第九章 名前の先の道 ⑨ 受け取る者のいない場所
北返二番倉へ。
向かう朝。
***
オウ・レクは。
灰色の外套も。
脱いでいた。
***
白いシャツ。
茶色い上着。
***
外務の印。
ない。
***
「なぜ」
ガル・メナ。
「灰色まで脱いだ」
***
「現在の所属を」
オウ。
「隠すためではありません」
***
「では」
「道で私の服を見た者が。保護対象の移送だと考える可能性を減らすためです」
***
「今日」
朔。
「保護対象はいますか」
「いません」
***
「なら」
「外務連絡員として歩く必要もありません」
***
「でも」
ガル。
「お前が外務の人間やったことは」
「記録へ残します」
***
同行記録。
***
オウ・レク
現地案内
***
その下。
***
失踪当日、本人への説明・同意確認なく、白色外務外套を着用して対象候補を追尾。
***
案内者。
***
追った者。
***
同じ紙。
***
どちらも。
消さない。
***
行く者。
***
オウ・レク。
***
ガル・メナ。
***
イサラ・ベルン。
***
リオ。
***
ガド・ネン。
***
ネラ・ヴォス。
***
ルカ・フェン。
***
サロ・デン。
***
朔。
***
九人。
***
治療。
マレア・ソン。
***
北東門まで。
同行。
***
「膝」
「平地なら。歩けます」
朔。
「倉の中」
「段差を確認してから」
「床下」
「入りません」
***
「戻る条件」
「痛み増加。腫れ。足の力が抜ける。走って退避する必要がある場所」
***
「今日は」
ガル。
「走らん?」
「走る必要が出たら。俺は先に戻ります」
***
「それでも行く」
「はい」
***
「理由」
「オウさんの記録と。場所の構造を。直接照合するため」
***
「メルを探すため」
「それもあります」
***
隠さない。
***
目的に。
混ぜない。
***
北東門。
***
外。
***
薬草丘へ。
向かわない。
***
低地へ下りる坂も。
使わない。
***
旧資材道。
***
今は。
染料袋。
薪。
空箱。
***
運ばれる。
***
道幅。
荷車一台。
***
脇。
歩く者。
一人。
***
「当日」
ネラ。
「どこを歩きましたか」
***
オウ。
道の右。
「ここです」
「対象候補は」
「前方。左側」
「距離」
「荷車二台分」
***
「今日」
イサラ。
「誰も。その位置を再現しません」
***
「はい」
オウ。
***
「ガルさん」
「分かっとる」
***
「朔さん」
「はい」
***
誰も。
青い外套を。
着ない。
***
誰も。
追われる者として。
前へ置かない。
***
オウは。
道を。
案内する。
***
先頭には。
立たない。
***
リオ。
先。
***
ガド。
次。
***
オウ。
三番目。
***
道を知る者が。
進む方向を伝える。
***
道を見る者が。
先に確認する。
***
「当日」
ガル。
「メルと思った人は。どこで速くなった」
***
オウ。
道。
指ささない。
***
立ち止まる。
***
「ここから。十歩ほど先です」
***
全員。
止まる。
***
オウだけ。
十歩。
進まない。
***
「なぜ止まる」
ガル。
「私が歩くと。当日の相手との距離を。現在の同行者で再現する形になるためです」
***
「場所は」
「左に。崩れた水桶があります」
***
リオ。
先。
***
水桶。
確認。
***
古い。
底。
抜けている。
***
「位置」
ネラ。
記録。
***
オウ。
後ろから。
「そこで。二度目に振り返りました」
***
「顔」
「横顔」
「メル」
「似ていました」
***
「今の記憶」
「はい」
***
「当時の記録」
「外套色と。対象候補の速度のみです」
***
「顔」
「書いていません」
***
「どうして」
「本人確認前の外見情報を。残しすぎない規則でした」
***
「守るため」
ガル。
「はい」
***
「今は」
「記録がないため。当時何を見たかを。現在の記憶だけで話しています」
***
「どっちが」
ユイは。
いない。
***
それでも。
問い。
残る。
***
「外見を残さないことと」
朔。
「後から確認できないこと。両方があります」
***
「はい」
オウ。
***
進む。
***
北返二番倉。
***
見える。
***
低い。
石造り。
***
屋根。
半分。
青黒い瓦。
***
扉。
正面。
一つ。
***
窓。
左右。
細い。
***
裏。
旧水路。
***
「当日」
ネラ。
「ここへ」
「はい」
***
「対象候補と」
「到着していません」
***
「一人で」
「対象候補を見失った後。来ました」
***
「扉」
「閉まっていました」
***
「鍵」
「外務鍵で開けました」
***
「中」
「誰もいませんでした」
***
ガル。
顔。
上がる。
***
「誰も」
「はい」
***
「前は」
「第二担当者はいなかった、と話しました」
***
「その時」
「不在だと判断しました」
***
「受け取る人」
「配置される予定でした」
***
「名前」
「知りません」
***
「でも」
「いると思っていました」
***
「何を見て」
「受領印」
***
扉。
右。
***
石札。
***
三角。
***
横線。
三本。
***
「これ」
オウ。
***
「受領者が」
「配置済みである印だと。私は教えられていました」
***
「誰に」
「外務研修」
***
「書かれた資料」
「あります」
***
ルカ・フェン。
石札へ。
近づく。
***
触れない。
***
目。
細める。
***
「古い返し記号です」
***
「受領者の」
オウ。
「配置印では」
「少なくとも。元は違います」
***
「何」
「この場所が。物資を受け入れる口であることを示す印」
***
「人」
ガル。
「ではない?」
「場所の役目」
***
「外務では」
オウ。
「受領準備済みと」
***
「誰が」
「流用したか。確認が必要です」
***
場所の印。
***
人の配置へ。
読み替えられた。
***
石札は。
誰かが。
待っていることを。
言わない。
***
「鍵」
イサラ。
***
現在。
北東門保管。
***
サロ・デン。
持つ。
***
「開ける前」
ガド。
***
扉。
蝶番。
隙間。
床。
***
新しい足跡。
なし。
***
鍵穴。
錆。
***
糸。
一本。
張る。
***
扉。
開いた時。
動く。
***
「中」
呼びかけ。
***
イサラ。
勇者。
名乗らない。
***
「建物内の安全確認を行います」
***
「中に人がいる場合。返答できれば。声か物音で知らせてください」
***
待つ。
***
風。
***
瓦。
***
音。
なし。
***
「もう一度」
***
「近づいてほしくない場合は。物音を二度。助けが必要な場合は一度。知らせてください」
***
待つ。
***
音。
なし。
***
「開けます」
***
鍵。
***
回る。
***
重い。
***
扉。
指一本分。
***
糸。
動く。
***
中。
暗い。
***
匂い。
乾いた藍。
鼠。
古い紙。
***
「人影」
リオ。
「なし」
***
「床」
ガド。
「入口。硬い」
***
鏡。
***
左右。
***
机。
一つ。
***
長椅子。
二つ。
***
奥。
棚。
***
壁。
小さな鐘。
***
縄。
切れている。
***
「入る」
イサラ。
***
リオ。
ガド。
イサラ。
***
三人。
先。
***
安全。
***
残り。
***
朔。
段差。
低い。
***
杖。
***
入る。
***
「人数」
サロ。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
***
倉。
***
受け取る者。
いない。
***
今は。
***
当日も。
オウが入った時。
いなかった。
***
「どこで待った」
ガル。
***
オウ。
長椅子。
「ここです」
「一刻」
「はい」
***
「鐘」
「鳴らしました」
***
「縄」
「引きました」
***
「音」
「鳴りませんでした」
***
「切れてた」
「当時は。暗くて確認しませんでした」
***
ガド。
縄。
***
断面。
黒い。
乾いている。
***
「最近ではない」
「いつ」
「分からん」
***
「修理帳」
ルカ。
***
壁。
小箱。
***
鍵。
開いている。
***
紙。
湿気。
***
設備記録。
***
呼鐘縄摩耗
***
日付。
***
メル失踪の。
三日前。
***
「三日前」
ガル。
***
「修理」
次。
***
空白。
***
「直してない」
「記録では」
ネラ。
「はい」
***
「受け取る人が」
ガル。
「中におっても」
「鐘は鳴らなかった可能性があります」
朔。
***
「でも」
「中にはいませんでした」
オウ。
***
「裏」
リオ。
「別の場所にいた可能性」
「あります」
***
「受領者が」
「配置されていたかを。先に確認します」
***
机。
引き出し。
***
当日の。
勤務札。
***
日付。
***
第一欄。
***
外務連絡:オウ・レク
***
第二欄。
***
受領待機:
***
空白。
***
「空白」
ガル。
***
「はい」
ネラ。
***
「誰も」
「配置記録がありません」
***
「でも」
オウ。
「私の指示書には。受領準備済みと」
***
紙。
***
オウの。
当時の控え。
***
北返二番倉 受領準備済
***
横。
三角。
三線。
***
「印」
ルカ。
「場所印」
***
「人」
「ではありません」
***
オウ。
紙を見る。
***
「私は」
彼。
「人が待っていると読んだ」
***
「教えられていた」
朔。
「はい」
***
「誰が書いた」
ネラ。
***
指示書。
作成。
***
ダル・ケイン
***
「また」
ガル。
***
「はい」
***
「ダルは」
「配置されたと思っていた可能性」
オウ。
「確認します」
***
「今」
ガル。
「何が分かった」
***
「当日の受領者名は」
朔。
「勤務札へ記載されていません」
***
「人がいなかった」
「配置記録はありません」
***
「本当に」
「裏にいた。記録漏れ。別の者が代行した可能性は残ります」
***
「でも」
「オウさんが人の配置と読んだ印は。場所の役目を示す古い印でした」
***
「誰も」
ガル。
「待ってなかったかもしれん」
「はい」
***
オウ。
長椅子。
見る。
***
「私は」
彼。
「人へ引き渡すつもりで」
***
止まる。
***
「印へ。引き渡そうとしていました」
***
誰も。
答えない。
***
「引き渡した?」
ガル。
「いいえ」
「メルは来てへん」
「はい」
***
「でも」
「誰かが待っていると。確認せずに進めました」
***
「何で」
「仕組みを。人より先に信じました」
***
ユイは。
いない。
***
だが。
問い。
また。
ある。
***
役目が。
書かれていれば。
人は。
いるのか。
***
受領準備済。
***
受け取る者。
いる。
***
同じではない。
***
「受領札」
ルカ。
棚。
***
小さな木札。
***
十。
***
表。
三角。
三線。
***
裏。
空白。
***
「到着者が」
オウ。
「一枚取る手順でした」
「何のため」
「受領者が不在の場合。待機中であることを示す」
***
「誰へ」
「受領者へ」
***
「受領者が」
ガル。
「おらんかったら」
***
オウ。
答えない。
***
「札は」
ネラ。
「当日何枚ありましたか」
「確認していません」
***
「今」
「十枚」
***
「元の数」
「帳面」
***
備品。
***
受領札。
十二。
***
「二枚」
ガル。
「ない」
***
「当日より前に」
ルカ。
「紛失した可能性」
***
「誰かが」
「使った可能性」
***
「メルが」
「まだ」
***
ガル。
「分かっとる」
***
「札に」
朔。
「個別の印は」
「ありません」
***
「誰が取っても」
「同じ」
***
「いつ」
「分からない」
***
「二枚ない」
「はい」
***
「二人」
「とは決めません」
***
「一人が二枚」
「あります」
***
「廃棄」
「あります」
***
「別の用途」
「あります」
***
数。
また。
人へ。
近づく。
***
止める。
***
棚。
下。
***
紙。
一枚。
***
折れている。
***
湿気。
***
文字。
薄い。
***
「当日?」
ガル。
「日付」
ネラ。
***
ない。
***
表。
***
待機
***
その下。
***
白い衣が外にいる。
***
部屋。
止まる。
***
「誰が」
ガル。
***
「未署名」
ネラ。
***
「メル」
「未確認です」
***
「でも」
「白い衣」
***
「当日」
「可能性があります」
***
「オウ」
「私は。外にいました」
***
「紙」
オウ。
近づかない。
***
「見たこと」
「ありません」
***
「どこに」
「棚の下」
***
「いつから」
「分かりません」
***
「筆」
ネラ。
「木炭」
***
「紙」
ルカ。
「受領札の包み紙と。同じ種類に見える」
***
「同じ?」
「繊維と厚さが近い」
***
「誰でも」
「倉で使えた可能性」
***
「白い衣」
ガル。
「オウ」
「当時。着ていました」
***
「なら」
「私を指している可能性があります」
***
「メルが書いた」
「可能性はあります」
朔。
***
「受領者」
「可能性」
***
「別の人」
「可能性」
***
「別の日」
「あります」
***
「待機」
ガル。
「誰が待ってた」
「分かりません」
***
紙。
魅力がある。
***
青い外套の人物が。
倉へ着いた。
***
外に。
白いオウがいた。
***
中へ入り。
受領札を取る。
***
紙へ。
書く。
***
受け取る者。
いない。
***
裏へ。
逃げる。
***
一本の文。
作れる。
***
「続き」
ネラ。
紙。
裏返す。
***
裏。
***
文字。
一つ。
***
裏
***
「裏へ」
ガル。
「行った」
***
「裏という文字だけです」
朔。
***
「白い衣が外にいる。裏」
「一続きか」
ネラ。
「未確認」
***
「別の人が」
「裏面へ書いただけの可能性」
***
「紙の裏」
「を示した可能性」
***
「倉の裏」
「可能性」
***
「続き」
「分かりません」
***
ガル。
紙。
見る。
***
「持って帰る」
「はい」
イサラ。
「位置と状態を記録して」
***
「原物」
「保管」
***
「写し」
「公開は」
ネラ。
「個人の安否に関係するため。内容と不確かさを分けます」
***
「白い衣」
「オウさんを指す可能性」
***
「メル」
「書き手である可能性は。未確認」
***
「誰が」
「分からない」
***
倉。
裏。
***
確認。
***
扉。
一つ。
***
内側。
閂。
***
現在。
外れている。
***
錆。
***
「当日」
オウ。
「ここは見ていません」
「なぜ」
「受領区画へ入る権限がないと考えていました」
***
「人を探してた」
ガル。
「はい」
「でも」
「情報分離の境界を越えませんでした」
***
「また」
「はい」
***
閂。
触れない。
***
扉。
隙間。
***
外。
見える。
***
旧染料水路。
***
崩れた倉の方向。
***
「開ける」
イサラ。
***
外。
安全確認。
***
人。
なし。
***
扉。
開く。
***
地面。
泥。
***
雨の後。
新しい。
***
古い痕跡。
消えている。
***
石道。
細い。
***
水路へ。
下る。
***
「当日の道」
オウ。
「使っていません」
***
「受領者」
ネラ。
「裏から来る手順?」
「私は。知りませんでした」
***
ルカ。
壁。
印。
***
三角。
三線。
***
その下。
矢印。
***
裏扉。
***
「物資は」
彼。
「裏から受けた可能性があります」
***
「人は」
「外務が。後から保護経路へ流用した」
***
「場所の仕組みを」
「人の引き渡しへ」
***
「受領者」
「本来は。荷を扱う役目だった可能性」
***
「人を」
ガル。
「荷みたいに」
***
「制度が」
オウ。
「そう扱った部分があります」
***
「お前は」
「はい」
***
「気づいてた?」
「いいえ」
***
「今は」
「はい」
***
裏道。
***
石。
下。
***
細い溝。
***
旧染料水路へ。
続く。
***
ガド。
測る。
***
「市場の返し口と」
朔。
「同じ幅?」
「近い」
***
「同じ」
「とは言わん」
***
「人」
通れる。
***
荷車。
無理。
***
箱。
運べる。
***
「北返二番倉」
ルカ。
「人を受ける前は。物資の受け渡し場所だった可能性が高い」
***
「白い衣」
ガル。
「外」
***
「書き手」
朔。
「中」
***
「裏」
「道」
***
「メルが」
ガル。
止まる。
***
「ここへ来た可能性」
***
「増えました」
朔。
***
「紙」
「当日かは未確認です」
***
「白い衣」
「オウさんを指す可能性」
***
「裏」
「裏道を指す可能性」
***
「全部」
「一つの出来事である可能性があります」
***
「でも」
「書き手がメルさんであることは未確認」
***
「はい」
ガル。
***
また。
朔より。
早い。
***
「北返二番倉で」
ネラ。
記録。
***
当日の受領待機者名は勤務札へ記載なし。
***
外務指示書の「受領準備済」印は、受領者個人ではなく、古い場所機能印を流用した可能性が高い。
***
呼鐘縄は失踪三日前に摩耗報告があり、修理記録なし。
***
受領札は備品記録十二枚に対し、現存十枚。欠損時期・使用者未確認。
***
棚下から「待機」「白い衣が外にいる」と記された未署名紙片を確認。裏面に「裏」の一字。作成時期・書き手・文の連続性未確認。
***
倉裏口から旧染料水路方向へ、旧物資路様の石道および溝を確認。
***
「受け取る者」
ガル。
「いなかった?」
***
「当日」
朔。
「受領者が配置されていた記録は見つかっていません」
***
「いなかった」
「可能性があります」
***
「なら」
「メルさんと思われる人物が倉へ到達したとしても。引き渡しが成立しなかった可能性」
***
「倉へ」
「到達したことも。まだ確認していません」
***
「紙」
「書き手未確認」
***
「でも」
「次に確認する理由になります」
***
「何を」
「紙の時期。筆跡。紙の出所。欠けた受領札。裏道の先」
***
「それと」
オウ。
「ダル・ケイン」
***
「配置」
「誰を受領者と考えていたか」
***
「いなかったなら」
「なぜ受領準備済と書いたか」
***
「答え」
「本人へ聞きます」
***
帰還。
***
九人。
***
北東門。
***
マレア。
待つ。
***
「人数」
サロ。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
***
「膝」
マレア。
「痛み。少し」
「増えた?」
「最後の下りで」
「次」
「今日はここまで」
***
「はい」
***
一人ずつ。
確認。
***
ガル。
***
「名前」
「ガル・メナ」
「何をした」
「受け取る人が。いたかを見た」
「いた?」
「分からん」
***
「何を見つけた」
「勤務札の空白。切れた鐘。足りない札。白い衣が外にいると書かれた紙」
***
「紙を書いた人」
「分からん」
***
「メル」
「かもしれん」
***
「でも」
「まだ書かん」
***
オウ。
***
「名前」
「オウ・レク」
「何をした」
「当日の経路を案内し、自分が人の配置と誤読した印を確認した」
***
「受け取る人」
「確認せずに。いると考えていました」
***
「今日」
「配置記録が空白であることを見ました」
***
「責任」
***
オウ。
止まる。
***
「人へ引き渡す手順を。人がいることを確認せずに実施しようとしました」
***
「引き渡した?」
「いいえ」
***
「メル」
「見失いました」
***
「紙」
「私を指している可能性があります」
***
「書いた人」
「知りません」
***
朔。
***
「名前」
「サク。黒川朔」
「何をした」
「場所印と人の配置を分け、倉の構造と記録を確認した」
***
「見た」
「受領者名の空白」
***
「聞いた」
「オウさんが。印を人の配置だと読んでいたこと」
***
「考えた」
「受け取る役目が書かれていても。受け取る人がいるとは限らない」
***
「確認」
「当日の受領者は。まだ分かりません」
***
夕方。
中央。
***
速報見出し案。
***
北返二番倉、受領者不在を確認
***
「確認していません」
フェル・ナード。
***
「勤務札」
グラド。
「空白です」
「記録漏れと。裏側待機の可能性があります」
***
書き直し。
***
北返二番倉、失踪当日の受領待機者配置記録を確認できず
***
「長い」
「はい」
***
次。
***
オウ・レクが受領者配置済みと解釈した印は、旧物資受入場所を示す記号を流用した可能性が高いです。
***
次。
***
失踪三日前に呼鐘縄の摩耗が記録され、修理記録はありません。
***
次。
***
未署名の「白い衣が外にいる」紙片を確認しました。書き手、作成時期、失踪事案との関係は未確認です。
***
中央。
返答。
***
短い。
***
ダル・ケインによる緊急説明を翌朝実施。
***
次。
***
当日受領担当者については、秘匿保護規定により記録開示制限あり。
***
「いる?」
ガル。
***
「記録が」
朔。
「ある可能性があります」
***
「名前」
「開示されていません」
***
「また秘密」
「はい」
***
「守るため」
「可能性があります」
***
「でも」
「今。行方不明者の確認を妨げています」
***
「なら」
「開示理由を求めます」
***
オウ。
自分の紙。
***
私は、北返二番倉の場所印を、受領者配置済みの印として扱った。
***
当日の勤務札には、受領待機者名が記載されていなかった。
***
当時、勤務札を確認しなかった。
***
次。
***
呼鐘が鳴らなかった時、設備故障または受領者不在を確認せず、情報分離上の理由で奥を調べなかった。
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次。
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対象候補を見失った後、誰かが受け取る予定だったという前提を、本人の安全確認の代わりにした。
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最後。
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私は、人へ渡すつもりで、役目の印へ渡そうとした。
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署名。
オウ・レク
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ガル。
隣。
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自分の紙。
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北返二番倉には、受け取る人がいたと確認できていない。
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次。
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メルと思われる人が、倉へ着いたとも確認できていない。
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次。
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「白い衣が外にいる」と書いた人が、メルとも確認できていない。
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止まる。
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「少ない」
朔。
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「はい」
ガル。
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「でも」
「受け取る人がおったって。勝手に書かんで済む」
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最後。
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誰も受け取らなかった可能性を、誰かが受け取ったことにしない。
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署名。
ガル・メナ
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夜。
朔。
古い場所印。
見る。
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三角。
三本の線。
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返し口。
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北返。
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受領準備済。
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一つの印。
複数の意味。
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物を受ける場所。
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人を保護する場所。
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受け取る者が。
配置されたという合図。
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最後の意味だけが。
人を必要とする。
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だが。
印の中に。
人の名前は。
なかった。
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オウは。
そこへ。
誰かがいると考えた。
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中央は。
誰かがいる前提で。
人を送った。
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記録は。
受領準備済と。
短くした。
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その日。
本当に。
誰かが。
待っていたか。
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まだ。
分からない。
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倉は。
残っていた。
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長椅子。
鐘。
受領札。
裏道。
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待つための物。
揃っていた。
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それでも。
待つ者がいた証拠には。
ならなかった。
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役目の場所が。
残っていても。
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役目を引き受ける身体が。
そこにいるとは限らない。
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翌朝。
ダル・ケインへ。
問う。
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誰を。
受け取る者として。
置いたのか。
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その名前を。
なぜ。
誰にも。
知らせなかったのか。
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もし。
誰も置かなかったなら。
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なぜ。
受領準備済と。
書いたのか。
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北返二番倉は。
受け取る場所だった。
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だが。
場所だけでは。
人を。
受け取れなかった。




