第九章 名前の先の道 ④ 戻ってきた印
第一踏査と。
再確認の地図は。
同じ形にならなかった。
***
翌朝。
旧紙倉。
机。
九枚。
***
第一踏査へ入った者が。
話し合う前に。
それぞれ描いた道。
***
リオ。
入口から。
右へ曲がる。
***
ガド。
右。
その後。
少し左。
***
イサラ。
右へ二度。
***
朔。
最初の曲がりを。
浅い。
と記す。
***
マレア。
裂け目までの距離が。
ほかより短い。
***
ノエ。
三つの経路印を。
中心に描く。
***
セオ。
曲がりより。
時刻。
***
フェル。
円形様小室を。
入口から。
ほぼ直線上へ置く。
***
エリオ。
退路灯を置いた位置だけを。
白い線で。
繋ぐ。
***
「重ねますか」
グラド・ウェン。
***
「平均を取る?」
フェル・ナード。
「道の形を」
「はい」
***
九枚。
透ける薄紙。
上へ。
重ねる。
***
入口。
一つ。
***
第一印。
近い。
***
右曲がり。
少し。
ずれる。
***
裂け目。
大きく。
ずれる。
***
円形様小室。
九つの位置。
円になる。
***
「平均すると」
ユイ。
重ねた紙を見る。
「部屋が大きくなる」
***
「はい」
ネラ・ヴォス。
***
「本当の部屋は」
「一つです」
「じゃあ」
「九人の記憶の位置が。違います」
***
「真ん中へ置く?」
グラド。
***
「それを」
リオ。
「本当の位置にする根拠はない」
***
「でも」
「公式の地図には。一つの位置が必要です」
***
リオ。
九枚を見る。
***
「距離を測った縄」
「あります」
ノエ。
「経路印」
「三つ」
「曲がり」
「順番は一致」
「裂け目」
「全員が通った」
「小室」
「全員が到達」
***
「なら」
リオ。
「形を決めるより。順番を描け」
***
新しい紙。
***
入口。
***
第一印。
***
右曲がり。
第二印。
***
砂下裂け目。
第三印。
***
円形様小室。
***
正面。
返路
***
左。
細い道。
***
「地図?」
ユイ。
「道の順番です」
朔。
***
「曲がりは」
「人ごとの紙に残します」
「一つにしない?」
「平均した曲がりを信じて。壁へ進まないために」
***
「公式」
グラド。
「としては不十分です」
***
「何に使う公式ですか」
朔。
「中央が経路を把握する」
「歩くため?」
「はい」
「なら」
「縮尺と方位が必要です」
***
「方位」
ルカ・フェン。
机。
古い経路灯の記録。
「旧搬入口の内側では。まだ取れていません」
***
「塔を基準に」
「入口までです」
「道の曲がりを」
「磁石?」
リオ。
「使えん」
***
小さな方位針。
机。
***
旧搬入口へ。
持って行った。
***
入口。
北。
***
一歩。
針。
少し。
東。
***
右曲がり。
南。
***
円形様小室。
回る。
***
「壊れている?」
フェル。
「外では戻りました」
セオ。
「経路内では」
「位置によって。指す方向が変わった」
***
「なら」
グラド。
「方位を定められない」
「今は」
ルカ。
「はい」
***
「どの今」
ユイ。
自然に。
尋ねる。
***
「入口外の方位と。経路内の針の動きの関係を確認していない時点です」
ルカ。
***
記録。
***
第一踏査用経路図は、縮尺・方位を確定した地図ではない。
***
経路印、障害、到達地点の順序を示す。
***
参加者ごとの曲がり・距離知覚は別紙に残す。
***
「中央は」
フェル。
「不完全だと言います」
***
「はい」
朔。
「不完全です」
***
「公式地図を」
「完成したことにしません」
***
ミエル・サド。
九枚の地図ではなく。
円形様小室の。
正面を見る。
***
返路
***
「これ」
彼女が言った。
「市場の昔の呼び方と。同じやな」
***
「返し場」
ミウ。
***
以前。
ロウが。
尋ねた。
***
なぜ。
ここを。
返し場と呼ぶのか。
***
ミエルは。
古紙を戻す場所だから。
と。
答えていた。
***
「前から」
朔。
「返し場と?」
「私が子どもの頃から」
「理由」
「売れん紙や。使える端紙を戻す場所やと聞いとった」
「その前は」
「知らん」
***
「市場になる前」
ネラ。
「物資倉庫」
「はい」
ミエル。
「さらに前」
「王都外壁の資材集積所」
***
ルカ。
古い灯路帳。
開く。
***
紙。
茶色。
***
縁。
欠けている。
***
「返」
文字。
複数。
***
東返
北返
染返
返し口
***
「名前?」
ユイ。
「場所か。役目か」
ルカ。
「分かりません」
***
「返路」
朔。
「荷物を戻す道?」
「可能性はあります」
***
さらに。
古い帳面。
***
読める部分。
***
荷は先に送る。
***
次。
破れている。
***
返し場で……を照合。
***
次。
***
人の帰還と……を同じにせず。
***
「間」
グラド。
「読めない」
「はい」
ネラ。
***
「人の帰還と」
ユイ。
「何を。同じにしない?」
***
「荷」
フェル。
「かもしれません」
「文章が」
「近い」
「でも」
「欠けています」
***
読めること。
分かること。
違う。
***
「返し口」
ファナ・リト。
「市場に。あるかもしれん」
***
「どこ」
ミエル。
「古い床」
***
旧紙倉。
入口側。
***
棚。
二つ。
動かす。
***
床。
石板。
***
一枚。
ほかより。
細い。
***
端。
鉄。
錆。
***
「これ」
ファナ。
「板やない」
「開く?」
「今は」
ミエル。
「市場は閉めてる」
***
「安全」
ノエ。
「周囲を空けます」
***
紙。
箱。
離す。
***
ガド。
石板。
叩く。
***
下。
空洞。
***
「蓋」
「可能性」
***
錆びた鉄。
持ち上がらない。
***
油。
少し。
***
梃子。
***
「開ける理由」
イサラ。
「返路と返し場が繋がる可能性を確認する」
「開けたら」
ミエル。
「店の床に穴が開く」
「はい」
「閉められる?」
ファナ。
「蝶番が壊れとっても。仮板で塞げる」
「今日中」
「できる」
***
「開ける」
ミエル。
「市場側の判断として」
***
名前。
記録。
***
ミエル・サド
旧紙市場床下構造確認への同意
***
ガド。
梃子。
***
ファナ。
反対側。
***
鉄。
鳴る。
***
石板。
少し。
上がる。
***
下。
暗い。
***
匂い。
***
乾いた土。
古い木。
***
「手を入れない」
イサラ。
***
鏡。
灯り。
***
狭い。
溝。
***
人は。
通れない。
***
荷箱。
一つ。
通る幅。
***
奥。
斜め下。
***
「返し口」
ファナ。
***
ルカ。
古い帳面。
***
返し口
横。
記号。
***
三角。
下。
横線。
***
床下。
石。
***
同じ記号。
薄い。
***
「一致」
フェル。
「記号は」
ネラ。
「近い」
***
「同じ?」
「欠けています」
***
完全に。
同じとは。
しない。
***
「返路へ」
中央の派遣書。
新しい提案。
***
人を。
一人。
入れる。
***
返し口で。
待つ。
***
戻るか。
確認。
***
「使いません」
イサラ。
***
「まだ」
グラド。
「中央へ送っていません」
「送らない?」
「提案として考えられます」
「だから」
イサラ。
「先に反対を記録します」
***
返路と返し口の関係が未確認の段階で、人または動物を通過試験へ用いない。
***
「動物も」
ユイ。
「はい」
朔。
「どうして」
「戻れない理由を。本人から聞けません」
***
「荷物」
「人ではない物で。先に確認します」
***
「誰かの物」
ユイ。
「使わない」
***
机。
新しい欄。
***
試験物
***
ファナ。
端材。
***
市場の棚を。
修理した残り。
***
「所有者」
グラド。
「市場?」
***
「試験のために」
ミエル。
「市場から出す」
「誰へ」
「誰にも渡さん」
***
「では」
旧紙市場提供試験材
***
所有権を移さず、経路確認へ一時使用
***
「戻ったら」
「市場へ戻す」
「戻らなかったら」
「失われた試験材として記録」
***
「誰かの形見」
「ではない」
***
「名前」
「付けない」
***
「番号」
グラド。
「一号」
「番号も」
朔。
「複数出す時に順番を作ります」
***
「識別が必要」
ファナ。
***
端材。
長さ。
腕ほど。
***
角。
一つ。
三角に削る。
***
反対側。
丸い穴。
二つ。
***
中央。
浅い横溝。
三本。
***
「文字なし」
「はい」
***
「呼び方」
ユイ。
「試験木片」
***
「ほかの木片と」
「三角の端。丸穴二つ。横溝三本」
***
「長い」
「はい」
***
重さ。
測る。
***
木目。
紙へ。
写す。
***
傷。
位置。
***
乾燥。
***
色。
***
「印を」
朔。
「名前にしない?」
***
「識別のためです」
ネラ。
「後から」
「三角と呼ばれる可能性」
「あります」
***
「では」
「試験中の呼称として限定します」
***
本試験記録内のみ「三角端木片」と表記。
***
人、所有者、受取人、経路対象の名称として使用しない。
***
「戻ったら」
ユイ。
「返事した?」
***
「木片が」
朔。
「返し口へ移動した可能性を確認します」
「返事じゃない?」
「質問を。理解したとは決めません」
***
経路試験。
翌朝。
***
朔の膝。
腫れ。
少し。
減る。
***
「同行」
マレア。
「反対です」
「はい」
朔。
***
すぐに。
受ける。
***
「今日は」
「返し口側にいます」
***
「役目」
「戻った物の確認」
***
「もし」
ユイ。
「木片じゃないものが出たら」
***
朔。
床下の溝を見る。
「触れません」
「人」
「呼吸と身体を確認します」
「名前」
「後で」
***
「黒いもの」
「近づかない」
***
「声」
「返事をしない」
***
返し口側。
***
朔。
マレア。
ユイ。
ネラ。
ファナ。
ミエル。
ルカ。
***
道側。
***
リオ。
ガド。
イサラ。
ノエ。
セオ。
フェル。
エリオ。
***
七人。
***
「また七」
フェル。
「意味は」
ノエ。
「付けません」
***
試験木片。
縄。
***
長い。
***
市場で。
用意できる。
最大。
***
木片。
直接。
手で押さない。
***
網袋。
入れる。
***
縄。
結ぶ。
***
「戻ってきた時」
ファナ。
「袋が外れていたら」
「木片の傷と木目を確認」
ネラ。
「袋だけ」
「別に記録」
***
「縄」
リオ。
「返路の先へ。引かれる可能性」
「手へ巻かない」
ノエ。
「固定」
「しない」
***
「なぜ」
「急に引かれた時。身体を持って行かれないため」
***
縄。
地面。
輪。
***
手。
軽く。
送る。
***
「切る条件」
イサラ。
「急な張力。黒色化。熱。音声様反応。引き戻し不能」
***
「切れば」
フェル。
「試験材を失う」
「人を失わない」
***
刃。
縄の横。
***
ガド。
持つ。
***
呼名。
なし。
***
文字。
なし。
***
個人の品。
なし。
***
青い布。
なし。
***
道側。
七人。
入る。
***
入口側。
返し口。
開いている。
***
灯り。
溝。
***
朔。
椅子。
***
膝。
伸ばす。
***
「名前」
ユイ。
「サク」
「どこ」
「旧紙市場。返し口の横」
「何をする」
「戻る物を確認する」
「行きたい?」
***
「はい」
***
「でも」
「行きません」
「膝」
「はい」
***
「光に」
「反論するためでもありません」
***
時間。
進む。
***
道側。
***
第一印。
***
第二。
***
裂け目。
***
七人。
渡る。
***
円形様小室。
入口。
***
残光。
ない。
***
小石様物。
入口縁。
***
前回。
置いた場所。
近い。
***
「触れない」
イサラ。
***
正面。
***
返路
***
試験木片。
袋。
***
縄。
***
「開始」
セオ。
***
時刻。
***
ガド。
長い棒。
***
袋を。
正面の床へ。
置く。
***
人。
入らない。
***
棒。
押す。
***
木片。
袋。
返路へ。
***
床。
下がる。
***
縄。
少しずつ。
送る。
***
「張り」
ノエ。
「弱い」
***
一縄。
***
二縄。
***
三。
***
返路の奥。
見えない。
***
「音」
フェル。
***
木。
石。
***
下へ。
滑る。
***
「継続」
イサラ。
***
縄。
四。
***
五。
***
「止まった」
リオ。
***
縄。
張る。
***
引かない。
***
「戻す?」
フェル。
「まだ」
***
張り。
一定。
***
次。
***
急に。
緩む。
***
縄。
床。
落ちる。
***
「切断?」
ガド。
***
縄。
引く。
***
軽い。
***
端。
戻る。
***
切れていない。
***
結び。
ない。
***
「袋が」
ノエ。
「外れた可能性」
***
「木片」
「見えない」
***
「回収」
イサラ。
「縄だけ」
***
引く。
***
五縄分。
***
戻る。
***
先端。
濡れていない。
***
焼けていない。
***
切断。
なし。
***
袋。
結び。
外れている。
***
「結び目」
リオ。
「ほどけた?」
***
「事前記録」
セオ。
***
結び。
二重。
***
今。
縄。
まっすぐ。
***
擦れ。
少し。
***
「解けた」
フェル。
「可能性」
***
「誰かが」
「決めない」
イサラ。
***
市場。
返し口。
***
音。
***
最初。
小さい。
***
木。
下。
***
「停止」
マレア。
***
全員。
返し口から。
一歩。
離れる。
***
朔。
椅子。
後ろへ。
***
ファナ。
仮板。
持つ。
***
溝。
暗い。
***
次。
***
軽い。
打音。
***
一度。
***
二度。
***
三度。
***
「三」
ユイ。
「印と」
朔。
「同じ数」
***
「意味」
ネラ。
「まだ付けない」
***
溝。
***
何か。
滑る。
***
網。
***
ではない。
***
木。
***
返し口の。
下。
***
止まる。
***
「見える」
ファナ。
「木片」
***
手。
入れない。
***
長い鉤。
***
市場側。
用意。
***
ファナ。
鉤。
木片。
***
引く。
***
床。
上。
***
誰も。
触れない。
***
木片。
***
三角の端。
***
丸穴。
二つ。
***
横溝。
三本。
***
「三角端木片」
ネラ。
「可能性が高い」
***
「同じ?」
ユイ。
***
木目。
写し。
***
左。
太い筋。
***
中央。
小さな節。
***
角。
傷。
***
一致。
***
重さ。
まだ。
測らない。
***
表面。
粉。
***
青。
***
「前」
朔。
「青はありましたか」
「記録なし」
ネラ。
「写真」
ない。
***
木目写し。
紙。
***
表面。
無色。
***
「新しい?」
「乾いています」
ファナ。
「染料?」
ミエル。
***
匂い。
近づけない。
***
細い棒。
粉。
少し。
***
白い皿。
***
水。
一滴。
***
青。
広がる。
***
「染め粉に」
ミエル。
「似とる」
***
「メル」
ユイ。
言う前。
止まる。
***
ガルの姉。
染料工房。
***
「似ていることと」
朔。
「メルさんとの関係は違います」
「うん」
***
「でも」
ユイ。
「ガルには知らせる?」
「はい」
***
「何を」
「返路へ送った試験木片様物が。返し口へ戻った可能性」
「青」
「事前に記録されていない青色粉様物が付着していたこと」
「メル」
「関係は未確認」
***
道側。
***
返路。
木片。
消えた。
***
市場。
返し口。
木片。
出た。
***
同じ時刻。
近い。
***
連絡。
ない。
***
入口側。
鐘。
三回。
***
事前合図。
***
試験物様物を確認。人身危険なし。
***
道側。
遠い。
***
鐘。
聞こえない。
***
代わり。
ノエの縄。
入口から。
結ばれた。
細い伝達線。
***
ファナ。
入口側。
一回。
引く。
***
間。
***
三回。
***
事前合図。
***
物体到達様。退出。
***
道側。
伝達線。
動く。
***
「一。三」
ノエ。
「返し口側で。物体到達様」
***
「同じ木片」
フェル。
「まだ」
イサラ。
「確認は外で」
***
「退出」
***
七人。
帰る。
***
円形様小室。
入らない。
***
左の道。
見ない。
***
小石。
触れない。
***
裂け目。
***
一人ずつ。
***
速度。
前回。
保つ。
***
朔の歩幅は。
ない。
***
だが。
予定より。
速くしない。
***
「理由」
フェル。
「今回は。朔さんがいない」
「はい」
イサラ。
「では」
「前回の速度が。帰還確認と印の間隔を含む手順になっています」
***
「身体は」
「七人の状態も見る」
***
リオ。
呼吸。
***
ガド。
足。
***
フェル。
肩。
***
エリオ。
光。
***
今いる者。
確認。
***
石枠。
***
七人。
帰還。
***
ノエ。
数える。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
***
ユイ。
一人ずつ。
***
「名前」
「リオ」
「何をした」
「木片を返路へ送るのを見た。縄が緩んだ。袋は戻らなかった」
***
「ガド・ネン」
「木片を棒で押した。戻った縄の結びが外れていた」
***
「イサラ・ベルン」
「試験の継続と退出を決めた。人も動物も返路へ入れていない」
***
「ノエ・ハーラ」
「縄の長さと張りを見た。返し口側からの一回と三回の合図を確認した」
***
「セオ・ラグナ」
「時刻と手順を記録した。同じ木片が戻ったことは入口側の確認前には決めていない」
***
「フェル・ナード」
「中央の返路仮説を見た。試験物が消えたことと、返し口側の合図を確認した」
***
「エリオ・レイス」
「退路灯を置いた。返路の中へ光を入れていない」
***
「人数」
「七」
***
「帰還」
「七」
***
次。
木片。
***
七人。
離れた位置。
見る。
***
「これ」
ファナ。
「送った木片やと思う」
***
「根拠」
ネラ。
「木目。穴。溝。三角端。傷」
「重さ」
「乾燥後に測る」
「袋」
「未確認」
「縄」
「道側へ回収」
***
「同一」
グラド。
「確認済にする?」
***
「可能性が高い」
セオ。
「何が足りない」
「送った後。木片を連続して視認していません」
「返路の中で」
「別の同形物と交換された可能性を。完全には除けません」
***
「同じ形を」
ミエル。
「作る奴がおる?」
「分かりません」
***
「なら」
「高い一致」
***
記録。
***
事前に木目・重量・傷・三角端・丸穴二・横溝三を記録した試験木片を、円形様小室正面「返路」へ送った。
***
網袋との結索が外れ、縄のみを回収した。
***
ほぼ同時刻、旧紙市場床下返し口で、事前記録と高く一致する木片様物を確認した。
***
返路内を連続視認していないため、同一物であることを完全には確認していない。
***
「高く一致」
ユイ。
「同じに近い?」
「はい」
朔。
「同じ?」
「まだ。そう書かない」
***
「でも」
「次の試験を考える根拠にはします」
***
青色粉。
***
ミエル。
染料。
見る。
***
「古い藍灰」
「何」
「染め場で。布の下地に使う粉に似とる」
「今も」
「使う工房はある」
「北東区画」
「多い」
***
ガル・メナ。
呼ばれる。
***
机。
木片。
透明な覆い。
***
「青」
ガル。
「メルの工房」
「可能性はあります」
朔。
「どこの工房でも?」
「同じ系統の粉を使う場所は複数あります」
ミエル。
「メルの工房の粉と」
「比較できる」
***
「なら」
「比較します」
***
ガル。
木片へ。
近づこうとする。
***
「触れないで」
マレア。
「毒?」
「分かりません」
「メルの物」
「確認されていません」
***
「でも」
ガル。
「北東」
「古い帳面に」
ルカ。
「青い印と。北返または染返に近い記録があります」
***
帳面。
***
北返
青。
薄い。
***
染返
青。
濃い。
***
「どっち」
「判別できません」
***
「返路が」
ガル。
「北東へ繋がる?」
「可能性が出ました」
朔。
「出ただけ」
「はい」
「メルが」
「通ったとは確認していません」
「でも」
「北東門の外と。旧経路の関係を調べる理由にはなります」
***
「いつ」
「中央の許可を」
グラド。
「待たない」
イサラ。
***
全員。
彼女を見る。
***
「何を」
グラド。
「旧経路へ入ることではありません」
***
イサラ。
帳面。
北東門記録。
木片。
見る。
***
「北東門の外側で。古い返し口、資材路、青い経路印が残っていないかを確認します」
「外側」
「現在通行可能な地上道です」
「人員」
「門の警備。染料工房の者。道を知る者」
「メルさん」
「捜索記録の続きとして」
***
「旧搬入口は」
「別にする」
***
ガル。
「同時に」
「はい」
***
「やっと」
「今日の木片が。メルさんの返事だからではありません」
「分かっとる」
ガル。
***
すぐに。
言う。
***
その後。
少し。
止まる。
「分かりたいと思っとるだけかもしれん」
***
「はい」
朔。
***
「でも」
ガル。
「地上の道を見る」
「はい」
「名前を呼ばず」
「はい」
「木片の粉と。工房の粉を比べる」
「はい」
***
「少ない」
「はい」
***
「でも」
ガル。
「歩ける」
***
木片。
乾燥。
***
重量。
出発前より。
少し。
重い。
***
「水分?」
ファナ。
「表面は乾いてる」
「粉」
「増えた分だけではない」
「内部」
「分からん」
***
切る?
***
「試験材」
ミエル。
「市場の物や」
「内部を確認するため」
グラド。
「切断」
***
「戻った形を」
ネラ。
「先に記録します」
***
全方向。
木目。
傷。
粉。
重さ。
匂い。
***
その後。
端。
少しだけ。
削る。
***
「誰が」
「ファナ」
***
「市場の同意」
「ミエル」
***
「切る量」
「三角端の反対側。指の爪ほど」
***
「内部」
ファナ。
刃。
***
薄く。
削る。
***
木。
通常。
***
青。
内部には。
ない。
***
「表面付着」
「可能性が高い」
***
削り屑。
保管。
***
試験木片。
封箱。
***
「返し場」
ロウ。
足。
まだ。
布。
杖。
***
市場へ。
来ている。
***
「何で返し場って言うか」
彼。
「分かった?」
***
ミエル。
床下。
返し口。
見る。
***
「昔」
「うん」
「物が。ここへ戻ってきた場所かもしれん」
「人も?」
***
ミエル。
すぐには答えない。
***
「今日は」
「うん」
「木片が戻った可能性がある」
「人は」
「送ってへん」
***
「じゃあ」
ロウ。
「返ってきた人はいない?」
「道へ行った七人は」
ユイ。
「同じ入口から。歩いて帰った」
***
「木片は」
「別の口」
***
「どっちも帰った?」
「はい」
朔。
「でも。同じ帰り方ではありません」
***
「木片の名前」
「ありません」
「三角って」
「試験中だけの呼び方」
***
「帰ってきたから」
ロウ。
「名前付けない?」
***
朔。
木片を見る。
***
物語。
作れる。
***
返り木。
***
道の証人。
***
九人目。
***
残った一つ。
***
青い道から。
戻った者。
***
「付けません」
朔。
「どうして」
「名前を付けると。木片が何をしたか以上の役目を持つかもしれないからです」
***
「でも」
「試験木片として記録します」
「戻ったこと」
「戻った可能性が高いことも」
***
「木片」
ロウ。
「嫌じゃない?」
***
誰も。
答えられない。
***
「聞けません」
ユイが言う。
***
「だから」
「人と同じにはしない」
***
「物を」
朔。
「人として扱わないことと。乱暴に使ってよいことも。同じではありません」
***
「市場の物」
「はい」
「切った」
「同意と。目的と。量を決めました」
***
ロウ。
頷いたか。
分からない。
***
杖。
床。
***
返し口。
覗かない。
***
夕方。
中央への速報。
***
最初の見出し案。
***
返路による物資帰還を確認
***
「確認」
フェル。
「高く一致です」
***
書き直し。
***
円形様小室正面「返路」へ送った試験木片と高く一致する木片様物を、旧紙市場床下返し口で確認
***
「長い」
グラド。
「はい」
***
要点。
***
返路へ送った木片様物が、返し口へ戻った可能性があります。
***
次。
***
人または動物の通過は試していません。
***
次。
***
木片様物に、事前記録にない青色粉様物が付着していました。北東区画または染料経路との関係は未確認です。
***
「中央は」
フェル。
「人を送る許可を出すかもしれません」
「反対」
イサラ。
「先に書きます」
***
本試験は、返路の勾配、距離、内部環境、人体への影響、到達時の身体状態を確認していない。物体の移動可能性を、人の安全な帰還可能性へ拡張しない。
***
「帰還」
朔。
「木片に使いますか」
***
イサラ。
止まる。
***
「移動」
書き直す。
***
物体の移動可能性を、人が安全に通過できることへ拡張しない。
***
「木片が」
ユイ。
「帰ったって言えない?」
***
「市場へ戻った可能性」
朔。
「あります」
「でも帰還」
「自分で帰りたい場所を選んだとは確認できません」
***
「人なら」
「それも。本人へ聞きます」
***
「戻ってきても」
「帰ってきたとは限らない」
***
ユイ。
少し。
考える。
***
「サクたちも」
「はい」
「入口へ戻った」
「はい」
「帰った?」
「俺は。帰ったと思っています」
「ほかの人は」
「一人ずつ。確認しました」
***
「木片は」
「聞けません」
***
夜。
朔。
机。
***
地図。
九枚。
***
道の順番。
一枚。
***
返し口。
市場。
***
試験木片。
青色粉。
***
北東門。
メル・メナ。
***
線。
引ける。
***
旧搬入口。
円形様小室。
返路。
返し口。
青。
北東。
染料工房。
メル。
***
一つの道へ。
繋げられる。
***
魅力がある。
***
だから。
一本の線に。
しない。
***
朔は。
紙へ書く。
***
第一踏査参加者九名が描いた経路図は、曲がり、距離、円形様小室の位置が一致しなかった。
***
平均した形を公式経路とせず、経路印、障害、到達地点の順序を共通記録とした。
***
次。
***
旧紙市場床下に、古い帳面の「返し口」記号に近い印を持つ溝を確認した。
***
円形様小室正面「返路」へ、個人名・所有者名・文字を付けない試験木片を送った。
***
次。
***
返し口で、事前記録と高く一致する木片様物を確認した。
同一物であることを完全には確認していない。
***
次。
***
木片様物には、事前に記録されていない青色粉様物が付着していた。
古い帳面には、青色と北返・染返に近い記録がある。
***
次。
***
この関係を、メル・メナさんが旧搬入口を通った証拠、返路が北東門へ繋がる証拠、青色粉がメルさんの工房の物である証拠にはしない。
***
次。
***
北東門外側の地上道、旧資材路、返し口、染料経路を確認する理由にはする。
***
最後。
***
道へ送った印が、市場へ戻った可能性がある。
***
筆。
止まる。
***
印。
名前ではない。
***
木片。
人ではない。
***
それでも。
道の先で。
何かに触れ。
事前にはなかった青を。
表面へ持ってきた。
***
木片が。
何を見たか。
聞けない。
***
どこを通ったか。
答えない。
***
誰かへ会ったか。
分からない。
***
だから。
青い粉を。
メルの名前にしない。
***
返し口を。
北東門にしない。
***
返路を。
人が帰れる道にしない。
***
だが。
物が移動した可能性を。
なかったことにも。
しない。
***
翌朝。
地上。
北東門。
***
イサラ。
ガル。
染料工房の者。
門の警備。
リオ。
ガド。
***
名前を。
呼ぶためではない。
***
古い道の跡を。
足で。
探すため。
***
旧紙市場。
床下。
***
返し口。
仮板。
閉じる。
***
木片。
封箱。
***
戻ってきた印は。
次の道を。
命じなかった。
***
ただ。
今まで。
見ていなかった地上の道を。
見る理由を。
残した。
***
道が先に返したのは。
人の名前ではない。
***
三角の端。
二つの穴。
三本の溝を持つ。
木片様物だった。
***
だから。
その印を。
帰ってきた者の名前には。
しなかった。




