↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
112/150

第九章 名前の先の道 ② 九つの歩幅


 石枠を越えると。


 市場の音が。


 急に。


 遠くなった。


***


 消えた。


 わけではない。


***


 紙を重ねる音。


 荷車。


 人の声。


***


 薄い壁を。


 何枚も挟んだように。


 残っている。


***


「停止」


 リオ。


***


 一歩目。


 九人。


 止まる。


***


 すぐに。


 進まない。


***


「足元」


 ガド・ネン。


***


 石。


 白灰色。


***


 乾いている。


***


 砂。


 薄い。


***


 先。


 幅。


 二人は。


 並べない。


***


 高さ。


 イサラ。


 立てる。


***


 リオも。


***


 朔。


 頭上。


 広い。


***


「匂い」


 マレア。


「湿り」


 イサラ。


「石」


 ガド。


「俺には」


 朔。


「少し。焦げた匂い」


***


「私には」


 エリオ。


「ありません」


***


 知覚。


 最初から。


 同じではない。


***


「入口」


 ノエ・ハーラ。


 後ろを見る。


***


 石枠。


 見える。


***


 ユイ。


 その向こう。


***


 ファナ。


 ネラ。


 ルカ。


 ミエル。


 ミウ。


***


 まだ。


 人の形。


 分かる。


***


「人数」


 ノエ。


「一」


 リオ。


「二」


 ガド。


「三」


 イサラ。


「四」


 朔。


「五」


 マレア。


「六」


 ノエ。


「七」


 セオ。


「八」


 フェル。


「九」


 エリオ。


***


「位置」


 ノエ。


「前。リオさん。ガドさん」


「はい」


「中央前。イサラさん」


「はい」


「中央。朔さん。マレアさん」


「はい」


「中央後。私。セオさん。フェルさん」


「はい」


「最後。エリオさん」


「はい」


***


 エリオの光。


 床。


 細い。


***


 入口から。


 九人の足元へ。


***


「この線を」


 エリオ。


「道そのものとは扱わないでください」


「自分で言う?」


 フェル・ナード。


「はい」


「あなたが置いたのに」


「私が。見えている床へ置いた光です」


「先が曲がったら」


「曲がって見える場所へ置き直します」


「道が途切れたら」


「光が先へ届いても。床がある証明にはなりません」


***


「第二位の光なら」


 フェル。


「安全だと。中央は」


「安全に見えることと」


 エリオ。


「安全を確認したことは違います」


***


「記録」


 セオ・ラグナ。


「はい」


***


 第一歩。


 時刻。


***


 入口。


 視認可能。


***


 光。


 退路表示のみ。


***


 前進。


***


 リオ。


 一歩。


***


 ガド。


 測り棒。


 床。


***


 石。


 硬い。


***


 二歩。


***


 イサラ。


***


 朔。


***


 全員。


 前へ。


***


 歩く速さ。


 最初。


 リオに合わせる。


***


 五十歩。


 行かないうちに。


「止めてください」


 マレア。


***


 朔。


 呼吸。


 少し。


 速い。


***


「苦しい?」


「いいえ」


「足」


「問題ありません」


「速度」


「少し速いです」


***


 リオ。


 後ろを見る。


「言え」


「はい」


「今まで」


「ついていけると思いました」


***


「思ったことと」


 マレア。


「今の呼吸は違います」


「はい」


***


「前」


 イサラ。


「速度を落とします」


***


 リオ。


 一歩。


 短くする。


***


 ガド。


 合わせる。


***


 九人。


 朔の歩幅へ。


 近づく。


***


「俺が」


 朔。


「遅くしています」


「はい」


 リオ。


***


 朔。


 顔を上げる。


***


「否定しない?」


「遅い身体に合わせとる」


「はい」


「それが嫌なら。最初からお前を入れてへん」


***


「全員帰る」


 イサラ。


「はい」


「一番速い者が。先へ着くことは達成条件ではありません」


***


「でも」


 フェル。


「一番遅い者が。全員の距離を決める?」


***


「現在の編成では」


 イサラ。


「はい」


「中央なら」


「朔さんを外す可能性があります」


「はい」


 朔。


***


「それでも」


 イサラ。


「朔さんの知覚と身体を含む条件で。私たちは参加を決めました」


***


「途中で」


 フェル。


「さらに遅くなったら」


「距離を短くする」


「運ぶ?」


「本人と身体を確認します」


「任務は」


「帰還より後です」


***


 速度。


 決まる。


***


 朔の名前ではなく。


 朔の肺。


 脚。


 歩幅。


***


 今。


 ある身体。


***


 最初の印。


***


 入口から。


 縄。


 一つ分。


***


 リオ。


 壁。


 見つける。


***


 ひび。


 なし。


***


 ガド。


 叩く。


***


 中。


 詰まっている。


***


「印」


 ノエ。


***


 石筆。


 赤。


***


 矢印。


 入口。


***


「色だけ?」


 フェル。


「使いません」


 ノエ。


***


 矢印の下。


 横線。


 一つ。


***


 壁の端。


 手で触れられる位置。


***


 浅い刻み。


 一つ。


***


「赤」


 ノエ。


「入口側」


「白」


「進行側」


「暗くなったら」


「刻み」


「触れなかったら」


「縄」


***


 短い縄。


 壁の突起へ。


 結ぶ。


***


 入口側。


 結び。


 一つ。


***


 進行側。


 結び。


 二つ。


***


「どれが本当の印」


 フェル。


「全部」


 リオ。


「一つ消えても。残るようにする」


***


「赤が」


 朔。


「黒く見えたら」


「刻み」


「刻みが」


「触れんかったら縄」


「縄が」


「全員で。戻った距離と方向を確認する」


***


「完全では」


「ない」


 リオ。


***


 記録。


***


 第一経路印。


 設置者。


 ノエ。


***


 石確認。


 ガド。


***


 結索。


 リオ。


***


 時刻。


 セオ。


***


 全員。


 視認。


 触知。


***


「歩数」


 フェル。


「記録しない?」


「します」


 セオ。


「誰の」


「全員?」


***


 入口から。


 第一印。


***


 リオ。


 六十四歩。


***


 ガド。


 六十八。


***


 イサラ。


 七十一。


***


 朔。


 百十一。


***


 マレア。


 七十八。


***


 ノエ。


 八十二。


***


 セオ。


 八十。


***


 フェル。


 七十四。


***


 エリオ。


 七十六。


***


「同じ距離」


 ユイの声。


 もう。


 聞こえない。


***


「九つの数字」


 フェル。


「はい」


 セオ。


「どれを距離にする」


「縄の長さ」


 リオ。


「歩数は」


「身体と歩き方を記録する」


***


「朔さんだけ」


 フェル。


「百を超えた」


「はい」


 朔。


「二倍ではない」


「歩幅が違います」


***


「同じ道を」


 イサラ。


「同じだけ歩いたとは。数字だけでは見えません」


***


 九つの身体。


 九つの歩幅。


***


 距離。


 一つ。


***


 負担。


 同じではない。


***


 前進。


***


 道。


 少し。


 右へ曲がる。


***


 エリオの光。


 まっすぐ。


 壁へ。


***


「停止」


 リオ。


***


 白い線。


 石壁へ。


 続いている。


***


「道は」


 フェル。


「右」


「はい」


 エリオ。


「光は」


「私が。入口から直線に近い形で維持していたためです」


***


「壁を通る?」


「通りません」


***


 エリオ。


 光。


 消す。


***


 暗さ。


 増える。


***


 完全な闇。


 ではない。


***


 石。


 どこからか。


 白く。


 見える。


***


「光がなくても」


 朔。


「見えます」


「私も」


 イサラ。


「はい」


 ノエ。


「少し」


 マレア。


「壁の輪郭のみ」


 セオ。


「私には。床が暗い」


 フェル。


「何も見えないわけではない」


***


「光を戻します」


 エリオ。


***


 今度。


 曲がりへ沿う。


***


 白い線。


 右。


***


「今の光は」


 エリオ。


「私が。道だと思う場所へ置き直したものです」


「道が右だから」


 フェル。


「右へ置いた」


「はい」


「光が右を選んだのでは」


「ありません」


***


 光。


 役目を。


 持たせない。


***


 帰る方向を。


 示す道具。


***


 進むべき方向を。


 決めるものではない。


***


 曲がる。


***


 入口。


 見えなくなる。


***


「停止」


 ノエ。


***


 九人。


 止まる。


***


「人数」


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


 九。


***


「入口」


 朔。


「見えません」


「音」


 セオ。


***


 市場。


 聞こえない。


***


 紙。


 荷車。


 人。


***


 全て。


 なくなる。


***


 代わり。


 呼吸。


***


 衣服。


***


 靴。


 石。


***


 九人分。


***


「戻る確認」


 イサラ。


***


 進行。


 止める。


***


 全員。


 向きを変えない。


***


「最後尾」


 エリオ。


「第一印へ。戻る方向を確認します」


***


 白い線。


 曲がり。


 先。


***


 第一印。


 見えない。


***


「縄」


 リオ。


***


 短い縄。


 手。


***


 後ろ側。


 結び。


 一つ。


***


 入口。


***


「戻る方向」


「後ろ」


 フェル。


「光も」


「後ろ」


「道は」


「後ろへ曲がる」


***


「確認」


 ノエ。


***


 向き。


 戻す。


***


 先へ。


***


 第二印。


 曲がり角。


***


 赤。


 入口方向。


***


 白。


 進行方向。


***


 刻み。


***


 縄。


***


 時間。


***


「帰りに」


 フェル。


「赤が進行方向に見えたら」


「全員で止まります」


 ノエ。


「誰か一人だけ」


「知覚を記録します」


「多数が」


「同じでも。印を設置した記録と照合します」


***


「記録が間違っていたら」


「あります」


***


 完全な帰路。


 ない。


***


 重ねた確認。


 ある。


***


 さらに。


 奥。


***


 床。


 砂。


 厚くなる。


***


 ガド。


 測り棒。


***


 突く。


***


 音。


 鈍い。


***


 次。


 乾いた。


***


 次。


 ない。


***


 棒。


 沈む。


***


「停止」


***


 砂。


 下。


***


 裂け目。


***


 幅。


 指三本。


***


 先。


 広がる。


***


 砂に。


 隠れている。


***


 エリオの白い線。


 裂け目の上を。


 まっすぐ。


 越えている。


***


「光は」


 フェル。


「床があるように見える」


「はい」


 エリオ。


「消します」


***


 光。


 消える。


***


 裂け目。


 見えにくくなる。


***


「必要」


 朔。


「光は必要です」


「でも」


「床の確認には使わない」


***


 エリオ。


 白い線を。


 裂け目の手前で。


 止める。


***


 先。


 置かない。


***


「ここから先」


 彼。


「私の光は。退路だけを示します」


***


 ガド。


 砂。


 払う。


***


 裂け目。


 長い。


***


 右壁。


 細くなる。


***


 左。


 広い。


***


「越えられる場所」


 リオ。


「右」


***


 幅。


 足一つ。


***


 だが。


 先の床。


 同じ石か。


 分からない。


***


「俺が」


 朔。


「軽いです」


***


 リオ。


 振り返る。


「だから?」


「先へ。体重をかけて」


「試す?」


「はい」


***


「しない」


 イサラ。


***


「でも」


「軽い身体が安全なら。重い身体は渡れません」


「最初に」


「人を床の確認道具にしません」


***


「俺は」


「自分で望んだ?」


「はい」


「断りにくい理由」


***


 朔。


 止まる。


***


 知覚。


 必要。


***


 子どもの身体。


 軽い。


***


 足手まといに。


 なりたくない。


***


「あります」


「何ですか」


「遅くしている分。役に立ちたいです」


***


「では」


 イサラ。


「その理由を持った状態で。床の試験には使いません」


***


 朔。


 口を閉じる。


***


「軽いことは」


 ガド。


「確認方法に使える」


「人ではなく?」


「荷物」


***


 水袋。


 縄。


***


 重さ。


 朔の荷。


 近い。


***


 石。


 加える。


***


 先の床へ。


 投げない。


***


 縄で。


 ゆっくり。


 置く。


***


 床。


 沈まない。


***


 次。


 イサラの荷に近い。


 重さ。


***


 水。


 石。


 予備の縄。


***


 置く。


***


 音。


 低い。


***


 ひび。


 なし。


***


「棒」


 ガド。


 先。


 叩く。


***


 右。


 硬い。


***


 中央。


 空洞。


***


「通る場所」


 リオ。


「右壁沿い。一人ずつ」


***


 縄。


 手前。


 石突起。


***


 先。


 測り棒。


 届かない。


***


「先の固定」


 イサラ。


「最初に誰かが渡る必要があります」


***


「俺」


 リオ。


「理由」


「前方経路を読む役目」


「中央から?」


「自分で決めた」


「断りにくい理由」


「ある」


「何」


「先頭やから。俺が行くべきやと思っとる」


***


「それでも」


「行く」


***


「身体」


 マレア。


***


 リオ。


 呼吸。


 足。


 手。


***


「問題なし」


***


「縄」


 ノエ。


***


 リオの腰。


 巻かない。


***


 引かれた時。


 身体を折る可能性。


***


 胸と。


 腿。


 二点。


***


 短い縄。


***


 イサラ。


 ガド。


 二人。


 保持。


***


「落ちたら」


 リオ。


「引き上げる?」


「裂け目の幅で。身体が止まる可能性があります」


 マレア。


「頭から落ちないよう。二点で支えます」


「足元が崩れたら」


「すぐ後ろへ戻す」


***


「進む」


 リオ。


***


 右足。


 壁際。


***


 左。


 裂け目を。


 越える。


***


 重さ。


 先の石。


***


 止まる。


***


「硬い」


***


 次。


 右。


***


 壁。


 手。


***


 先へ。


***


 全身。


 越える。


***


「先」


 リオ。


「石の突起あり」


***


 縄。


 結ぶ。


***


 前後。


 二点。


***


「一人ずつ」


 イサラ。


***


 ガド。


 次。


***


 石を見る者。


***


 渡る。


***


 先から。


 裂け目。


 確認。


***


「右壁側」


 ガド。


「幅。足一つ半。二人同時は不可」


***


 イサラ。


***


 渡る。


***


 剣。


 鞘。


 壁に当たらない位置。


***


 朔。


 次。


***


「俺が」


「はい」


 マレア。


「怖いですか」


「少し」


「足」


「動きます」


「中止」


「しません」


***


 朔の胸。


 縄。


***


 腿。


***


 リオ。


 先。


***


 マレア。


 後ろ。


***


「右足」


 リオ。


「壁際」


***


 朔。


 置く。


***


 石。


 硬い。


***


「左」


***


 越える。


***


 砂。


 少し。


 滑る。


***


 右足。


 外。


***


 身体。


 裂け目側へ。


***


 縄。


 張る。


***


 リオ。


 引く。


***


 マレア。


 後ろから。


 戻す。


***


 朔の膝。


 石。


***


 止まる。


***


「動かないで」


 マレア。


***


 朔。


 呼吸。


***


「痛み」


「右膝」


「強さ」


「少し」


「立てる?」


「はい」


「まだ」


「確認してから」


***


 マレア。


 裂け目。


 越えない。


***


 後ろから。


 朔の足。


 見る。


***


「出血なし」


「はい」


「膝」


「曲がります」


「足首」


「動きます」


***


「先へ」


 リオ。


「俺が支える」


***


 朔。


 壁。


 右手。


***


 立つ。


***


 リオ。


 腕。


 掴まない。


***


「触れていいか」


「はい」


***


 前腕。


 支える。


***


 朔。


 越える。


***


 先。


 座る。


***


「役に立った?」


 リオ。


***


 朔。


 息。


 止める。


***


「いいえ」


「違う」


***


「では」


「お前が滑ったから。砂が危ないと分かった」


「はい」


「それを。床を試した功績にはせん」


「はい」


「滑った身体を。失敗にもせん」


***


 イサラ。


 後ろ。


「残り。砂を払ってから渡ります」


***


 ガド。


 先から。


 測り棒。


***


 右壁側。


 砂。


 払う。


***


 マレア。


 渡る。


***


 ノエ。


***


 セオ。


***


 フェル。


***


 最後。


 エリオ。


***


 白い線。


 いったん。


 消す。


***


「退路灯」


 フェル。


「置かない?」


「渡る間に。床と誤認される可能性があります」


***


 エリオ。


 渡る。


***


 先。


 全員。


***


 裂け目の手前。


 白い線。


 再び。


 置く。


***


 越えた先へは。


 置かない。


***


「人数」


 ノエ。


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


 九。


***


「膝」


 マレア。


「歩けます」


 朔。


「走れる?」


「分かりません」


「試さない」


「はい」


***


 荷。


 リオ。


 朔の水袋。


 受け取る。


***


「俺が」


「帰りまで」


「自分で」


「歩ける身体と。荷を持てる身体は別や」


***


 朔。


 荷を。


 渡す。


***


 軽くなる。


***


 遅れた。


 滑った。


 荷を持てなくなった。


***


 それを。


 参加資格を失った。


 とは。


 まだ。


 しない。


***


 前進。


***


 裂け目。


 後ろ。


***


 第三印。


***


 赤。


 入口。


***


 白。


 先。


***


 刻み。


***


 縄。


***


 注意。


***


 砂下裂け目。右壁側一人通行。


***


 設置。


 全員。


 確認。


***


「帰り」


 フェル。


「道が変わっていたら」


「別の方法を探す」


 リオ。


「時間」


「帰還期限を過ぎる前に。引き返し判断を早める」


***


「今」


 イサラ。


「予定より」


 セオ。


「四分の一刻。遅れています」


「理由」


「速度調整。印。裂け目通過。朔さんの身体確認」


***


「遅れ」


 フェル。


「朔さん」


***


「一部」


 朔。


***


「全部では」


 セオ。


「ありません」


***


 イサラ。


「第一折返し期限を。変えません」


「到達距離」


「短くなります」


「任務」


「帰還条件を変えません」


***


 時間。


 名前を。


 待たない。


***


 道も。


 待たない。


***


 だが。


 遅れた身体を。


 置いて。


 距離だけを。


 取り戻さない。


***


 さらに。


 一縄。


***


 道。


 広がる。


***


 小さな部屋。


***


 円。


 に近い。


***


 壁。


 九つ。


 浅い窪み。


***


 一つずつ。


 人の掌ほど。


***


「触れない」


 イサラ。


***


 全員。


 入口。


 止まる。


***


「床」


 ガド。


***


 硬い。


***


 中央。


 丸い石。


***


 踏まない。


***


「出口」


 リオ。


***


 正面。


 一つ。


***


 左。


 細い。


 一つ。


***


 右。


 壁。


 閉じている。


***


「旧印」


 ノエ。


***


 正面。


 上。


***


 文字。


 薄い。


***


 返路


***


 矢印。


 正面。


 奥。


***


「帰りが」


 フェル。


「先?」


***


「誰にとっての返路か」


 リオ。


「分からん」


***


「入口へ戻るなら」


 ノエ。


「後ろです」


「古い道を使った者にとって」


 セオ。


「正面が帰路だった可能性」


「文字が」


 朔。


「今の俺たちへ向けている可能性」


「あります」


「では」


「それだけで進みません」


***


 正面。


 返路。


***


 後ろ。


 自分たちの印。


***


 言葉。


 道を。


 決めない。


***


「九つ」


 エリオ。


 壁の窪みを見る。


***


 光。


 まだ。


 ついていない。


***


「人数と」


 フェル。


「同じ」


「はい」


 セオ。


「以前から九つあった?」


「確認できません」


***


「入りますか」


 イサラ。


***


「床」


 ガド。


「中央を避ければ。外周は硬い」


「窪み」


「触れない」


「出口」


「正面と左。確認だけ」


***


「入る」


 イサラ。


***


 一人ずつ。


***


 外周。


 右。


***


 中央石を。


 踏まない。


***


 リオ。


***


 ガド。


***


 イサラ。


***


 朔。


***


 マレア。


***


 ノエ。


***


 セオ。


***


 フェル。


***


 エリオ。


***


 九人目。


 入る。


***


 壁。


***


 窪み。


 一つ。


 白くなる。


***


 次。


***


 二つ。


***


 三つ。


***


 連続。


***


 九つ。


 ではない。


***


 八つ。


***


 白い光。


 八。


***


「停止」


 イサラ。


***


「人数」


 ノエ。


***


 一。


 リオ。


***


 二。


 ガド。


***


 三。


 イサラ。


***


 四。


 朔。


***


 五。


 マレア。


***


 六。


 ノエ。


***


 七。


 セオ。


***


 八。


 フェル。


***


 九。


 エリオ。


***


「九人」


 ノエ。


***


「壁」


 フェル。


「八」


***


「何を数えているか」


 朔。


「分かりません」


***


「一人」


 フェル。


「認識されていない?」


***


「誰が」


 中央の命令。


 対象。


 朔。


 旧第二位。


 勇者。


***


 部屋。


 人を。


 分類する。


***


 そう。


 考えたくなる。


***


「今」


 イサラ。


「誰が数えられていないかを調べません」


「なぜ」


 フェル。


「人を一人ずつ。窪みの前へ置けば」


「何を数えるものか分かっていません」


「でも」


「人を。表示へ合わせて動かしません」


***


「位置の影響」


 ガド。


「あるかもしれん」


「確認」


「荷物でできる?」


「人が入って光った」


「それも未確認」


***


「全員」


 マレア。


「外へ出る?」


「はい」


 イサラ。


***


 一人ずつ。


 入った入口へ。


***


 戻る。


***


 エリオ。


 一人目。


 出る。


***


 光。


 八。


***


 フェル。


 出る。


***


 七。


***


 セオ。


***


 六。


***


「減る」


 フェル。


「人数に」


「近い」


 朔。


***


 全員。


 外。


***


 光。


 消える。


***


「もう一度」


 フェル。


「同じ順で」


***


「目的」


 イサラ。


「人数との関係確認」


「必要?」


 朔。


***


 第一踏査。


 経路。


 身体。


 退路。


***


 部屋の表示。


 帰路へ。


 関係する可能性。


***


「一度だけ」


 イサラ。


「順を変えます。全員の同意を確認します」


***


 一人ずつ。


***


 望む。


 望まない。


***


 全員。


 望む。


***


「理由」


 マレア。


「帰還人数の表示に使われる可能性を確認したい」


 イサラ。


***


 順。


***


 エリオ。


 最初。


***


 フェル。


***


 セオ。


***


 ノエ。


***


 マレア。


***


 朔。


***


 イサラ。


***


 ガド。


***


 リオ。


***


 九人。


***


 光。


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


***


 八で。


 止まる。


***


「最後のリオさんが」


 フェル。


「数えられていない?」


「最初の時は」


 ノエ。


「最後はエリオさんでした」


「では」


「最後の者ではない」


***


「誰か一人」


「同じ人が。毎回数えられていない可能性」


 フェル。


「あります」


 朔。


「でも。誰かは決められません」


***


「一人ずつ外へ」


 ガド。


「抜ければ」


***


「しません」


 イサラ。


***


「なぜ」


「九人を。認識された八人と。認識されない一人へ分ける試験になります」


「帰るために」


「今。必要なことは」


 イサラ。


「壁が八と示しても。九人いると自分たちで確認できることです」


***


「表示を」


 フェル。


「使わない?」


「帰還人数には使いません」


***


「壊れてるだけ?」


「可能性があります」


「八人用の部屋」


「可能性があります」


「荷物を数えた」


「可能性があります」


「九人のうち一人が」


「今は。その先を作りません」


***


 光。


 八。


***


 九人。


 呼吸。


 ある。


***


 九人。


 足。


 床。


***


 九人。


 自分の名前。


 答えられる。


***


「確認」


 ノエ。


***


「リオ」


「おる」


「ガド」


「はい」


「イサラ」


「はい」


「サク」


「はい」


「マレア」


「はい」


「ノエ」


「はい」


「セオ」


「はい」


「フェル」


「はい」


「エリオ」


「はい」


***


「現在地」


 ノエ。


「旧搬入口先。円形様小室」


***


「入った人数」


「九」


***


「壁の光」


「八」


***


「帰還予定」


 フェル。


「九」


***


「予定では」


 イサラ。


「なく」


***


 少し。


 止まる。


***


「達成条件」


「九人で帰る」


***


「表示が」


 フェル。


「八のままでも」


「はい」


***


 記録。


***


 九名入室時、九窪のうち八窪が白色発光。入室順変更後も八窪発光。


***


 発光が人数、個人認識、荷物、位置、経路状態その他の何を示すか未確認。


***


 当該発光を参加者数、帰還予定数、本人性の判定に使用しない。


***


 参加者九名は、互いの身体、呼びかけへの返答、現在地を確認。


***


「次」


 リオ。


「時間」


 セオ。


「第一折返し期限まで。半刻を下回りました」


***


「正面」


 返路。


***


「左」


 細い道。


***


「進む?」


 フェル。


***


 イサラ。


 朔を見る。


 次。


 全員。


***


「第一踏査の目的」


「経路と退路」


 ノエ。


「帰還期限」


「変えない」


「朔さんの膝」


 マレア。


「歩行可能。痛み軽度。悪化時は中止」


「裂け目」


「帰路の危険」


 ガド。


「時間」


「短い」


 セオ。


***


「正面の入口だけ」


 リオ。


「外から確認する」


「入る?」


「入らん」


「左」


「今日は見ない」


***


「賛成」


 イサラ。


***


 正面。


***


 返路


***


 リオ。


 入口。


 手前。


***


 風。


 ない。


***


 床。


 下がっている。


***


 奥。


 見えない。


***


「音」


 ガド。


 小石。


 転がす。


***


 石。


 正面へ。


***


 落ちる。


***


 音。


 一度。


***


 遠い。


***


 次。


 横。


***


 返るように。


 同じ小石が。


 部屋へ。


 転がってくる。


***


 全員。


 見る。


***


 投げていない。


***


 同じ石か。


 確認できない。


***


 大きさ。


 似ている。


***


「触れない」


 イサラ。


***


 小石。


 部屋の中央。


***


 丸い石の前。


 止まる。


***


 壁。


 八つの光。


***


 一つ。


 消える。


***


 七。


***


「退出」


 イサラ。


***


「人影なし」


 ノエ。


「音声なし」


 セオ。


「黒色化」


 エリオ。


「なし」


「理由」


 フェル。


「表示変化。戻った石。折返し期限」


***


「はい」


***


 九人。


 入った入口へ。


***


 戻る。


***


 壁。


 七。


***


 六。


***


 五。


***


 減る。


***


 最後。


 全員。


 部屋の外。


***


 光。


 一つ。


 残る。


***


「一」


 フェル。


***


「誰かが」


「残っているとは決めません」


 朔。


***


「でも」


「人数を示すと確認していません」


***


「人数」


 ノエ。


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


 九。


***


「全員」


 イサラ。


「帰路へ」


***


 正面。


 返路


***


 使わない。


***


 自分たちが。


 来た道。


***


 赤い印。


 刻み。


 縄。


***


 後ろ。


***


 九つの身体。


 戻る。


***


 円形の部屋。


 遠ざかる。


***


 最後。


 エリオ。


 振り返らない。


***


「光」


 フェル。


「まだ一つ?」


「見ません」


 エリオ。


***


「なぜ」


「退出中です」


***


 第一印。


 ではない。


***


 第三印。


 裂け目。


***


 赤。


 入口方向。


***


 刻み。


 一つ。


***


 縄。


 結び。


 一つ。


***


「一致」


 ノエ。


***


 裂け目。


 帰り。


***


 一人ずつ。


***


 朔。


 今度。


 砂。


 払われている。


***


 右壁。


***


 縄。


***


 渡る。


***


 滑らない。


***


「膝」


 マレア。


「少し痛い」


「悪化」


「していません」


***


 九人。


 越える。


***


 光。


 裂け目の先。


 置かない。


***


 曲がり。


***


 第二印。


***


 赤。


 今。


 進む方向。


***


「赤が」


 フェル。


「帰る方にある」


「設置記録と一致」


 セオ。


***


 曲がる。


***


 入口。


 まだ。


 見えない。


***


 第一印。


***


 赤。


***


 刻み。


***


 縄。


***


 全て。


 一致。


***


 市場の音。


 少し。


 戻る。


***


 紙。


 荷車。


 声。


***


「人数」


 ノエ。


***


 一。


 二。


 三。


 四。


 五。


 六。


 七。


 八。


 九。


***


 石枠。


 見える。


***


 その向こう。


 ユイ。


***


 立っている。


***


「帰還確認」


 ノエ。


***


 一人ずつ。


 石枠。


 越える。


***


 リオ。


***


 ガド。


***


 イサラ。


***


 朔。


***


 マレア。


***


 ノエ。


***


 セオ。


***


 フェル。


***


 エリオ。


***


 九。


***


「全員」


 ノエ。


***


 ユイ。


 最初。


 リオを見る。


***


「名前」


「リオ」


「どこにいた」


「旧搬入口の先。円い部屋まで」


「何をした」


「道を見た。縄を結んだ。朔を裂け目で支えた」


***


 次。


 ガド。


***


「名前」


「ガド・ネン」


「何をした」


「床と石を見た。裂け目を見つけた。円い部屋の正面へ小石を転がした」


***


「小石」


「戻ったように見えた」


「同じ?」


「確認してへん」


***


 イサラ。


***


「名前」


「イサラ・ベルン」


「何をした」


「前進と退出を決めた。剣は抜いていない」


***


 朔。


***


「名前」


「サク」


「ほかの名前」


「黒川朔」


「どこ」


「旧搬入口の先。円形に近い小室まで」


「何をした」


「歩いた。裂け目で滑った。音と表示を見た。名前は呼んでいない」


***


「持って帰ったもの」


 ユイ。


***


 朔。


 止まる。


***


「右膝の痛み」


「うん」


「八つの光」


「うん」


「七つになったこと」


「うん」


「返路と書かれた。別の道」


「うん」


「小石」


「戻ったように見えた」


***


「名前は」


「呼ばれませんでした」


***


 ユイ。


 頷く。


***


 全員。


 確認。


***


 九つの名前。


***


 九つの身体。


***


 九つの行為。


***


 壁の光は。


 八だった。


***


 最後には。


 一つ。


 残った。


***


 それでも。


 誰か一人を。


 向こうへ。


 置いてきたことには。


 しない。


***


 夕方。


 第一踏査記録。


***


 距離。


 縄。


 三つ分を。


 少し超える。


***


 歩数。


 九種類。


***


 裂け目。


 一。


***


 旧経路印。


 返路。


 一。


***


 分岐。


 二。


***


 円形様小室。


 一。


***


 窪み。


 九。


***


 最大発光。


 八。


***


 退出後残光。


 一。


***


 参加者。


 九。


***


 帰還者。


 九。


***


「数字」


 フェル。


「並べると」


***


 九。


 八。


 一。


 九。


***


「意味があるように見える」


 朔。


「はい」


***


「八人が帰り」


 フェル。


「一人が残る」


***


 部屋。


 静か。


***


「そういう物語を」


 セオ。


「作れます」


***


「でも」


 フェル。


「九人帰った」


「はい」


***


「なら」


「表示の意味が分からないまま。帰還者の数へ使いません」


***


 フェル。


 自分の紙へ書く。


***


 私は、九窪のうち八窪が光った時、一名が認識されていない可能性を考えた。


***


 次。


***


 退出後に一窪が残った時、一名が部屋に残った可能性を考えた。


***


 次。


***


 実際には、参加者九名の身体と返答を確認し、九名が入口へ帰還した。


***


「中央へ」


 朔。


「持って帰りますか」


「はい」


***


「八の意味を」


「分からないと」


「一が」


「残った理由も」


***


「フェルさんが」


 ユイ。


「考えたことも?」


「はい」


***


「間違い?」


 フェル。


「まだ分かりません」


 ユイ。


***


 フェル。


 少し。


 笑う。


「そうですね」


***


 朔。


 自分の紙。


***


 同じ距離を、九人が異なる歩数で進んだ。


***


 俺の歩数が最も多く、呼吸に合わせて全体の速度を落とした。


***


 裂け目では、軽い身体を理由に自分が先に渡ることを申し出た。役に立ちたいという理由が含まれていた。採用されなかった。


***


 荷物を用いた床確認後、リオさんが自分の理由で先に渡った。俺は渡る途中で滑り、縄と二人の支えで止まった。


***


 次。


***


 円形様小室では、九名入室時に八窪が発光した。


 誰が数えられていないかを調べるために、人を一人ずつ表示へ合わせる試験は行わなかった。


***


 次。


***


 退出後、一窪の光が残った。


 表示を人数として扱わず、互いの身体、名前、現在地を確認した。


***


 最後。


***


 九人で入り、九人で帰った。


 それは壁が示した数ではない。


 入口と道の途中と帰還後に、互いを一人ずつ確認した数である。


***


 筆。


 止まる。


***


 道は。


 九人を。


 同じ歩幅にはしなかった。


***


 同じだけ歩いても。


 息。


 膝。


 荷。


 恐れ。


 違った。


***


 壁は。


 九人を。


 九つの光にはしなかった。


***


 だから。


 光らなかった一人を。


 探さなかった。


***


 光った八人を。


 選ばれた者にも。


 しなかった。


***


 残った一つを。


 置いてきた誰かの名にも。


 しなかった。


***


 九人は。


 互いの名前を。


 呼んだ。


***


 誰が答えたか。


 見た。


***


 身体。


 数えた。


***


 行ったこと。


 聞いた。


***


 古い道の数より。


 自分たちの確認を。


 先にした。


***


 壁が。


 八と示しても。


***


 帰ってきた者を。


 九人目ではない誰かへ。


 しないために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。