第九章 名前の先の道 ⑥ 同じ靴を履いた者
雨は。
昼から。
強くなる。
***
北東門の。
空。
低い。
***
旧染料水路脇。
細い靴底様痕跡。
***
崩れた壁の。
屋根に近い場所。
***
完全に。
雨から守られている。
わけではない。
***
石の隙間。
水。
落ちる。
***
今は。
痕跡から。
指三本分。
離れている。
***
雨が強くなれば。
分からない。
***
「今日」
イサラ・ベルン。
「記録を終えます」
***
「終える?」
ガル・メナ。
「持って帰る?」
「地面は」
ガド・ネン。
「持って帰れん」
***
「型を取る」
エダ・セルク。
箱を。
地面へ置く。
***
白い粉。
***
水。
***
細い木枠。
***
「型を取れば」
ネラ・ヴォス。
「元の痕跡へ触れます」
「壊れる?」
ガル。
「一部は」
ガド。
「変わる」
***
「そのままなら」
「雨で消える可能性」
***
残すために。
触れる。
***
触れずに。
消える可能性を。
受け入れる。
***
どちらも。
元の形を。
完全には守らない。
***
「先に」
朔。
「触れずにできる確認を。全部します」
***
右膝。
布。
***
杖。
***
水路までは。
荷車。
***
最後の坂。
ゆっくり。
***
マレア・ソン。
横。
***
「痛み」
「昨日より少ないです」
「しゃがむ」
「しません」
「立って見る」
「はい」
***
痕跡。
地面。
***
薄い泥。
***
先端。
細い。
***
後ろ。
崩れている。
***
踵。
確認できない。
***
「向き」
ガル。
「穴へ」
***
「細い側を」
リオ。
「足先と考えれば」
***
「違う?」
「泥が崩れて。細く残っただけかもしれん」
***
「前は」
ガル。
「入った跡って」
「足先様部分が穴側へ向いていると記録しました」
ネラ。
「入ったとは」
「書いていません」
***
「俺は」
ガル。
「入ったと思った」
「はい」
朔。
***
「今も」
「はい」
***
「でも」
ガル。
「向きも。まだか」
***
「はい」
***
ガル。
痕跡を見る。
***
「増えるな」
「はい」
***
「減らん」
「確認できるまで。減らしません」
***
木枠。
痕跡の横。
***
尺度。
***
指幅。
ではない。
***
同じ長さの。
細い棒。
***
痕跡の。
長さ。
***
最大幅。
***
細い側の幅。
***
深さ。
***
沈み方。
***
右。
浅い。
***
左。
深い。
***
「左へ重さ」
ガル。
「可能性」
ガド。
「足首が」
「可能性」
「荷物」
「可能性」
「地面」
「左だけ柔らかかった可能性」
***
ネラ。
紙。
***
すべて。
書く。
***
「靴」
エダ。
箱を開く。
***
三足。
***
一足目。
古い。
青灰。
***
メル・メナが。
以前。
使っていた靴。
***
家に。
残っていた。
***
二足目。
エダ。
現在。
仕事で使っている靴。
***
三足目。
染料工房の。
貸出用。
***
誰も。
今は。
履いていない。
***
「似てる」
ガル。
***
三足。
先。
細い。
***
底。
横。
三本。
斜めの溝。
***
「同じ靴?」
朔。
「同じ型」
エダ。
「北東の染め場で。よく使う」
***
「何人」
ガル。
「今?」
「私の工房で。十二人」
「ほか」
「分からない」
***
「男も」
「履く」
「女も」
「履く」
***
「大きさ」
「何種類か」
***
メルの古い靴。
痕跡。
***
長さ。
近い。
***
幅。
近い。
***
斜め溝。
三本。
***
痕跡。
中央。
浅い線。
***
一。
二。
***
三本目。
途中。
消えている。
***
「同じ」
ガル。
言う。
***
すぐ。
止まる。
***
「同じ型に。見える」
***
「はい」
エダ。
***
「メルが履いてた」
「古い靴は」
「はい」
「じゃあ」
「この靴を履いて。ここへ来たとは限りません」
***
「靴は家にある」
「はい」
***
「別の同じ靴」
「あります」
***
「メルが出た日」
ネラ。
「何を履いていましたか」
***
ガル。
止まる。
***
「知らん」
***
「家を出る時」
「見てへん」
***
「最後に見た時」
「前の日」
「靴」
「仕事の靴」
「どれ」
「同じに見える」
***
同じ型。
***
人が。
違う。
***
同じ人でも。
靴が。
違う。
***
「貸出記録」
エダ。
帳面。
出す。
***
工房。
作業靴。
***
貸出。
修理。
交換。
***
名前。
***
日付。
***
返却。
***
メル・メナ。
***
失踪の。
二日前。
***
右靴底割れ。修理預かり。仮靴貸出。
***
「仮靴」
ガル。
「はい」
エダ。
***
「返した?」
***
返却欄。
***
空白。
***
「返却されていません」
***
「じゃあ」
ガル。
痕跡。
見る。
***
「メルが。この型の靴を履いていた可能性」
朔。
「あります」
***
「この跡」
「同じ型に近い特徴があります」
***
「なら」
「メルさんの足跡である可能性はあります」
***
「高い?」
***
朔。
エダを見る。
***
「同じ型の靴を」
エダ。
「ほかにも多くの人が履いています」
***
「仮靴」
ネラ。
「個別の印は」
***
帳面。
***
貸出靴。
記号。
***
細型・三斜溝・三号
***
「それだけ?」
ガル。
「修理した人」
エダ。
「誰」
***
靴直し。
オダ・ヘン
***
北東門内。
小さな工房。
***
「呼びます」
ネラ。
***
それまで。
痕跡。
記録。
***
薄い鏡。
横。
***
灯り。
低く。
***
斜め。
***
泥の凹凸。
影。
***
「線」
ガド。
***
斜め溝。
三本。
***
その下。
別の。
短い線。
***
横。
***
「靴の傷?」
ガル。
「可能性」
***
「この靴」
メルの古い靴。
***
底。
***
横傷。
なし。
***
「仮靴には」
「分かりません」
***
「貸出前」
エダ。
「記録していない」
***
「じゃあ」
「比較できません」
***
雨。
最初。
***
石。
一滴。
***
痕跡。
届かない。
***
次。
***
少し。
近い。
***
「先に」
イサラ。
「触れない記録を終えます」
***
紙。
薄い。
***
痕跡へ。
置かない。
***
木枠。
上。
***
輪郭。
横から。
写す。
***
深さ。
三点。
***
泥。
色。
***
水分。
***
周囲。
石。
***
穴。
距離。
***
「型を取る?」
ガル。
***
「取れば」
イサラ。
「痕跡の表面は変わります」
「取らなければ」
「雨で変わる可能性があります」
***
「俺は」
ガル。
口。
開く。
***
止まる。
***
「メルの跡やから。残したい」
とは。
言わない。
***
「誰の跡か。分からんまま。消えるのは嫌や」
***
朔。
ガルを見る。
***
「はい」
***
「でも」
ガル。
「残すために。壊す」
「一部を」
ガド。
「はい」
***
「型が」
「元の痕跡そのものではありません」
ネラ。
「では」
「接触前の記録と。型取り後の変化を。両方残します」
***
「土地」
イサラ。
「管理」
「北東門外側旧水路」
サロ・デン。
「現在の管理は門外整備」
***
「同意」
サロ。
「痕跡保存のための型取りに同意します」
***
「発見関係者」
ガル。
「俺も書く?」
「所有者ではありません」
ネラ。
「でも」
「希望と異議を残せます」
***
ガル。
書く。
***
痕跡がメル・メナのものとは確認されていない。
***
雨による消失を避けるため、接触前記録後の型取りを希望する。
***
署名。
ガル・メナ
***
白い粉。
水。
***
混ぜる。
***
柔らかい。
泥より。
重い。
***
直接。
一度に。
流さない。
***
痕跡の外。
細い枠。
***
縁。
固める。
***
その上。
薄く。
***
泥。
少し。
動く。
***
「変化」
ネラ。
記録。
***
細い側。
右端。
欠ける。
***
型。
固まるまで。
待つ。
***
雨。
強くなる。
***
布屋根。
張る。
***
水。
横から。
入る。
***
ガル。
足。
一歩。
***
「止まって」
イサラ。
***
ガル。
止まる。
***
靴。
痕跡の。
外。
***
泥。
沈んでいる。
***
「新しい跡」
ネラ。
***
「俺」
ガル。
「はい」
***
「消す?」
「消しません」
***
「でも」
「現在時刻。ガル・メナさんの右靴。雨避け作業中」
***
札。
横。
***
新規接触痕
形成者:ガル・メナ
時刻:型取り作業中
***
「俺の足跡」
「はい」
***
「名前を付ける?」
「形成者を確認できています」
***
「同じ地面」
「はい」
***
「後で」
ガル。
「誰かが見たら」
「メルさんを探したガルさんの跡だと。記録から確認できます」
***
「記録がなかったら」
「別の足跡になります」
***
足跡は。
自分で。
作られた時刻を。
言わない。
***
ガル。
自分の跡を見る。
***
「これも」
「四か月後には。誰の跡か分からなくなる可能性があります」
***
「今は」
「確認できます」
***
どの今。
***
ガル。
言わない。
***
分かっている。
***
型。
固まる。
***
ガド。
端。
持ち上げる。
***
ゆっくり。
***
泥。
付く。
***
白い型。
***
裏。
***
靴底様の。
凸。
***
細い先。
***
三本。
斜め。
***
短い横傷。
***
踵。
ない。
***
「取れた」
ガル。
***
「一部」
ネラ。
***
「元」
地面。
***
細い側。
崩れる。
***
斜め溝。
一つ。
薄くなる。
***
「変わった」
「はい」
***
型。
保存。
***
元の痕跡。
変化後。
もう一度。
記録。
***
残すために。
変えたこと。
消さない。
***
オダ・ヘン。
来る。
***
五十代。
背。
曲がる。
***
指。
黒い。
***
革。
油。
***
「仮靴」
帳面。
見る。
***
「覚えていますか」
ネラ。
「メル・メナ」
「名前は」
オダ。
「記録で」
***
「人は」
「青い布を巻いとった。右の靴を持ってきた」
「怪我」
「手?」
「靴底」
***
「本人が」
「はい」
「誰かと」
「一人」
***
「白い外套」
ガル。
「見た?」
「見てへん」
***
「仮靴」
オダ。
「渡した」
「どれ」
***
貸出靴。
同じ型。
***
「個別の傷」
「踵の内側」
***
オダ。
紙。
描く。
***
半月。
***
「何」
「革が薄かった。補強を一枚。足した」
「底に出る?」
「踵が残れば」
***
痕跡。
踵。
ない。
***
「比べられん」
ガル。
「はい」
オダ。
***
「横傷」
型。
見せる。
***
オダ。
近づく。
触れない。
***
「貸出前に」
「この傷があったか」
***
オダ。
目。
細める。
***
「分からん」
***
「似た傷」
「靴は傷む」
***
「同じ場所」
「石を踏めば」
***
「記録」
「してへん」
***
「仮靴」
ネラ。
「何人が使いましたか」
***
帳面。
前。
***
名前。
八。
***
メルの前。
三人。
***
後。
返却なし。
***
「三人」
ガル。
「誰」
***
名前。
***
トエ・ラン
***
治療側。
待機確認を。
担った者。
***
ナフ・オル
***
染め場運搬。
***
エダ・セルク
***
エダ。
そこにいる。
***
「私も」
***
「いつ」
「半年くらい前」
***
「同じ靴を」
「履きました」
***
「穴へ」
「来ていません」
「本当に」
***
ガル。
聞く。
***
すぐ。
「責めてへん」
***
エダ。
頷く。
***
「旧水路へは。布を洗いに来たことがあります」
「穴」
「崩れる前」
「いつ」
「二年前」
***
「足跡」
ガル。
「残る?」
「分かりません」
ガド。
「屋根下なら。可能性はある」
「二年」
「地面が動かなければ」
「雨」
「入る」
「消える可能性もある」
***
「エダさんの」
朔。
「足跡である可能性も」
「あります」
***
ガル。
エダを見る。
***
同じ型。
***
同じ大きさに。
近い足。
***
「靴」
エダ。
自分の。
今の靴。
***
痕跡。
横。
置かない。
***
別の。
柔らかい土。
***
「比較用」
ネラ。
「本人の同意」
「はい」
エダ。
***
右足。
***
土。
踏む。
***
離す。
***
先。
細い。
***
三斜溝。
***
長さ。
近い。
***
幅。
少し。
広い。
***
「似てる」
ガル。
***
「はい」
朔。
「同じ?」
「違う部分があります」
***
「足跡が」
「泥。歩き方。靴の傷。重さで変わります」
***
「エダさんでは」
「ない?」
「決められません」
***
エダ。
自分の跡と。
古い痕跡の型。
見る。
***
「私の名前も」
彼女。
「ここへ置ける?」
「可能性の一つとして」
ネラ。
「置かないで」
***
「なぜ」
「二年前に来たことは記録して」
「はい」
「この足跡が私の物かもしれないとは」
エダ。
少し。
止まる。
***
「書いていい」
***
「でも」
「私の足跡と書かないで」
***
「はい」
***
記録。
***
エダ・セルクは約二年前、崩落前の旧染料水路付近へ、同系統の作業靴を履いて立ち入ったと申告。
***
現在の比較足跡は、発見痕跡と長さ・先端形状・三斜溝に類似がある。幅および一部の沈み方は一致しない。
***
発見痕跡をエダ・セルクの足跡と確認していない。
***
「メル」
ガル。
「同じ欄?」
***
「別です」
ネラ。
「メルさんは。失踪時に同型の仮靴を使用していた可能性」
「エダさんは」
「過去に同系統靴で現地へ来た申告」
***
「同じ足跡へ」
「二つの可能性」
***
「ほか」
オダ。
「仮靴を履いた三人」
***
「トエさん」
朔。
「現地へ来たこと」
「確認します」
「ナフさん」
「同じ」
***
「貸出以外」
エダ。
「同じ型を持つ人」
***
工房。
十二。
***
他工房。
不明。
***
「増える」
ガル。
***
「はい」
***
「足跡一つに」
「複数の人が。履ける靴です」
***
「足跡は」
ガル。
「靴の跡?」
「はい」
「人の足の跡じゃなく」
「靴を通した。身体の跡です」
***
「靴を」
オダ。
「人が替わる」
***
「仮靴」
「はい」
「一つの靴を」
「複数の人が履く」
***
「なら」
ガル。
「同じ足跡の形へ。別の人が入る」
***
「はい」
朔。
***
西河岸のサク。
***
同じ名前。
別の人。
***
今度。
同じ靴。
別の足。
***
「でも」
ガル。
「メルが仮靴を履いてたことは」
「確認できる可能性が高い」
エダ。
「貸出記録と。オダさんの記憶があります」
***
「返してない」
「はい」
***
「失踪したから」
「可能性」
***
「その靴が」
「痕跡と同じ型に近い」
***
「だから」
ガル。
止まる。
***
「メルが。ここへ来た可能性は。前より増えた?」
***
ネラ。
帳面。
痕跡。
型。
見る。
***
「失踪時に同型の靴を使用していた可能性と。現地痕跡が同型に近いことが。別々に確認されました」
「それを」
「関係の可能性を調べる根拠にします」
「増えた?」
***
朔。
ガルを見る。
***
「はい」
***
ガル。
息。
止める。
***
「でも」
「本人の足跡とは。まだ確認できません」
***
「はい」
ガル。
***
今回は。
朔より。
先に。
答える。
***
雨。
強い。
***
元の痕跡。
屋根布。
下。
***
水。
縁。
***
型取り後の。
欠け。
***
ガルの新しい跡。
***
エダの比較跡。
***
複数の足跡。
***
時刻。
人。
目的。
分かっているもの。
***
最初の一つ。
分からないもの。
***
「消える」
ユイは。
来ていない。
***
代わり。
ガル。
言う。
***
「元の跡」
***
「はい」
ガド。
「雨が入れば」
***
「型は」
「残る」
***
「同じじゃない」
「はい」
***
「なら」
ガル。
「消える前に。見とく」
***
しゃがまない。
***
近づきすぎない。
***
立ったまま。
見る。
***
「メル」
とは。
言わない。
***
「誰かが」
言う。
***
「この靴で。ここへ来たかもしれん」
***
「はい」
朔。
***
「誰かが」
「はい」
***
「メルかもしれん」
「はい」
***
「エダさんかもしれん」
「はい」
***
「ほかの人」
「はい」
***
「人が歩いた跡じゃないかもしれん?」
***
「靴が置かれた」
リオ。
「落ちた。引きずられた。泥が後から崩れた。可能性はある」
***
「歩いたかも」
「あります」
***
「それだけ」
「はい」
***
ガル。
雨。
見る。
***
「少ない」
***
「はい」
***
「でも」
ガル。
「靴を調べられる」
***
「はい」
***
北東門内。
染料工房。
***
貸出靴。
台帳。
***
仮靴。
返却なし。
***
修理中の。
メルの右靴。
***
「修理した靴」
ガル。
「どこ」
***
オダ。
止まる。
***
「返した」
***
「誰に」
「工房へ」
***
「いつ」
「メルが来んようになって。五日後」
***
「工房」
エダ。
「保管棚」
***
帳面。
***
修理返却。
受取。
***
署名。
なし。
***
置棚
***
「今も」
「確認する」
***
工房。
旧保管棚。
***
靴。
多い。
***
片方。
だけ。
***
右。
***
細型。
***
三斜溝。
***
底。
新しい。
***
「メルの」
ガル。
言う。
***
止まる。
***
「修理に出した靴?」
***
オダ。
手に取らない。
***
棚の札。
***
文字。
消えかけ。
***
メ
***
次。
読めない。
***
「メル?」
「可能性」
ネラ。
***
「修理」
オダ。
底。
外から。
見る。
***
「私の仕事に近い」
「同じ?」
「釘の位置」
***
五つ。
***
内側。
二つ。
近い。
***
「私が。あの時した留め方に近い」
***
「確認」
「修理帳」
***
記録。
***
右底全面交換。内側二釘寄せ。
***
「高く一致」
朔。
***
「はい」
ネラ。
***
「この靴が」
ガル。
「家に戻ってなかった」
「はい」
***
「メルは」
「仮靴を履いたまま。失踪した可能性」
「増える」
「はい」
***
「右靴」
「修理後。工房棚へ戻された可能性が高い」
***
「左靴」
ガル。
「家」
***
古い靴。
三足の中。
***
左。
***
「じゃあ」
ガル。
「メルは。右だけ仮靴?」
***
エダ。
止まる。
***
「貸出は」
帳面。
***
一足
***
「左右?」
「一組」
***
「左も」
「仮靴」
***
「家の左」
「以前の靴」
***
「失踪時」
「一組の仮靴を履いていた可能性が高い」
***
「仮靴」
同じ型。
***
痕跡。
同じ型に。
近い。
***
線。
また。
一本。
引ける。
***
ガル。
帳面。
見る。
***
紙。
出す。
***
自分で。
書く。
***
メルは失踪の二日前、右靴の修理中に、一組の仮作業靴を借りた記録がある。
***
次。
***
仮靴の返却記録はない。
***
次。
***
旧染料水路脇の靴底様痕跡は、仮靴と同じ細型・三斜溝に近い。
***
止まる。
***
最後。
***
だから、メルの足跡とはまだ書かない。
***
署名。
ガル・メナ
***
「前と」
朔。
「同じ言葉」
「はい」
***
「でも」
ガル。
「前より。書けることが増えた」
「はい」
***
「まだ」
「はい」
***
「嫌やな」
「はい」
***
「でも」
「調べられます」
***
雨。
夕方。
***
元の痕跡。
一部。
水。
***
細い側。
消える。
***
三斜溝。
二本。
残る。
***
型。
白い。
***
保管箱。
***
元の地面と。
同じではない。
***
だが。
消える前の形を。
一部。
持つ。
***
中央への報告。
***
最初の見出し案。
***
メル・メナの足跡を確認
***
「使いません」
フェル・ナード。
北東門へ。
戻っている。
***
「中央は」
グラド。
「仮靴記録と。痕跡型の一致を」
「型の近似です」
***
書き直し。
***
メル・メナ失踪時の仮靴使用記録と、旧染料水路脇靴底様痕跡の型特徴が近似
***
「長い」
「はい」
***
要点。
***
メル・メナさんは、失踪時に細型・三斜溝の仮作業靴を使用していた可能性が高いです。
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旧染料水路脇の痕跡にも、同型に近い特徴があります。
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同型靴は複数人が使用しており、痕跡の形成時期・使用者・移動方向は確認できていません。
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「方向も」
ガル。
「はい」
ネラ。
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「穴へ」
「足先様部分は穴側ですが。歩行方向とは確定していません」
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「書く」
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次。
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痕跡の保存型を作成しました。型取りによって元の痕跡の一部が変化したことも記録しています。
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雨により、元の痕跡は現在も変化しています。
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「足跡」
ガル。
「なくなる」
「はい」
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「記録は」
「残ります」
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「同じじゃない」
「はい」
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夜。
朔。
白い型。
見ない。
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箱。
閉じている。
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紙。
見る。
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同じ靴。
別の人。
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一つの靴を。
複数の足が。
履く。
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一人の足が。
複数の靴を。
履く。
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足跡は。
人の身体が。
靴と。
地面を通して。
残した形。
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靴だけではない。
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人だけでもない。
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泥。
重さ。
歩幅。
荷物。
雨。
時間。
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それらが。
一つの形へ。
重なっている。
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だから。
靴の型が。
メルと同じでも。
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痕跡へ。
メルの名前を。
そのまま。
入れない。
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だが。
同じ型だったことを。
偶然として。
捨てない。
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仮靴。
返却なし。
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失踪の二日前。
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修理中の右靴。
工房棚。
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同じ型に近い。
水路脇の痕跡。
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一つずつ。
確認された。
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一本の線には。
まだ。
しない。
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だが。
次に。
誰へ聞くか。
何を探すか。
決められる。
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仮靴を。
以前。
履いた者。
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貸出棚を。
管理した者。
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メルが。
失踪前に。
靴を履いて歩いた場所。
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同じ型の靴が。
通った道。
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足跡へ。
名前を。
付けなかったから。
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代わりに。
靴の型と。
貸出記録と。
複数の足が。
見えてきた。
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同じ靴を。
履いた者が。
複数いる。
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その事実は。
メルの可能性を。
消さなかった。
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同時に。
メル以外の者を。
足跡の外へ。
追い出さなかった。
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ガルは。
姉の名を。
紙へ書いた。
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だが。
足跡の名前としてではない。
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失踪の二日前に。
仮靴を借りた者として。
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今。
確認できた行為の。
隣へ。
置いた。




