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119/150

第九章 名前の先の道 ⑨ 受け取る者のいない場所



 北返二番倉へ。


 向かう朝。


***


 オウ・レクは。


 灰色の外套も。


 脱いでいた。


***


 白いシャツ。


 茶色い上着。


***


 外務の印。


 ない。


***


「なぜ」


 ガル・メナ。


「灰色まで脱いだ」


***


「現在の所属を」


 オウ。


「隠すためではありません」


***


「では」


「道で私の服を見た者が。保護対象の移送だと考える可能性を減らすためです」


***


「今日」


 朔。


「保護対象はいますか」


「いません」


***


「なら」


「外務連絡員として歩く必要もありません」


***


「でも」


 ガル。


「お前が外務の人間やったことは」


「記録へ残します」


***


 同行記録。


***


 オウ・レク


 現地案内


***


 その下。


***


 失踪当日、本人への説明・同意確認なく、白色外務外套を着用して対象候補を追尾。


***


 案内者。


***


 追った者。


***


 同じ紙。


***


 どちらも。


 消さない。


***


 行く者。


***


 オウ・レク。


***


 ガル・メナ。


***


 イサラ・ベルン。


***


 リオ。


***


 ガド・ネン。


***


 ネラ・ヴォス。


***


 ルカ・フェン。


***


 サロ・デン。


***


 朔。


***


 九人。


***


 治療。


 マレア・ソン。


***


 北東門まで。


 同行。


***


「膝」


「平地なら。歩けます」


 朔。


「倉の中」


「段差を確認してから」


「床下」


「入りません」


***


「戻る条件」


「痛み増加。腫れ。足の力が抜ける。走って退避する必要がある場所」


***


「今日は」


 ガル。


「走らん?」


「走る必要が出たら。俺は先に戻ります」


***


「それでも行く」


「はい」


***


「理由」


「オウさんの記録と。場所の構造を。直接照合するため」


***


「メルを探すため」


「それもあります」


***


 隠さない。


***


 目的に。


 混ぜない。


***


 北東門。


***


 外。


***


 薬草丘へ。


 向かわない。


***


 低地へ下りる坂も。


 使わない。


***


 旧資材道。


***


 今は。


 染料袋。


 薪。


 空箱。


***


 運ばれる。


***


 道幅。


 荷車一台。


***


 脇。


 歩く者。


 一人。


***


「当日」


 ネラ。


「どこを歩きましたか」


***


 オウ。


 道の右。


「ここです」


「対象候補は」


「前方。左側」


「距離」


「荷車二台分」


***


「今日」


 イサラ。


「誰も。その位置を再現しません」


***


「はい」


 オウ。


***


「ガルさん」


「分かっとる」


***


「朔さん」


「はい」


***


 誰も。


 青い外套を。


 着ない。


***


 誰も。


 追われる者として。


 前へ置かない。


***


 オウは。


 道を。


 案内する。


***


 先頭には。


 立たない。


***


 リオ。


 先。


***


 ガド。


 次。


***


 オウ。


 三番目。


***


 道を知る者が。


 進む方向を伝える。


***


 道を見る者が。


 先に確認する。


***


「当日」


 ガル。


「メルと思った人は。どこで速くなった」


***


 オウ。


 道。


 指ささない。


***


 立ち止まる。


***


「ここから。十歩ほど先です」


***


 全員。


 止まる。


***


 オウだけ。


 十歩。


 進まない。


***


「なぜ止まる」


 ガル。


「私が歩くと。当日の相手との距離を。現在の同行者で再現する形になるためです」


***


「場所は」


「左に。崩れた水桶があります」


***


 リオ。


 先。


***


 水桶。


 確認。


***


 古い。


 底。


 抜けている。


***


「位置」


 ネラ。


 記録。


***


 オウ。


 後ろから。


「そこで。二度目に振り返りました」


***


「顔」


「横顔」


「メル」


「似ていました」


***


「今の記憶」


「はい」


***


「当時の記録」


「外套色と。対象候補の速度のみです」


***


「顔」


「書いていません」


***


「どうして」


「本人確認前の外見情報を。残しすぎない規則でした」


***


「守るため」


 ガル。


「はい」


***


「今は」


「記録がないため。当時何を見たかを。現在の記憶だけで話しています」


***


「どっちが」


 ユイは。


 いない。


***


 それでも。


 問い。


 残る。


***


「外見を残さないことと」


 朔。


「後から確認できないこと。両方があります」


***


「はい」


 オウ。


***


 進む。


***


 北返二番倉。


***


 見える。


***


 低い。


 石造り。


***


 屋根。


 半分。


 青黒い瓦。


***


 扉。


 正面。


 一つ。


***


 窓。


 左右。


 細い。


***


 裏。


 旧水路。


***


「当日」


 ネラ。


「ここへ」


「はい」


***


「対象候補と」


「到着していません」


***


「一人で」


「対象候補を見失った後。来ました」


***


「扉」


「閉まっていました」


***


「鍵」


「外務鍵で開けました」


***


「中」


「誰もいませんでした」


***


 ガル。


 顔。


 上がる。


***


「誰も」


「はい」


***


「前は」


「第二担当者はいなかった、と話しました」


***


「その時」


「不在だと判断しました」


***


「受け取る人」


「配置される予定でした」


***


「名前」


「知りません」


***


「でも」


「いると思っていました」


***


「何を見て」


「受領印」


***


 扉。


 右。


***


 石札。


***


 三角。


***


 横線。


 三本。


***


「これ」


 オウ。


***


「受領者が」


「配置済みである印だと。私は教えられていました」


***


「誰に」


「外務研修」


***


「書かれた資料」


「あります」


***


 ルカ・フェン。


 石札へ。


 近づく。


***


 触れない。


***


 目。


 細める。


***


「古い返し記号です」


***


「受領者の」


 オウ。


「配置印では」


「少なくとも。元は違います」


***


「何」


「この場所が。物資を受け入れる口であることを示す印」


***


「人」


 ガル。


「ではない?」


「場所の役目」


***


「外務では」


 オウ。


「受領準備済みと」


***


「誰が」


「流用したか。確認が必要です」


***


 場所の印。


***


 人の配置へ。


 読み替えられた。


***


 石札は。


 誰かが。


 待っていることを。


 言わない。


***


「鍵」


 イサラ。


***


 現在。


 北東門保管。


***


 サロ・デン。


 持つ。


***


「開ける前」


 ガド。


***


 扉。


 蝶番。


 隙間。


 床。


***


 新しい足跡。


 なし。


***


 鍵穴。


 錆。


***


 糸。


 一本。


 張る。


***


 扉。


 開いた時。


 動く。


***


「中」


 呼びかけ。


***


 イサラ。


 勇者。


 名乗らない。


***


「建物内の安全確認を行います」


***


「中に人がいる場合。返答できれば。声か物音で知らせてください」


***


 待つ。


***


 風。


***


 瓦。


***


 音。


 なし。


***


「もう一度」


***


「近づいてほしくない場合は。物音を二度。助けが必要な場合は一度。知らせてください」


***


 待つ。


***


 音。


 なし。


***


「開けます」


***


 鍵。


***


 回る。


***


 重い。


***


 扉。


 指一本分。


***


 糸。


 動く。


***


 中。


 暗い。


***


 匂い。


 乾いた藍。


 鼠。


 古い紙。


***


「人影」


 リオ。


「なし」


***


「床」


 ガド。


「入口。硬い」


***


 鏡。


***


 左右。


***


 机。


 一つ。


***


 長椅子。


 二つ。


***


 奥。


 棚。


***


 壁。


 小さな鐘。


***


 縄。


 切れている。


***


「入る」


 イサラ。


***


 リオ。


 ガド。


 イサラ。


***


 三人。


 先。


***


 安全。


***


 残り。


***


 朔。


 段差。


 低い。


***


 杖。


***


 入る。


***


「人数」


 サロ。


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


 九。


***


 倉。


***


 受け取る者。


 いない。


***


 今は。


***


 当日も。


 オウが入った時。


 いなかった。


***


「どこで待った」


 ガル。


***


 オウ。


 長椅子。


「ここです」


「一刻」


「はい」


***


「鐘」


「鳴らしました」


***


「縄」


「引きました」


***


「音」


「鳴りませんでした」


***


「切れてた」


「当時は。暗くて確認しませんでした」


***


 ガド。


 縄。


***


 断面。


 黒い。


 乾いている。


***


「最近ではない」


「いつ」


「分からん」


***


「修理帳」


 ルカ。


***


 壁。


 小箱。


***


 鍵。


 開いている。


***


 紙。


 湿気。


***


 設備記録。


***


 呼鐘縄摩耗


***


 日付。


***


 メル失踪の。


 三日前。


***


「三日前」


 ガル。


***


「修理」


 次。


***


 空白。


***


「直してない」


「記録では」


 ネラ。


「はい」


***


「受け取る人が」


 ガル。


「中におっても」


「鐘は鳴らなかった可能性があります」


 朔。


***


「でも」


「中にはいませんでした」


 オウ。


***


「裏」


 リオ。


「別の場所にいた可能性」


「あります」


***


「受領者が」


「配置されていたかを。先に確認します」


***


 机。


 引き出し。


***


 当日の。


 勤務札。


***


 日付。


***


 第一欄。


***


 外務連絡:オウ・レク


***


 第二欄。


***


 受領待機:


***


 空白。


***


「空白」


 ガル。


***


「はい」


 ネラ。


***


「誰も」


「配置記録がありません」


***


「でも」


 オウ。


「私の指示書には。受領準備済みと」


***


 紙。


***


 オウの。


 当時の控え。


***


 北返二番倉 受領準備済


***


 横。


 三角。


 三線。


***


「印」


 ルカ。


「場所印」


***


「人」


「ではありません」


***


 オウ。


 紙を見る。


***


「私は」


 彼。


「人が待っていると読んだ」


***


「教えられていた」


 朔。


「はい」


***


「誰が書いた」


 ネラ。


***


 指示書。


 作成。


***


 ダル・ケイン


***


「また」


 ガル。


***


「はい」


***


「ダルは」


「配置されたと思っていた可能性」


 オウ。


「確認します」


***


「今」


 ガル。


「何が分かった」


***


「当日の受領者名は」


 朔。


「勤務札へ記載されていません」


***


「人がいなかった」


「配置記録はありません」


***


「本当に」


「裏にいた。記録漏れ。別の者が代行した可能性は残ります」


***


「でも」


「オウさんが人の配置と読んだ印は。場所の役目を示す古い印でした」


***


「誰も」


 ガル。


「待ってなかったかもしれん」


「はい」


***


 オウ。


 長椅子。


 見る。


***


「私は」


 彼。


「人へ引き渡すつもりで」


***


 止まる。


***


「印へ。引き渡そうとしていました」


***


 誰も。


 答えない。


***


「引き渡した?」


 ガル。


「いいえ」


「メルは来てへん」


「はい」


***


「でも」


「誰かが待っていると。確認せずに進めました」


***


「何で」


「仕組みを。人より先に信じました」


***


 ユイは。


 いない。


***


 だが。


 問い。


 また。


 ある。


***


 役目が。


 書かれていれば。


 人は。


 いるのか。


***


 受領準備済。


***


 受け取る者。


 いる。


***


 同じではない。


***


「受領札」


 ルカ。


 棚。


***


 小さな木札。


***


 十。


***


 表。


 三角。


 三線。


***


 裏。


 空白。


***


「到着者が」


 オウ。


「一枚取る手順でした」


「何のため」


「受領者が不在の場合。待機中であることを示す」


***


「誰へ」


「受領者へ」


***


「受領者が」


 ガル。


「おらんかったら」


***


 オウ。


 答えない。


***


「札は」


 ネラ。


「当日何枚ありましたか」


「確認していません」


***


「今」


「十枚」


***


「元の数」


「帳面」


***


 備品。


***


 受領札。


 十二。


***


「二枚」


 ガル。


「ない」


***


「当日より前に」


 ルカ。


「紛失した可能性」


***


「誰かが」


「使った可能性」


***


「メルが」


「まだ」


***


 ガル。


「分かっとる」


***


「札に」


 朔。


「個別の印は」


「ありません」


***


「誰が取っても」


「同じ」


***


「いつ」


「分からない」


***


「二枚ない」


「はい」


***


「二人」


「とは決めません」


***


「一人が二枚」


「あります」


***


「廃棄」


「あります」


***


「別の用途」


「あります」


***


 数。


 また。


 人へ。


 近づく。


***


 止める。


***


 棚。


 下。


***


 紙。


 一枚。


***


 折れている。


***


 湿気。


***


 文字。


 薄い。


***


「当日?」


 ガル。


「日付」


 ネラ。


***


 ない。


***


 表。


***


 待機


***


 その下。


***


 白い衣が外にいる。


***


 部屋。


 止まる。


***


「誰が」


 ガル。


***


「未署名」


 ネラ。


***


「メル」


「未確認です」


***


「でも」


「白い衣」


***


「当日」


「可能性があります」


***


「オウ」


「私は。外にいました」


***


「紙」


 オウ。


 近づかない。


***


「見たこと」


「ありません」


***


「どこに」


「棚の下」


***


「いつから」


「分かりません」


***


「筆」


 ネラ。


「木炭」


***


「紙」


 ルカ。


「受領札の包み紙と。同じ種類に見える」


***


「同じ?」


「繊維と厚さが近い」


***


「誰でも」


「倉で使えた可能性」


***


「白い衣」


 ガル。


「オウ」


「当時。着ていました」


***


「なら」


「私を指している可能性があります」


***


「メルが書いた」


「可能性はあります」


 朔。


***


「受領者」


「可能性」


***


「別の人」


「可能性」


***


「別の日」


「あります」


***


「待機」


 ガル。


「誰が待ってた」


「分かりません」


***


 紙。


 魅力がある。


***


 青い外套の人物が。


 倉へ着いた。


***


 外に。


 白いオウがいた。


***


 中へ入り。


 受領札を取る。


***


 紙へ。


 書く。


***


 受け取る者。


 いない。


***


 裏へ。


 逃げる。


***


 一本の文。


 作れる。


***


「続き」


 ネラ。


 紙。


 裏返す。


***


 裏。


***


 文字。


 一つ。


***


 裏


***


「裏へ」


 ガル。


「行った」


***


「裏という文字だけです」


 朔。


***


「白い衣が外にいる。裏」


「一続きか」


 ネラ。


「未確認」


***


「別の人が」


「裏面へ書いただけの可能性」


***


「紙の裏」


「を示した可能性」


***


「倉の裏」


「可能性」


***


「続き」


「分かりません」


***


 ガル。


 紙。


 見る。


***


「持って帰る」


「はい」


 イサラ。


「位置と状態を記録して」


***


「原物」


「保管」


***


「写し」


「公開は」


 ネラ。


「個人の安否に関係するため。内容と不確かさを分けます」


***


「白い衣」


「オウさんを指す可能性」


***


「メル」


「書き手である可能性は。未確認」


***


「誰が」


「分からない」


***


 倉。


 裏。


***


 確認。


***


 扉。


 一つ。


***


 内側。


 閂。


***


 現在。


 外れている。


***


 錆。


***


「当日」


 オウ。


「ここは見ていません」


「なぜ」


「受領区画へ入る権限がないと考えていました」


***


「人を探してた」


 ガル。


「はい」


「でも」


「情報分離の境界を越えませんでした」


***


「また」


「はい」


***


 閂。


 触れない。


***


 扉。


 隙間。


***


 外。


 見える。


***


 旧染料水路。


***


 崩れた倉の方向。


***


「開ける」


 イサラ。


***


 外。


 安全確認。


***


 人。


 なし。


***


 扉。


 開く。


***


 地面。


 泥。


***


 雨の後。


 新しい。


***


 古い痕跡。


 消えている。


***


 石道。


 細い。


***


 水路へ。


 下る。


***


「当日の道」


 オウ。


「使っていません」


***


「受領者」


 ネラ。


「裏から来る手順?」


「私は。知りませんでした」


***


 ルカ。


 壁。


 印。


***


 三角。


 三線。


***


 その下。


 矢印。


***


 裏扉。


***


「物資は」


 彼。


「裏から受けた可能性があります」


***


「人は」


「外務が。後から保護経路へ流用した」


***


「場所の仕組みを」


「人の引き渡しへ」


***


「受領者」


「本来は。荷を扱う役目だった可能性」


***


「人を」


 ガル。


「荷みたいに」


***


「制度が」


 オウ。


「そう扱った部分があります」


***


「お前は」


「はい」


***


「気づいてた?」


「いいえ」


***


「今は」


「はい」


***


 裏道。


***


 石。


 下。


***


 細い溝。


***


 旧染料水路へ。


 続く。


***


 ガド。


 測る。


***


「市場の返し口と」


 朔。


「同じ幅?」


「近い」


***


「同じ」


「とは言わん」


***


「人」


 通れる。


***


 荷車。


 無理。


***


 箱。


 運べる。


***


「北返二番倉」


 ルカ。


「人を受ける前は。物資の受け渡し場所だった可能性が高い」


***


「白い衣」


 ガル。


「外」


***


「書き手」


 朔。


「中」


***


「裏」


「道」


***


「メルが」


 ガル。


 止まる。


***


「ここへ来た可能性」


***


「増えました」


 朔。


***


「紙」


「当日かは未確認です」


***


「白い衣」


「オウさんを指す可能性」


***


「裏」


「裏道を指す可能性」


***


「全部」


「一つの出来事である可能性があります」


***


「でも」


「書き手がメルさんであることは未確認」


***


「はい」


 ガル。


***


 また。


 朔より。


 早い。


***


「北返二番倉で」


 ネラ。


 記録。


***


 当日の受領待機者名は勤務札へ記載なし。


***


 外務指示書の「受領準備済」印は、受領者個人ではなく、古い場所機能印を流用した可能性が高い。


***


 呼鐘縄は失踪三日前に摩耗報告があり、修理記録なし。


***


 受領札は備品記録十二枚に対し、現存十枚。欠損時期・使用者未確認。


***


 棚下から「待機」「白い衣が外にいる」と記された未署名紙片を確認。裏面に「裏」の一字。作成時期・書き手・文の連続性未確認。


***


 倉裏口から旧染料水路方向へ、旧物資路様の石道および溝を確認。


***


「受け取る者」


 ガル。


「いなかった?」


***


「当日」


 朔。


「受領者が配置されていた記録は見つかっていません」


***


「いなかった」


「可能性があります」


***


「なら」


「メルさんと思われる人物が倉へ到達したとしても。引き渡しが成立しなかった可能性」


***


「倉へ」


「到達したことも。まだ確認していません」


***


「紙」


「書き手未確認」


***


「でも」


「次に確認する理由になります」


***


「何を」


「紙の時期。筆跡。紙の出所。欠けた受領札。裏道の先」


***


「それと」


 オウ。


「ダル・ケイン」


***


「配置」


「誰を受領者と考えていたか」


***


「いなかったなら」


「なぜ受領準備済と書いたか」


***


「答え」


「本人へ聞きます」


***


 帰還。


***


 九人。


***


 北東門。


***


 マレア。


 待つ。


***


「人数」


 サロ。


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


 九。


***


「膝」


 マレア。


「痛み。少し」


「増えた?」


「最後の下りで」


「次」


「今日はここまで」


***


「はい」


***


 一人ずつ。


 確認。


***


 ガル。


***


「名前」


「ガル・メナ」


「何をした」


「受け取る人が。いたかを見た」


「いた?」


「分からん」


***


「何を見つけた」


「勤務札の空白。切れた鐘。足りない札。白い衣が外にいると書かれた紙」


***


「紙を書いた人」


「分からん」


***


「メル」


「かもしれん」


***


「でも」


「まだ書かん」


***


 オウ。


***


「名前」


「オウ・レク」


「何をした」


「当日の経路を案内し、自分が人の配置と誤読した印を確認した」


***


「受け取る人」


「確認せずに。いると考えていました」


***


「今日」


「配置記録が空白であることを見ました」


***


「責任」


***


 オウ。


 止まる。


***


「人へ引き渡す手順を。人がいることを確認せずに実施しようとしました」


***


「引き渡した?」


「いいえ」


***


「メル」


「見失いました」


***


「紙」


「私を指している可能性があります」


***


「書いた人」


「知りません」


***


 朔。


***


「名前」


「サク。黒川朔」


「何をした」


「場所印と人の配置を分け、倉の構造と記録を確認した」


***


「見た」


「受領者名の空白」


***


「聞いた」


「オウさんが。印を人の配置だと読んでいたこと」


***


「考えた」


「受け取る役目が書かれていても。受け取る人がいるとは限らない」


***


「確認」


「当日の受領者は。まだ分かりません」


***


 夕方。


 中央。


***


 速報見出し案。


***


 北返二番倉、受領者不在を確認


***


「確認していません」


 フェル・ナード。


***


「勤務札」


 グラド。


「空白です」


「記録漏れと。裏側待機の可能性があります」


***


 書き直し。


***


 北返二番倉、失踪当日の受領待機者配置記録を確認できず


***


「長い」


「はい」


***


 次。


***


 オウ・レクが受領者配置済みと解釈した印は、旧物資受入場所を示す記号を流用した可能性が高いです。


***


 次。


***


 失踪三日前に呼鐘縄の摩耗が記録され、修理記録はありません。


***


 次。


***


 未署名の「白い衣が外にいる」紙片を確認しました。書き手、作成時期、失踪事案との関係は未確認です。


***


 中央。


 返答。


***


 短い。


***


 ダル・ケインによる緊急説明を翌朝実施。


***


 次。


***


 当日受領担当者については、秘匿保護規定により記録開示制限あり。


***


「いる?」


 ガル。


***


「記録が」


 朔。


「ある可能性があります」


***


「名前」


「開示されていません」


***


「また秘密」


「はい」


***


「守るため」


「可能性があります」


***


「でも」


「今。行方不明者の確認を妨げています」


***


「なら」


「開示理由を求めます」


***


 オウ。


 自分の紙。


***


 私は、北返二番倉の場所印を、受領者配置済みの印として扱った。


***


 当日の勤務札には、受領待機者名が記載されていなかった。


***


 当時、勤務札を確認しなかった。


***


 次。


***


 呼鐘が鳴らなかった時、設備故障または受領者不在を確認せず、情報分離上の理由で奥を調べなかった。


***


 次。


***


 対象候補を見失った後、誰かが受け取る予定だったという前提を、本人の安全確認の代わりにした。


***


 最後。


***


 私は、人へ渡すつもりで、役目の印へ渡そうとした。


***


 署名。


 オウ・レク


***


 ガル。


 隣。


***


 自分の紙。


***


 北返二番倉には、受け取る人がいたと確認できていない。


***


 次。


***


 メルと思われる人が、倉へ着いたとも確認できていない。


***


 次。


***


 「白い衣が外にいる」と書いた人が、メルとも確認できていない。


***


 止まる。


***


「少ない」


 朔。


***


「はい」


 ガル。


***


「でも」


「受け取る人がおったって。勝手に書かんで済む」


***


 最後。


***


 誰も受け取らなかった可能性を、誰かが受け取ったことにしない。


***


 署名。


 ガル・メナ


***


 夜。


 朔。


 古い場所印。


 見る。


***


 三角。


 三本の線。


***


 返し口。


***


 北返。


***


 受領準備済。


***


 一つの印。


 複数の意味。


***


 物を受ける場所。


***


 人を保護する場所。


***


 受け取る者が。


 配置されたという合図。


***


 最後の意味だけが。


 人を必要とする。


***


 だが。


 印の中に。


 人の名前は。


 なかった。


***


 オウは。


 そこへ。


 誰かがいると考えた。


***


 中央は。


 誰かがいる前提で。


 人を送った。


***


 記録は。


 受領準備済と。


 短くした。


***


 その日。


 本当に。


 誰かが。


 待っていたか。


***


 まだ。


 分からない。


***


 倉は。


 残っていた。


***


 長椅子。


 鐘。


 受領札。


 裏道。


***


 待つための物。


 揃っていた。


***


 それでも。


 待つ者がいた証拠には。


 ならなかった。


***


 役目の場所が。


 残っていても。


***


 役目を引き受ける身体が。


 そこにいるとは限らない。


***


 翌朝。


 ダル・ケインへ。


 問う。


***


 誰を。


 受け取る者として。


 置いたのか。


***


 その名前を。


 なぜ。


 誰にも。


 知らせなかったのか。


***


 もし。


 誰も置かなかったなら。


***


 なぜ。


 受領準備済と。


 書いたのか。


***


 北返二番倉は。


 受け取る場所だった。


***


 だが。


 場所だけでは。


 人を。


 受け取れなかった。

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