第八章 起きている名前 ③ 借りた名前の紙
相談入口ができて。
三日目。
朔の名前が。
紙の上で。
新しい役目を持っていた。
***
サク式・目覚め相談票
上部。
大きな文字。
その横。
開いた手の印。
白い粉を。
掌へ塗り。
紙へ押したような形。
***
下には。
五つの欄。
眠っている者の名前
起こしたい/眠らせたい
本人の希望
サクの接触を希望する/名前だけを希望する
急ぎ/通常
***
相談入口へ。
その紙を持ってきたのは。
アロ・センの兄だった。
***
男は。
前と同じ木札も。
持っていた。
アロ・セン。
十九日。
家にいる。
祈り手が二人。
治療官は。
前日に。
マレアとトエが訪問した。
***
「これは」
朔が尋ねた。
「何ですか」
「書いてもらった」
男。
「誰に」
「市場の代筆屋だ」
「本人の希望」
紙には。
起こしてほしい
と書かれている。
「アロ・センさんが。そう言いましたか」
「言った」
「いつ」
「前に」
「いつですか」
男は。
木札を握る。
「病気になる前だ」
***
「どのような時に」
マレアが尋ねた。
「朝だ」
「何と言いましたか」
「寝過ごしたら。起こしてくれと」
「今回の状態について?」
「違う」
「白い手や。接触について?」
「そんなものは知らなかった」
***
寝過ごしたら。
起こしてくれ。
朝の言葉。
それが。
紙の中では。
本人の希望。
起こしてほしい。
になっていた。
***
「嘘じゃない」
男が言った。
「はい」
朔。
「あいつは。起こせって言った」
「言ったことは。残します」
「なら」
「いつ。何について言ったかも残してください」
「今も同じだ」
「本人に確認しましたか」
***
男は。
答えない。
***
「昨日」
マレアが言った。
「アロさんは、一度目を開けました」
男の顔が。
少し動く。
「名前を呼んだ」
「はい」
「俺を見た」
「あなたの方へ顔を動かしました」
「なら」
「聞き取れた言葉は、一つです」
「何を」
「水」
***
アロ・セン。
目を開けた。
起きた。
そういう話にもできる。
だが。
長く話せたわけではない。
自分の名前。
接触。
覚醒。
帰還。
何も。
確認していない。
***
「水を飲ませた」
男。
「少量ずつ」
マレア。
「今は」
「反応がある時間と。ない時間があります」
「起こしてくれとは」
「言っていません」
***
「言えないだけだ」
男の声が強くなる。
「可能性はあります」
朔。
「なら、この紙で」
「この紙は。アロさんが現在同意した紙ではありません」
「俺が書いた」
「代筆屋が書いています」
「俺が言わせた」
「相談者の希望です」
***
「本人の希望だ」
「そう考えた理由は残せます」
「同じだ」
「違います」
***
本人が。
朝。
寝過ごしたら起こしてくれ。
と言った。
兄は。
今も。
起こしてほしいはずだと思った。
その二つは。
関係している。
同じ欄ではない。
***
「サクの接触を希望する」
マレアが読む。
印。
付いている。
「誰の希望ですか」
「俺だ」
「アロさんでは」
「聞けない」
「では」
「俺が決めるしかない」
***
「決めることはあります」
マレア。
「治療を呼ぶ。水を入れる。身体を清潔にする。呼吸を見てもらう」
「白い手は」
「確認されていない方法です」
「だから、試す」
「戻せると確認されていません」
「このままでも戻らない」
***
男の言葉。
間違いではない。
十九日。
眠り。
反応。
不安定。
待つ時間。
弟の身体。
***
「俺も」
朔が言った。
「触れたいと思っています」
「なら」
「自分の身体かもしれない白い手へも。まだ触れていません」
「弟と。自分を一緒にするな」
「一緒にはしません」
「お前は起きてる」
「はい」
「アロは」
「今。話せない時間があります」
「なら」
「だからこそ。あなたの希望を。アロさんの希望として書きません」
***
男は。
紙を。
机へ置く。
開いた手の印。
白。
朔の手ではない。
白い手でもない。
誰かが。
紙へ押した手。
***
「サク式とは」
朔が尋ねる。
「代筆屋に聞け」
男。
「お前の公示を。短くしたって」
***
代筆屋は。
旧紙市場の南。
道具修理の店と。
染料屋の間にいた。
***
低い机。
椅子。
炭筆。
乾きの早い黒い液。
紙束。
白い粉。
木箱。
***
看板。
読めない紙、書きます。
その下。
小さく。
サク式・目覚め相談票 一枚一銅
***
男は。
三十歳を少し過ぎた頃に見えた。
髪。
耳の後ろで結ぶ。
左手。
指先に。
黒い液。
「カイ・ノルです」
彼は言った。
「代筆をしています」
***
「この紙を作りましたか」
朔。
「はい」
「サク式」
「あなたの公示を元にしました」
「俺が。これを確認しましたか」
「いいえ」
「作ることを許しましたか」
「聞いていません」
***
「なら」
リオが言う。
「何で名前入れた」
「何の相談か。分かるからです」
「目覚め相談票で」
「それだけでは。白い塔の件だと分からない」
「白い塔の件にする必要がある?」
「皆。サクさんへ相談したい」
***
カイは。
悪びれた様子を。
見せない。
怒っても。
いない。
「昨日」
彼は言う。
「文字を書けない人が。相談机の前で帰りました」
「なぜ」
「欄が多い。説明が長い。誰に何を言えばいいか分からない」
「それで」
「聞いたことを。私が一枚にしました」
***
「料金」
「一銅」
「高い?」
ミエルが。
後ろから尋ねる。
「紙と筆で半銅。聞き取りと記入で半銅」
「ぼってはないね」
「はい」
***
「この紙で」
カイ。
「昨日。六人が相談へ行けました」
「六人」
「一人は。夫の痛みを眠らせたい人」
「相談先へ繋がりました」
マレア。
「一人は。会えない娘の記録を探したい人」
ネラ。
「記録室へ来ました」
「なら」
カイは。
紙を指す。
「役に立っています」
***
役に立った。
それも。
消さない。
***
「本人の希望」
朔が指す。
「ここへ。誰の言葉を書きますか」
「相談する人が言ったこと」
「本人が言ったことではなく?」
「本人が話せないから相談する」
「なら」
「家族が知っている希望」
「家族が。本人の希望だと思うことです」
***
「違いますか」
カイ。
「違います」
「でも。聞けない」
「聞けないことを。聞いたことにはしません」
***
「欄を分ければ」
カイは。
元の相談票を見る。
「紙が二枚になります」
「はい」
「料金も上がる」
「はい」
「書く時間も」
「はい」
「列が伸びる」
「はい」
「その間に」
「身体が危険になる可能性があります」
***
朔は。
カイを見る。
「だから。短くした?」
「はい」
「あなたは。助けようとした?」
「はい」
「では」
「間違いだと言いますか」
「危険なところがあります」
***
「間違いじゃない?」
「紙を書けなかった人を。相談先へ繋いだことは。役に立ちました」
「では使う」
「そのままは使いません」
「なぜ」
「助けた部分があることは。危険がない証明になりません」
***
カイは。
紙束を。
整える。
「塔の人は」
「はい」
「長い紙を作る」
「はい」
「市場の人は読まない」
「あります」
「読めない人もいる」
「はい」
「私は。聞いて書ける」
「はい」
「私がいなければ。相談へ行けなかった人がいる」
「はい」
「なら、私の役目は必要です」
***
「代筆する役目は」
朔が言う。
「必要だと思います」
「では」
「俺の名前を。あなたの紙を俺が認めた印にしないでください」
***
「認めたとは書いていません」
カイ。
「サク式とあります」
「公示の内容を使った方式です」
「読む人は。どう思いますか」
「白い塔の子の相談票」
「俺が作ったと?」
「思う人もいるかもしれない」
「俺へ直接届くと?」
「それを求めて来る」
***
「白い手の印」
マレア。
「なぜ付けましたか」
「目印です」
「誰の手?」
「私の右手です」
「白い粉」
「紙屋の粉」
「朔さんの白い手様知覚と」
「似せました」
***
「なぜ」
「文字が読めない人にも。分かるからです」
「何が分かる」
「目覚めの相談」
「白い手へ触れれば。起きるという噂もあります」
「知っています」
「その印を使えば」
「来る」
***
役に立つ目印。
同時に。
確認されていない意味を。
強くする印。
***
「白い手が」
カイは言う。
「本当に力を持つかは。私は書いていない」
「印が書いています」
朔。
「絵は話さない」
「見る人が。意味を作ります」
「それは。見る人の責任では」
「作った人の責任もあります」
***
カイの顔が。
初めて。
少し険しくなる。
「では。公示の見出しも」
「はい」
「黒川朔。睡眠状態。それを見た者が噂を作った」
「はい」
「塔にも責任がある」
「あります」
「あなたにも」
「あります」
「私だけ止める?」
「止めるだけではなく。作り直したいです」
***
「一緒に?」
「はい」
「私の紙を取り上げるのでは」
「今ある紙は。いったん使わないでください」
「その間。読めない人は」
「今日中に作ります」
「長い紙を」
「短い紙と。詳しい紙を分けます」
***
「一枚一銅は」
ミエル。
「続ける?」
カイは。
朔を見る。
「代筆の料金です」
「相談への通行料にはしないでください」
朔。
「払えない人は?」
「書かない?」
カイは。
少し考える。
「今までは。紙代だけ後でもらいました」
「払わない人も」
「三人」
「どうした」
「書いた」
***
「それも残してください」
「未払いを?」
「払えなくても。相談から外さなかったことを」
「善人だと?」
「したこととして」
***
机を。
相談入口の近くへ移す。
市場の商売を。
塞がない位置。
カイだけに。
代筆を集中させない。
ネラ。
ルカ。
ミウ。
文字を書ける者が。
時間を分ける。
***
「私は仕事を失う」
カイが言った。
「料金を取る役目は残します」
ミエル。
「ただ働きだけにしたら。続かん」
「王都が払う?」
グラド。
後から来て。
紙を見る。
「相談事業の予算に」
「代筆者へ?」
「必要な業務です」
***
「王都の代筆屋になる?」
カイ。
「外部の人として」
セオ。
「書いた内容の責任は」
「代筆した範囲を。あなたの名前で残してください」
「相談者が言ったことなのに」
「誰が書いたかも。後で必要です」
***
「名前を使う者は」
ネラが言う。
「自分の名前も置く」
***
本人。
相談者。
代筆者。
確認した者。
判断した者。
誰の言葉か。
誰が欄を作ったか。
分ける。
***
新しい短い紙。
上部。
話せない・会えない人についての相談
白い手。
なし。
サク。
なし。
***
最初。
相談している人の名前
次。
話している相手との関係
次。
本人について。今、確認できている状態
眠っている。
ではなく。
自由記述。
呼吸。
反応。
場所。
病気。
不在。
死亡確認。
分からない。
***
次。
本人が以前に言った言葉
その下。
いつ/どこで/何について
***
次。
相談している人が、今してほしいこと
本人の希望とは。
別。
***
次。
本人が今してほしいこと
本人から直接確認/以前の言葉から推測/確認できず
三つ。
同じ欄へ。
入れない。
***
「以前の言葉から推測」
カイ。
「それなら。アロさんの兄の話を書ける」
「はい」
朔。
「本人の言葉」
「寝過ごしたら起こしてくれ」
「時」
「病気になる前の朝」
「今回への希望」
「兄は。今も起こしてほしいはずだと考えた」
***
「長くなった」
カイ。
「はい」
「一枚に入らない」
「続きの紙を付けます」
「紙代」
「相談入口の予算で」
「王都が」
「払います」
***
「税で?」
ミエル。
「はい」
グラド。
「なら、市場の人にも説明して」
「何を」
「何で。よその人の紙代を払うか」
***
「本人が話せない時」
マレアが答える。
「家族の言葉だけで。本人の意思が決められないようにするためです」
「それに金を使う?」
「はい」
「治療代は」
「別です」
「紙ばっかり」
「紙だけでは助かりません」
「でも」
「紙が違えば。違う行為が本人の同意として行われる可能性があります」
***
ミエルは。
帳面へ。
一銅。
紙。
代筆。
王都負担。
と書く。
「後で」
彼女は言う。
「高い言われたら。誰が言ったかも書くよ」
「お願いします」
グラド。
***
カイは。
古い紙を。
机へ並べる。
既に。
十二枚。
渡している。
***
「回収しますか」
セオ。
「できる範囲で」
カイ。
「誰へ渡したか」
「六人は覚えている」
「残り」
「顔だけ」
「名前」
「書かなかった人も」
***
サク式。
目覚め相談票。
白い手。
十二枚。
街の中へ。
出ている。
***
「全部は戻りません」
ネラ。
「はい」
「では」
「旧紙を持ってきた人へ。責めずに新しい紙へ移す」
「古い紙は」
「本人が望めば返す」
「記録」
「写しを残す?」
朔は考える。
「本人や相談者の情報があるので。勝手には残しません」
***
「危険な紙があったことは」
ネラ。
「空の見本を残します」
「個人名なし」
「はい」
***
サク式・目覚め相談票。
不使用。
理由。
本人の希望と相談者の希望を同一欄で扱うため。
日常の発言を、現在の接触・覚醒等への同意として転用する可能性があるため。
サクの名および白い手印が、本人による承認または能力保証として受け取られる可能性があるため。
***
作成者。
カイ・ノル
作成目的。
文字を書けない者、長い相談票を理解しにくい者を、相談入口へ繋ぐため。
料金。
一枚一銅。支払えない者にも一部作成。
***
「作成目的も残す?」
カイ。
「はい」
朔。
「危険な紙を作った人だけにしません」
「役に立った?」
「はい」
「なら、使い続けても」
「危険があることも。消えません」
***
カイは。
自分の名前を見る。
「私が。作った」
「はい」
「サク式と書いた」
「はい」
「あなたは認めていない」
「はい」
「でも。公示を使った」
「はい」
***
「罪になる?」
グラドが答える前に。
朔が言う。
「俺は。罰を決める立場ではありません」
「では」
「何をしたかを残します」
「許す?」
「その問いとも。別です」
***
カイは。
笑わない。
「難しいですね」
「はい」
「私は。助けたかった」
「はい」
「金も欲しかった」
「はい」
「名前を使えば売れると思った」
「はい」
「白い手の印なら。読めない人にも伝わると思った」
「はい」
「全部」
「残します」
***
理由が。
一つではない。
善意。
収入。
便利。
注目。
噂。
どれも。
同じ紙を作った。
***
午後。
アロ・センの兄が。
戻る。
古い相談票。
木札。
両方。
持っている。
***
「新しい紙へ」
カイが言う。
「書き直します」
男は。
カイを見る。
「お前が。本人の希望って書いた」
「はい」
「俺が言った」
「はい」
「間違い?」
カイは。
朔を見ない。
「アロさん本人から。今回について確認した希望ではありませんでした」
***
「では」
男。
「消すのか」
「消さずに。どの言葉から書いたかを足します」
「本人の希望ではない?」
「あなたが。本人の希望だと考えたことです」
「同じだ」
「紙では分けます」
***
男は。
新しい紙を。
すぐには受け取らない。
「弟を」
彼は言う。
「俺より知らん奴らが。言葉を分ける」
「はい」
朔。
「俺は。ずっと一緒にいた」
「はい」
「朝も。夜も」
「はい」
「何が好きかも。何が嫌いかも」
「はい」
「なら。俺が決める方が」
***
「アロさんについて」
朔が言う。
「あなたが知っていることは。多いです」
「なら」
「多いことは。本人になることではありません」
***
男の顔が。
歪む。
「俺は。弟になりたいんじゃない」
「分かっています」
「助けたい」
「はい」
「それを」
「相談者の希望として。小さくは扱いません」
***
「本人の希望じゃないから」
「価値がないとは言いません」
「では」
「別の欄で。大きく残します」
***
新しい紙。
本人が以前に述べた言葉
寝過ごしたら、起こしてくれ。
時。
病気になる前。
朝。
日常の起床について。
***
相談者が、現在の本人の希望だと考える内容
可能な方法で起こしてほしい。
***
その理由
本人は眠り続けることを嫌っていた。
朝が遅いと不機嫌になった。
仕事を休むことを嫌がった。
以前、長く寝た後に、次は起こせと言った。
***
現在の本人からの直接確認
確認できず。
***
現在確認できる身体状態
訪問治療記録を参照。
反応がある時間と。
ない時間。
水。
一語。
***
男は。
紙を見る。
「弟のことが」
「はい」
「前より増えた」
「はい」
「でも。起こしてほしいは。本人の欄から外れた」
「はい」
***
「俺の言葉になった」
「はい」
「俺は。それでも言う」
「残します」
***
男は。
自分の名前を書く。
ゼン・セン
初めて。
兄の名前が。
紙へ入る。
***
「前の紙には」
ゼン。
「俺の名前がなかった」
「はい」
「弟の名前と。サクの名前だけ」
「はい」
「俺が頼んだのに」
「はい」
***
アロ・セン。
サク。
その二つの名前の間で。
ゼン・センの願いが。
本人の希望に。
見えていた。
***
新しい紙には。
三人。
アロ。
ゼン。
代筆した。
カイ。
それぞれの名前。
それぞれの言葉。
***
「サクは」
ゼンが尋ねる。
「名前を書かない?」
「この紙の内容を。俺が決めたわけではありません」
「でも。作り直せと言った」
「相談票の変更記録に。名前を残します」
「ここには」
「必要ありません」
***
「逃げる?」
ゼン。
朔は。
すぐには否定しない。
「俺の名前を。どの紙にも入れれば。俺が全てを認めたように見えます」
「でも。関わった」
「関わった記録には。入ります」
「分ける」
「はい」
「便利やな」
「責任を隠すために分けないよう。誰が何をしたかは残します」
***
ゼンは。
納得したとは言わない。
新しい紙を。
木札と一緒に持つ。
弟の名前。
自分の名前。
カイの名前。
***
「治療の結果は」
朔。
「まだ分からない」
ゼン。
「はい」
「また。まだか」
「はい」
「お前のまだと。俺のまだは」
「同じ時間ではないと思います」
***
ゼンは。
紙を折らない。
木札の裏へ。
重ねる。
「明日」
「はい」
「マレアさんが来る」
「はい」
「白い手は」
「使いません」
「俺は。まだ使ってほしいと思ってる」
「残っています」
***
夕方。
旧紙市場の入口。
カイの看板。
書き換わる。
***
読めない紙、書きます。
その下。
相談内容を、本人・相談者・代筆者の言葉に分けて記します。
***
サク式。
なし。
白い手。
なし。
***
それでも。
人は来る。
「眠りの勇者の紙は」
「使っていません」
カイ。
「白い手の印」
「外しました」
「なぜ」
「私が。意味を保証できないからです」
***
「サクが怒った?」
「サクさんが。自分の承認にするなと言いました」
「なら、サクが決めた紙?」
カイが。
止まる。
***
「違います」
彼は言う。
「この紙は。相談入口と代筆する者が。今使うことを決めた紙です」
「サク式では」
「ありません」
「でも、サクが」
「関わった記録は。別にあります」
***
朔は。
少し離れた場所で。
その言葉を聞く。
訂正しない。
***
自分が関わった。
だから。
自分の方式。
とはしない。
***
複数の者が。
問題を見つけ。
作り直し。
使うと決めた。
その中に。
朔もいる。
***
夜。
不使用となった。
サク式・目覚め相談票の。
空の見本を。
記録箱へ入れる。
***
白い掌。
大きな。
サク式。
五つの欄。
***
その横。
変更記録。
作成者。
カイ・ノル。
問題を指摘した者。
黒川朔。
マレア・ソン。
ネラ・ヴォス。
リオ。
ミエル・サド。
グラド・ウェン。
セオ・ラグナ。
***
決定。
相談入口の運用担当者。
代筆者。
市場管理。
治療側。
記録側。
***
名前が。
多い。
***
一人の名で。
使いやすくした紙を。
複数の名で。
作り直した。
***
朔は。
自分の紙へ書く。
俺の名前が、相談票を俺が承認した印として使われていた。
作成者は、相談へ繋ぐこと、読み書きを助けること、収入を得ること、目印を作ることを目的としていた。
実際に相談へ繋がった者がいた。
同時に、本人の希望と相談者の希望が混ざり、俺の名と白い手印が能力または承認を示す可能性があった。
***
その下。
名前を使わないでほしい、とだけは言わなかった。
朔の名を。
誰かが話すこと。
書くこと。
噂にすること。
全てを。
止められない。
***
続ける。
俺の名前を、俺が確認していない行為、能力、書式を認めた印にしないでほしいと伝えた。
***
最後。
名前を使って紙を書く者は、自分の名前と、自分が何を加え、何を省いたかを残す。
***
借りた名前だけが。
大きく書かれ。
借りた者の名前が。
空白なら。
後に残るのは。
サク式。
だけになる。
***
誰が。
短くしたか。
誰が。
本人の希望と書いたか。
誰が。
白い掌を押したか。
消える。
***
名前を借りることは。
その人になることではない。
その人の言葉を。
自由に続けてよいことでも。
***
公示を引用する。
相談へ繋ぐ。
分かりやすくする。
紙を売る。
どれも。
行った者がいる。
***
だから。
借りた名の隣へ。
使った者の名も置く。
***
サクの名前だけに。
紙を歩かせないために。
善意も。
利益も。
省略も。
判断も。
誰かの名の後ろへ。
隠さないために。




