第九章 名前の先の道 ③ 残った一つ
夜。
朔の右膝は。
朝より。
腫れていた。
***
寝台。
布。
冷たい水。
***
マレア・ソン。
指。
膝の周り。
触れる前。
「触れます」
「はい」
***
外側。
熱。
***
曲げる。
途中。
痛み。
***
「歩けますか」
「歩けます」
「昨日と同じ距離」
朔は。
答えない。
***
「分かりません」
***
「走る」
「分かりません」
「裂け目を越える」
「できると思います」
「身体は」
「確認できていません」
***
マレア。
布を。
巻き直す。
***
「明日の再確認には」
「参加したいです」
「参加できますか。とは聞いていません」
***
朔。
膝を見る。
***
「今の状態では。反対です」
***
「何を確認するか」
「円形様小室の残光」
「はい」
「小石」
「はい」
「俺は。最初に見ています」
「はい」
「知覚の比較に」
「必要とは決めていません」
***
「俺がいなければ」
「条件が変わります」
「それを」
朔。
「俺が。光らなかった一人か確認する試験にされる可能性があります」
***
「あります」
マレア。
***
「なら」
「だから行く?」
「はい」
「誰かが」
マレア。
「あなたを分類するのを防ぐために。痛む膝で道へ入る?」
***
朔。
止まる。
***
「その理由を」
マレア。
「持っている状態で。私は参加へ同意しません」
***
「俺が決めることでは」
「はい」
「マレアさんが決めることでも」
「はい」
「では」
「同行者全員が。あなたを運ぶ可能性と。帰還期限への影響を含めて判断します」
***
「俺は」
「参加を望む」
「はい」
「理由」
「最初の状態を見たから」
「ほか」
***
朔。
白い布。
膝。
***
「俺がいない時に。八つ光ったら」
「はい」
「俺が数えられていなかったと言われる」
***
「それを」
マレア。
「確かめたい?」
「違います」
「では」
「確かめたことにされたくない」
***
「同じ道へ入っても」
マレア。
「確かめたことにされる可能性はあります」
***
朔は。
黙る。
***
行く。
行かない。
***
どちらも。
条件になる。
***
身体を。
どちらかの答えへ。
使われる可能性。
***
「だから」
マレア。
「身体で決めます」
***
「逃げる?」
「違います」
「では」
「膝を。表示への反論に使いません」
***
翌朝。
旧紙倉。
***
中央から。
追加の紙。
***
見出し。
***
円形様小室における未認識参加者候補の確認
***
「未認識」
ユイが読む。
***
朔。
立っている。
右脚。
完全には。
伸ばしていない。
***
本文。
***
第一踏査参加者九名を、一名ずつ入室・退室させ、各窪の発光状態を記録する。
***
発光しない者を、旧経路認識外、未登録、または観測対象候補として記録する。
***
「観測対象」
朔。
「俺を想定していますか」
「候補名は」
フェル・ナード。
紙の下を見る。
***
別紙。
***
黒川朔
エリオ・レイス
リオ
***
「三人」
ユイ。
「どうして」
***
「黒川朔さん」
フェル。
「関係記録当事者」
「はい」
「エリオさん」
「旧勇者候補第二位相当」
「現在使っていません」
エリオ。
***
「リオさん」
「王都登録外経路案内者」
***
「登録されてない人」
リオ。
「数えへんと思っとる?」
***
「中央の仮説です」
フェル。
「フェルさんは」
朔。
「賛成ですか」
***
フェルは。
すぐには答えない。
***
「最初に光が八つだった時」
「はい」
「私は。一名が認識されていない可能性を考えました」
「はい」
「誰かを調べたいとも」
「はい」
「今は」
***
どの今。
***
「九名が帰還し。退出後にも一つ光が残った記録を読んだ時点では」
フェル。
「人を一人ずつ入れる手順に反対です」
***
「なぜ」
グラド。
「発光が人を示すと。確認していないからです」
「確認する手順です」
「人を入れなければ確認できない」
「はい」
「なら」
フェル。
「確認したいことが。先に人を未認識候補へします」
***
「中央へ」
イサラ・ベルン。
「拒否を返します」
***
参加者を一名ずつ表示へ対応させる手順は行わない。
***
発光が人数、個人、登録状態、経路認識その他の何を示すか未確認であり、当該手順は参加者を認識対象と非認識対象へ分類する結果を先に作るため。
***
「代案」
グラド。
***
円形様小室。
再確認。
***
人。
入らない。
***
入口から。
残光。
確認。
***
中央へ転がった小石様物。
位置。
外形。
動き。
確認。
***
長い棒。
鏡。
縄。
***
身体を。
表示へ。
合わせない。
***
「同行者」
九名ではない。
***
リオ。
道。
***
ガド。
石。
***
イサラ。
中止。
***
ノエ。
人数。
***
セオ。
記録。
***
フェル。
中央記録。
***
エリオ。
退路。
***
七人。
***
「朔さん」
グラド。
「不参加?」
「参加を望みます」
朔。
「身体」
マレア。
「反対です」
***
「中央は」
グラド。
「朔さん不在時の発光数を重要視する可能性があります」
「はい」
朔。
「なら」
「行く?」
「俺が行かない理由を。身体状態として記録してください」
***
マレア。
朔を見る。
***
「俺の不在を」
朔。
「表示の試験へ使うために。行かないのではありません」
「はい」
「表示の試験を避けるために。無理に行くのでもありません」
「はい」
***
「今の身体では」
「第一踏査と同じ経路を。安全に往復できると確認できません」
***
記録。
***
黒川朔は再確認への参加を希望した。
***
右膝の腫脹、屈曲時痛、裂け目通過および緊急退避への影響を理由に、治療担当マレア・ソンが同行へ反対した。
***
黒川朔の不参加を、円形様小室における認識・非認識の確認条件として設定しない。
***
前回と今回の発光差が生じた場合も、黒川朔の有無との因果を確定しない。
***
「それでも」
フェル。
「中央は比較します」
「はい」
朔。
「比較したことと。確認したことを分けてもらいます」
***
「俺が」
リオ。
「行かんかったら」
「条件は変わります」
セオ。
「エリオさんが」
「同じです」
***
「全員」
ユイ。
「違う人だから」
「はい」
朔。
「誰がいなくても。条件は変わります」
***
「じゃあ」
「一人がいないことを。一つの答えにしません」
***
再確認。
出発。
***
七人。
***
入口側。
***
朔。
マレア。
ネラ。
ファナ。
ルカ。
ミエル。
ミウ。
ユイ。
***
「行く人」
ユイ。
七人を見る。
***
「名前」
***
「リオ」
「ガド・ネン」
「イサラ・ベルン」
「ノエ・ハーラ」
「セオ・ラグナ」
「フェル・ナード」
「エリオ・レイス」
***
「何をする」
「部屋へ入らず。残った光を見る」
イサラ。
「石を」
ガド。
「長い棒で動かす」
「名前」
ユイ。
「呼ばない」
全員。
***
「人を」
「光へ合わせない」
フェル。
***
「帰る人数」
「七」
ノエ。
***
石枠。
越える。
***
七つの身体。
***
朔。
入らない。
***
自分の名が。
道の条件から。
外れる。
***
それを。
見送る。
***
石枠。
奥。
***
白い退路灯。
消える。
***
曲がり。
向こう。
***
見えなくなる。
***
朔は。
椅子へ座る。
***
「膝」
マレア。
「動かさなければ。少し」
「道」
ユイ。
「見える?」
「見えません」
***
「何が起きてるか」
「分かりません」
「サクがいなくても」
「進みます」
***
「嫌?」
***
朔。
答えを。
急がない。
***
「はい」
***
「どうして」
「俺が見ていないことが。起きるからです」
***
「いつも」
「はい」
「サクがいない所でも。起きてる」
「はい」
***
「じゃあ」
「今日は。それを。俺が待ちます」
***
市場。
まだ。
開けていない。
***
入口。
静か。
***
時間。
進む。
***
朔の知らない道で。
七人が。
歩いている。
***
第一印。
***
第二印。
***
裂け目。
***
円形様小室。
***
朔には。
見えない。
***
後で。
報告される。
***
それまで。
自分の想像を。
記録にしない。
***
「今」
ネラ。
「何を考えていますか」
***
朔。
紙。
***
「一つの光が。まだ残っているか」
「はい」
「七人が入ったら。七つになるか」
「はい」
「俺がいないから。八つではなくなるか」
「はい」
「誰かが。俺を未認識だった一人と考えるか」
「はい」
***
「書きますか」
「はい」
***
再確認中、俺は円形様小室を直接見ていない。
***
残光が継続していること、七名の接近で発光数が変化すること、俺の不参加が発光へ影響することを想像している。
***
現時点では、いずれも確認していない。
***
紙。
閉じる。
***
道。
***
七人。
***
第一印。
確認。
***
赤。
刻み。
縄。
***
一致。
***
裂け目。
***
砂。
少し。
戻っている。
***
「前回より」
フェル。
「多い?」
「そう見える」
ガド。
「測る」
***
深さ。
位置。
***
前回記録。
完全には。
一致しない。
***
「誰かが」
フェル。
「通った?」
「砂が動く理由は」
リオ。
「人だけやない」
***
風。
弱い。
***
石。
落ちた可能性。
***
前回。
払った砂が。
戻った可能性。
***
「足跡」
ノエ。
***
裂け目の先。
右壁側。
***
浅い。
***
一つ。
***
靴。
ではない。
***
指。
三つ。
または。
石の跡。
***
「触れない」
イサラ。
***
位置。
形。
記録。
***
「前回」
セオ。
「ありましたか」
「記録なし」
ガド。
「見ていない?」
「可能性」
***
七人。
裂け目。
渡る。
***
朔の歩幅。
ない。
***
速度。
少し。
速い。
***
「止める」
イサラ。
***
「なぜ」
フェル。
「前回より速い」
「はい」
「危険?」
「前回の速度を。朔さんだけの都合として消さない」
***
「今は」
「七人の呼吸と。帰還時間で決めます」
***
速度。
落とす。
***
朔がいない。
***
それでも。
前回の歩幅が。
道へ。
残っている。
***
円形様小室。
手前。
***
「停止」
イサラ。
***
入口から。
中。
見る。
***
誰も。
入らない。
***
壁。
九つの窪み。
***
一つ。
白い。
***
「残光」
ノエ。
「一」
***
「確認者」
セオ。
***
「一」
リオ。
「一」
ガド。
「一」
イサラ。
「一」
ノエ。
「一」
セオ。
「一」
フェル。
「一」
エリオ。
***
「七人が」
フェル。
「入口まで来ても。一」
***
「はい」
セオ。
***
「朔さんがいないから」
「因果は」
イサラ。
「決めません」
***
「少なくとも」
フェル。
「七を数えていない」
「そう見えます」
ガド。
***
部屋。
空。
***
中央。
丸い石。
***
その前。
小石。
***
前回。
正面の返路へ。
転がしたものと。
似ている。
***
「同じ?」
フェル。
「確認できる印を」
セオ。
「付けていません」
***
「大きさ」
「前回記録と近い」
「形」
「似ている」
「同一」
「未確認」
***
鏡。
***
長い棒。
先。
固定。
***
鏡。
入口から。
部屋の床。
映す。
***
「右」
リオ。
「何か」
***
九つの窪み。
下。
***
細い線。
***
石の継ぎ目。
または。
文字。
***
「近づかない」
イサラ。
「鏡を」
ガド。
「角度だけ」
***
線。
九本。
***
一つ。
小石の方向へ。
***
「繋がってる?」
フェル。
「そう見える」
セオ。
「発光した窪みと」
「小石」
「線」
「一続き?」
「鏡の歪みがあります」
***
「石を」
ガド。
「動かす」
***
長い棒。
***
先。
小さな輪。
***
部屋へ。
***
人。
入らない。
***
棒。
床。
***
中央石。
避ける。
***
小石。
手前。
***
「触れる」
ガド。
***
棒。
先。
小石へ。
***
音。
乾いた。
***
白い窪み。
揺れる。
***
「変化」
ノエ。
「明滅」
***
「棒を」
イサラ。
「止める」
***
止める。
***
光。
戻る。
***
「接触で」
フェル。
「反応」
「可能性」
セオ。
***
「もう一度」
ガド。
「目的」
「石の位置と発光の関係」
***
「一回」
イサラ。
「動かす。追わない」
***
全員。
同意。
***
ガド。
棒。
***
小石。
右へ。
指一つ分。
***
光。
細くなる。
***
「変化」
***
さらに。
動かさない。
***
小石。
止まる。
***
窪み。
消えない。
***
半分ほど。
暗い。
***
「位置と」
フェル。
「関係がある?」
「あります」
ガド。
「可能性」
***
「元へ」
イサラ。
「戻す?」
***
「戻したら」
フェル。
「再現」
「はい」
***
「でも」
セオ。
「元の位置を。正確には記録していません」
「鏡」
ガド。
「最初の写し」
***
紙。
鏡の位置。
石。
線。
***
近い場所。
***
「戻します」
***
棒。
小石。
左。
***
元に。
近い。
***
光。
強くなる。
***
「再現」
フェル。
「近い変化」
***
「石が」
「光と関係する可能性」
セオ。
***
「人では」
フェル。
言いかける。
止まる。
***
「人だけを」
イサラ。
「示すとは言えません」
***
「なら」
「未認識者確認は」
「根拠が弱くなります」
***
「石が一人?」
ノエ。
「そうは決めません」
***
「次」
ガド。
「小石を。部屋の外へ寄せる」
***
「目的」
「光が消えるか」
「危険」
「棒の長さ以内。人は入らない」
***
「同意」
***
七人。
確認。
***
棒。
小石。
***
入口方向へ。
***
ゆっくり。
***
中央石の前。
離れる。
***
白い窪み。
暗くなる。
***
小石。
部屋の縁。
***
光。
消える。
***
「消灯」
ノエ。
***
「全員」
見る。
***
九つ。
暗い。
***
小石。
入口の。
内側。
***
「部屋の外へ」
ガド。
「出す?」
***
「持ち帰らない」
イサラ。
「では」
「入口の内側で止める」
***
「石が」
フェル。
「残った一つだった?」
***
「石を動かした時」
セオ。
「残光が変化し。部屋の縁で消えた」
「はい」
「同じ石か」
「未確認」
「光が石を数えていたか」
「未確認」
***
「でも」
「人を一人ずつ入れなくても。発光が変化しました」
***
フェル。
息。
吐く。
***
「俺たちのうち」
リオ。
「誰か一人を。光らん奴にせんで済む」
***
「済んだ?」
フェル。
「中央は」
「別の仮説を作る」
イサラ。
「はい」
***
「でも」
「今日。人を分けなかったことは残ります」
***
部屋。
暗い。
***
小石。
入口。
***
棒。
回収。
***
その時。
左の細い道。
***
音。
***
一歩。
***
靴。
ではない。
***
石。
落ちる。
だけかもしれない。
***
「中止」
イサラ。
***
「意味」
フェル。
「取れません」
「音声様」
セオ。
「一回」
***
左。
暗い。
***
光。
置かない。
***
人影。
ない。
***
「退出」
***
七人。
来た道。
***
小石。
残す。
***
光。
消えたまま。
***
振り返らない。
***
裂け目。
***
砂。
***
一人ずつ。
***
前回より。
遅い。
***
「時間」
セオ。
「予定内」
***
「人数」
ノエ。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
***
第一印。
***
市場の音。
***
入口。
***
石枠。
***
七人。
帰る。
***
朔。
立とうとする。
***
膝。
痛む。
***
「座って」
マレア。
***
朔。
座ったまま。
***
七人。
一人ずつ。
***
リオ。
***
「名前」
ユイ。
「リオ」
「何をした」
「道を見た。部屋には入ってへん。小石を棒で動かすのを見た」
***
ガド。
***
「名前」
「ガド・ネン」
「何をした」
「棒で小石を動かした。光が暗くなり。部屋の縁で消えた」
***
イサラ。
***
「名前」
「イサラ・ベルン」
「何をした」
「人を部屋へ入れず、小石を一度動かすことを認め、左の道から音がした後に退出を決めた」
***
ノエ。
***
「名前」
「ノエ・ハーラ」
「何をした」
「七人を数えた。残光一を確認した。消灯を確認した」
***
セオ。
***
「名前」
「セオ・ラグナ」
「何をした」
「知覚と手順を記録した。石と光の関係は未確認とした」
***
フェル。
***
「名前」
「フェル・ナード」
「何をした」
「中央の未認識者仮説を持って行った。人を入れずに光が変わるのを見た」
***
エリオ。
***
「名前」
「エリオ・レイス」
「何をした」
「退路灯を置いた。部屋の中へは光を置かなかった」
***
「人数」
ノエ。
「七」
***
「帰還」
「七」
***
朔。
七人を見る。
***
自分。
行っていない。
***
光。
直接。
見ていない。
***
「残光は」
朔。
「ありましたか」
「はい」
七人。
***
「小石を」
「動かした」
ガド。
「光は」
「暗くなった」
「部屋の縁で」
「消えた」
***
「左の道」
「一回。音」
「言葉」
「確認せず」
***
朔。
紙へ書く。
***
俺は再確認へ参加していない。以下は帰還者七名の報告である。
***
最初に。
それを書く。
***
七名が円形様小室入口へ到達し、誰も入室しない状態で一窪の残光を確認した。
***
長い棒で中央付近の小石様物へ接触し、位置を動かしたところ、発光が弱くなった。小石様物を入口縁へ近づけると、発光が消えた。
***
小石様物が前回と同一であること、発光が当該物を数えていたこと、人数と無関係であることは確認されていない。
***
次。
***
少なくとも、人を一名ずつ入室・退室させなくても、発光状態は変化した。
***
参加者を認識者・未認識者へ分類する手順は実施しなかった。
***
朔。
止まる。
***
「俺がいなかったことを」
フェル。
「書きますか」
「はい」
***
前回参加者のうち黒川朔およびマレア・ソンは、今回は入路へ入っていない。ファナ・リトに代わる同行者はなく、その他の同行構成も前回と異なる。
***
「朔さんだけ」
フェル。
「抜けたように書かない?」
「はい」
***
前回。
九人。
***
今回。
七人。
***
違う者。
複数。
***
違う荷。
違う時間。
違う砂。
違う目的。
***
朔一人の。
有無だけを。
取り出さない。
***
中央。
速報案。
***
黒川朔不在時、残光一を確認。
***
「使いません」
フェルが言った。
***
グラド。
彼を見る。
「中央向けの要点です」
「条件が」
「明確です」
「明確すぎます」
***
「なぜ」
「私も不在者の一人でした」
マレア。
「ファナさんも」
「前回の九人から」
フェル。
「二人だけではありません」
***
「しかし」
「黒川朔さんを候補とする仮説に合わせた見出しです」
***
フェル。
自分で。
書き直す。
***
前回と異なる同行構成下で、円形様小室に残光一を確認。
***
次。
***
人の入室を行わず、小石様物の移動に伴う発光変化を確認。
***
「伴う」
セオ。
「因果では」
「同じ時間に起きた変化として」
「はい」
***
さらに。
***
未認識参加者候補を特定する試験は実施せず。
***
「中央が」
グラド。
「不十分と判断する可能性」
「はい」
フェル。
「ですが。私が見たことです」
***
ユイ。
「フェルさん」
「はい」
「中央の人?」
「はい」
「今も?」
「はい」
***
「でも」
「中央の紙を。そのまま書かなかった」
「はい」
「中央じゃなくなった?」
***
フェル。
少し考える。
「なっていません」
***
「じゃあ」
「中央へ戻って。現場で見たことを伝えます」
***
「怒られる?」
「可能性があります」
「行く?」
「戻ります」
***
「どうして」
「中央が現場を見ていないことを。現場だけの不満にしないためです」
***
午後。
中央への報告。
***
残光。
一。
***
小石様物。
一。
***
人。
入室。
零。
***
発光変化。
あり。
***
発光消失。
あり。
***
人数。
七。
***
帰還。
七。
***
「また」
グラド。
「数字が並ぶ」
***
「はい」
朔。
***
「一つの光」
「はい」
「一つの石」
「はい」
「同じ一?」
「分かりません」
***
「でも」
「関係する可能性があります」
「人では」
「人を示す根拠は弱くなりました」
「消えた?」
「なくなってはいません」
***
中央仮説。
未認識者。
***
別の仮説。
小石。
位置。
重さ。
通過。
返路。
***
光が。
何を。
示すか。
***
まだ。
分からない。
***
「石を」
ガル・メナ。
報告を聞いている。
「持って帰ればよかった」
***
「なぜ」
朔。
「調べられる」
「何を」
「光る石か」
「石自体は光っていません」
「道の外で」
「何が起きるか分かりません」
「だから」
「持ち出さないと決めました」
***
「機会」
「失った可能性があります」
「また」
「はい」
***
ガル。
朔の膝を見る。
「行かなかった」
「はい」
「怖かった?」
「行きたかったです」
「でも」
「身体状態で止められました」
***
「お前がいなくても」
「光はありました」
「じゃあ」
「俺が光らなかった一人ではないと。確認されたわけではありません」
***
「まだ言う?」
「はい」
***
「石やったかもしれん」
「はい」
「人やないかもしれん」
「はい」
「お前でもないかもしれん」
「はい」
***
「何が分かった」
***
朔。
考える。
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「人を一人ずつ分けなくても。光は変わりました」
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「それだけ」
「はい」
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ガル。
息を吐く。
「少ない」
「はい」
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それでも。
今回は。
その少なさで。
誰か一人を。
未認識者にせずに済んだ。
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夜。
朔。
膝。
冷やす。
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机。
第一踏査記録。
再確認記録。
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九人。
八つ。
一つ。
九人。
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七人。
一つ。
石。
零。
七人。
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数字。
また。
物語を。
作れる。
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九人のうち。
一人が。
石だった。
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石が。
九人目を。
代わりに数えた。
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光らなかった者の。
名前が。
石へ入った。
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道が。
一人を。
置いていった。
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どれも。
書ける。
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どれも。
確認していない。
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朔は。
自分の紙へ書く。
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前回、九名が入室した時に八窪が発光し、全員退出後に一窪が残った。
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今回、七名が小室入口へ到達し、誰も入室しない状態で一窪の残光を確認した。
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小石様物を動かした時、残光が弱まり、入口縁へ近づけた時に消えたと七名が報告した。
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次。
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俺は今回の変化を直接見ていない。
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それも。
残す。
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次。
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俺が不在だったことを、俺が前回の未認識者である証拠にも、そうでない証拠にも使用しない。
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次。
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小石様物が発光と関係する可能性はある。小石様物が一人として数えられたとは確認していない。
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最後。
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一つ残った光を、一人残った人へ変えなかった。
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筆。
止まる。
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道に。
残ったもの。
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小石。
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誰かの足跡に。
見えた跡。
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左の道から。
聞こえた音。
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返路。
と書かれた道。
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分からないもの。
多い。
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朔は。
そのどれも。
見ていない。
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見ていない者が。
見た者の報告を。
自分の知覚にはしない。
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同時に。
見ていなかったから。
起きなかったことにも。
しない。
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七人が。
見て。
帰った。
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朔は。
入口で。
待った。
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行かなかった身体も。
遠征の外へ。
消えたわけではない。
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膝の痛み。
参加を止めた。
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その不在が。
新しい答えに使われそうになった。
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だから。
行かなかった理由と。
行かなかった時に。
何が起きたかを。
分けて残した。
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円形様小室で。
最後まで残った一つは。
消えた。
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だが。
消えたから。
意味が分かったわけではない。
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ただ。
少なくとも。
人を一人ずつ。
光の前へ立たせなくても。
光は。
変わった。
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その事実だけが。
誰か一人へ。
未認識という名を。
付けるより先に。
入口へ。
帰ってきた。




