紙があることは、一回だけ言ってください。


***


 「トウマから、ハル・ミナトにあてた手紙があります。受け取りますか」と聞いてください。


***


 受け取らないと言ったら、持って帰ってください。


***


 何も言わなかったら、置いて帰らないでください。


***


 受け取ると言っても、近づいたら危ない時は渡さないでください。


***


 手紙を届けるために、誰かが帰れなくなるのは嫌です。


***


 その下。


 一度。


 消した跡。


***


 最初。


***


 ハルなら待ってくれると思います。


***


 線。


***


 書き直し。


***


 誰でも、待ってくれるとは決めないでください。


***


 朔。


 指。


 紙の端。


***


 次。


***


 返事は、ほしいです。


***


 でも、書かせないでください。


***


 言わせないでください。


***


 返事をしないと言ったら、それを返事にしてください。


***


 何も答えなかったら、何も答えなかったと持って帰ってください。


***


 次。


***


 サクさんが一人で決めないでください。


***


 朔。


 息。


 止まる。


***


 サクさんは、ハルに会いたいからです。


***


 次。


***


 リオさんと、ハルを知らない人にも、一緒に決めてもらってください。


***


 リオさんもハルを知っているなら、もう一人は、ハルを知らない人にしてください。


***


 次。


***


 でも、最後に逃げるかどうかは、手紙じゃなくて、そこにいる人たちの身体で決めてください。


***


 俺が許したから危ない所へ行っていい、にはしないでください。


***


 その下。


***


 字。


 少し。


 小さい。


***


 手紙は、前にサクさんが俺の許可で読みました。


***


 それを、受け取る人に隠さないでください。


***


 読んだ内容は、一緒に行く人へ全部言わないでください。


***


 渡す条件だけ見せてください。


***


 次。


***


 届けられなかったら、持って帰ってください。


***


 持って帰ったら、失敗ではありません。


***


 ハルじゃない人に渡さなかったなら、それも失敗ではありません。


***


 ハルかもしれない人に渡さなかった時も、危なかったなら失敗ではありません。


***


 最後。


***


 ハルに届けてほしいです。


***


 でも、手紙より先に帰ってきてください。


***


 次に、どうするか聞けるからです。


***


 署名。


***


 トウマ


***


 朔。


 紙。


 閉じない。


***


 しばらく。


 そのまま。


***


「読めた?」


 ユイ。


 遠くから。


***


「はい」


***


「見せていい?」


***


 朔。


 二枚目。


 見る。


***


 トウマ。


 書いた。


***


 あとで、見せていいところを決めてください。


***


「全部ではありません」


***


「誰と決める」


 リオ。


***


「俺だけでは」


 朔。


「決めません」


***


「では」


「トウマが。渡す条件として書いた部分は。全員へ見せます」


***


「サクさんだけに書いた所」


 ユイ。


「そこは」


 朔。


「俺が。誰へ話してよいか決めます」


***


「一人で?」


***


 朔。


 止まる。


***


「決める前に」


 リオ。


「何が書いてあるか言わんと。相談できへん」


***


「はい」


***


 紙の中。


***


 サクさんは。


 ハルに会いたい。


***


 だから。


 一人で決めない。


***


「俺の判断に」


 朔。


「ハルへ会いたい気持ちが影響するから。一人で決めないでほしいと書かれています」


***


「そこ」


 リオ。


「俺らへ言ってええんか」


***


「トウマは」


 朔。


「俺が見せる部分を決めてよいと書きました」


***


「お前は」


「この部分を。判断を一緒にする人へ伝える必要があると思います」


***


「理由」


「俺が。自分で影響を小さく見せないためです」


***


 ネラ。


 記録。


***


 黒川朔は、トウマの私信中、自身の判断へ影響する事項を共同判断者へ開示することを選択。


***


 私信全体の公開には同意せず。


***


「誰が読む」


 イサラ・ベルン。


***


「一枚目」


 朔。


「同行者全員」


***


「二枚目」


「俺。リオさん。ハルを知らない人」


***


「誰」


***


 フェル・ナード。


 壁。


 近く。


***


「私は」


 彼。


「ハル・ミナトさんを。記録でしか知りません」


***


「行く?」


 イサラ。


「経路踏査へ参加するなら」


***


「手紙の判断のため?」


「それだけではありません」


***


「理由」


「中央が。手紙を接触誘発物として扱う可能性を。現地記録で分けるためです」


***


「断りにくい理由」


「中央から来た者として。参加しなければ逃げたと見られる可能性」


***


「それでも」


「参加します」


***


「手紙の共同判断」


「引き受けます」


***


「ハルを」


「知りません」


***


「ヴァルハを」


「記録上のみ」


***


「中央の命令」


「現地では。手紙を誘発物として使用する命令を受けません」


***


「受けたら」


「拒否します」


***


 共同判断。


***


 朔。


***


 リオ。


***


 フェル。


***


 三人。


***


「最後に」


 イサラ。


「渡すかどうかを決める?」


***


「いいえ」


 朔。


***


「では」


「三人は。トウマの条件に合うかを確認します」


***


「危険」


「全体の中止と退避は。イサラさん」


***


「身体」


「マレアさん」


***


「経路」


「リオさんとノエさん」


***


「記録」


「セオさんとフェルさん」


***


「手紙」


「トウマの許可と。受取希望と。安全条件が揃った時だけ」


***


「三人が」


「全員。渡せると判断した時」


***


「一人が反対」


「渡しません」


***


「中央が」


「渡せと言っても」


「渡しません」


***


「相手が」


「要求しても」


***


「トウマの条件と。安全が揃わなければ。渡しません」


***


「奪おうとしたら」


 イサラ。


「手紙より。身体を守ります」


***


「破る?」


 ガル。


***


「条件」


 リオ。


「奪われて。追うことで全員が危険になるなら」


***


 朔。


 紙。


 見る。


***


 手紙より先に。


 帰って。


***


「追いません」


***


「手紙」


「失われたと記録します」


***


「燃やす?」


「事前には決めません」


***


「相手に」


「奪われる直前に。破棄することが人の危険を増やすなら。しません」


***


「内容」


「知られる」


***


「はい」


***


「トウマの」


「私信です」


***


「では」


 イサラ。


「保護条件を決めます」


***


 手紙。


***


 原物。


***


 既に。


 一度。


 朔が。


 許可を得て。


 開封。


***


 今。


 折り直され。


 薄い紙包み。


***


 表。


***


 ハル・ミナトへ


***


 その下。


***


 トウマより


***


 さらに。


 小さく。


***


 黒川朔が、トウマの許可により一度開封・内容確認済み。


***


「隠さない」


 ユイ。


「はい」


***


「受け取る人が」


「未開封と思わないようにします」


***


「新しい封」


「運搬中に内容が見えないための包みです」


***


「ハルのための封?」


「違います」


***


「じゃあ」


「持っていく間の保護」


***


 油紙。


***


 内。


 手紙。


***


 外。


 トウマの条件書。


***


 別。


***


「一緒に」


 ユイ。


「入れない?」


***


「条件書は」


 朔。


「同行者が確認します」


***


「手紙は」


「渡す時まで。内容を見せません」


***


「落としたら」


「外側の包みだけで。宛先と扱いが分かります」


***


「名前」


「あります」


***


 ハル・ミナト。


***


 トウマ。


***


 黒川朔。


***


 名前。


 三つ。


***


「持つ人」


 ネラ。


***


「俺です」


 朔。


***


 マレア・ソン。


 朔の膝。


 見る。


***


「身体」


「確認してください」


***


 旧紙倉。


 階段。


***


 十二段。


***


 下り。


***


 上り。


***


 荷。


 水。


 包帯。


 手紙。


***


 朔。


 歩く。


***


 杖。


 使わない。


***


「痛み」


「少し」


「前より」


「減っています」


「急に向きを変える」


***


 朔。


 右。


***


 止まる。


***


 膝。


 揺れる。


***


「もう一度」


***


 左。


***


 戻る。


***


「走る」


「短く」


***


 廊下。


***


 十歩。


***


 走る。


***


 止まる。


***


 右膝。


 痛み。


***


「強さ」


「少し増えました」


***


「裂け目」


「一人で越えません」


***


「退避」


「リオさんに荷を渡します」


***


「手紙」


***


 朔。


 止まる。


***


「俺が動けなければ」


「はい」


「リオさんへ渡します」


***


「渡せない状態」


「手紙を取りに戻りません」


***


「それを」


 リオ。


「今。決めとけ」


***


「はい」


***


「お前が倒れて」


「はい」


「手紙が。お前の下にある」


***


「俺を先に」


***


 言葉。


 止まる。


***


「身体を先に運んでください」


***


「手紙」


「回収できる時だけ」


***


「トウマ」


「手紙より先に帰れとる」


***


「はい」


***


 記録。


***


 第一携行者:黒川朔


***


 黒川朔が携行不能となった場合の第二携行者:リオ


***


 身体救助と手紙回収が両立しない場合、身体救助を優先。


***


 手紙回収のために退避を遅らせない。


***


「第三」


 ネラ。


***


「決めない」


 イサラ。


***


「なぜ」


「二人が携行不能な状況で。さらに受け渡しを続けると。手紙を運ぶことが任務の中心になります」


***


「では」


「その時点で。手紙は失われる可能性を受け入れます」


***


「トウマへ」


「事前に決めた条件として記録します」


***


 朔。


 頷く。


***


「青い布」


 ユイ。


***


 机。


 ない。


***


 ネラの。


 保管箱。


***


「持っていきません」


 朔。


***


「トウマが」


「反応を試すために使わないでほしいと書きました」


***


「持ってるだけなら」


 リオ。


「条件が変わる」


***


「はい」


***


「置く」


「はい」


***


「誰へ」


「今の保管条件のまま。ネラさん」


***


「俺が帰らなかったら」


「以前の継承記録」


***


 リオ。


 帰還。


 リオへ。


***


 リオ未帰還。


 朔帰還。


 朔へ。


***


 二人未帰還。


 ツヅリ村へ。


***


「手紙も」


 ユイ。


「同じ?」


***


「違います」


 朔。


***


「どうして」


「青い布は。預かった物です」


***


「手紙は」


「トウマが。今回の条件で。ハルへ届けることを許した物です」


***


「帰れなかったら」


「別の人へ。自動で引き継ぎません」


***


「なぜ」


「トウマが。リオさんより後の人を指定していません」


***


「ツヅリへ」


「生きて戻れた者が。状況を伝えます」


***


「手紙そのもの」


「失われた場合は。失われたと」


***


「勝手に写して」


「届けません」


***


「内容」


「俺は覚えています」


***


「なら」


「覚えていることを。トウマの手紙そのものにはしません」


***


「同じ言葉でも」


「俺が覚えた言葉です」


***


 写し。


 作らない。


***


 原物。


 一つ。


***


 許可。


 一回。


***


 届ける相手。


 未確認。


***


「中央」


 フェル。


 新しい紙。


***


 届いた指示。


***


 私信利用による対象反応確認


***


「使いません」


 朔。


***


「中央は」


 グラド。


「手紙の提示で。ヴァルハまたはハルの反応を」


***


「提示しません」


 フェル。


***


「では」


「トウマさんの許可に基づく。私信の限定的な配達です」


***


「反応は」


「起きれば記録します」


***


「目的」


「反応を起こすことではありません」


***


「接触」


「対象を呼びません」


***


「手紙があることを」


「人物が現れ。安全条件を保ち。同行者が知覚を分けた後に。一度だけ伝えます」


***


「それが」


「反応を起こす可能性はあります」


***


「なら」


「可能性を記録します」


***


「でも」


「反応を目的に。見せません」


***


「区別できる?」


 グラド。


***


「完全には」


 フェル。


「できません」


***


「では」


「目的、手順、言葉、提示時点を先に記録します」


***


「受け手が」


「何を知っていたかは。別に残します」


***


「手紙を」


「渡した後の反応を。本人性の証明にしません」


***


「中央は」


「不十分と判断する可能性があります」


***


「はい」


 朔。


***


「それでも」


「私信を。試験道具へ変えません」


***


 トウマの条件。


***


 公開可能部分。


***


 中央へ。


 写し。


***


 実際の手紙内容。


 出さない。


***


 許可された。


 手順だけ。


***


 呼名しない。


***


 トウマの名を反応試験へ用いない。


***


 青い布を携行・提示しない。


***


 人物または人影が自発的に現れた場合のみ、私信の存在を一度告知する。


***


 告知文:


***


 「トウマから、ハル・ミナトにあてた手紙があります。受け取りますか」


***


 受取希望なし、返答なし、知覚不一致、安全条件不成立の場合は渡さない。


***


 受取希望があっても、ハル・ミナト本人と確認したことにはしない。


***


 受領者が自ら名乗った名、実際の発言、受取行為を分けて記録する。


***


 返事を要求しない。


***


 私信内容を本人確認試験へ用いない。


***


 退避判断を配達より優先する。


***


「知覚不一致」


 グラド。


「一人だけ人物を見たら」


「渡しません」


 イサラ。


***


「二人」


「人数だけでは決めません」


***


「では」


「接近可能な経路と。身体危険と。発言の共有確認」


***


「全員」


「全員が同じに聞く必要はありません」


***


「なら」


「聞こえ方が違う状態で。宛先を作りません」


***


「一人だけ」


「手紙を受け取ると言ったと聞いたら」


***


「渡しません」


 朔。


***


「多数なら」


「多数だから渡すのではありません」


***


「何が必要」


***


 朔。


 リオ。


 フェル。


***


 三人。


***


「告知した言葉」


 フェル。


***


「相手から返った言葉」


 リオ。


***


「手紙を置ける場所」


 朔。


***


「誰も相手へ近づかず」


 イサラ。


「誰も退路を塞がれない」


***


「相手が」


 マレア。


「こちらへ接近しない」


***


「黒色化」


 エリオ。


「手紙、床、経路、身体のいずれにも確認されない」


***


「時間」


 セオ。


「折返し期限内」


***


「一つでも」


「揃わなければ。持ち帰ります」


***


「相手が」


 ガル。


「ハルやったら」


***


 朔。


 ガルを見る。


***


「ハルさんでも」


「はい」


***


「危なかったら」


「渡しません」


***


「怒るかも」


「はい」


***


「それでも」


「トウマが。手紙より先に帰れと書きました」


***


 ガル。


「分かった」


***


「ハルを」


「探しているのは。俺だけではありません」


***


「でも」


「誰かをハルにして。届けたことにはしません」


***


 ユイ。


 一枚目。


 読む。


***


 声。


 小さい。


***


「ハルに届けてほしいです」


***


 次。


***


「でも、ハルじゃないものを、ハルにしないでください」


***


 紙。


 下ろす。


***


「トウマ」


「はい」


 朔。


***


「ハルに会いたい?」


「はい」


***


「でも」


「会いたい人を。見つけたことにしない」


***


「難しい?」


「はい」


***


「サクも」


「はい」


***


「一人で決めない」


「はい」


***


「私」


 ユイ。


「行かない?」


***


「今回」


 イサラ。


「ユイさん自身の判断を確認します」


***


「目的」


「左の細道の経路確認。黒い人影との偶発接触時の私信配達判断」


***


「Y.I.」


「使いません」


***


「でも」


 ユイ。


「私がいたら。何か出るかもしれないって言われる」


***


「はい」


***


「私が行かなかったら」


「同じことを言う者はいます」


***


「じゃあ」


「どちらでも。条件として使われる可能性があります」


***


「私は」


 ユイ。


 止まる。


***


 第一踏査。


***


 行きたい。


***


 だが。


 今回は。


 行かない。


***


 自分で。


 決めた。


***


「今度は」


 彼女。


「行きたい」


***


 部屋。


 静か。


***


「理由」


 イサラ。


「サクたちが。名前を誰かへ着せないか。自分で見たい」


***


「ほか」


「道の向こうが。私に関係あるかもしれない」


***


「断りにくい理由」


「前に行かなかったから。今度も行かなかったら。怖がってるって思われる」


***


「怖い?」


「はい」


***


「身体」


 マレア。


「円形様小室までの歩行経験はありません」


***


「裂け目」


「渡ったことない」


***


「走る」


「できる」


***


「暗い道」


「歩ける」


***


「黒い人影」


「分からない」


***


「手紙」


「私が決めない」


***


「役目」


「知覚を。私の言葉で報告する」


***


「Y.I.として?」


「違う」


***


「名前」


「ユイ」


***


「参加」


 イサラ。


「今の目的に必要?」


***


 ユイ。


 答える前。


 朔を見る。


***


「サクが」


「はい」


***


「行ってほしくないって顔してる」


***


 朔。


 止まる。


***


「はい」


***


「どうして」


「危ないから」


***


「みんな」


「はい」


***


「私だけ」


「違いません」


***


「Y.I.だから」


「その理由も。少しあります」


***


「少し」


「はい」


***


「正直」


「はい」


***


 ユイ。


 朔を見る。


***


「それを」


「はい」


***


「私が行かない理由にしないで」


***


「はい」


***


「私が行く理由にも」


「しません」


***


 ユイ。


 マレアを見る。


***


「身体を確認して」


「はい」


***


 同行者。


 増える。


***


 第一案。


 十人。


***


 リオ。


 ガド。


 イサラ。


 朔。


 ユイ。


 マレア。


 ノエ。


 セオ。


 フェル。


 エリオ。


***


「十」


 ユイ。


***


「意味は」


 ノエ。


「付けません」


***


「円形の部屋」


「窪みは九」


***


 全員。


 止まる。


***


「十人で」


 フェル。


「入る?」


***


「小室へは」


 イサラ。


「全員で入らない」


***


「なぜ」


「発光試験にしないため」


***


「通過」


「外周を。一組ずつ」


***


「人を」


「窪みへ対応させない」


***


「十人目」


 ユイ。


「誰」


***


「誰も」


 朔。


***


「十人目です」


***


「順位」


「ありません」


***


「九つしか光らなかったら」


「人数として使いません」


***


「十光ったら」


「同じです」


***


「私が入った時だけ」


「変化しても。記録します」


***


「Y.I.」


「とは確認しません」


***


「はい」


***


 ユイ。


 自分で。


 参加欄。


***


 参加を希望する。


***


 次。


***


 道と、自分の知覚を確認したい。


***


 次。


***


 自分の存在を、Y.I.または黒い人影への反応試験に使うことには同意しない。


***


 次。


***


 発光・音・表示が変化しても、自分の名前または過去の符号との関係を、その場で確定しない。


***


 署名。


***


 ユイ


***


 家名。


 ない。


***


 足さない。


***


 出発。


 翌朝。


***


 手紙。


 朔の胸。


***


 水。


 少ない。


***


 荷。


 軽い。


***


 青い布。


 置く。


***


 トウマの名。


 呼ばない。


***


 ハルの名。


 呼ばない。


***


 ヴァルハの名。


 呼ばない。


***


 左の道。


***


 呼ばずに。


 歩く。


***


「帰る条件」


 イサラ。


***


 折返し期限。


***


 経路印。


 二つ以上の不一致。


***


 直接攻撃。


***


 退路の黒色化。


***


 身体一名の継続不能。


***


 知覚差による行動不能。


***


 手紙への接近要求が。


 身体安全と両立しない場合。


***


「渡さない条件」


 朔。


***


 受取希望。


 確認できず。


***


 相手の名乗り。


 聞き取り不一致。


***


 手紙を置く場所。


 確保できず。


***


 黒色化。


***


 折返し期限。


***


 三人の共同判断。


 一致せず。


***


「届かない」


 ユイ。


***


「はい」


***


「失敗?」


***


「違います」


 朔。


***


 トウマ。


 書いた。


***


 持って帰ったら。


 失敗ではない。


***


 石枠。


***


 十人。


***


 一人ずつ。


 入る。


***


 ユイ。


 前。


 止まる。


***


「名前」


 ノエ。


***


「ユイ」


***


「どこへ」


「旧搬入口の先。左の道まで」


***


「何をする」


「歩く。見る。聞く。自分で答える」


***


「何をしない」


「Y.I.として行かない。誰かをハルにしない」


***


 朔。


 次。


***


「名前」


「サク。黒川朔」


***


「何を持つ」


「トウマから。ハル・ミナトへあてた手紙」


***


「何のため」


「条件が揃った時に。届けるため」


***


「何に使わない」


「人を呼ぶため。本人を試すため。ハルを作るため」


***


 石枠。


 越える。


***


 名前。


 紙に。


 ある。


***


 宛先。


 ある。


***


 だが。


 道の先の誰かへ。


 その名前を。


 先に着せない。


***


 手紙を。


 持っていく。


***


 それは。


 宛先を。


 作りに行くことではない。


***


 届けられないまま。


 帰る道も。


 最初から。


 条件の中へ。


 書かれていた。

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