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第八章 起きている名前 ⑨ 宛先のいない手紙


 白い塔へ。


 ハル・ミナトの名前が。


 届いた。


***


 本人ではない。


 紙。


 七通。


 小さな包み。


 二つ。


***


 内塔の受付台。


 並べられている。


***


 一通目。


 ハル・ミナト様


 その下。


 白い塔・黒川朔気付


***


 二通目。


 勇者殺しヴァルハへ


***


 三通目。


 黒い道にいるハル


***


 四通目。


 眠りの勇者


***


 五通目。


 白い塔が隠している者


***


 六通目。


 ハル・ミナト、またはヴァルハ


***


 七通目。


 ハルへ


***


 同じ人へ。


 届いたとは。


 確認できない。


***


 違う人へ。


 届いたとも。


 まだ。


 決められない。


***


「受け取れますか」


 アナ・セルが尋ねた。


***


 赤茶の髪。


 左頬。


 小さなほくろ。


 受付台の前。


 受領記録。


 筆。


***


「俺が?」


 朔。


「黒川朔気付とあります」


「一通だけです」


「はい」


「ほかは」


「届け先が白い塔とだけ」


***


「ハルさんが」


 朔は。


 一通ずつ見る。


「ここにいるとは。確認されていません」


「はい」


「ヴァルハと。同じ人物とも」


「確認されていません」


「眠りの勇者とも」


「はい」


***


「では」


 アナ。


「受取人不在として返送しますか」


「不在?」


 朔。


「違いますか」


「ここにいないことは。確認されていますか」


***


 アナが。


 紙を見る。


「白い塔の居住記録にはいません」


「はい」


「治療記録にも」


「はい」


「拘束、保護、職員、訪問登録」


「ありません」


「では」


「白い塔の記録上。現在位置を確認できない」


***


「不在と」


「同じではない?」


「白い塔にいない可能性は高いです」


「ですが」


「ハルさんが。今どこにいるかは分かりません」


***


「宛先不明」


「それも」


 朔は。


 白い塔・黒川朔気付


 を見る。


「一通は。俺を経由するよう書かれています」


***


「気付」


 ユイが。


 受付台の横から尋ねた。


「何?」


「その場所にいる別の人へ預けて。本人へ渡してもらう書き方です」


 アナ。


「サクが。ハルに渡す?」


「渡せるかは分かりません」


 朔。


***


「じゃあ」


 ユイ。


「受け取ったら。ハルがいることになる?」


「なりません」


「サクが。ハルの代わり?」


「なりません」


「でも。持つ?」


 朔は。


 すぐには答えない。


***


 青い布。


 今も。


 朔が持っている。


***


 トウマから。


 ハルのものとして。


 渡された。


***


 だから。


 ハルが朔へ。


 所有を移したとは。


 確認できない。


***


 朔が。


 保管している。


***


「持つことはできます」


 朔が言った。


「受け取る?」


「ハルさんが受け取ったことにはしません」


***


「受領欄」


 アナ。


「受取人の署名が必要です」


「俺が書けば」


「黒川朔」


「ハル・ミナト宛てを。黒川朔が受領した記録になります」


「本人の代理として?」


「通常は」


「代理を頼まれていません」


***


「では」


 アナは。


 受領記録を見る。


 本人。


 家族。


 代理人。


 所属先。


 返送。


***


 ほかの欄。


 ない。


***


「保管者」


 ネラが言った。


 記録室から。


 呼ばれている。


「という欄を作ります」


「受取人と」


 朔。


「分けて?」


「はい」


***


 新しい欄。


 保管者


 保管理由


 開封権限


 受取人本人への到達


 確認済。


 未確認。


 未達。


 不明。


***


「未達」


 アナ。


「本人へ届いていない」


「はい」


「本人がいないと」


「決めません」


***


「開ける?」


 ユイ。


「宛名によります」


 朔。


「気付は?」


「中に。俺へ読んでよいと書かれているか分かりません」


「開けないと分からない」


「はい」


***


「気付なら」


 アナ。


「経由者が開封することは通常ありません」


「では」


「外側に。別の指示がなければ。ハルさん宛てのままです」


***


 封。


 蝋。


 茶色。


 押された印。


 小さな。


 木の葉。


***


 差出人。


 裏。


 ダン


***


 家名。


 なし。


 村。


 ツヅリ


***


 その下。


 小さな文字。


***


 中の一枚はサクへ。もう一枚はハルへ。先にサクが外側だけ読んでよい。


***


「分かれている」


 ユイ。


「はい」


***


 封筒の中に。


 二つ。


 入っていることが。


 外から分かる。


***


「開けますか」


 アナ。


「俺へ向けた一枚だけ」


「どうやって分ける?」


「外封を開けると。中に別の封がある可能性があります」


「なかったら」


「読まずに閉じる?」


「一度見た文字は。見なかったことにできません」


***


 開封前。


 記録。


***


 外封。


 宛先。


 ハル・ミナト。


 黒川朔気付。


***


 差出人。


 ダン。


 ツヅリ。


***


 外面指示。


 サクによる外側文書の先行開封を許可。


 ハル宛て文書。


 別封を示唆。


***


「危険物の確認」


 アナ。


「紙の厚み。二枚以上」


「匂い」


 ノエ。


「油。薬品。強い香りなし」


「粉」


「封の外には確認せず」


「針」


「触れた範囲ではなし」


***


 完全に。


 安全とは。


 決めない。


***


 だが。


 通常の手紙として。


 開く。


***


 朔が。


 蝋を。


 端から外す。


***


 中。


 紙。


 一枚。


 小さな封筒。


 一つ。


***


 小さな封筒。


 表。


***


 ハルへ


***


 裏。


***


 トウマ


***


 封。


 青い糸。


***


 朔は。


 触れない。


***


 外側の紙。


 ダン。


 字。


 大きい。


 線。


 不揃い。


***


 サクへ。


***


 こっちにも、王都でハルの名前が出ているという話が届いた。


 黒い人影。勇者殺し。ヴァルハ。眠りの勇者。


 どれが同じ話か、こっちでは分からない。


***


 朔は。


 読む速度を。


 落とす。


***


 トウマが、ハルへ書きたいと言った。


 ハルがそこにいると決めたわけではない。


 お前がハルを見つけたとも聞いていない。


 だから、ハルの代わりに返事はするな。


***


 リオが。


 朔の横で。


 息を吐く。


***


 手紙を持てるなら持ってくれ。


 本人へ渡せると判断できなければ、開けなくていい。


 黒い人影へ見せるかは、手紙を受け取ることとは別に考えろ。


***


 村では、ハルが死んだとも、戻ってきたとも言っていない。


 寝床はそのままではない。


 使える布と道具は使っている。


 名前は消していない。


***


 朔の指。


 紙の端。


 止まる。


***


 リーネは、ハルのための祈りはしていない。


 祈らないことを、忘れたことにはしていない。


***


 俺は北柵を直した。


 前にハルが直したところより、少し下手だ。


***


 トウマは元気だ。


 森で母親の声がしても、返事をしない。


***


 ハル宛ての中身は読んでいない。


 トウマが、ハルがいないならサクが読んでもいいと言った。


 だが、読んだことを、ハルが読んだことにはするな。


***


 最後。


***


 帰ってこいとは書かない。


 帰る場所が、まだ同じとは限らないからだ。


 ただ、生きているなら、自分で名前を言え。


***


 ダン


***


 部屋。


 静か。


***


「読む?」


 ユイが。


 小さな封筒を見る。


***


 ハルへ


 トウマ


***


「外側の紙には」


 朔。


「ハルさんがいなければ。俺が読んでもいいとあります」


「読むことと」


 ネラ。


「本人へ渡すことは別です」


「はい」


「今読む理由は」


***


 朔は。


 青い糸を見る。


「トウマさんが。今。ハルさんへ何を言いたいかを知りたいです」


「黒い人影へ使うため?」


「その気持ちもあります」


「確認の材料?」


「はい」


「ハルだと決めるため?」


「それには使いません」


***


「でも」


 リオ。


「読んだら。使いたなるぞ」


「はい」


「見せたくも」


「なると思います」


「ほな」


「読む前に。使う条件を決めます」


***


 小さな封筒。


 開封。


 だけ。


***


 黒い人影へ。


 提示しない。


***


 呼名に。


 使わない。


***


 内容を。


 本人確認の質問に。


 しない。


***


 トウマしか知り得ない内容があっても。


 人影の同一性を。


 それだけで。


 確定しない。


***


 今後。


 提示を検討する場合。


 目的。


 危険。


 誰が持つか。


 どこまで見せるか。


 返答をどう扱うか。


 別に決める。


***


「読まない選択も」


 マレア。


「残っています」


「はい」


「今は」


「読みたいです」


***


「誰のため」


「トウマさんの言葉を。俺が勝手に中身へ作らないため」


***


 読まなくても。


 想像できる。


***


 帰ってきて。


 助けてくれてありがとう。


 怖かった。


 待っている。


***


 そのどれも。


 トウマが。


 実際に書いたとは。


 限らない。


***


「開けます」


 朔。


***


 青い糸。


 ほどく。


***


 小さな紙。


 折り目。


 何度も。


 開き直した跡。


***


 字。


 子ども。


 大きさ。


 揃わない。


***


 ハルへ。


***


 トウマです。


***


 あの日、助けてくれてありがとう。


 でも、助けてくれたから勇者だったとは書きません。


***


 朔の目。


 止まる。


***


 ハルは、逃げる時に俺を先に出しました。


 サクとの約束を破ったのかもしれません。


 でも、俺を助けたかったのかもしれません。


 どっちもあるかもしれません。


***


 青い布はサクに渡しました。


 俺が渡したから、サクの物になったとは決めません。


 ハルがいらないと言ったとも聞いていません。


***


 もし黒い人がハルなら、布を見て分かるかもしれません。


 でも、布を分かったからハルとは決めないでください。


***


 子どもの字。


 同じ行。


 途中で。


 小さくなる。


***


 村で、黒い人はハルだと言う人がいます。


 違うと言う人もいます。


 俺は分かりません。


***


 ハルが中にいるなら、ほかの人もいるかもしれないと聞きました。


 ハル一人じゃないなら、ハルじゃないとは思いません。


 でも、ハルだけとも思いません。


***


 朔は。


 紙から。


 目を離す。


***


「ダンさんが」


 ユイ。


「直した?」


「分かりません」


 朔。


「字はトウマさんに見える?」


「以前の字を知りません」


***


 差出人名。


 トウマ。


 それだけで。


 本人が書いたとは。


 完全には確認できない。


***


 だが。


 ダンが。


 トウマが書いたと。


 外側へ書いている。


***


 紙。


 村。


 言葉。


 関係。


 可能性。


***


「続き」


 リオ。


「読めるか」


「はい」


***


 朔は。


 紙へ戻る。


***


 ハル。


 戻ってきてとは書きません。


 帰る場所が村じゃないかもしれないからです。


***


 でも、俺はハルの名前を捨てていません。


 待っているとも書きません。


 毎日ずっと待っているわけじゃないからです。


***


 俺は遊ぶし、食べるし、寝ます。


 ハルのことを考えない日もあります。


***


 それでも、あの日、俺を助けたハルがいたことは覚えています。


***


 最後。


***


 もし会えたら、俺の名前を言ってください。


 でも、トウマと言えたからハルだとは決めません。


 俺の顔を見てください。


 俺も見ます。


***


 それから、みんなに聞きます。


***


 トウマ


***


 朔は。


 紙を。


 机へ置く。


***


 青い布。


 胸元。


 出さない。


***


「待ってない」


 ユイが言う。


「はい」


「でも、忘れてない」


「はい」


***


「帰ってきてって」


「書いていません」


「会いたくない?」


「会いたいと思います」


「書いてない」


「帰る場所を。トウマさんが決めたくなかった」


***


「子どもなのに」


 グラドが言った。


「はい」


 ネラ。


「子どもだから。決められないことを、そのまま書ける場合もあります」


***


「この手紙を」


 アナ。


「ハル・ミナト宛てとして保管しますか」


「はい」


 朔。


「開封済み」


「はい」


「開封者」


「黒川朔」


「根拠」


「差出人トウマからの、本人不在時に読む許可。ダンさんの外側文書による確認」


***


「受取人」


「未達」


「ハルさんが読んだことには」


「しません」


***


「内容を」


 グラド。


「黒色人影様輪郭の確認資料へ」


「今は入れません」


 朔。


「なぜ」


「これは。トウマさんからハルさんへの手紙です」


「同一性確認に使える情報があります」


「あります」


「なら」


「使えることと。使ってよいことは違います」


***


「差出人は」


「俺が読んでよいとは言いました」


「黒い人影へ見せることは」


「許可されていません」


***


「ハル本人へなら」


 グラド。


「見せるための手紙です」


「黒い人影が。ハル本人だと確認されていません」


***


「循環します」


「はい」


「本人か確認するために見せたい。本人と確認できないから見せられない」


「だから」


 朔。


「別の方法で。提示の危険と意味を検討します」


***


「トウマへ」


 ネラ。


「再確認の手紙を出せます」


「何を」


「黒い人影へ提示してよいか。全文か。一部か。返答を確認へ使ってよいか」


***


「時間」


 グラド。


「かかります」


「はい」


***


「その間に」


 朔。


「人影が消える可能性もあります」


「それでも」


「トウマさんの言葉を。俺の確認道具へ勝手に変えません」


***


 返信。


 朔が。


 書く。


***


 トウマさんへ。


 ハルさん宛ての手紙を受け取りました。


 筆。


 止まる。


***


「受け取った?」


 ユイ。


「俺が読みました」


「ハルは」


「まだ」


***


 書き直す。


***


 ハルさん宛ての手紙を、黒川朔が保管し、あなたの許可に基づいて読みました。


 ハルさん本人へ届いたことは確認できていません。


***


 次。


 黒い人影様輪郭へ、この手紙を提示してよいかを確認したいです。


 提示する場合も、手紙を理解したこと、トウマという名へ反応したこと、青い布を認識したことだけで、ハルさん本人とは決めません。


***


 次。


 全文を見せてよいか。


 一部だけなら、どの部分か。


 声に出して読んでよいか。


 返答を記録してよいか。


 返答を本人確認の材料へ使ってよいか。


***


「多い」


 ユイ。


「はい」


「トウマ、分かる?」


「分からないところは。ダンさんやリーネさんに聞いてもらいます」


「その人たちが決める?」


「トウマさんの理解を助けます」


「答えは」


「トウマさんが」


***


 最後。


***


 今、手紙は白い塔で保管しています。


 ハルさんの物だと確認できるまで、俺の手紙にはしません。


 ただし、俺が読んだことは消せません。


***


 青い布も持っています。


 返す相手は、まだ確認できていません。


***


 署名。


 黒川朔


 その下。


 現在はサクと呼ばれています。


***


「なぜ」


 リオ。


「下も書いた」


「トウマさんは。サクと呼んでいます」


「黒川朔だけやと」


「別の人に見える可能性があります」


***


 二人のサク。


 同じ名前。


***


 手紙。


 誰へ届くか。


 名前だけでは。


 決まらない。


***


 ほかの六通。


 包み。


 二つ。


***


 一つずつ。


 外側を確認する。


***


 勇者殺しヴァルハへ


 差出人。


 勇者候補支援会。


 内容。


 外面。


 公開の場へ出ることを要求する。


***


 ハル・ミナトとの関係。


 記載なし。


***


 黒い道にいるハル


 差出人。


 なし。


 封。


 破れている。


 中の文字。


 一部。


 外から見える。


***


 返せ


***


 何を。


 誰へ。


 分からない。


***


 眠りの勇者


 差出人。


 病床者の家族。


 祈り札。


 十二枚。


***


 白い塔が隠している者


 差出人。


 なし。


 紙。


 厚い。


***


 安全確認。


 必要。


***


 ハル・ミナト、またはヴァルハ


 差出人。


 外壁警備。


 警告。


 質問。


***


 ハルへ


 差出人。


 名前。


 読めない。


 雨。


 滲み。


***


「同じ箱へ?」


 アナ。


「入れません」


 朔。


「なぜ」


「同じ受取人と確認できていません」


***


「箱が増える」


 グラド。


「はい」


「検索」


「索引で繋ぎます」


「ハル。ヴァルハ。勇者殺し。眠りの勇者」


「宛名として書かれたことを繋ぎます」


「同じ人物の別名?」


「そうは書きません」


***


 保管箱。


 四つ。


***


 ハル・ミナト宛て


***


 ヴァルハ宛て


***


 黒色人影・旧搬入口関連宛て


***


 宛先関係未確認


***


「眠りの勇者は」


 ユイ。


「どこ」


「宛先関係未確認」


「どうして」


「俺を指す噂にも。ハルさんを指す噂にも。黒い人影を指す噂にも使われています」


***


「誰か一人へ」


「まだ置けません」


***


 包み。


 一つ。


 木の小さな剣。


 外面。


 ヴァルハを倒す勇者へ渡してください。


***


「ヴァルハ宛てではない」


 アナ。


「はい」


「誰へ」


「ヴァルハを倒す勇者」


「該当者」


「確認できません」


***


「イサラ?」


 グラド。


「決めません」


 朔。


「エリオ?」


「決めません」


「勇者候補」


「役目を外した者もいます」


***


 別箱。


 条件付き宛先・該当者未確認


***


 もう一つ。


 布袋。


 乾いた花。


 名前札。


 十九枚。


***


 眠りの勇者へ。起こしてほしい者の名です。


***


 朔の名を。


 直接書いていない。


***


 だが。


 第八章。


 最初の列。


 続き。


***


「相談入口へ」


 グラド。


「移しますか」


「差出人の希望は」


 朔。


「眠りの勇者へ渡すことです」


「その役目を引き受けていない」


「はい」


「では」


「宛先未達として保管し。名前の相談が必要なら、差出人へ案内を返します」


***


「十九人」


「はい」


「身体の危険」


「ある可能性があります」


「なら」


「手紙を待つのではなく。差出人へ、相談入口で状態を伝えてほしいと返します」


***


 手紙に。


 名前がある。


***


 それだけで。


 十九人の身体を。


 確認したことにはならない。


***


 だが。


 名前を。


 箱へ入れたまま。


 何もしないことにも。


 しない。


***


 差出人。


 確認。


 返書。


***


 名前札を受領しました。


 また。


 止まる。


***


 受取人。


 眠りの勇者。


 確認できない。


***


 書き直す。


***


 白い塔は、眠りの勇者宛てとして送られた名前札を保管しています。


 眠りの勇者に該当する者、および当該者が名前を受け取ったことは確認できていません。


***


 身体の危険や治療相談がある場合は、本人の現在地、状態、最後に応答した時、既に行った対応を相談入口へ伝えてください。


***


「冷たい」


 アナ。


「はい」


 朔。


「もっと」


***


 追記。


***


 札に書かれた名前を、見なかったことにはしません。


 ただし、名前だけでは、今必要な助けを決められません。


***


 午後。


 保管棚。


***


 箱。


 増える。


***


 名前。


 増える。


***


 受取人。


 確認できない。


***


「手紙って」


 ユイが言う。


「名前がある場所へ行く?」


「多くは」


 アナ。


「住所へ行きます」


「住所が分からない時」


「知っていそうな場所へ」


「白い塔」


「はい」


「サク」


「はい」


***


「ハルの場所は」


「分かりません」


 朔。


「じゃあ」


「手紙だけ。先に来ました」


***


「名前が」


 ユイ。


「住所になった?」


「そういう部分があります」


***


 ハル・ミナト。


 ヴァルハ。


 勇者殺し。


 眠りの勇者。


***


 誰かが。


 そこにいると。


 思った場所。


***


 白い塔。


 朔。


 旧搬入口。


 黒い道。


***


 名前が。


 人を探す。


***


「本人がいなかったら」


 ユイ。


「手紙は寝る?」


***


 保管箱。


 閉じている。


***


「待ちます」


 アナ。


「誰を」


「受け取る人が確認されるまで」


「ずっと?」


「期限は必要です」


 グラド。


***


「返送できる物」


「差出人へ」


「差出人不明」


「保管」


「いつまで」


「決める必要があります」


***


「期限が来たら」


 ユイ。


「捨てる?」


「内容と危険。差出人。宛先。保管量」


 アナ。


「それを見て」


***


「本人が」


 朔。


「期限の後に来る可能性もあります」


「永久に持つ?」


 グラド。


「全てはできません」


***


 紙。


 場所。


 人手。


 安全。


 限り。


***


「では」


 ネラ。


「保管期限と。期限後に何を残すかを。最初に書きます」


***


 原物。


 返送。


 廃棄。


 内容索引。


 宛名のみ。


 差出人のみ。


 安全上の記録。


***


「手紙の中身を」


 朔。


「本人が読んでいないのに。記録側が要約する?」


「必要な場合だけ」


 ネラ。


「なぜ」


「脅迫。危険物。制度上の問題。再発確認」


「私的な手紙は」


「原則、開けません」


***


「トウマさんの手紙は」


「朔さんに開封許可がありました」


「記録へ全文?」


「入れません」


「なぜ」


「トウマさんとハルさんの手紙だからです」


***


 開封記録。


 存在。


 開封者。


 許可。


 保管場所。


***


 内容。


 必要な範囲だけ。


 朔の判断記録へ。


 引用。


***


「全文を」


 グラド。


「黒い人影の確認に使うなら」


「その時に。トウマさんの許可範囲を確認します」


***


 名前が。


 宛先になる。


***


 だから。


 名前を書けば。


 誰かへ届くとは。


 限らない。


***


 届かなかった手紙を。


 関係者が。


 自由に使ってよいとも。


 限らない。


***


 夕方。


 ダンとトウマへの返書。


 封。


***


 宛先。


 トウマ


 その下。


 ツヅリ村・ダン気付


***


「トウマが」


 ユイ。


「いなかったら」


「ダンさんが保管します」


「読める?」


「外側に。ダンさんは開けず。トウマさんへ渡してほしいと書きます」


***


「トウマが」


「読めない部分は」


「ダンさんに聞く?」


「トウマさんが望めば」


***


「サクの返事は」


「ハルさんの代わりではありません」


「うん」


***


 朔は。


 封の外へ書く。


***


 ダンさんへ。トウマさん本人へ渡してください。内容の理解を助ける場合も、返答はトウマさんへ確認してください。


***


 差出人。


 黒川朔


***


 受付。


 アナ。


 受領。


***


「今度は」


 ユイ。


「本人がいる?」


「ツヅリにいると。ダンさんの手紙にはあります」


「届く?」


「確認できるまで。分かりません」


***


 配達人。


 南の道。


 出発。


***


 手紙。


 運ばれる。


***


 名前を。


 住所にして。


***


 夜。


 朔は。


 ハル宛ての箱を。


 見る。


***


 トウマの手紙。


 開封済み。


***


 ハルは。


 読んでいない。


***


 少なくとも。


 確認できていない。


***


 朔が。


 読んだ。


***


 だから。


 言葉は。


 朔の中に。


 残っている。


***


 ハルが中にいるなら。


 ほかの人もいるかもしれない。


***


 ハル一人ではないなら。


 ハルではないとは思わない。


***


 でも。


 ハルだけとも思わない。


***


 朔は。


 その言葉を。


 黒い人影へ。


 まだ持って行かない。


***


 読んだ者が。


 届けたいと思ったことと。


 差出人が。


 届け方まで任せたことは。


 同じではない。


***


 リオが。


 箱の横へ立つ。


「返事せんのか」


「誰に」


「ハルへ」


***


 朔は。


 箱を見る。


「どこへ送ればいいか。分かりません」


「黒い道」


「そこにいる者が。ハルさんとは確認できていません」


「手紙に書くなら」


「何と」


***


 リオは。


 少し考える。


「ハルかもしれん者へ」


***


「それを」


 朔。


「ハルさんへの返事にしますか」


「ならん」


***


「黒い人影へ」


「それは別や」


「はい」


***


 ハルへ返す言葉。


 黒い人影へ問う言葉。


 同じにしない。


***


「でも」


 リオ。


「言いたいことはあるやろ」


「あります」


「書くか」


「宛先を決めずに?」


「自分の紙に」


***


 朔は。


 紙を出す。


***


 見出し。


 書かない。


***


 最初。


***


 トウマさんの手紙を読みました。


***


 次。


***


 ハルさん本人へ届いていません。


***


 筆。


 止まる。


***


 続ける。


***


 俺は、ハルさんを探しています。


 書いて。


 止まる。


***


 探している。


 黒い人影を。


 見ている。


 ハルの動きを。


 探している。


***


 それだけでは。


 黒い人影を。


 ハルへ近づける。


***


 書き直す。


***


 俺は、ハルさんがどうなったかを知りたいと思っています。


***


 次。


***


 黒い人影様輪郭の中に、ハルさんを思わせる動きがある可能性を記録しています。


 それを、ハルさん本人がいることとも、ハルさんだけがいることとも決めていません。


***


 次。


***


 トウマさんの言葉を、本人確認の道具へ勝手に変えません。


***


 最後。


***


 それでも、いつか届く可能性のために、手紙を捨てません。


***


 署名。


 黒川朔


***


 宛先。


 なし。


***


 ハル宛ての箱へ。


 入れない。


***


 黒い人影の記録へも。


 入れない。


***


 朔自身の。


 現在の言葉。


 として。


 別に置く。


***


「誰にも届かん紙」


 リオ。


「はい」


「意味あるか」


「今。俺が何を考えているかを。後で別の答えへ変えないために」


***


「ハルが来たら」


「その時に。見せるか聞きます」


「誰に」


 朔は。


 答えを止める。


***


「来た者へ」


***


 リオは。


 それ以上。


 聞かない。


***


 宛先のいない手紙は。


 届かない。


***


 だからといって。


 誰の物にしてもよいわけではない。


***


 名前が書かれていても。


 その名の者が。


 受け取ったとは限らない。


***


 朔が持っていても。


 朔への手紙にはならない。


***


 黒い人影へ。


 見せられる可能性があっても。


 確認の道具には。


 まだならない。


***


 名前は。


 人を探すために。


 先に歩くことがある。


***


 だが。


 先に着いた名前が。


 そこで待つ者を。


 本人にするわけではない。


***


 白い塔の棚。


 閉じた箱。


***


 ハル・ミナト宛て


***


 その中で。


 トウマの手紙は。


 眠っていた。


***


 名前だけは。


 街の中で。


 既に起きている。


***


 それでも。


 手紙を開く者。


 返事を書く者。


 受け取ったことになる者を。


 名前より先に。


 決めなかった。


***


 いつか。


 ハルと呼ばれたい者が。


 自分の手で。


 封を持つかもしれない。


***


 その時。


 初めて。


 どこへ届いたのかを。


 その者へ。


 問うために。

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