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118/150

第九章 名前の先の道 ⑧ 靴を返した者



 オウ・レクは。


 白い衣を。


 着ていなかった。


***


 灰色。


 短い外套。


***


 泥。


 裾。


***


 年齢。


 三十代後半。


***


 髪。


 後ろ。


 短く結ぶ。


***


 旧紙倉。


 入口。


***


「オウ・レクです」


***


 自分で。


 名乗る。


***


 中央塔外務。


 保護経路連絡。


***


 現在。


 一時停止中。


***


「停止」


 ガル・メナ。


「何をした」


***


「北東門周辺の保護経路記録に」


 オウ。


「不一致が確認されたためです」


***


「メルの」


「関係する記録を含みます」


***


「お前」


 ガル。


 立っている。


***


 机。


 間。


***


「白い衣を。着てたか」


***


 オウ。


 止まらない。


「はい」


***


 部屋。


 静か。


***


「メルを」


 ガル。


「追ったか」


***


「はい」


***


 イサラ・ベルン。


 壁際。


***


 剣。


 鞘。


***


 手。


 触れない。


***


「理由」


 ネラ・ヴォス。


***


「一時保護相談を提出した者が」


 オウ。


「指定した面談場所へ来なかったためです」


***


「本人と」


 朔。


「確認しましたか」


「いいえ」


***


「では」


「メル・メナさんと思われる人物を。追いました」


***


「誰が」


 ガル。


「メルやと」


「相談記録の外見欄」


「顔」


「正面からは確認していません」


***


「服」


「青い外套」


***


「靴」


「見ていません」


***


「歩き方」


「左肩が。少し上がっていました」


***


 ガル。


 眉。


 動く。


***


「メルは」


「はい」


「荷物を右で持つと。左肩が上がる」


***


「記録します」


 ネラ。


***


「だからメル?」


「可能性が増えます」


 朔。


「確認ではありません」


***


 ガル。


 朔を見ない。


***


「分かっとる」


***


 オウ。


 机。


 紙。


***


 古い。


 写し。


***


 一時保護相談


***


 申請者。


 メル・メナ


***


 相談。


***


 北東区画で、白い衣の者に追われている気がする。


***


 希望。


***


 窓口への出入りを見られたくない。


***


 家族への通知は、次回相談後に決めたい。


***


 制服を着た者による同行を望まない。


***


「制服」


 ガル。


「白い衣」


***


「はい」


 オウ。


***


「それを読んで」


「はい」


「白い衣で追った」


「はい」


***


「何で」


***


 オウ。


 息。


 浅く。


 吸う。


***


「当時」


 彼。


「私は。白い外套を制服ではなく。外務連絡員の識別具と考えていました」


***


「同じやろ」


 ガル。


「はい」


***


「本人には」


「同じに見えた可能性があります」


***


「可能性?」


***


 オウ。


 ガルを見る。


***


「私が。相談記録にある白い衣の者だった可能性があります」


***


「お前や」


「そうかもしれません」


「追った」


「はい」


「白い衣」


「はい」


「じゃあ」


***


「彼女が」


 オウ。


「最初に誰を恐れていたかは。確認できません」


***


 ガル。


 拳。


 閉じる。


***


「逃げるな」


「逃げません」


 オウ。


***


「守るため?」


「そう考えていました」


「なら」


「その意図は。本人が追われたと感じた可能性を消しません」


***


 拳。


 開かない。


***


 だが。


 ガルは。


 前へ出ない。


***


「外務の手順」


 ネラ。


「説明してください」


***


 オウ。


 別の紙。


***


 見出し。


***


 未接触見守り


***


「何」


 ユイ。


***


「保護を求めた者が」


 オウ。


「直接の同行を望まない場合。距離を置いて安全を確認する手順です」


***


「本人に」


 ユイ。


「追うって言う?」


「面談で説明します」


「メルさんは」


「次回面談へ来ていません」


***


「じゃあ」


「説明していません」


***


「でも」


「実施しました」


***


「本人が」


 ユイ。


「望んだ?」


「直接同行を望まないとは書かれています」


***


「追ってほしいとは」


「書かれていません」


***


「なら」


「本人の希望を。安全確認の必要へ読み替えました」


***


「誰が」


「当時の担当判断です」


***


「名前」


 ネラ。


***


 紙。


 下。


***


 担当判断:オウ・レク


***


「私です」


***


「上司」


「承認者はいます」


***


 名前。


***


 ダル・ケイン


***


 現在。


 中央塔外務。


***


「二人」


 ガル。


「はい」


***


「メルは」


「同意していません」


***


 未接触。


***


 見守り。


***


 追尾。


***


 同じ行為へ。


 異なる名前。


***


「今」


 朔。


「何と呼びますか」


***


 オウ。


 少し。


 考える。


***


「本人へ説明せずに。距離を置いて追った行為です」


***


「見守り?」


「私の意図を記録する時には」


「はい」


「追尾?」


「本人から見た可能性を含める時には」


***


「どっち」


 ユイ。


「両方です」


***


「同じ欄へ」


 ネラ。


「書きます」


***


 オウ・レクは、保護目的と判断し、本人への説明・同意確認なく、白色外務外套を着用して対象候補を追尾した。


***


 当該行為は、対象候補から追跡または監視として知覚された可能性がある。


***


「対象候補」


 ガル。


「メル」


***


「顔を確認していません」


 オウ。


***


「俺は」


 ガル。


「メルやと思う」


「はい」


「お前は」


「メルさんである可能性が高いと考えています」


「なぜ」


「外見。時間。北東門の通過。相談記録。左肩の動き」


***


「高い」


 朔。


「はい」


***


「でも」


「本人確認はしていません」


***


 時刻。


***


 失踪の日。


 夕方。


***


 オウ。


 北東門の内側。


***


 青い外套の人物。


 見る。


***


 門。


 外へ。


***


「声を」


 ネラ。


「かけましたか」


「いいえ」


「なぜ」


「窓口への出入りや。外務との接触を見られたくないと書かれていたためです」


***


「距離」


「荷車二台分」


***


「相手は」


「二度。後ろを見ました」


***


「顔」


「一度目は。外套の端」


「二度目」


「横顔」


***


「メルさんと」


「似ていました」


***


「追われてるって」


 ガル。


「分かった?」


***


「歩行が速くなりました」


「それでも」


「追いました」


***


「何で」


「北返二番倉まで。安全を確認する予定でした」


***


「北返」


 ルカ・フェン。


 古い帳面。


 開く。


***


 北返


***


 青。


 薄い。


***


「二番倉」


「現在は使用停止」


 オウ。


「当時は」


「一時保護の引き渡し地点として。臨時使用されていました」


***


「誰へ」


 朔。


「第二担当者」


「名前」


***


 オウ。


 止まる。


***


「私は。知りません」


***


「担当なのに」


 ガル。


「情報分離です」


***


「何」


 ユイ。


***


「一人が」


 オウ。


「相談者の出発地点と。到着地点の両方を知らないようにする仕組みです」


***


「どうして」


「追う者に捕まった時。全てを話せないように」


***


「守るため」


「はい」


***


「誰が引き受けたか」


「記録に名前を残さない?」


「受領印のみです」


***


「印」


 ネラ。


***


 オウ。


 紙。


***


 三本。


 横線。


***


 上。


 三角。


***


 返し口。


 試験木片。


***


 三角の端。


 三本の溝。


***


 同じ。


 とは。


 決められない。


***


「古い返し記号に」


 ルカ。


「近い」


***


「現在の保護経路で」


 ネラ。


「使った理由」


「旧資材路の記号を。流用していました」


 オウ。


***


「誰が」


「制度設計者」


「名前」


「確認します」


***


「受領印」


 ガル。


「返ってきた?」


***


「いいえ」


***


 部屋。


 止まる。


***


「じゃあ」


「引き渡しは確認していません」


***


「メルを」


「はい」


***


「誰にも」


「私の記録では。引き渡していません」


***


「どこで」


「旧染料水路の手前で。見失いました」


***


「穴」


「当時」


「崩れていました」


***


「見た?」


「外から」


***


「入った?」


「いいえ」


***


「メルは」


「青い外套の人物は。水路脇の倉の裏へ曲がりました」


***


「追った?」


「荷車が道を塞ぎました」


***


「誰の」


「染料袋を積んだ荷車」


「運んでいた人」


「確認していません」


***


「どれくらい」


「半刻より短い」


「長い」


 リオ。


「人一人が。別の道へ消えるには十分や」


***


「はい」


 オウ。


***


「荷車が動いた後」


「倉の裏へ」


「人」


「いませんでした」


「呼んだ?」


「呼びませんでした」


「なぜ」


「追跡者に位置を知らせる可能性を考えました」


***


「お前が」


 ガル。


「追跡者やったかもしれん」


***


「はい」


***


「穴」


「外から確認しました」


「足跡」


「複数ありました」


***


「細い靴」


「覚えていません」


***


「布」


「青い布が。石にかかっていたように見えました」


***


 全員。


 オウを見る。


***


「取った?」


「いいえ」


「なぜ」


「本人の物か。染め場の端布か分からなかったため」


***


「記録」


「していません」


***


「今になって」


 ガル。


「思い出した?」


「今回の青色布片記録を読み」


***


「記憶が」


 ネラ。


「現在の情報に影響された可能性」


「あります」


 オウ。


***


「当時」


「青い何かを見た記憶はあります」


「布」


「そう思っていました」


「メルの」


「思っていませんでした」


***


「今は」


「関係する可能性を考えています」


***


 記録。


***


 オウ・レクは、失踪当日、旧染料水路脇崩落部付近に青色の布様物を見たと現在申告。


***


 当時記録なし。今回発見された布片の情報が、現在の記憶へ影響した可能性あり。


***


「その後」


 ネラ。


***


「北返二番倉へ」


 オウ。


「行きました」


「メル」


「いませんでした」


「第二担当者」


「いませんでした」


「受領印」


「なし」


***


「待った」


「一刻」


***


「探した」


「倉の周囲のみ」


「水路」


「戻りませんでした」


***


「なぜ」


「私がいることで。本人が近づけない可能性を考えました」


***


「お前が帰れば」


 ガル。


「来ると思った?」


「はい」


***


「来たか」


「確認していません」


***


「何で」


「翌朝。受領記録を確認する予定でした」


***


「受領は」


「ありませんでした」


***


「なら」


「はい」


***


「探した?」


***


 オウ。


 黙る。


***


「探していません」


***


 ガル。


 一歩。


***


 イサラ。


 動かない。


***


 ガル。


 止まる。


***


「なぜ」


***


「返し箱に」


 オウ。


「仮作業靴と見られる一組がありました」


***


「靴」


「はい」


***


「メルの」


「その時は。相談者へ貸し出された物と考えました」


***


「誰が入れた」


「確認していません」


「なのに」


「本人が保護相談を中止し、貸与品を返した可能性が高いと考えました」


***


「帰ったって」


「帰ったとは。考えていません」


***


「じゃあ」


「自分で別の場所へ移動したと」


***


「安全?」


「確認していません」


***


「なのに」


「私の担当を終了しました」


***


「靴が」


「戻ったからです」


***


 部屋。


 静か。


***


 古い帳面。


***


 人の帰還と……を同じにせず。


***


 欠けた場所。


***


 靴。


 と。


 埋めない。


***


 だが。


 同じ失敗が。


 今。


 名前を持って。


 座っている。


***


「返し箱から」


 朔。


「靴を出したのは」


「私です」


***


「箱へ入れた者」


「分かりません」


***


「靴直しへ運んだ」


「私です」


***


「返却帳へ」


「記入しました」


***


「何と」


 ネラ。


***


 オウ。


 古い紙。


***


 原記録。


***


 返し箱内、細型・三斜溝・三号靴一組。左右紐色相違。青灰付着。投入者未確認。借用者との対応未確認。


***


「これ」


 ガル。


「残ってた?」


「外務の個人控えです」


***


「公的記録」


***


 翌朝まとめ。


***


 細型三号一組返却


***


 次。


 保護相談索引。


***


 貸与品返却確認


***


 さらに。


 三日後。


***


 相談終了


***


「終了」


 ガル。


***


「誰が」


 ネラ。


***


 担当。


***


 ダル・ケイン


***


 承認。


***


 オウ・レク


***


「お前」


「はい」


***


「終わらせた」


「はい」


***


「メルが」


「本人の安全を確認せずに。相談記録を終了しました」


***


「なぜ」


「相談終了を。保護成立ではなく、外務対応の終了と考えていました」


***


「書いた人は」


「本人が相談を撤回したと読んだ可能性があります」


***


「確認」


「していません」


***


「見た?」


 朔。


「この索引を」


「三日後に」


***


「訂正」


「しませんでした」


「なぜ」


「貸与品が返り、受領印がなく、本人も再来しなかったため。本人が外務を避ける選択をしたと考えました」


***


「考えた」


「はい」


「本人へ」


「確認していません」


***


「家族」


 ガル。


「知らせなかった」


「家族通知は次回相談後に決めたいとありました」


***


「次回」


「ありませんでした」


***


「だから」


「通知しませんでした」


***


「失踪」


「北東門外へ出た記録は。門側にありました」


***


「繋げなかった」


「はい」


***


「何で」


「保護相談は秘匿区分でした」


***


「守るため」


「はい」


***


「探せなくした」


「はい」


***


 情報分離。


***


 家族通知保留。


***


 未接触見守り。


***


 返却物確認。


***


 相談終了。


***


 一つずつ。


 守る理由がある。


***


 重なる。


***


 一人が。


 消える。


***


「秘密にしたことが」


 ユイ。


「悪い?」


***


「一つでは」


 オウ。


「ありません」


***


「では」


「秘密にした情報を。危険が生じた時に誰が繋ぐかを決めていませんでした」


***


「誰も」


「全体を知らないようにした」


***


「はい」


「誰も」


「全体を探せませんでした」


***


「はい」


***


 ガル。


 座らない。


***


「お前が」


「はい」


「返した者?」


***


 オウ。


 靴の記録を見る。


***


「私は」


 彼。


「返し箱から靴を取り出し。靴直しへ運びました」


***


「箱へ返した者」


「違います」


「メルを返した者」


「違います」


「メルを帰した者」


「違います」


***


「なら」


「返された靴を。次の場所へ運んだ者です」


***


「長い」


 ユイ。


***


「はい」


***


「短くすると」


「靴を返した者になります」


***


「違う?」


「私が箱へ入れたように見えます」


***


「じゃあ」


 ユイ。


「短くしない」


***


「はい」


***


 記録。


***


 返し箱への投入者:未確認。


***


 返し箱からの回収者:オウ・レク。


***


 返し箱から靴直しへの運搬者:オウ・レク。


***


 借用者本人への返却:該当せず。


***


 借用者本人の帰還・安全:未確認。


***


「名前」


 ガル。


「一個。埋まった」


***


「はい」


 朔。


「返し箱から出した者」


「オウ」


「箱へ入れた者」


「空白」


「メルを見失った者」


「オウ」


***


「追った者」


「オウさん本人が。自分の行為として認めました」


***


「助けようとした者」


「オウさんの意図として記録します」


***


「怖がらせた者」


「メルさん本人には確認できていません」


***


「可能性」


「はい」


***


「全部」


「同じ人にあります」


***


 ガル。


 オウを見る。


***


「謝る?」


 オウ。


 すぐに。


「はい」


***


「何に」


***


「本人への説明なく追ったこと」


***


「はい」


***


「白い衣を着たまま。恐れを増やした可能性」


***


「はい」


***


「見失った後。受領確認がないまま、靴の返却を本人の選択へ結び付けたこと」


***


「はい」


***


「相談終了の索引へ異議を出さなかったこと」


***


「はい」


***


「メルさんが」


 オウ。


「今。どこにいるかを知らないこと」


***


「それは」


 ガル。


「謝ること?」


***


 オウ。


 止まる。


***


「知ろうとしなかったことを」


***


 ガル。


 拳。


 見る。


***


 開く。


***


「俺に」


 彼。


「謝っても。メルには届かん」


***


「はい」


***


「でも」


「はい」


***


「聞いた」


***


 許した。


 とは。


 言わない。


***


 許さない。


 とも。


 まだ。


 言わない。


***


「次」


 イサラ。


「北返二番倉を確認します」


***


「中央の許可」


 グラド。


「現行の地上道から。外観と記録を確認します」


***


「旧経路」


「入りません」


***


「オウさん」


 朔。


「案内できますか」


「はい」


***


「白い外套」


 ガル。


「着る?」


***


 オウ。


「当時の条件を再現するなら」


「着ません」


 朔。


***


「なぜ」


「人を。追われる側へ置く試験にしません」


***


「誰かを」


「メルさんに見立てません」


***


「オウさんの服装が」


「当時の記録として必要なら。外套そのものを確認します」


***


「現物」


「中央保管にあります」


***


「持っていく?」


 ガル。


***


「今の地上道確認には」


 イサラ。


「必要ありません」


***


「でも」


「白い衣が現地の痕跡と関係する可能性を調べる場合は。別に目的と条件を決めます」


***


「今日は」


「北返二番倉の位置、地上経路、受領印の痕跡、当日の記録を確認します」


***


「メルを」


「呼びません」


***


「人がいたら」


「身体危険の確認として呼びかけます」


***


「オウ」


 ガル。


「行く?」


「はい」


「理由」


「自分が見失った後の道を。今度は記録を残して確認するためです」


***


「ほか」


「責任を。案内役という新しい役目で消さないため」


***


「どうする」


「追尾記録と。終了承認を。同行記録にも付けます」


***


 オウ・レク。


***


 案内者。


***


 同時に。


 当時。


 本人へ説明なく。


 白い衣で。


 対象候補を追った者。


***


 どちらも。


 同じ紙。


***


 夕方。


 相談終了。


 取り消し。


***


 削除。


 しない。


***


 線。


 一つ。


***


 読めるまま。


***


 横。


***


 本人の相談撤回・安全・保護成立を確認せずに終了処理。


***


 次。


***


 行方不明記録との照合を再開。


***


 次。


***


 北返二番倉への引き渡し未確認。受領者未確認。


***


 承認。


***


 オウ・レク。


***


 ダル・ケイン。


 中央へ。


 訂正要求。


***


「終わってない」


 ユイ。


「はい」


 ネラ。


***


「前は」


「終了と書かれました」


「今」


「終了処理が誤っていたと書きました」


***


「相談は」


「本人が。続けたいか確認できません」


***


「じゃあ」


「終了とも。継続とも。本人の希望としては決めません」


***


「記録は」


「再開します」


***


「人は」


「まだ見つかっていません」


***


 ガル。


 自分の紙。


***


 新しい行。


***


 オウ・レクは、失踪当日、メルと思われる青い外套の者を、本人への説明なく白い外套で追った。本人確認はしていない。


***


 次。


***


 旧染料水路付近で見失い、北返二番倉への引き渡しを確認していない。


***


 次。


***


 失踪翌朝、返し箱から特徴の近い仮靴一組を回収し、靴直しへ運んだ。箱へ入れた者は分からない。


***


 次。


***


 靴が返ったことを理由の一つとして、本人の安全を確認せず、相談終了を承認した。


***


 ガル。


 止まる。


***


 最後。


***


 オウが靴を運んだことを、オウがメルを帰したことにはしない。


***


 その下。


***


 メルが靴を返したことにも、まだしない。


***


 署名。


 ガル・メナ


***


 夜。


 朔。


 原記録。


 短い索引。


 終了札。


 並べる。


***


 投入者未確認。


***


 借用者との対応未確認。


***


 細型三号一組返却。


***


 貸与品返却確認。


***


 相談終了。


***


 言葉が。


 短くなるたび。


 空白が。


 消えた。


***


 最後。


 人まで。


 記録から。


 消えた。


***


 オウの名前が。


 空白へ。


 一つ。


 入った。


***


 返し箱から。


 靴を出した者。


***


 靴直しへ。


 運んだ者。


***


 相談終了へ。


 異議を出さなかった者。


***


 だが。


 箱へ入れた者の名は。


 まだ。


 空いている。


***


 北返二番倉で。


 受け取るはずだった者の名も。


 空いている。


***


 青い外套の人物が。


 本当にメルだったかも。


 まだ。


 空いている。


***


 名前が。


 一つ分かったから。


 全てが。


 その人の行為にはならない。


***


 オウは。


 追った。


***


 見失った。


***


 靴を運んだ。


***


 記録を終わらせた。


***


 その一つずつへ。


 自分の名前を。


 置いた。


***


 だから。


 彼の名を。


 靴を箱へ入れた者にまでは。


 広げなかった。


***


 翌朝。


 北返二番倉へ。


 地上の道を。


 歩く。


***


 メルを。


 追った時と。


 同じではない。


***


 今度は。


 誰を追うか。


 隠さない。


***


 何を確認するか。


 先に書く。


***


 行く者の。


 名前を。


 本人が。


 答える。


***


 返した者の名が。


 一つ。


 分かった。


***


 それでも。


 返された人の名は。


 まだ。


 書けなかった。

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