第九章 名前の先の道 ① 持っていかないもの
中央塔は。
翌朝のうちに。
次の命令を出した。
***
旧搬入口返路・第一踏査
***
目的。
***
黒色人影様輪郭出現地点より先の経路存続を確認する。
旧経路と北方断絶路の接続可能性を調査する。
敵対呼称ヴァルハとの接触に備える。
***
「備える」
イサラ・ベルン。
紙を見る。
「接触するとは書いていない」
「はい」
グラド・ウェン。
「ですが」
朔。
「持っていく物に。呼名文があります」
***
命令書。
付属品。
***
中央塔印の呼名文。
白い封筒。
***
ハル・ミナトに関する記録抄本。
***
ヴァルハ関連警告記録。
***
黒川朔の知覚記録。
***
勇者候補順位表。
***
浄化用具。
***
「順位表は」
エリオ・レイス。
「経路確認に必要ですか」
「対象が」
グラド。
「勇者および順位へ反応した可能性があります」
「だから」
「反応条件として」
***
「俺たちが」
朔。
「呼ばなかった名へ。近い音を知覚したことはあります」
「はい」
「順位表を見せれば」
「反応が明確になる可能性」
「俺たちが。見せたい答えへ近づける可能性もあります」
***
「第一踏査では」
イサラ。
「持って行きません」
***
グラド。
「中央命令です」
「現地統括判断者は」
「あなたです」
「なら」
「拒否理由を記録してください」
***
イサラは。
命令書へ書く。
***
第一踏査の目的を経路存続、身体的危険、退路確認に限定する。
呼名文、順位表、個人名を用いる反応確認資料を携行しない。
***
「ハルさんの記録は」
朔。
「持って行きません」
「本人確認資料」
グラド。
「本人を確認する段階へ進むとは。決めていません」
***
「黒い人影が」
「現れる可能性はあります」
「ハルと名乗ったら」
「その場で。記録します」
「確認は」
「帰ってから」
***
「機会を逃す」
イサラ。
命令書を見たまま。
「はい」
朔。
***
「それでも」
「その場で答えを作るよりは」
***
イサラは。
すぐには頷かない。
***
「帰れるなら」
彼女。
「帰ってから確認できます」
「はい」
「帰れなければ」
「確認の手順も。残りません」
***
「では」
イサラ。
「帰ることを。第一の目的にする」
***
新しい一行。
***
第一踏査の達成条件は、参加者全員が帰還し、各自の知覚と経路状態を分けて報告できることである。
***
「道を見つけることでは」
グラド。
「ありません」
「道があっても」
イサラ。
「帰れなければ。次へ渡せません」
***
出発。
翌朝。
***
準備時間。
一日。
***
中央は。
短いと考えた。
***
イサラも。
長いとは考えなかった。
***
だが。
今ある時間。
一日。
***
その中で。
誰が行くか。
何を持つか。
どこまで行くか。
何が起きたら帰るか。
***
一つずつ。
決める。
***
旧紙市場。
奥の倉庫。
***
机。
三つ。
***
最初。
持っていく物
***
水。
一人二袋。
***
乾いたパン。
塩。
硬い果実。
***
灯り。
予備。
二つ。
***
縄。
三本。
***
短い縄。
一人一本。
***
石筆。
白。
赤。
***
木札。
番号ではない。
時刻。
方向。
行為。
***
添え木。
布。
止血帯。
針。
薬。
***
毛布。
二枚。
***
小さな鏡。
***
「鏡」
ユイが尋ねる。
「何に使う?」
「角の先を見る」
リオ。
「顔?」
「自分の顔を見るためにも使える」
***
「名前を忘れたら?」
ユイ。
「名前より先に」
マレア。
「目。呼吸。手足。周りの人を確認します」
***
鏡。
持っていく。
***
二つ目の机。
***
持っていかない物
***
中央の呼名文。
***
勇者候補順位表。
***
ヴァルハ宛ての手紙。
***
ハル・ミナト宛ての手紙。
***
トウマの手紙。
***
十九人の名前札。
***
木の小さな剣。
***
祈り札。
***
青い布。
***
「布も」
ユイ。
「はい」
朔。
「いつもはリオが持ってる」
「今日は。塔へ預けます」
***
リオ。
胸元。
青い布。
***
取り出す。
***
折り目。
古い。
***
ハル。
肩。
首。
腕。
***
どこへ巻いていたか。
トウマの記憶。
朔の記憶。
一致。
確認していない。
***
「俺が持っていることも」
リオ。
「刺激になるか」
「可能性があります」
朔。
「だが」
「普段から持っている」
「はい」
「今日だけ置くことも」
「俺たちが。意図して条件を変えたことになります」
***
「どっちや」
「分かりません」
***
リオは。
布を見る。
「なら」
「目的で決めます」
「今日は」
「ハルさんの確認ではありません」
***
「持っていかない」
リオ。
「はい」
***
「誰へ預ける」
ユイ。
***
朔。
すぐには答えない。
***
自分。
持ち主ではない。
***
リオ。
保管者。
***
トウマ。
渡した者。
***
ハル。
元の持ち主である可能性。
***
「ネラさんへ」
朔。
「一人へ?」
ユイ。
「保管責任者として」
***
「私も」
リオ。
「預けたことを記録する」
「はい」
***
青い布。
透明な箱へ。
入れない。
***
見えることが。
意味を作る可能性。
***
布袋。
閉じる。
***
外。
札。
***
青色布
通常保管者:リオ
本日、第一踏査へ携行せず
一時保管責任者:ネラ・ヴォス
***
所有者。
書かない。
***
「帰らなかったら」
ユイ。
部屋。
静かになる。
***
「リオが」
「はい」
「帰らなかったら。誰に返す?」
***
リオ。
布袋を見る。
「決めてへん」
「決める?」
「今?」
***
どの今。
***
誰も。
口にしない。
***
「帰らなかった場合の」
ネラ。
「次の保管者は必要です」
「所有者を」
リオ。
「決めるわけやない」
「はい」
***
「朔が帰って」
「俺が帰らなかった場合」
リオ。
「朔へ預ける」
***
「二人とも」
ユイ。
「帰らなかったら」
***
リオ。
少し。
笑おうとする。
やめる。
***
「ユイに」
とは。
言わない。
***
「ツヅリ村へ」
朔。
「ハルさんの関係者がいる場所へ返す?」
「誰に」
「ダンさん。トウマさん。リーネさん」
「三人」
「誰へ渡すかを。村で決めてもらう」
***
「村が」
ユイ。
「ハルの物って決める?」
「決めません」
朔。
「保管を引き継ぎます」
***
記録。
***
第一。
リオ帰還。
リオへ。
***
第二。
リオ未帰還。
朔帰還。
朔へ。
***
第三。
二人未帰還。
ツヅリ村へ保管移送。
受取人。
ダン、トウマ、リーネへ相談。
***
「私」
ユイ。
「入ってない」
「はい」
「どうして」
***
朔は。
保護のため。
とは言わない。
***
「ユイさんは」
朔。
「布とハルさんの関係を。直接確認できる情報を持っていますか」
「ない」
「保管を望みますか」
***
ユイ。
考える。
***
「望まない」
「なぜ」
「Y.I.の物も。私が持つって決められたら嫌だから」
***
「はい」
***
「でも」
ユイ。
「布がどこに行ったかは知りたい」
「記録を送ります」
***
ユイの名前。
保管者欄へ。
入れない。
***
通知を受ける者。
ユイ
***
三つ目の机。
***
持っていくか決めていない物
***
白い紙。
一枚。
***
何も。
書かれていない。
***
「何に使う」
グラド。
「現場で」
中央派遣員。
「対象へ意思を示す必要が生じた場合に」
***
「空の紙で」
朔。
「何を書くつもりですか」
「状況に応じて」
「誰が」
「現地統括」
***
イサラ。
紙を見る。
「私は。現場で新しい呼びかけを作りません」
「警告」
「同行者へは口頭で伝えます」
「対象へ」
「今日は伝えません」
***
「白紙は」
派遣員。
「選択肢を残します」
「選択肢が」
朔。
「現場で。目的を変えるために使われます」
***
「持たない?」
ユイ。
「記録用の白紙は必要です」
ネラ。
「対象への提示用と」
「分けます」
***
記録用。
紙。
複数。
***
外へ向けて。
見せない。
***
提示用白紙。
持っていかない。
***
中央派遣員。
反対。
記録。
***
現地参加者は、接触機会喪失の可能性を認めた上で、対象提示用の白紙を携行しないと判断。
***
「はい」
イサラ。
「その通りです」
***
次。
人。
***
同行希望。
十四名。
***
中央。
三名。
***
市場。
五名。
***
治療。
二名。
***
勇者候補関係。
二名。
***
朔。
リオ。
***
「十四人は多い」
ガド・ネン。
「道幅」
「二人並べる箇所が少ない」
ファナ。
「荷物」
「増える」
リオ。
「食料」
「増える」
マレア。
「怪我人」
「運ぶ人数は増える」
「では」
グラド。
「安全?」
「人が増えれば。助ける手も増えます」
マレア。
「同時に。戻す身体も増えます」
***
最小。
何人。
***
経路。
リオ。
***
構造。
ガド。
***
仮設。
ファナ。
***
治療。
マレア。
***
退路灯。
エリオ。
***
現地判断。
イサラ。
***
経路管理。
ノエ。
***
知覚報告。
朔。
***
記録。
セオ。
***
九人。
***
「また」
ノエ。
「前回と同じ人数」
「偶然です」
グラド。
「九人であることに意味は」
「付けません」
朔。
***
「中央派遣員」
「一人は必要です」
グラド。
「命令書の監督」
「セオさんでは」
「現地側です」
***
中央派遣員。
フェル・ナード
***
男。
三十代。
短い髪。
右手。
指輪。
なし。
***
前回。
朔と。
ほぼ同じ言葉を。
聞いた者ではない。
***
もう一人。
来るな。
待て。
名前。
と聞いた方。
***
「なぜ」
イサラ。
「フェルさん」
「前回」
グラド。
「完全な命令書順の知覚を報告していないため」
***
「偏りが少ない?」
「そうは決めません」
「では」
「前回の報告が。朔さんと近すぎない者を選びました」
***
「選ぶ理由に」
朔。
「知覚内容を使った」
「はい」
「能力順位に」
「しません」
***
フェル。
口を開く。
「私が」
「はい」
「聞こえ方が違ったから。選ばれた」
「はい」
「何も聞こえないことを期待されていますか」
「期待は」
グラド。
「あります」
***
「誰の」
「中央の」
***
「では」
フェル。
「私は。何も聞こえない者として参加する?」
「違います」
朔。
「何を聞いたかを。あなたの言葉で報告する人として」
***
「何も聞こえなかったら」
「そう書いてください」
「意味のある音を聞いたら」
「帰ります」
***
フェル。
少し。
眉を寄せる。
「私が原因になる?」
「決めません」
「中止の契機には」
「なります」
***
「責任」
「現地判断は。イサラさん」
朔。
「フェルさんは。知覚を報告します」
***
フェル。
自分の参加欄へ。
書く。
***
中央命令監督
線。
***
中央記録持参・知覚報告
***
「監督しない?」
グラド。
「中央命令との不一致は記録します」
フェル。
「現場へ命令する権限は」
「ない?」
「今回の通知では。ありません」
***
同行。
十人。
***
「多い」
リオ。
「一人減らす」
***
ファナ。
「私は」
自分から言う。
「入口に残る」
「仮設」
「昨日までに。第一折返し点までの板と支えを作る」
「先では」
「現場で木工が必要になるかもしれん」
「はい」
「でも」
ファナ。
「ガドが石を見る。リオが道を見る。私は入口と戻る側を保つ」
***
「帰る側」
ユイ。
「はい」
ファナ。
「中が崩れても。入口の棚と板を。開けられるようにする」
***
同行。
九人。
***
イサラ。
エリオ。
朔。
リオ。
マレア。
ノエ。
ガド。
セオ。
フェル。
***
「全員」
ネラ。
「自分で参加を望みますか」
***
一人ずつ。
***
イサラ。
「はい」
「理由」
「中止判断を。中央の役目ではなく。自分の判断として行うため」
***
エリオ。
「はい」
「理由」
「退路の光を。他者の肩書きではなく。自分で置くため」
***
朔。
「はい」
「理由」
「俺の知覚が経路と関係する可能性を。俺がいる状態で記録するため」
***
リオ。
「はい」
「理由」
「道を読む。それと。こいつらが目的を変えた時に言う」
***
マレア。
「はい」
「理由」
「中止する身体を。現場で見るため」
***
ノエ。
「はい」
「理由」
「入った人数と。出る人数を。私が確認するため」
***
ガド。
「はい」
「理由」
「石が壊れた時。人の声より先に。石を見るため」
***
セオ。
「はい」
「理由」
「現場の知覚と。後から作られる物語を。分けて残すため」
***
フェル。
少し。
遅れる。
「はい」
「理由」
「中央が。現場を見ずに書いた命令と。現場で起きたことの差を。中央へ持ち帰るため」
***
「誰かに」
ネラ。
「参加を断りにくい理由がありますか」
***
イサラ。
勇者候補第一位。
***
エリオ。
旧第二位。
***
朔。
関係記録当事者。
***
フェル。
中央派遣員。
***
全員。
ある。
***
「あります」
イサラ。
「勇者候補として。行くべきだと見られています」
「それでも」
「自分で行きます」
***
「俺も」
朔。
「行かなければ。逃げたと見られる可能性があります」
「それでも」
「見られ方ではなく。今の目的に必要だと考えて参加します」
***
「エリオさん」
「私は。断れば能力を隠したと判断される可能性があります」
「それでも」
「退路灯が必要だと。自分で考えました」
***
「フェルさん」
「中央の報告役を拒否すれば。命令違反になります」
「それでも」
「現場命令権を持たない条件で。参加します」
***
自由。
完全ではない。
***
圧力。
ない。
とは。
誰も言わない。
***
それでも。
どの圧力があるかを。
言葉へ置く。
***
参加した。
という一語から。
同意の全てを。
作らないために。
***
「私は」
ユイ。
「行かない?」
***
全員。
ユイを見る。
***
「ユイさんは」
グラド。
「同行者へ入っていません」
「誰が決めた?」
***
グラド。
止まる。
***
「俺たちです」
朔。
「私に聞いた?」
「今。聞きます」
***
「行きたいですか」
***
ユイ。
すぐには答えない。
***
白い紙。
Y.I.
***
黒い道。
殻。
祈り。
***
「見たい」
「何を」
「向こうに。私と関係するものがあるか」
「はい」
「でも」
「はい」
「私が行ったら。Y.I.を連れてきたって言われる」
***
「可能性があります」
「私が何か見たら」
「はい」
「Y.I.が答えたって言われる」
「可能性があります」
***
「それでも」
朔。
「行きたいですか」
***
ユイ。
長く。
考える。
***
「今は。行かない」
***
「どの今?」
フェル。
皮肉ではない。
***
ユイ。
彼を見る。
「第一踏査が。名前を呼ばないで。道と身体を確認する間」
***
「理由」
ネラ。
***
「私が行く理由が。道を見るためじゃないから」
***
部屋。
静か。
***
「次」
ユイ。
「私と関係するものを調べる時は。聞いて」
「はい」
朔。
***
「勝手に」
「連れて行きません」
「勝手に置いていかない?」
「はい」
***
「今回は」
「ユイさん自身が。行かないと決めました」
***
記録。
***
ユイは第一踏査への同行を希望せず。
ユイ。
「違う」
***
「何が」
「最初は見たいって言った」
***
書き直す。
***
ユイは、向こうに自身と関係するものがあるか見たいと述べた。
第一踏査の目的が経路・身体・退路確認であり、自身が同行すればY.I.様表記との反応確認へ意味が変わる可能性を考え、今回は同行しないと選択した。
***
今後、自身との関係を調査する場合は、同行または不同行について改めて本人へ確認する。
***
「うん」
ユイ。
***
「残って」
朔。
「何か。してほしいことはありますか」
***
「帰ってきた時」
ユイ。
「名前を聞く」
「誰の」
「みんな」
***
「名前だけ?」
「違う」
***
ユイ。
指。
一人ずつ。
***
「どこにいたか」
「はい」
「誰といたか」
「はい」
「何をしたか」
「はい」
「何を見たか」
「はい」
「見なかったか」
「はい」
***
「同じ名前でも」
「同じ人か。名前だけでは決めない」
「じゃあ」
「身体。持ち物。記憶。同行者。全部見る」
***
「私一人で?」
「ネラさん。ファナさん。ルカさん。ミエルさん」
***
帰還確認。
入口側。
***
ユイ。
質問補助。
***
ネラ。
記録。
***
ファナ。
身体と装備。
***
ルカ。
経路灯。
***
ミエル。
市場側からの確認。
***
「私」
ユイ。
「帰る人を決める?」
「決めません」
朔。
「では」
「帰ってきた者へ。今の名前と。今の位置を聞きます」
***
「サクが」
「自分の名を言えなかったら」
「身体から見る」
「はい」
***
「前と同じ?」
「似ています」
「同じ?」
「今回は。先に手順を決めます」
***
帰還時。
***
人数。
九。
***
一人ずつ。
呼吸。
歩行。
出血。
意識。
***
自分の名。
言える。
言えない。
言いたくない。
***
現在地。
***
同行者。
***
持ち物。
***
道の最後に。
覚えていること。
***
他者の報告と。
一致。
不一致。
***
「一致しなかったら」
ユイ。
「閉じ込める?」
「すぐには」
マレア。
「身体危険があれば治療」
「なければ」
「安全な場所で。確認を続けます」
***
「本人が帰ったって言ったら」
「その言葉を残します」
「ほかの人が違うって」
「その言葉も」
***
「誰が決める」
「一人では決めません」
***
夕方。
装備。
九組。
***
荷。
一人。
重さ。
確認。
***
朔。
子どもの身体。
***
水。
一袋。
乾いたパン。
半分。
短い縄。
石筆。
小さな鏡。
記録紙。
***
「少ない」
朔。
「身体に合わせる」
リオ。
「俺が持てます」
「帰りに」
「はい」
「お前を持つことになるかもしれん」
***
朔。
黙る。
***
「荷物を」
リオ。
「持てる今のうちに。軽くしとけ」
***
「どの今」
リオ。
自分で言う。
***
「出発前。お前が歩ける身体の状態の時や」
***
朔。
頷く。
***
強さ。
根性。
役目。
***
身体の重さを。
変えない。
***
持てる量。
歩ける距離。
食べる量。
寒さ。
負傷。
***
名前ではなく。
今の身体で。
決める。
***
「武器」
イサラ。
剣。
***
「持つ」
「抜く条件」
「同行者への直接攻撃。経路崩落を止める必要。退路確保」
「人影が」
「現れただけでは抜かない」
「勇者と」
「呼ばれても抜かない」
「ヴァルハと」
「名乗っても」
イサラ。
少し止まる。
「名乗っただけでは抜かない」
***
「勇者を殺すと」
「具体的に攻撃へ移れば」
「誰を」
「まず。近い身体を守る」
***
エリオ。
細い剣。
***
「持つ」
「浄化」
「行わない」
「黒色化」
「経路全体へ広がり。退路が失われる場合に。退路側だけへ使用を検討」
「対象へ」
「使わない」
***
「中央は」
フェル。
「対象浄化を命じています」
「第一踏査では」
エリオ。
「本人が対象だと確認できないものへ。浄化を行いません」
***
「違反」
「記録してください」
***
マレア。
武器。
なし。
***
短い刃。
包帯を切るため。
***
「人へ」
「向けません」
「襲われたら」
「逃げます」
「逃げられない」
「助けを求めます」
***
「戦わない?」
「戦える人と。同じ役目にしないでください」
***
ノエ。
鍵。
縄。
警笛。
***
「警笛」
「一回。停止」
「二回」
「退避」
「三回」
「入口側へ。救援要請」
***
「奥で音が変わったら」
「回数ではなくなる可能性があります」
「では」
「近い者が。目でも確認します」
***
警笛だけへ。
命令を。
預けない。
***
ガド。
槌。
測り棒。
***
「武器に」
「なる」
「使う?」
「石へ」
「人影へ」
「振らん」
***
セオ。
紙。
墨。
封筒。
***
「その場で」
「互いの知覚を共有しない」
「でも危険」
「危険行動は共有する」
「言葉」
「名前に聞こえた、は退出まで言わない」
「来るな、と聞こえたら」
「退出合図を出す?」
「意味を共有せず。中止合図だけ」
***
フェル。
中央命令書。
***
「持って行く?」
「命令書そのものは」
朔。
「参加者の知識へ影響します」
「もう知っています」
「はい」
「では」
「現場へ持ち込む必要はありません」
***
「中央へ」
フェル。
「命令書を所持していなかったと報告される」
「写し」
「入口へ保管」
***
フェル。
考える。
***
命令書。
ネラへ。
預ける。
***
中央命令書は参加者全員が内容を確認済み。第一踏査現場へ原本・写しを携行せず。
***
「中央の名前も」
ユイ。
「置いていく?」
「命令を書いた人の名前は」
フェル。
「記録に残っています」
「道へ」
「紙は持って行かない」
***
中央。
遠い。
***
だが。
命令は。
参加者の中に。
残る。
***
紙を置いても。
知識は。
置いていけない。
***
それも。
記録する。
***
夜。
出発前。
***
九人。
別々の場所で。
食べる。
眠る。
装備。
確認。
***
朔。
白い塔。
寝台。
***
机。
二枚。
***
トウマの手紙。
保管箱。
持っていかない。
***
青い布。
布袋。
持っていかない。
***
朔自身の紙。
持っていく。
***
「それは」
ユイ。
「何の紙?」
「俺が。今。何をしに行くか」
「読む?」
「はい」
***
第一踏査へ参加します。
***
目的は、旧搬入口の先にある経路、身体的危険、退路を確認し、全員で帰ることです。
***
ハルさん、トウマさん、ヴァルハという名を呼びません。手紙、青い布、名前札を持って行きません。
***
黒い人影様輪郭が現れても、本人確認を行いません。音を聞いた場合は、その場で意味を共有せず、退出後に報告します。
***
次。
***
俺には、答えを得たい気持ちがあります。
***
朔。
止まる。
***
ユイ。
待つ。
***
ハルさんがいるか知りたいです。
トウマさんの手紙が届く相手か知りたいです。
俺をサクと呼んだ者が誰か知りたいです。
***
次。
***
その気持ちを、今回の目的にはしません。
***
「持っていく?」
ユイ。
「はい」
「答えを知りたい気持ちも」
「はい」
「手紙は置いていくのに」
「気持ちは。置いていけません」
***
「じゃあ」
「持っていることを。先に書きます」
***
「それ」
ユイ。
「荷物?」
***
朔は。
少し考える。
「はい」
***
水。
パン。
縄。
鏡。
石筆。
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知識。
恐れ。
期待。
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身体が。
持っていくもの。
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全て。
机へ。
置けるわけではない。
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だから。
重さを。
ないことにしない。
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「帰ったら」
ユイ。
「聞く」
「はい」
「何を持って帰ったか」
「はい」
「何を置いてきたか」
「はい」
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翌朝。
まだ。
市場が開く前。
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旧紙倉。
棚。
動かす。
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入口側。
ファナ。
ミエル。
ミウ。
ルカ。
ネラ。
ユイ。
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行く者。
九人。
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人数。
ノエ。
「一」
イサラ。
「二」
エリオ。
「三」
朔。
「四」
リオ。
「五」
マレア。
「六」
ノエ。
「七」
ガド。
「八」
セオ。
「九」
フェル。
***
「役目ではなく」
ユイ。
「名前?」
「はい」
ノエ。
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「帰る時も」
「名前と。身体と。行ったことを確認します」
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石枠。
前。
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まだ。
黒くない。
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右下。
手形様窪み。
白くない。
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奥。
道。
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薄い。
灯り。
ない。
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エリオ。
退路。
白い線。
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入口から。
石枠の内側へ。
一歩分。
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「開く?」
ユイ。
「道は。前からあります」
朔。
「では」
「俺たちが入ります」
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イサラ。
最初。
ではない。
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リオ。
前。
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道を見る者。
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その後。
ガド。
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石を見る者。
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イサラ。
三番目。
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前と後ろ。
両方へ。
動ける位置。
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朔。
中央。
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返事を聞く者。
としてではない。
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自分の足で。
歩く身体として。
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「出発」
イサラ。
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命じる声。
ではない。
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同行者へ。
現在の行為を。
伝える声。
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リオ。
一歩。
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ガド。
一歩。
***
イサラ。
一歩。
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朔。
石枠の前。
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後ろ。
「サク」
***
ユイ。
***
朔。
振り向く。
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「うん」
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返事。
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誰が呼んだか。
分かっている。
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今。
どこにいるか。
分かっている。
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何をしに行くか。
互いに。
確認している。
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「帰ってきたら」
ユイ。
「また聞く」
「はい」
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朔。
石枠を。
越える。
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名前が。
先に着いた道へ。
***
名前だけではない。
九つの身体が。
一歩ずつ。
入っていった。




