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第九章 名前の先の道 ① 持っていかないもの



 中央塔は。


 翌朝のうちに。


 次の命令を出した。


***


 旧搬入口返路・第一踏査


***


 目的。


***


 黒色人影様輪郭出現地点より先の経路存続を確認する。


 旧経路と北方断絶路の接続可能性を調査する。


 敵対呼称ヴァルハとの接触に備える。


***


「備える」


 イサラ・ベルン。


 紙を見る。


「接触するとは書いていない」


「はい」


 グラド・ウェン。


「ですが」


 朔。


「持っていく物に。呼名文があります」


***


 命令書。


 付属品。


***


 中央塔印の呼名文。


 白い封筒。


***


 ハル・ミナトに関する記録抄本。


***


 ヴァルハ関連警告記録。


***


 黒川朔の知覚記録。


***


 勇者候補順位表。


***


 浄化用具。


***


「順位表は」


 エリオ・レイス。


「経路確認に必要ですか」


「対象が」


 グラド。


「勇者および順位へ反応した可能性があります」


「だから」


「反応条件として」


***


「俺たちが」


 朔。


「呼ばなかった名へ。近い音を知覚したことはあります」


「はい」


「順位表を見せれば」


「反応が明確になる可能性」


「俺たちが。見せたい答えへ近づける可能性もあります」


***


「第一踏査では」


 イサラ。


「持って行きません」


***


 グラド。


「中央命令です」


「現地統括判断者は」


「あなたです」


「なら」


「拒否理由を記録してください」


***


 イサラは。


 命令書へ書く。


***


 第一踏査の目的を経路存続、身体的危険、退路確認に限定する。


 呼名文、順位表、個人名を用いる反応確認資料を携行しない。


***


「ハルさんの記録は」


 朔。


「持って行きません」


「本人確認資料」


 グラド。


「本人を確認する段階へ進むとは。決めていません」


***


「黒い人影が」


「現れる可能性はあります」


「ハルと名乗ったら」


「その場で。記録します」


「確認は」


「帰ってから」


***


「機会を逃す」


 イサラ。


 命令書を見たまま。


「はい」


 朔。


***


「それでも」


「その場で答えを作るよりは」


***


 イサラは。


 すぐには頷かない。


***


「帰れるなら」


 彼女。


「帰ってから確認できます」


「はい」


「帰れなければ」


「確認の手順も。残りません」


***


「では」


 イサラ。


「帰ることを。第一の目的にする」


***


 新しい一行。


***


 第一踏査の達成条件は、参加者全員が帰還し、各自の知覚と経路状態を分けて報告できることである。


***


「道を見つけることでは」


 グラド。


「ありません」


「道があっても」


 イサラ。


「帰れなければ。次へ渡せません」


***


 出発。


 翌朝。


***


 準備時間。


 一日。


***


 中央は。


 短いと考えた。


***


 イサラも。


 長いとは考えなかった。


***


 だが。


 今ある時間。


 一日。


***


 その中で。


 誰が行くか。


 何を持つか。


 どこまで行くか。


 何が起きたら帰るか。


***


 一つずつ。


 決める。


***


 旧紙市場。


 奥の倉庫。


***


 机。


 三つ。


***


 最初。


 持っていく物


***


 水。


 一人二袋。


***


 乾いたパン。


 塩。


 硬い果実。


***


 灯り。


 予備。


 二つ。


***


 縄。


 三本。


***


 短い縄。


 一人一本。


***


 石筆。


 白。


 赤。


***


 木札。


 番号ではない。


 時刻。


 方向。


 行為。


***


 添え木。


 布。


 止血帯。


 針。


 薬。


***


 毛布。


 二枚。


***


 小さな鏡。


***


「鏡」


 ユイが尋ねる。


「何に使う?」


「角の先を見る」


 リオ。


「顔?」


「自分の顔を見るためにも使える」


***


「名前を忘れたら?」


 ユイ。


「名前より先に」


 マレア。


「目。呼吸。手足。周りの人を確認します」


***


 鏡。


 持っていく。


***


 二つ目の机。


***


 持っていかない物


***


 中央の呼名文。


***


 勇者候補順位表。


***


 ヴァルハ宛ての手紙。


***


 ハル・ミナト宛ての手紙。


***


 トウマの手紙。


***


 十九人の名前札。


***


 木の小さな剣。


***


 祈り札。


***


 青い布。


***


「布も」


 ユイ。


「はい」


 朔。


「いつもはリオが持ってる」


「今日は。塔へ預けます」


***


 リオ。


 胸元。


 青い布。


***


 取り出す。


***


 折り目。


 古い。


***


 ハル。


 肩。


 首。


 腕。


***


 どこへ巻いていたか。


 トウマの記憶。


 朔の記憶。


 一致。


 確認していない。


***


「俺が持っていることも」


 リオ。


「刺激になるか」


「可能性があります」


 朔。


「だが」


「普段から持っている」


「はい」


「今日だけ置くことも」


「俺たちが。意図して条件を変えたことになります」


***


「どっちや」


「分かりません」


***


 リオは。


 布を見る。


「なら」


「目的で決めます」


「今日は」


「ハルさんの確認ではありません」


***


「持っていかない」


 リオ。


「はい」


***


「誰へ預ける」


 ユイ。


***


 朔。


 すぐには答えない。


***


 自分。


 持ち主ではない。


***


 リオ。


 保管者。


***


 トウマ。


 渡した者。


***


 ハル。


 元の持ち主である可能性。


***


「ネラさんへ」


 朔。


「一人へ?」


 ユイ。


「保管責任者として」


***


「私も」


 リオ。


「預けたことを記録する」


「はい」


***


 青い布。


 透明な箱へ。


 入れない。


***


 見えることが。


 意味を作る可能性。


***


 布袋。


 閉じる。


***


 外。


 札。


***


 青色布


 通常保管者:リオ


 本日、第一踏査へ携行せず


 一時保管責任者:ネラ・ヴォス


***


 所有者。


 書かない。


***


「帰らなかったら」


 ユイ。


 部屋。


 静かになる。


***


「リオが」


「はい」


「帰らなかったら。誰に返す?」


***


 リオ。


 布袋を見る。


「決めてへん」


「決める?」


「今?」


***


 どの今。


***


 誰も。


 口にしない。


***


「帰らなかった場合の」


 ネラ。


「次の保管者は必要です」


「所有者を」


 リオ。


「決めるわけやない」


「はい」


***


「朔が帰って」


「俺が帰らなかった場合」


 リオ。


「朔へ預ける」


***


「二人とも」


 ユイ。


「帰らなかったら」


***


 リオ。


 少し。


 笑おうとする。


 やめる。


***


「ユイに」


 とは。


 言わない。


***


「ツヅリ村へ」


 朔。


「ハルさんの関係者がいる場所へ返す?」


「誰に」


「ダンさん。トウマさん。リーネさん」


「三人」


「誰へ渡すかを。村で決めてもらう」


***


「村が」


 ユイ。


「ハルの物って決める?」


「決めません」


 朔。


「保管を引き継ぎます」


***


 記録。


***


 第一。


 リオ帰還。


 リオへ。


***


 第二。


 リオ未帰還。


 朔帰還。


 朔へ。


***


 第三。


 二人未帰還。


 ツヅリ村へ保管移送。


 受取人。


 ダン、トウマ、リーネへ相談。


***


「私」


 ユイ。


「入ってない」


「はい」


「どうして」


***


 朔は。


 保護のため。


 とは言わない。


***


「ユイさんは」


 朔。


「布とハルさんの関係を。直接確認できる情報を持っていますか」


「ない」


「保管を望みますか」


***


 ユイ。


 考える。


***


「望まない」


「なぜ」


「Y.I.の物も。私が持つって決められたら嫌だから」


***


「はい」


***


「でも」


 ユイ。


「布がどこに行ったかは知りたい」


「記録を送ります」


***


 ユイの名前。


 保管者欄へ。


 入れない。


***


 通知を受ける者。


 ユイ


***


 三つ目の机。


***


 持っていくか決めていない物


***


 白い紙。


 一枚。


***


 何も。


 書かれていない。


***


「何に使う」


 グラド。


「現場で」


 中央派遣員。


「対象へ意思を示す必要が生じた場合に」


***


「空の紙で」


 朔。


「何を書くつもりですか」


「状況に応じて」


「誰が」


「現地統括」


***


 イサラ。


 紙を見る。


「私は。現場で新しい呼びかけを作りません」


「警告」


「同行者へは口頭で伝えます」


「対象へ」


「今日は伝えません」


***


「白紙は」


 派遣員。


「選択肢を残します」


「選択肢が」


 朔。


「現場で。目的を変えるために使われます」


***


「持たない?」


 ユイ。


「記録用の白紙は必要です」


 ネラ。


「対象への提示用と」


「分けます」


***


 記録用。


 紙。


 複数。


***


 外へ向けて。


 見せない。


***


 提示用白紙。


 持っていかない。


***


 中央派遣員。


 反対。


 記録。


***


 現地参加者は、接触機会喪失の可能性を認めた上で、対象提示用の白紙を携行しないと判断。


***


「はい」


 イサラ。


「その通りです」


***


 次。


 人。


***


 同行希望。


 十四名。


***


 中央。


 三名。


***


 市場。


 五名。


***


 治療。


 二名。


***


 勇者候補関係。


 二名。


***


 朔。


 リオ。


***


「十四人は多い」


 ガド・ネン。


「道幅」


「二人並べる箇所が少ない」


 ファナ。


「荷物」


「増える」


 リオ。


「食料」


「増える」


 マレア。


「怪我人」


「運ぶ人数は増える」


「では」


 グラド。


「安全?」


「人が増えれば。助ける手も増えます」


 マレア。


「同時に。戻す身体も増えます」


***


 最小。


 何人。


***


 経路。


 リオ。


***


 構造。


 ガド。


***


 仮設。


 ファナ。


***


 治療。


 マレア。


***


 退路灯。


 エリオ。


***


 現地判断。


 イサラ。


***


 経路管理。


 ノエ。


***


 知覚報告。


 朔。


***


 記録。


 セオ。


***


 九人。


***


「また」


 ノエ。


「前回と同じ人数」


「偶然です」


 グラド。


「九人であることに意味は」


「付けません」


 朔。


***


「中央派遣員」


「一人は必要です」


 グラド。


「命令書の監督」


「セオさんでは」


「現地側です」


***


 中央派遣員。


 フェル・ナード


***


 男。


 三十代。


 短い髪。


 右手。


 指輪。


 なし。


***


 前回。


 朔と。


 ほぼ同じ言葉を。


 聞いた者ではない。


***


 もう一人。


 来るな。


 待て。


 名前。


 と聞いた方。


***


「なぜ」


 イサラ。


「フェルさん」


「前回」


 グラド。


「完全な命令書順の知覚を報告していないため」


***


「偏りが少ない?」


「そうは決めません」


「では」


「前回の報告が。朔さんと近すぎない者を選びました」


***


「選ぶ理由に」


 朔。


「知覚内容を使った」


「はい」


「能力順位に」


「しません」


***


 フェル。


 口を開く。


「私が」


「はい」


「聞こえ方が違ったから。選ばれた」


「はい」


「何も聞こえないことを期待されていますか」


「期待は」


 グラド。


「あります」


***


「誰の」


「中央の」


***


「では」


 フェル。


「私は。何も聞こえない者として参加する?」


「違います」


 朔。


「何を聞いたかを。あなたの言葉で報告する人として」


***


「何も聞こえなかったら」


「そう書いてください」


「意味のある音を聞いたら」


「帰ります」


***


 フェル。


 少し。


 眉を寄せる。


「私が原因になる?」


「決めません」


「中止の契機には」


「なります」


***


「責任」


「現地判断は。イサラさん」


 朔。


「フェルさんは。知覚を報告します」


***


 フェル。


 自分の参加欄へ。


 書く。


***


 中央命令監督


 線。


***


 中央記録持参・知覚報告


***


「監督しない?」


 グラド。


「中央命令との不一致は記録します」


 フェル。


「現場へ命令する権限は」


「ない?」


「今回の通知では。ありません」


***


 同行。


 十人。


***


「多い」


 リオ。


「一人減らす」


***


 ファナ。


「私は」


 自分から言う。


「入口に残る」


「仮設」


「昨日までに。第一折返し点までの板と支えを作る」


「先では」


「現場で木工が必要になるかもしれん」


「はい」


「でも」


 ファナ。


「ガドが石を見る。リオが道を見る。私は入口と戻る側を保つ」


***


「帰る側」


 ユイ。


「はい」


 ファナ。


「中が崩れても。入口の棚と板を。開けられるようにする」


***


 同行。


 九人。


***


 イサラ。


 エリオ。


 朔。


 リオ。


 マレア。


 ノエ。


 ガド。


 セオ。


 フェル。


***


「全員」


 ネラ。


「自分で参加を望みますか」


***


 一人ずつ。


***


 イサラ。


「はい」


「理由」


「中止判断を。中央の役目ではなく。自分の判断として行うため」


***


 エリオ。


「はい」


「理由」


「退路の光を。他者の肩書きではなく。自分で置くため」


***


 朔。


「はい」


「理由」


「俺の知覚が経路と関係する可能性を。俺がいる状態で記録するため」


***


 リオ。


「はい」


「理由」


「道を読む。それと。こいつらが目的を変えた時に言う」


***


 マレア。


「はい」


「理由」


「中止する身体を。現場で見るため」


***


 ノエ。


「はい」


「理由」


「入った人数と。出る人数を。私が確認するため」


***


 ガド。


「はい」


「理由」


「石が壊れた時。人の声より先に。石を見るため」


***


 セオ。


「はい」


「理由」


「現場の知覚と。後から作られる物語を。分けて残すため」


***


 フェル。


 少し。


 遅れる。


「はい」


「理由」


「中央が。現場を見ずに書いた命令と。現場で起きたことの差を。中央へ持ち帰るため」


***


「誰かに」


 ネラ。


「参加を断りにくい理由がありますか」


***


 イサラ。


 勇者候補第一位。


***


 エリオ。


 旧第二位。


***


 朔。


 関係記録当事者。


***


 フェル。


 中央派遣員。


***


 全員。


 ある。


***


「あります」


 イサラ。


「勇者候補として。行くべきだと見られています」


「それでも」


「自分で行きます」


***


「俺も」


 朔。


「行かなければ。逃げたと見られる可能性があります」


「それでも」


「見られ方ではなく。今の目的に必要だと考えて参加します」


***


「エリオさん」


「私は。断れば能力を隠したと判断される可能性があります」


「それでも」


「退路灯が必要だと。自分で考えました」


***


「フェルさん」


「中央の報告役を拒否すれば。命令違反になります」


「それでも」


「現場命令権を持たない条件で。参加します」


***


 自由。


 完全ではない。


***


 圧力。


 ない。


 とは。


 誰も言わない。


***


 それでも。


 どの圧力があるかを。


 言葉へ置く。


***


 参加した。


 という一語から。


 同意の全てを。


 作らないために。


***


「私は」


 ユイ。


「行かない?」


***


 全員。


 ユイを見る。


***


「ユイさんは」


 グラド。


「同行者へ入っていません」


「誰が決めた?」


***


 グラド。


 止まる。


***


「俺たちです」


 朔。


「私に聞いた?」


「今。聞きます」


***


「行きたいですか」


***


 ユイ。


 すぐには答えない。


***


 白い紙。


 Y.I.


***


 黒い道。


 殻。


 祈り。


***


「見たい」


「何を」


「向こうに。私と関係するものがあるか」


「はい」


「でも」


「はい」


「私が行ったら。Y.I.を連れてきたって言われる」


***


「可能性があります」


「私が何か見たら」


「はい」


「Y.I.が答えたって言われる」


「可能性があります」


***


「それでも」


 朔。


「行きたいですか」


***


 ユイ。


 長く。


 考える。


***


「今は。行かない」


***


「どの今?」


 フェル。


 皮肉ではない。


***


 ユイ。


 彼を見る。


「第一踏査が。名前を呼ばないで。道と身体を確認する間」


***


「理由」


 ネラ。


***


「私が行く理由が。道を見るためじゃないから」


***


 部屋。


 静か。


***


「次」


 ユイ。


「私と関係するものを調べる時は。聞いて」


「はい」


 朔。


***


「勝手に」


「連れて行きません」


「勝手に置いていかない?」


「はい」


***


「今回は」


「ユイさん自身が。行かないと決めました」


***


 記録。


***


 ユイは第一踏査への同行を希望せず。


 ユイ。


「違う」


***


「何が」


「最初は見たいって言った」


***


 書き直す。


***


 ユイは、向こうに自身と関係するものがあるか見たいと述べた。


 第一踏査の目的が経路・身体・退路確認であり、自身が同行すればY.I.様表記との反応確認へ意味が変わる可能性を考え、今回は同行しないと選択した。


***


 今後、自身との関係を調査する場合は、同行または不同行について改めて本人へ確認する。


***


「うん」


 ユイ。


***


「残って」


 朔。


「何か。してほしいことはありますか」


***


「帰ってきた時」


 ユイ。


「名前を聞く」


「誰の」


「みんな」


***


「名前だけ?」


「違う」


***


 ユイ。


 指。


 一人ずつ。


***


「どこにいたか」


「はい」


「誰といたか」


「はい」


「何をしたか」


「はい」


「何を見たか」


「はい」


「見なかったか」


「はい」


***


「同じ名前でも」


「同じ人か。名前だけでは決めない」


「じゃあ」


「身体。持ち物。記憶。同行者。全部見る」


***


「私一人で?」


「ネラさん。ファナさん。ルカさん。ミエルさん」


***


 帰還確認。


 入口側。


***


 ユイ。


 質問補助。


***


 ネラ。


 記録。


***


 ファナ。


 身体と装備。


***


 ルカ。


 経路灯。


***


 ミエル。


 市場側からの確認。


***


「私」


 ユイ。


「帰る人を決める?」


「決めません」


 朔。


「では」


「帰ってきた者へ。今の名前と。今の位置を聞きます」


***


「サクが」


「自分の名を言えなかったら」


「身体から見る」


「はい」


***


「前と同じ?」


「似ています」


「同じ?」


「今回は。先に手順を決めます」


***


 帰還時。


***


 人数。


 九。


***


 一人ずつ。


 呼吸。


 歩行。


 出血。


 意識。


***


 自分の名。


 言える。


 言えない。


 言いたくない。


***


 現在地。


***


 同行者。


***


 持ち物。


***


 道の最後に。


 覚えていること。


***


 他者の報告と。


 一致。


 不一致。


***


「一致しなかったら」


 ユイ。


「閉じ込める?」


「すぐには」


 マレア。


「身体危険があれば治療」


「なければ」


「安全な場所で。確認を続けます」


***


「本人が帰ったって言ったら」


「その言葉を残します」


「ほかの人が違うって」


「その言葉も」


***


「誰が決める」


「一人では決めません」


***


 夕方。


 装備。


 九組。


***


 荷。


 一人。


 重さ。


 確認。


***


 朔。


 子どもの身体。


***


 水。


 一袋。


 乾いたパン。


 半分。


 短い縄。


 石筆。


 小さな鏡。


 記録紙。


***


「少ない」


 朔。


「身体に合わせる」


 リオ。


「俺が持てます」


「帰りに」


「はい」


「お前を持つことになるかもしれん」


***


 朔。


 黙る。


***


「荷物を」


 リオ。


「持てる今のうちに。軽くしとけ」


***


「どの今」


 リオ。


 自分で言う。


***


「出発前。お前が歩ける身体の状態の時や」


***


 朔。


 頷く。


***


 強さ。


 根性。


 役目。


***


 身体の重さを。


 変えない。


***


 持てる量。


 歩ける距離。


 食べる量。


 寒さ。


 負傷。


***


 名前ではなく。


 今の身体で。


 決める。


***


「武器」


 イサラ。


 剣。


***


「持つ」


「抜く条件」


「同行者への直接攻撃。経路崩落を止める必要。退路確保」


「人影が」


「現れただけでは抜かない」


「勇者と」


「呼ばれても抜かない」


「ヴァルハと」


「名乗っても」


 イサラ。


 少し止まる。


「名乗っただけでは抜かない」


***


「勇者を殺すと」


「具体的に攻撃へ移れば」


「誰を」


「まず。近い身体を守る」


***


 エリオ。


 細い剣。


***


「持つ」


「浄化」


「行わない」


「黒色化」


「経路全体へ広がり。退路が失われる場合に。退路側だけへ使用を検討」


「対象へ」


「使わない」


***


「中央は」


 フェル。


「対象浄化を命じています」


「第一踏査では」


 エリオ。


「本人が対象だと確認できないものへ。浄化を行いません」


***


「違反」


「記録してください」


***


 マレア。


 武器。


 なし。


***


 短い刃。


 包帯を切るため。


***


「人へ」


「向けません」


「襲われたら」


「逃げます」


「逃げられない」


「助けを求めます」


***


「戦わない?」


「戦える人と。同じ役目にしないでください」


***


 ノエ。


 鍵。


 縄。


 警笛。


***


「警笛」


「一回。停止」


「二回」


「退避」


「三回」


「入口側へ。救援要請」


***


「奥で音が変わったら」


「回数ではなくなる可能性があります」


「では」


「近い者が。目でも確認します」


***


 警笛だけへ。


 命令を。


 預けない。


***


 ガド。


 槌。


 測り棒。


***


「武器に」


「なる」


「使う?」


「石へ」


「人影へ」


「振らん」


***


 セオ。


 紙。


 墨。


 封筒。


***


「その場で」


「互いの知覚を共有しない」


「でも危険」


「危険行動は共有する」


「言葉」


「名前に聞こえた、は退出まで言わない」


「来るな、と聞こえたら」


「退出合図を出す?」


「意味を共有せず。中止合図だけ」


***


 フェル。


 中央命令書。


***


「持って行く?」


「命令書そのものは」


 朔。


「参加者の知識へ影響します」


「もう知っています」


「はい」


「では」


「現場へ持ち込む必要はありません」


***


「中央へ」


 フェル。


「命令書を所持していなかったと報告される」


「写し」


「入口へ保管」


***


 フェル。


 考える。


***


 命令書。


 ネラへ。


 預ける。


***


 中央命令書は参加者全員が内容を確認済み。第一踏査現場へ原本・写しを携行せず。


***


「中央の名前も」


 ユイ。


「置いていく?」


「命令を書いた人の名前は」


 フェル。


「記録に残っています」


「道へ」


「紙は持って行かない」


***


 中央。


 遠い。


***


 だが。


 命令は。


 参加者の中に。


 残る。


***


 紙を置いても。


 知識は。


 置いていけない。


***


 それも。


 記録する。


***


 夜。


 出発前。


***


 九人。


 別々の場所で。


 食べる。


 眠る。


 装備。


 確認。


***


 朔。


 白い塔。


 寝台。


***


 机。


 二枚。


***


 トウマの手紙。


 保管箱。


 持っていかない。


***


 青い布。


 布袋。


 持っていかない。


***


 朔自身の紙。


 持っていく。


***


「それは」


 ユイ。


「何の紙?」


「俺が。今。何をしに行くか」


「読む?」


「はい」


***


 第一踏査へ参加します。


***


 目的は、旧搬入口の先にある経路、身体的危険、退路を確認し、全員で帰ることです。


***


 ハルさん、トウマさん、ヴァルハという名を呼びません。手紙、青い布、名前札を持って行きません。


***


 黒い人影様輪郭が現れても、本人確認を行いません。音を聞いた場合は、その場で意味を共有せず、退出後に報告します。


***


 次。


***


 俺には、答えを得たい気持ちがあります。


***


 朔。


 止まる。


***


 ユイ。


 待つ。


***


 ハルさんがいるか知りたいです。


 トウマさんの手紙が届く相手か知りたいです。


 俺をサクと呼んだ者が誰か知りたいです。


***


 次。


***


 その気持ちを、今回の目的にはしません。


***


「持っていく?」


 ユイ。


「はい」


「答えを知りたい気持ちも」


「はい」


「手紙は置いていくのに」


「気持ちは。置いていけません」


***


「じゃあ」


「持っていることを。先に書きます」


***


「それ」


 ユイ。


「荷物?」


***


 朔は。


 少し考える。


「はい」


***


 水。


 パン。


 縄。


 鏡。


 石筆。


***


 知識。


 恐れ。


 期待。


***


 身体が。


 持っていくもの。


***


 全て。


 机へ。


 置けるわけではない。


***


 だから。


 重さを。


 ないことにしない。


***


「帰ったら」


 ユイ。


「聞く」


「はい」


「何を持って帰ったか」


「はい」


「何を置いてきたか」


「はい」


***


 翌朝。


 まだ。


 市場が開く前。


***


 旧紙倉。


 棚。


 動かす。


***


 入口側。


 ファナ。


 ミエル。


 ミウ。


 ルカ。


 ネラ。


 ユイ。


***


 行く者。


 九人。


***


 人数。


 ノエ。


「一」


 イサラ。


「二」


 エリオ。


「三」


 朔。


「四」


 リオ。


「五」


 マレア。


「六」


 ノエ。


「七」


 ガド。


「八」


 セオ。


「九」


 フェル。


***


「役目ではなく」


 ユイ。


「名前?」


「はい」


 ノエ。


***


「帰る時も」


「名前と。身体と。行ったことを確認します」


***


 石枠。


 前。


***


 まだ。


 黒くない。


***


 右下。


 手形様窪み。


 白くない。


***


 奥。


 道。


***


 薄い。


 灯り。


 ない。


***


 エリオ。


 退路。


 白い線。


***


 入口から。


 石枠の内側へ。


 一歩分。


***


「開く?」


 ユイ。


「道は。前からあります」


 朔。


「では」


「俺たちが入ります」


***


 イサラ。


 最初。


 ではない。


***


 リオ。


 前。


***


 道を見る者。


***


 その後。


 ガド。


***


 石を見る者。


***


 イサラ。


 三番目。


***


 前と後ろ。


 両方へ。


 動ける位置。


***


 朔。


 中央。


***


 返事を聞く者。


 としてではない。


***


 自分の足で。


 歩く身体として。


***


「出発」


 イサラ。


***


 命じる声。


 ではない。


***


 同行者へ。


 現在の行為を。


 伝える声。


***


 リオ。


 一歩。


***


 ガド。


 一歩。


***


 イサラ。


 一歩。


***


 朔。


 石枠の前。


***


 後ろ。


「サク」


***


 ユイ。


***


 朔。


 振り向く。


***


「うん」


***


 返事。


***


 誰が呼んだか。


 分かっている。


***


 今。


 どこにいるか。


 分かっている。


***


 何をしに行くか。


 互いに。


 確認している。


***


「帰ってきたら」


 ユイ。


「また聞く」


「はい」


***


 朔。


 石枠を。


 越える。


***


 名前が。


 先に着いた道へ。


***


 名前だけではない。


 九つの身体が。


 一歩ずつ。


 入っていった。

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