第九章 名前の先の道 ② 九つの歩幅
石枠を越えると。
市場の音が。
急に。
遠くなった。
***
消えた。
わけではない。
***
紙を重ねる音。
荷車。
人の声。
***
薄い壁を。
何枚も挟んだように。
残っている。
***
「停止」
リオ。
***
一歩目。
九人。
止まる。
***
すぐに。
進まない。
***
「足元」
ガド・ネン。
***
石。
白灰色。
***
乾いている。
***
砂。
薄い。
***
先。
幅。
二人は。
並べない。
***
高さ。
イサラ。
立てる。
***
リオも。
***
朔。
頭上。
広い。
***
「匂い」
マレア。
「湿り」
イサラ。
「石」
ガド。
「俺には」
朔。
「少し。焦げた匂い」
***
「私には」
エリオ。
「ありません」
***
知覚。
最初から。
同じではない。
***
「入口」
ノエ・ハーラ。
後ろを見る。
***
石枠。
見える。
***
ユイ。
その向こう。
***
ファナ。
ネラ。
ルカ。
ミエル。
ミウ。
***
まだ。
人の形。
分かる。
***
「人数」
ノエ。
「一」
リオ。
「二」
ガド。
「三」
イサラ。
「四」
朔。
「五」
マレア。
「六」
ノエ。
「七」
セオ。
「八」
フェル。
「九」
エリオ。
***
「位置」
ノエ。
「前。リオさん。ガドさん」
「はい」
「中央前。イサラさん」
「はい」
「中央。朔さん。マレアさん」
「はい」
「中央後。私。セオさん。フェルさん」
「はい」
「最後。エリオさん」
「はい」
***
エリオの光。
床。
細い。
***
入口から。
九人の足元へ。
***
「この線を」
エリオ。
「道そのものとは扱わないでください」
「自分で言う?」
フェル・ナード。
「はい」
「あなたが置いたのに」
「私が。見えている床へ置いた光です」
「先が曲がったら」
「曲がって見える場所へ置き直します」
「道が途切れたら」
「光が先へ届いても。床がある証明にはなりません」
***
「第二位の光なら」
フェル。
「安全だと。中央は」
「安全に見えることと」
エリオ。
「安全を確認したことは違います」
***
「記録」
セオ・ラグナ。
「はい」
***
第一歩。
時刻。
***
入口。
視認可能。
***
光。
退路表示のみ。
***
前進。
***
リオ。
一歩。
***
ガド。
測り棒。
床。
***
石。
硬い。
***
二歩。
***
イサラ。
***
朔。
***
全員。
前へ。
***
歩く速さ。
最初。
リオに合わせる。
***
五十歩。
行かないうちに。
「止めてください」
マレア。
***
朔。
呼吸。
少し。
速い。
***
「苦しい?」
「いいえ」
「足」
「問題ありません」
「速度」
「少し速いです」
***
リオ。
後ろを見る。
「言え」
「はい」
「今まで」
「ついていけると思いました」
***
「思ったことと」
マレア。
「今の呼吸は違います」
「はい」
***
「前」
イサラ。
「速度を落とします」
***
リオ。
一歩。
短くする。
***
ガド。
合わせる。
***
九人。
朔の歩幅へ。
近づく。
***
「俺が」
朔。
「遅くしています」
「はい」
リオ。
***
朔。
顔を上げる。
***
「否定しない?」
「遅い身体に合わせとる」
「はい」
「それが嫌なら。最初からお前を入れてへん」
***
「全員帰る」
イサラ。
「はい」
「一番速い者が。先へ着くことは達成条件ではありません」
***
「でも」
フェル。
「一番遅い者が。全員の距離を決める?」
***
「現在の編成では」
イサラ。
「はい」
「中央なら」
「朔さんを外す可能性があります」
「はい」
朔。
***
「それでも」
イサラ。
「朔さんの知覚と身体を含む条件で。私たちは参加を決めました」
***
「途中で」
フェル。
「さらに遅くなったら」
「距離を短くする」
「運ぶ?」
「本人と身体を確認します」
「任務は」
「帰還より後です」
***
速度。
決まる。
***
朔の名前ではなく。
朔の肺。
脚。
歩幅。
***
今。
ある身体。
***
最初の印。
***
入口から。
縄。
一つ分。
***
リオ。
壁。
見つける。
***
ひび。
なし。
***
ガド。
叩く。
***
中。
詰まっている。
***
「印」
ノエ。
***
石筆。
赤。
***
矢印。
入口。
***
「色だけ?」
フェル。
「使いません」
ノエ。
***
矢印の下。
横線。
一つ。
***
壁の端。
手で触れられる位置。
***
浅い刻み。
一つ。
***
「赤」
ノエ。
「入口側」
「白」
「進行側」
「暗くなったら」
「刻み」
「触れなかったら」
「縄」
***
短い縄。
壁の突起へ。
結ぶ。
***
入口側。
結び。
一つ。
***
進行側。
結び。
二つ。
***
「どれが本当の印」
フェル。
「全部」
リオ。
「一つ消えても。残るようにする」
***
「赤が」
朔。
「黒く見えたら」
「刻み」
「刻みが」
「触れんかったら縄」
「縄が」
「全員で。戻った距離と方向を確認する」
***
「完全では」
「ない」
リオ。
***
記録。
***
第一経路印。
設置者。
ノエ。
***
石確認。
ガド。
***
結索。
リオ。
***
時刻。
セオ。
***
全員。
視認。
触知。
***
「歩数」
フェル。
「記録しない?」
「します」
セオ。
「誰の」
「全員?」
***
入口から。
第一印。
***
リオ。
六十四歩。
***
ガド。
六十八。
***
イサラ。
七十一。
***
朔。
百十一。
***
マレア。
七十八。
***
ノエ。
八十二。
***
セオ。
八十。
***
フェル。
七十四。
***
エリオ。
七十六。
***
「同じ距離」
ユイの声。
もう。
聞こえない。
***
「九つの数字」
フェル。
「はい」
セオ。
「どれを距離にする」
「縄の長さ」
リオ。
「歩数は」
「身体と歩き方を記録する」
***
「朔さんだけ」
フェル。
「百を超えた」
「はい」
朔。
「二倍ではない」
「歩幅が違います」
***
「同じ道を」
イサラ。
「同じだけ歩いたとは。数字だけでは見えません」
***
九つの身体。
九つの歩幅。
***
距離。
一つ。
***
負担。
同じではない。
***
前進。
***
道。
少し。
右へ曲がる。
***
エリオの光。
まっすぐ。
壁へ。
***
「停止」
リオ。
***
白い線。
石壁へ。
続いている。
***
「道は」
フェル。
「右」
「はい」
エリオ。
「光は」
「私が。入口から直線に近い形で維持していたためです」
***
「壁を通る?」
「通りません」
***
エリオ。
光。
消す。
***
暗さ。
増える。
***
完全な闇。
ではない。
***
石。
どこからか。
白く。
見える。
***
「光がなくても」
朔。
「見えます」
「私も」
イサラ。
「はい」
ノエ。
「少し」
マレア。
「壁の輪郭のみ」
セオ。
「私には。床が暗い」
フェル。
「何も見えないわけではない」
***
「光を戻します」
エリオ。
***
今度。
曲がりへ沿う。
***
白い線。
右。
***
「今の光は」
エリオ。
「私が。道だと思う場所へ置き直したものです」
「道が右だから」
フェル。
「右へ置いた」
「はい」
「光が右を選んだのでは」
「ありません」
***
光。
役目を。
持たせない。
***
帰る方向を。
示す道具。
***
進むべき方向を。
決めるものではない。
***
曲がる。
***
入口。
見えなくなる。
***
「停止」
ノエ。
***
九人。
止まる。
***
「人数」
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
***
「入口」
朔。
「見えません」
「音」
セオ。
***
市場。
聞こえない。
***
紙。
荷車。
人。
***
全て。
なくなる。
***
代わり。
呼吸。
***
衣服。
***
靴。
石。
***
九人分。
***
「戻る確認」
イサラ。
***
進行。
止める。
***
全員。
向きを変えない。
***
「最後尾」
エリオ。
「第一印へ。戻る方向を確認します」
***
白い線。
曲がり。
先。
***
第一印。
見えない。
***
「縄」
リオ。
***
短い縄。
手。
***
後ろ側。
結び。
一つ。
***
入口。
***
「戻る方向」
「後ろ」
フェル。
「光も」
「後ろ」
「道は」
「後ろへ曲がる」
***
「確認」
ノエ。
***
向き。
戻す。
***
先へ。
***
第二印。
曲がり角。
***
赤。
入口方向。
***
白。
進行方向。
***
刻み。
***
縄。
***
時間。
***
「帰りに」
フェル。
「赤が進行方向に見えたら」
「全員で止まります」
ノエ。
「誰か一人だけ」
「知覚を記録します」
「多数が」
「同じでも。印を設置した記録と照合します」
***
「記録が間違っていたら」
「あります」
***
完全な帰路。
ない。
***
重ねた確認。
ある。
***
さらに。
奥。
***
床。
砂。
厚くなる。
***
ガド。
測り棒。
***
突く。
***
音。
鈍い。
***
次。
乾いた。
***
次。
ない。
***
棒。
沈む。
***
「停止」
***
砂。
下。
***
裂け目。
***
幅。
指三本。
***
先。
広がる。
***
砂に。
隠れている。
***
エリオの白い線。
裂け目の上を。
まっすぐ。
越えている。
***
「光は」
フェル。
「床があるように見える」
「はい」
エリオ。
「消します」
***
光。
消える。
***
裂け目。
見えにくくなる。
***
「必要」
朔。
「光は必要です」
「でも」
「床の確認には使わない」
***
エリオ。
白い線を。
裂け目の手前で。
止める。
***
先。
置かない。
***
「ここから先」
彼。
「私の光は。退路だけを示します」
***
ガド。
砂。
払う。
***
裂け目。
長い。
***
右壁。
細くなる。
***
左。
広い。
***
「越えられる場所」
リオ。
「右」
***
幅。
足一つ。
***
だが。
先の床。
同じ石か。
分からない。
***
「俺が」
朔。
「軽いです」
***
リオ。
振り返る。
「だから?」
「先へ。体重をかけて」
「試す?」
「はい」
***
「しない」
イサラ。
***
「でも」
「軽い身体が安全なら。重い身体は渡れません」
「最初に」
「人を床の確認道具にしません」
***
「俺は」
「自分で望んだ?」
「はい」
「断りにくい理由」
***
朔。
止まる。
***
知覚。
必要。
***
子どもの身体。
軽い。
***
足手まといに。
なりたくない。
***
「あります」
「何ですか」
「遅くしている分。役に立ちたいです」
***
「では」
イサラ。
「その理由を持った状態で。床の試験には使いません」
***
朔。
口を閉じる。
***
「軽いことは」
ガド。
「確認方法に使える」
「人ではなく?」
「荷物」
***
水袋。
縄。
***
重さ。
朔の荷。
近い。
***
石。
加える。
***
先の床へ。
投げない。
***
縄で。
ゆっくり。
置く。
***
床。
沈まない。
***
次。
イサラの荷に近い。
重さ。
***
水。
石。
予備の縄。
***
置く。
***
音。
低い。
***
ひび。
なし。
***
「棒」
ガド。
先。
叩く。
***
右。
硬い。
***
中央。
空洞。
***
「通る場所」
リオ。
「右壁沿い。一人ずつ」
***
縄。
手前。
石突起。
***
先。
測り棒。
届かない。
***
「先の固定」
イサラ。
「最初に誰かが渡る必要があります」
***
「俺」
リオ。
「理由」
「前方経路を読む役目」
「中央から?」
「自分で決めた」
「断りにくい理由」
「ある」
「何」
「先頭やから。俺が行くべきやと思っとる」
***
「それでも」
「行く」
***
「身体」
マレア。
***
リオ。
呼吸。
足。
手。
***
「問題なし」
***
「縄」
ノエ。
***
リオの腰。
巻かない。
***
引かれた時。
身体を折る可能性。
***
胸と。
腿。
二点。
***
短い縄。
***
イサラ。
ガド。
二人。
保持。
***
「落ちたら」
リオ。
「引き上げる?」
「裂け目の幅で。身体が止まる可能性があります」
マレア。
「頭から落ちないよう。二点で支えます」
「足元が崩れたら」
「すぐ後ろへ戻す」
***
「進む」
リオ。
***
右足。
壁際。
***
左。
裂け目を。
越える。
***
重さ。
先の石。
***
止まる。
***
「硬い」
***
次。
右。
***
壁。
手。
***
先へ。
***
全身。
越える。
***
「先」
リオ。
「石の突起あり」
***
縄。
結ぶ。
***
前後。
二点。
***
「一人ずつ」
イサラ。
***
ガド。
次。
***
石を見る者。
***
渡る。
***
先から。
裂け目。
確認。
***
「右壁側」
ガド。
「幅。足一つ半。二人同時は不可」
***
イサラ。
***
渡る。
***
剣。
鞘。
壁に当たらない位置。
***
朔。
次。
***
「俺が」
「はい」
マレア。
「怖いですか」
「少し」
「足」
「動きます」
「中止」
「しません」
***
朔の胸。
縄。
***
腿。
***
リオ。
先。
***
マレア。
後ろ。
***
「右足」
リオ。
「壁際」
***
朔。
置く。
***
石。
硬い。
***
「左」
***
越える。
***
砂。
少し。
滑る。
***
右足。
外。
***
身体。
裂け目側へ。
***
縄。
張る。
***
リオ。
引く。
***
マレア。
後ろから。
戻す。
***
朔の膝。
石。
***
止まる。
***
「動かないで」
マレア。
***
朔。
呼吸。
***
「痛み」
「右膝」
「強さ」
「少し」
「立てる?」
「はい」
「まだ」
「確認してから」
***
マレア。
裂け目。
越えない。
***
後ろから。
朔の足。
見る。
***
「出血なし」
「はい」
「膝」
「曲がります」
「足首」
「動きます」
***
「先へ」
リオ。
「俺が支える」
***
朔。
壁。
右手。
***
立つ。
***
リオ。
腕。
掴まない。
***
「触れていいか」
「はい」
***
前腕。
支える。
***
朔。
越える。
***
先。
座る。
***
「役に立った?」
リオ。
***
朔。
息。
止める。
***
「いいえ」
「違う」
***
「では」
「お前が滑ったから。砂が危ないと分かった」
「はい」
「それを。床を試した功績にはせん」
「はい」
「滑った身体を。失敗にもせん」
***
イサラ。
後ろ。
「残り。砂を払ってから渡ります」
***
ガド。
先から。
測り棒。
***
右壁側。
砂。
払う。
***
マレア。
渡る。
***
ノエ。
***
セオ。
***
フェル。
***
最後。
エリオ。
***
白い線。
いったん。
消す。
***
「退路灯」
フェル。
「置かない?」
「渡る間に。床と誤認される可能性があります」
***
エリオ。
渡る。
***
先。
全員。
***
裂け目の手前。
白い線。
再び。
置く。
***
越えた先へは。
置かない。
***
「人数」
ノエ。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
***
「膝」
マレア。
「歩けます」
朔。
「走れる?」
「分かりません」
「試さない」
「はい」
***
荷。
リオ。
朔の水袋。
受け取る。
***
「俺が」
「帰りまで」
「自分で」
「歩ける身体と。荷を持てる身体は別や」
***
朔。
荷を。
渡す。
***
軽くなる。
***
遅れた。
滑った。
荷を持てなくなった。
***
それを。
参加資格を失った。
とは。
まだ。
しない。
***
前進。
***
裂け目。
後ろ。
***
第三印。
***
赤。
入口。
***
白。
先。
***
刻み。
***
縄。
***
注意。
***
砂下裂け目。右壁側一人通行。
***
設置。
全員。
確認。
***
「帰り」
フェル。
「道が変わっていたら」
「別の方法を探す」
リオ。
「時間」
「帰還期限を過ぎる前に。引き返し判断を早める」
***
「今」
イサラ。
「予定より」
セオ。
「四分の一刻。遅れています」
「理由」
「速度調整。印。裂け目通過。朔さんの身体確認」
***
「遅れ」
フェル。
「朔さん」
***
「一部」
朔。
***
「全部では」
セオ。
「ありません」
***
イサラ。
「第一折返し期限を。変えません」
「到達距離」
「短くなります」
「任務」
「帰還条件を変えません」
***
時間。
名前を。
待たない。
***
道も。
待たない。
***
だが。
遅れた身体を。
置いて。
距離だけを。
取り戻さない。
***
さらに。
一縄。
***
道。
広がる。
***
小さな部屋。
***
円。
に近い。
***
壁。
九つ。
浅い窪み。
***
一つずつ。
人の掌ほど。
***
「触れない」
イサラ。
***
全員。
入口。
止まる。
***
「床」
ガド。
***
硬い。
***
中央。
丸い石。
***
踏まない。
***
「出口」
リオ。
***
正面。
一つ。
***
左。
細い。
一つ。
***
右。
壁。
閉じている。
***
「旧印」
ノエ。
***
正面。
上。
***
文字。
薄い。
***
返路
***
矢印。
正面。
奥。
***
「帰りが」
フェル。
「先?」
***
「誰にとっての返路か」
リオ。
「分からん」
***
「入口へ戻るなら」
ノエ。
「後ろです」
「古い道を使った者にとって」
セオ。
「正面が帰路だった可能性」
「文字が」
朔。
「今の俺たちへ向けている可能性」
「あります」
「では」
「それだけで進みません」
***
正面。
返路。
***
後ろ。
自分たちの印。
***
言葉。
道を。
決めない。
***
「九つ」
エリオ。
壁の窪みを見る。
***
光。
まだ。
ついていない。
***
「人数と」
フェル。
「同じ」
「はい」
セオ。
「以前から九つあった?」
「確認できません」
***
「入りますか」
イサラ。
***
「床」
ガド。
「中央を避ければ。外周は硬い」
「窪み」
「触れない」
「出口」
「正面と左。確認だけ」
***
「入る」
イサラ。
***
一人ずつ。
***
外周。
右。
***
中央石を。
踏まない。
***
リオ。
***
ガド。
***
イサラ。
***
朔。
***
マレア。
***
ノエ。
***
セオ。
***
フェル。
***
エリオ。
***
九人目。
入る。
***
壁。
***
窪み。
一つ。
白くなる。
***
次。
***
二つ。
***
三つ。
***
連続。
***
九つ。
ではない。
***
八つ。
***
白い光。
八。
***
「停止」
イサラ。
***
「人数」
ノエ。
***
一。
リオ。
***
二。
ガド。
***
三。
イサラ。
***
四。
朔。
***
五。
マレア。
***
六。
ノエ。
***
七。
セオ。
***
八。
フェル。
***
九。
エリオ。
***
「九人」
ノエ。
***
「壁」
フェル。
「八」
***
「何を数えているか」
朔。
「分かりません」
***
「一人」
フェル。
「認識されていない?」
***
「誰が」
中央の命令。
対象。
朔。
旧第二位。
勇者。
***
部屋。
人を。
分類する。
***
そう。
考えたくなる。
***
「今」
イサラ。
「誰が数えられていないかを調べません」
「なぜ」
フェル。
「人を一人ずつ。窪みの前へ置けば」
「何を数えるものか分かっていません」
「でも」
「人を。表示へ合わせて動かしません」
***
「位置の影響」
ガド。
「あるかもしれん」
「確認」
「荷物でできる?」
「人が入って光った」
「それも未確認」
***
「全員」
マレア。
「外へ出る?」
「はい」
イサラ。
***
一人ずつ。
入った入口へ。
***
戻る。
***
エリオ。
一人目。
出る。
***
光。
八。
***
フェル。
出る。
***
七。
***
セオ。
***
六。
***
「減る」
フェル。
「人数に」
「近い」
朔。
***
全員。
外。
***
光。
消える。
***
「もう一度」
フェル。
「同じ順で」
***
「目的」
イサラ。
「人数との関係確認」
「必要?」
朔。
***
第一踏査。
経路。
身体。
退路。
***
部屋の表示。
帰路へ。
関係する可能性。
***
「一度だけ」
イサラ。
「順を変えます。全員の同意を確認します」
***
一人ずつ。
***
望む。
望まない。
***
全員。
望む。
***
「理由」
マレア。
「帰還人数の表示に使われる可能性を確認したい」
イサラ。
***
順。
***
エリオ。
最初。
***
フェル。
***
セオ。
***
ノエ。
***
マレア。
***
朔。
***
イサラ。
***
ガド。
***
リオ。
***
九人。
***
光。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
***
八で。
止まる。
***
「最後のリオさんが」
フェル。
「数えられていない?」
「最初の時は」
ノエ。
「最後はエリオさんでした」
「では」
「最後の者ではない」
***
「誰か一人」
「同じ人が。毎回数えられていない可能性」
フェル。
「あります」
朔。
「でも。誰かは決められません」
***
「一人ずつ外へ」
ガド。
「抜ければ」
***
「しません」
イサラ。
***
「なぜ」
「九人を。認識された八人と。認識されない一人へ分ける試験になります」
「帰るために」
「今。必要なことは」
イサラ。
「壁が八と示しても。九人いると自分たちで確認できることです」
***
「表示を」
フェル。
「使わない?」
「帰還人数には使いません」
***
「壊れてるだけ?」
「可能性があります」
「八人用の部屋」
「可能性があります」
「荷物を数えた」
「可能性があります」
「九人のうち一人が」
「今は。その先を作りません」
***
光。
八。
***
九人。
呼吸。
ある。
***
九人。
足。
床。
***
九人。
自分の名前。
答えられる。
***
「確認」
ノエ。
***
「リオ」
「おる」
「ガド」
「はい」
「イサラ」
「はい」
「サク」
「はい」
「マレア」
「はい」
「ノエ」
「はい」
「セオ」
「はい」
「フェル」
「はい」
「エリオ」
「はい」
***
「現在地」
ノエ。
「旧搬入口先。円形様小室」
***
「入った人数」
「九」
***
「壁の光」
「八」
***
「帰還予定」
フェル。
「九」
***
「予定では」
イサラ。
「なく」
***
少し。
止まる。
***
「達成条件」
「九人で帰る」
***
「表示が」
フェル。
「八のままでも」
「はい」
***
記録。
***
九名入室時、九窪のうち八窪が白色発光。入室順変更後も八窪発光。
***
発光が人数、個人認識、荷物、位置、経路状態その他の何を示すか未確認。
***
当該発光を参加者数、帰還予定数、本人性の判定に使用しない。
***
参加者九名は、互いの身体、呼びかけへの返答、現在地を確認。
***
「次」
リオ。
「時間」
セオ。
「第一折返し期限まで。半刻を下回りました」
***
「正面」
返路。
***
「左」
細い道。
***
「進む?」
フェル。
***
イサラ。
朔を見る。
次。
全員。
***
「第一踏査の目的」
「経路と退路」
ノエ。
「帰還期限」
「変えない」
「朔さんの膝」
マレア。
「歩行可能。痛み軽度。悪化時は中止」
「裂け目」
「帰路の危険」
ガド。
「時間」
「短い」
セオ。
***
「正面の入口だけ」
リオ。
「外から確認する」
「入る?」
「入らん」
「左」
「今日は見ない」
***
「賛成」
イサラ。
***
正面。
***
返路
***
リオ。
入口。
手前。
***
風。
ない。
***
床。
下がっている。
***
奥。
見えない。
***
「音」
ガド。
小石。
転がす。
***
石。
正面へ。
***
落ちる。
***
音。
一度。
***
遠い。
***
次。
横。
***
返るように。
同じ小石が。
部屋へ。
転がってくる。
***
全員。
見る。
***
投げていない。
***
同じ石か。
確認できない。
***
大きさ。
似ている。
***
「触れない」
イサラ。
***
小石。
部屋の中央。
***
丸い石の前。
止まる。
***
壁。
八つの光。
***
一つ。
消える。
***
七。
***
「退出」
イサラ。
***
「人影なし」
ノエ。
「音声なし」
セオ。
「黒色化」
エリオ。
「なし」
「理由」
フェル。
「表示変化。戻った石。折返し期限」
***
「はい」
***
九人。
入った入口へ。
***
戻る。
***
壁。
七。
***
六。
***
五。
***
減る。
***
最後。
全員。
部屋の外。
***
光。
一つ。
残る。
***
「一」
フェル。
***
「誰かが」
「残っているとは決めません」
朔。
***
「でも」
「人数を示すと確認していません」
***
「人数」
ノエ。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
***
「全員」
イサラ。
「帰路へ」
***
正面。
返路
***
使わない。
***
自分たちが。
来た道。
***
赤い印。
刻み。
縄。
***
後ろ。
***
九つの身体。
戻る。
***
円形の部屋。
遠ざかる。
***
最後。
エリオ。
振り返らない。
***
「光」
フェル。
「まだ一つ?」
「見ません」
エリオ。
***
「なぜ」
「退出中です」
***
第一印。
ではない。
***
第三印。
裂け目。
***
赤。
入口方向。
***
刻み。
一つ。
***
縄。
結び。
一つ。
***
「一致」
ノエ。
***
裂け目。
帰り。
***
一人ずつ。
***
朔。
今度。
砂。
払われている。
***
右壁。
***
縄。
***
渡る。
***
滑らない。
***
「膝」
マレア。
「少し痛い」
「悪化」
「していません」
***
九人。
越える。
***
光。
裂け目の先。
置かない。
***
曲がり。
***
第二印。
***
赤。
今。
進む方向。
***
「赤が」
フェル。
「帰る方にある」
「設置記録と一致」
セオ。
***
曲がる。
***
入口。
まだ。
見えない。
***
第一印。
***
赤。
***
刻み。
***
縄。
***
全て。
一致。
***
市場の音。
少し。
戻る。
***
紙。
荷車。
声。
***
「人数」
ノエ。
***
一。
二。
三。
四。
五。
六。
七。
八。
九。
***
石枠。
見える。
***
その向こう。
ユイ。
***
立っている。
***
「帰還確認」
ノエ。
***
一人ずつ。
石枠。
越える。
***
リオ。
***
ガド。
***
イサラ。
***
朔。
***
マレア。
***
ノエ。
***
セオ。
***
フェル。
***
エリオ。
***
九。
***
「全員」
ノエ。
***
ユイ。
最初。
リオを見る。
***
「名前」
「リオ」
「どこにいた」
「旧搬入口の先。円い部屋まで」
「何をした」
「道を見た。縄を結んだ。朔を裂け目で支えた」
***
次。
ガド。
***
「名前」
「ガド・ネン」
「何をした」
「床と石を見た。裂け目を見つけた。円い部屋の正面へ小石を転がした」
***
「小石」
「戻ったように見えた」
「同じ?」
「確認してへん」
***
イサラ。
***
「名前」
「イサラ・ベルン」
「何をした」
「前進と退出を決めた。剣は抜いていない」
***
朔。
***
「名前」
「サク」
「ほかの名前」
「黒川朔」
「どこ」
「旧搬入口の先。円形に近い小室まで」
「何をした」
「歩いた。裂け目で滑った。音と表示を見た。名前は呼んでいない」
***
「持って帰ったもの」
ユイ。
***
朔。
止まる。
***
「右膝の痛み」
「うん」
「八つの光」
「うん」
「七つになったこと」
「うん」
「返路と書かれた。別の道」
「うん」
「小石」
「戻ったように見えた」
***
「名前は」
「呼ばれませんでした」
***
ユイ。
頷く。
***
全員。
確認。
***
九つの名前。
***
九つの身体。
***
九つの行為。
***
壁の光は。
八だった。
***
最後には。
一つ。
残った。
***
それでも。
誰か一人を。
向こうへ。
置いてきたことには。
しない。
***
夕方。
第一踏査記録。
***
距離。
縄。
三つ分を。
少し超える。
***
歩数。
九種類。
***
裂け目。
一。
***
旧経路印。
返路。
一。
***
分岐。
二。
***
円形様小室。
一。
***
窪み。
九。
***
最大発光。
八。
***
退出後残光。
一。
***
参加者。
九。
***
帰還者。
九。
***
「数字」
フェル。
「並べると」
***
九。
八。
一。
九。
***
「意味があるように見える」
朔。
「はい」
***
「八人が帰り」
フェル。
「一人が残る」
***
部屋。
静か。
***
「そういう物語を」
セオ。
「作れます」
***
「でも」
フェル。
「九人帰った」
「はい」
***
「なら」
「表示の意味が分からないまま。帰還者の数へ使いません」
***
フェル。
自分の紙へ書く。
***
私は、九窪のうち八窪が光った時、一名が認識されていない可能性を考えた。
***
次。
***
退出後に一窪が残った時、一名が部屋に残った可能性を考えた。
***
次。
***
実際には、参加者九名の身体と返答を確認し、九名が入口へ帰還した。
***
「中央へ」
朔。
「持って帰りますか」
「はい」
***
「八の意味を」
「分からないと」
「一が」
「残った理由も」
***
「フェルさんが」
ユイ。
「考えたことも?」
「はい」
***
「間違い?」
フェル。
「まだ分かりません」
ユイ。
***
フェル。
少し。
笑う。
「そうですね」
***
朔。
自分の紙。
***
同じ距離を、九人が異なる歩数で進んだ。
***
俺の歩数が最も多く、呼吸に合わせて全体の速度を落とした。
***
裂け目では、軽い身体を理由に自分が先に渡ることを申し出た。役に立ちたいという理由が含まれていた。採用されなかった。
***
荷物を用いた床確認後、リオさんが自分の理由で先に渡った。俺は渡る途中で滑り、縄と二人の支えで止まった。
***
次。
***
円形様小室では、九名入室時に八窪が発光した。
誰が数えられていないかを調べるために、人を一人ずつ表示へ合わせる試験は行わなかった。
***
次。
***
退出後、一窪の光が残った。
表示を人数として扱わず、互いの身体、名前、現在地を確認した。
***
最後。
***
九人で入り、九人で帰った。
それは壁が示した数ではない。
入口と道の途中と帰還後に、互いを一人ずつ確認した数である。
***
筆。
止まる。
***
道は。
九人を。
同じ歩幅にはしなかった。
***
同じだけ歩いても。
息。
膝。
荷。
恐れ。
違った。
***
壁は。
九人を。
九つの光にはしなかった。
***
だから。
光らなかった一人を。
探さなかった。
***
光った八人を。
選ばれた者にも。
しなかった。
***
残った一つを。
置いてきた誰かの名にも。
しなかった。
***
九人は。
互いの名前を。
呼んだ。
***
誰が答えたか。
見た。
***
身体。
数えた。
***
行ったこと。
聞いた。
***
古い道の数より。
自分たちの確認を。
先にした。
***
壁が。
八と示しても。
***
帰ってきた者を。
九人目ではない誰かへ。
しないために。




