第九章 名前の先の道 ⑤ 足跡に名前をつけない
北東門の外。
朝。
***
空。
薄い。
***
門の影。
長い。
***
旧紙市場から。
持ってきた物。
***
青色粉様物。
少量。
***
木目写し。
***
古い灯路帳の写し。
***
北東門通行記録。
***
メル・メナの。
一時保護相談記録。
***
名前を。
呼ぶ道具ではない。
***
地上で。
見つけた物と。
照らすため。
***
同行者。
***
イサラ・ベルン。
***
リオ。
***
ガド・ネン。
***
ガル・メナ。
***
北東門警備。
サロ・デン
***
染料工房。
エダ・セルク
***
記録。
ネラ・ヴォス。
***
治療。
マレア・ソン。
***
朔。
***
九人。
***
「また九」
ガル。
***
「人数は」
ネラ。
「今日の必要で決めました」
***
「意味は」
「付けません」
朔。
***
右膝。
布。
***
朔は。
杖を持っている。
***
市場の。
短い木。
***
ロウの杖とは。
別。
***
「歩けますか」
マレア。
「はい」
「速く」
「歩きません」
「崩れた道」
「入りません」
「無理を」
「しません」
***
「行きたい理由」
「地上の道なら。今の身体で歩けると確認したから」
「ほか」
***
朔。
ガルを見る。
***
「メルさんの記録が。旧搬入口の答えだけへ集まらないように」
***
「それを」
マレア。
「膝で証明する?」
「しません」
***
「痛みが増えたら」
「戻ります」
***
北東門。
外側。
***
石道。
半分。
土へ沈んでいる。
***
現在。
薬草採り。
薪運び。
染め場の荷車。
***
使われている。
***
「メルさんが出た日」
ネラ。
「夕刻」
「はい」
サロ・デン。
***
「あなたは」
「非番でした」
「記録者」
「レム・サイ」
「門補助」
「タナ・ロウ」
***
「白い外套」
ガル。
「通ったか」
***
サロ。
門帳。
見る。
***
「同じ時間帯」
***
三人。
***
治療局配達員。
***
礼拝所の使い。
***
所属不明。
一名。
***
「所属不明」
ガル。
「名前」
***
オウ・レク
***
「本人確認」
ネラ。
「一時通行札」
「発行元」
「中央塔外務」
***
「白い外套?」
「衣服の色は記録なし」
***
「では」
ガル。
「その男が」
「追っていたとは」
朔。
「確認されていません」
***
「分かっとる」
ガル。
***
すぐ。
言う。
***
前より。
早い。
***
「でも」
「確認します」
ネラ。
「オウ・レクさんの現在地と。当日の目的を」
***
「道」
イサラ。
「先に見ます」
***
北東門から。
三本。
***
正面。
薬草丘。
***
左。
古い水路。
***
右。
染料工房跡。
***
「薬草採取なら」
サロ。
「正面です」
「メルは」
ガル。
「薬草を知らん」
「嘘を言った?」
「可能性があります」
ネラ。
「誰かに言わされた?」
「可能性があります」
朔。
「別の目的を隠した?」
「可能性があります」
***
「全部」
ガル。
「同じ可能性か」
***
「今は」
朔。
「順位を付けられる根拠がありません」
***
「行動」
イサラ。
「確認できる道から」
***
薬草丘。
現在も。
人が使う。
***
足跡。
多い。
***
荷車。
犬。
靴。
裸足。
***
「四か月前」
リオ。
「残ってへん」
***
「今の足跡から」
ガル。
「メルを探せん?」
「今ここを通ったなら」
「可能性はあります」
「でも」
「一つずつ。誰のものか確認できない」
***
ガル。
地面。
見る。
***
足跡。
一つ。
***
小さい。
***
「メル」
***
言う。
***
その後。
止まる。
***
「に。見える」
***
「大きさ」
リオ。
「メルさんの靴を知っとる?」
「知ってる」
「形」
「先が細い」
「これは」
リオ。
しゃがむ。
***
先。
丸い。
***
「違う?」
「この跡は。少なくとも細くない」
***
「履き替えた」
「可能性」
朔。
***
「また」
ガル。
「増える」
「はい」
***
足跡。
名前より。
多い。
***
使われている道では。
一つの跡を。
一人へ戻せない。
***
「正面」
薬草丘。
***
門記録。
目的。
薬草採取。
***
「行く?」
イサラ。
***
「短く」
リオ。
「地形だけ見る」
***
丘。
上。
***
薬草。
夏の終わり。
***
乾いた。
背の低い葉。
***
採取跡。
新しい。
***
「四か月前の」
ガル。
「分かる?」
「分からん」
サロ。
***
丘の先。
崖。
***
下。
北東の低地。
***
染料工房。
水路。
古い倉。
***
「白い衣」
ガル。
「見えたら」
「今はいません」
イサラ。
***
「隠れて」
「可能性はあります」
「追う?」
「痕跡があれば」
***
痕跡。
なし。
***
朔の膝。
坂。
下り。
***
「痛み」
マレア。
「少し増えました」
「戻る?」
***
朔。
下を見る。
***
行ける。
と思う。
***
「今の道を」
マレア。
「戻れますか」
「はい」
「低地まで下りた後」
「分かりません」
***
「では」
「丘を下りません」
***
「俺が」
朔。
「ここで待つ?」
「入口へ戻ります」
***
「調査は」
「続けられます」
***
「俺がいない所で」
「はい」
***
前回。
待った。
***
今回も。
***
身体。
決める。
***
「誰と戻る」
マレア。
「私と」
***
「二人減る」
イサラ。
「七人」
「意味は」
ガル。
「付けへん」
***
自分で。
言う。
***
朔。
マレア。
北東門へ。
戻る。
***
残る者。
***
イサラ。
リオ。
ガド。
ガル。
サロ。
エダ。
ネラ。
***
七人。
***
低地へ。
***
朔。
見ない。
***
見ていないことを。
先に。
自分の紙へ書く。
***
北東門外の薬草丘まで同行した。
***
下り坂で右膝の痛みが増え、低地へは進まなかった。
***
以後の確認は、帰還者の報告による。
***
北東門。
日陰。
***
マレア。
膝。
冷やす。
***
「悔しい?」
「はい」
「戻ったこと」
「必要だったと思います」
「両方」
「はい」
***
低地。
***
七人。
***
古い染め場。
***
水路。
今は。
細い。
***
石槽。
三つ。
***
一つ。
使われている。
***
二つ。
土。
草。
***
「青色粉」
エダ・セルク。
小皿。
見る。
***
旧紙市場の。
木片付着物。
***
「似ています」
「何に」
ネラ。
「藍灰の下地粉」
「メルの工房」
「でも使います」
「ほか」
「北東区画の染め場なら。多くが」
***
「工房ごとの差」
ガル。
「ある?」
「灰。粘土。油」
「比べられる?」
「ある程度」
***
「メルの工房の粉」
「残ってる?」
「今も使っています」
***
「同じなら」
ガル。
「メルが通った?」
***
エダ。
彼を見る。
「同じ粉を使った場所へ。木片が触れた可能性が増えます」
「メルは」
「別です」
***
ガル。
「はい」
***
自分で。
答える。
***
古い石槽。
縁。
***
記号。
***
三角。
下。
横線。
***
「返し口」
ガド。
***
市場床下。
近い印。
***
欠け。
違う。
***
「同じ?」
ガル。
「近い」
ネラ。
「用途」
エダ。
「昔の排水印にも似ています」
***
「排水」
「染液を戻す溝」
「戻す?」
「濃さが残っていれば。別の槽へ」
***
「返し」
リオ。
「物を戻す。液を戻す。道を戻す」
***
「人を」
ガル。
「まだ言わん」
***
「はい」
ネラ。
***
石槽。
下。
***
細い溝。
***
北へ。
***
草。
覆う。
***
「辿る」
イサラ。
***
足元。
固い。
***
水。
浅い。
***
朔の膝なら。
滑る。
***
戻った判断。
正しい。
とは。
結果だけで。
決めない。
***
七人。
進む。
***
溝。
倉の裏。
***
石壁。
***
半分。
崩れている。
***
穴。
人。
一人。
屈めば。
通れる。
***
「入らない」
イサラ。
***
「今」
ガル。
「何を確認する」
「外から。構造と痕跡」
***
穴。
縁。
***
布。
一片。
***
青。
***
濃い。
***
「メル」
ガル。
手を伸ばす。
***
イサラ。
腕。
掴まない。
***
「止まって」
***
ガル。
止まる。
***
「触らん」
***
布。
細い。
***
指二本。
長さ。
***
端。
裂けている。
***
「メルの外套」
「色は」
ガル。
「青」
***
「北東門記録には」
ネラ。
「外套の色はありません」
「レムは」
「青い外套と記憶していました」
***
「なら」
「近い情報です」
***
「布の種類」
エダ。
長い鉤。
***
穴の外。
布。
取る。
***
白い皿。
***
手。
触れない。
***
「麻」
「染め」
「濃い藍灰」
「工房」
「複数」
***
「縫い目」
ガル。
「メルの」
「これは」
エダ。
「縫い目がありません」
***
裂けた端。
だけ。
***
「本人の服と」
ネラ。
「比較できる物」
「家にある」
ガル。
「同じ外套の補修布」
***
「比較します」
***
「今」
ガル。
「持って帰る?」
「はい」
イサラ。
「発見位置。採取者。保管を記録して」
***
「穴へ」
「入りません」
***
「メルが」
「中にいる可能性はあります」
「なら」
「声をかける?」
***
誰も。
すぐに。
答えない。
***
人が。
中にいる可能性。
***
呼名。
とは。
違う。
***
身体危険の。
確認。
***
「名前は呼ばない」
イサラ。
「人がいるなら。返答してほしいと伝えます」
***
「誰が」
「私が」
***
イサラ。
穴。
近づかない。
***
「中に人がいる可能性を確認しています」
***
声。
普通。
***
勇者。
名乗らない。
***
「返事ができる場合は。声か。物音で知らせてください」
***
待つ。
***
風。
***
水。
***
石。
***
音。
なし。
***
「もう一度」
ガル。
「名前」
「呼びません」
「メルなら」
「自分の名前を言う可能性があります」
「言えないなら」
「音でも」
***
もう一度。
***
「中に人がいる場合。助けが必要なら。音を一度。近づいてほしくない場合は二度。鳴らしてください」
***
待つ。
***
音。
***
一度。
***
ガル。
前へ。
***
「停止」
イサラ。
***
音。
石。
一つ。
***
穴の奥。
***
また。
一度。
***
「助け」
ガル。
***
「そう決めない」
リオ。
「一度と伝えた後や」
「はい」
イサラ。
「反応の可能性があります」
***
「入る」
ガル。
「まだ」
***
「人か」
「未確認」
「でも」
「身体危険の確認を優先します」
***
縄。
灯り。
鏡。
***
穴。
狭い。
***
「誰が」
イサラ。
***
リオ。
「俺」
***
「理由」
「道を見る」
「ガルさん」
「俺」
「理由」
「メルかもしれん」
***
「その理由では」
「分かっとる」
ガル。
「でも。行く」
***
「身体」
エダ。
「ガルさんは。穴より肩が広い」
***
「入れへん?」
「外套を脱いでも。崩れた石へ引っかかる」
***
ガル。
穴。
見る。
***
「俺は」
サロ。
「通れる」
「門警備として?」
「地上道の行方不明者捜索として」
***
「リオさんと」
イサラ。
「サロさん。二人」
***
「私も」
ガド。
「石を見る」
***
「三人」
「入口で私が縄を持つ」
***
「人影」
「まだ確認していない」
***
「声」
「一度の音のみ」
***
「中止」
黒色化。
熱。
急な経路変化。
人の声で名前を呼ばれる。
縄が切れる。
崩落。
***
リオ。
先。
***
灯り。
低い。
***
穴。
入る。
***
サロ。
次。
***
ガド。
最後。
***
縄。
三本。
***
身体へ。
二点。
***
イサラ。
外。
***
ガル。
穴の前。
***
「メル」
唇。
動く。
***
声。
出さない。
***
中。
***
石の通路。
***
短い。
***
五歩。
***
七歩。
***
奥。
小さな空間。
***
人。
いない。
***
「人影なし」
リオ。
***
「音源」
サロ。
***
床。
***
木。
一枚。
***
水滴。
落ちる。
***
木が。
石へ。
当たる。
***
一度。
***
次。
水滴。
***
一度。
***
「音」
リオ。
「水滴で木が動いとる」
***
外。
聞こえない。
***
伝達縄。
一回。
二回。
***
事前合図。
***
人なし。音源候補あり。
***
ガル。
目。
閉じる。
***
「助けじゃない?」
エダ。
「そうは」
イサラ。
「まだ」
***
中。
***
木。
古い。
***
床。
藍灰。
***
壁。
印。
***
三角。
下。
横線。
***
「返し口」
ガド。
***
その横。
***
矢印。
北。
とは。
決められない。
***
奥。
塞がっている。
***
石。
新しい崩れ。
ではない。
***
「布」
サロ。
***
床。
もう一片。
***
青。
***
最初より。
大きい。
***
縫い目。
ある。
***
「触れない」
リオ。
***
鉤。
***
布。
取る。
***
外へ。
戻る。
***
三人。
帰る。
***
人数。
イサラ。
***
一。
リオ。
***
二。
サロ。
***
三。
ガド。
***
「中」
ガル。
***
「人はおらん」
リオ。
***
「音」
「水滴で。木が石へ当たっとった」
***
「助けじゃ」
「今。人の反応とは確認できん」
***
「布」
サロ。
白い皿。
***
青。
***
縫い目。
***
細い。
二重。
***
エダ。
見る。
***
「手縫い」
「誰の」
ガル。
「まだ」
***
「メルの家の布と」
「比べる」
***
「工房の」
「縫い方は。人ごとに癖があります」
「分かる?」
「長い部分があれば」
***
布片。
短い。
***
針目。
四つ。
***
「四つで」
「断定はしません」
***
「でも」
「比較できます」
***
床。
足跡。
***
穴の外。
***
通路。
***
泥。
薄い。
***
靴跡。
一つ。
***
古い。
縁。
崩れている。
***
「メル」
ガル。
***
次。
「かもしれん」
***
「大きさ」
リオ。
「小さい」
「形」
「先が細い」
***
「さっきの丘の跡」
「丸かった」
「これは」
「細い」
***
「メルの靴」
「近い」
***
「いつ」
ネラ。
「残った跡か」
「分からん」
リオ。
「雨」
「ここは屋根下に近い」
「四か月」
「残る可能性はある」
「もっと前」
「ある」
「別の人」
「ある」
***
ガル。
足跡。
見る。
***
「名前を」
朔。
いない。
***
それでも。
ガルの中に。
朔の言葉。
残る。
***
「メルの足跡」
とは。
言わない。
***
「細い靴の跡」
ガル。
「はい」
ネラ。
***
記録。
***
旧染料水路脇崩落部外側に、細い靴底様痕跡一を確認。
***
痕跡の形成時期、使用者、メル・メナとの関係は未確認。
***
「名前」
付けない。
***
だが。
位置。
大きさ。
向き。
***
穴の。
外から。
中へ。
***
「向き」
ガル。
「入った」
「足先様部分が」
リオ。
「穴側へ向いとる」
「出た跡」
「見つからん」
***
「中に」
「奥は塞がっていた」
「別の出口」
「確認できていない」
***
「返し口」
ガル。
「別の場所へ」
***
「可能性」
ネラ。
***
「メルが」
ガル。
止まる。
***
「誰かが。入った可能性」
***
「はい」
***
「出た跡は」
「見つかっていない」
***
「それだけ」
「はい」
***
ガル。
息。
長く。
吐く。
***
「少ない」
***
「はい」
イサラ。
***
「でも」
ガル。
「歩ける」
***
帰路。
北東門。
***
朔。
待つ。
***
九人で。
出た。
***
二人。
先に。
戻った。
***
七人。
帰る。
***
人数。
***
一。
イサラ。
***
二。
リオ。
***
三。
ガド。
***
四。
ガル。
***
五。
サロ。
***
六。
エダ。
***
七。
ネラ。
***
朔。
立つ。
***
膝。
痛い。
***
座ったまま。
迎える。
***
「名前」
ユイは。
いない。
***
代わり。
朔が。
聞く。
***
「イサラさん」
「イサラ・ベルン」
「何をした」
「低地へ進み、旧染料水路の崩落部で三人の進入と退出を判断した」
***
「リオさん」
「リオ」
「何をした」
「穴へ入った。人は見てへん。水滴で木が鳴るのを見た」
***
「ガドさん」
「ガド・ネン」
「何をした」
「石と印を見た。奥は崩れて塞がっとった」
***
「ガルさん」
「ガル・メナ」
「何をした」
***
ガル。
止まる。
***
「待った」
***
「何を見た」
「青い布。細い靴跡」
「誰の」
「分からん」
***
「サロさん」
「サロ・デン」
「何をした」
「穴へ入り、人がいないことと、音源候補を確認した」
***
「エダさん」
「エダ・セルク」
「何をした」
「青色粉と布を見た。複数の染め場で使う色と考えた」
***
「ネラさん」
「ネラ・ヴォス」
「何をした」
「発見位置、採取、発言を記録した。足跡へ名前を付けていない」
***
「人数」
イサラ。
「九人で門外へ出た」
「途中帰還」
「朔さん。マレアさん」
「最終帰還」
「七人」
「合計」
「九人」
***
「全員」
「はい」
***
布。
二片。
***
青色粉。
***
細い靴跡様痕跡。
***
返し口様記号。
***
水滴。
木。
***
穴。
塞がった先。
***
「人の声」
朔。
「ありませんでしたか」
「なし」
イサラ。
「呼名」
「なし」
「人影」
「なし」
***
「メルさん」
ガル。
「見つからんかった」
***
「はい」
***
「でも」
「確認する物が増えました」
***
「増えたら」
ガル。
「近づいた?」
***
朔。
布片。
見る。
***
「近づいた可能性があります」
「可能性」
「はい」
「遠ざかった可能性」
「あります」
***
「どうして」
「布が別人の物なら。メルさん以外の道へ進んでいます」
***
「でも」
「比較すれば。少し分かります」
***
ガル。
頷く。
***
家。
帳面。
***
メルの。
補修布。
***
持ってくる。
***
同じ青。
に見える。
***
エダ。
灯り。
角度。
変える。
***
「色」
「近い」
「糸」
「片方は灰麻。片方は薄茶麻」
「違う?」
「経年。汚れ。染め直しで変わる」
***
「縫い目」
針目。
***
メルの補修布。
間隔。
狭い。
***
発見布。
四目。
***
二目。
狭い。
***
二目。
広い。
***
「同じ人?」
ガル。
「四目では」
エダ。
「決められません」
***
「癖」
「似る部分があります」
「どこ」
「糸を裏へ戻す位置」
***
「メル?」
「可能性があります」
***
「ほかの人」
「同じ縫い方をする人はいます」
***
「何人」
「分かりません」
***
「工房」
「教わった者は。似る」
***
「じゃあ」
「メルさん自身。または同じ工房で縫い方を覚えた者。別の工房で偶然似た者。補修を頼まれた者」
***
可能性。
増える。
***
「少ない」
ガル。
***
「はい」
エダ。
***
「でも」
「比較前よりは。関係の可能性を具体的に書けます」
***
記録。
***
発見布片とメル・メナ所持品の補修布は、色調および一部の針運びに類似がある。
***
糸材、針間隔は一致しない部分がある。経年、再染色、補修者の違い等の影響は未確認。
***
メル・メナ本人の衣服であること、同一工房由来であることは未確認。
***
「次」
ガル。
「工房の人」
「聞き取り」
ネラ。
「メルさんが。青い外套を補修したか」
「誰かに貸したか」
「はい」
「崩れた水路へ行ったか」
「はい」
***
「足跡」
「靴の実物と。大きさ・底形を比較」
「同じなら」
「同じ型の靴である可能性」
「本人」
「まだ」
***
「また」
「はい」
***
夕方。
朔。
自分の紙。
***
北東門外の地上道を確認した。
***
俺は薬草丘まで同行し、右膝の痛みが増えたため、マレアさんと門へ戻った。
***
以後の低地確認を直接見ていない。
***
次。
***
帰還者の報告では、旧染料水路脇に返し口記号に近い印を持つ崩落部があり、青色布片二点と細い靴底様痕跡一を確認した。
***
狭い通路内に人は確認されず、一度ずつの音は、水滴によって木片が石へ当たる音である可能性が高いと報告された。
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次。
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青色布片の色調と一部の針運びは、メル・メナさんの所持品と類似した。完全には一致しない。
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細い靴底様痕跡は穴の内側へ向くように見え、外へ向かう跡は確認されなかった。形成時期と使用者は未確認。
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次。
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これらを、メルさんが当該通路へ入った証拠、返路を通った証拠、現在も内部にいる証拠にはしない。
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次。
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メルさんの衣服、靴、工房での行動、旧染料水路の使用者を確認する理由にはする。
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筆。
止まる。
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足跡。
一つ。
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細い。
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穴へ。
向いていた。
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名前を。
付ければ。
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メルが。
そこへ入ったことになる。
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帰りの跡がない。
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なら。
別の口へ。
消えたことになる。
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青い布。
似た針目。
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なら。
返路が。
メルを運んだことになる。
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一本の線。
また。
作れる。
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北東門。
薬草採取。
青い外套。
旧染料水路。
細い足跡。
返し口。
返路。
旧紙市場。
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魅力がある。
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だから。
まだ。
足跡へ。
メルの名前を。
書かない。
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だが。
名前を書かなければ。
探せない。
わけでもない。
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大きさ。
向き。
深さ。
場所。
布。
糸。
色。
時刻。
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名前より先に。
確認できるものを。
一つずつ。
追う。
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ガルは。
発見布へ。
メル。
と書かなかった。
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代わりに。
自分の紙へ。
書いた。
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北東門外の旧染料水路脇で、メルの外套に似た青色布が見つかった。
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その下。
自分で。
足す。
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似ている。本人の物とは未確認。
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次。
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穴へ向く細い靴跡様痕跡があった。メルの靴と比較する。
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その下。
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メルの足跡とは、まだ書かない。
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署名。
ガル・メナ
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足跡は。
返事をしない。
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誰のものか。
自分で。
言わない。
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だから。
探す者が。
先に。
名前を与えやすい。
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ガルは。
姉の名を。
忘れたのではない。
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呼びたい気持ちを。
消したのでもない。
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ただ。
地面に残った一つの形が。
姉を閉じ込める場所を。
決めるより先に。
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その形のまま。
持ち帰った。




